喫茶店の中で長話に夢中になる二人が居た。
年ごろの女性だろうか、恋話に夢中になっている。
「好きなタイプっている?」
「あー・・・うん。」
聞かれて、話していいのか迷っているようだ。
あの人は夜の女性達の上に立っている人だった。
気が付くと、探している自分に気が付く。
「面影とか、探しちゃう人ならいるかなー・・・」
コーヒーの香りと煙草の煙を思い出す。
嫌いだったもの。
好きになったもの。
「会いたいけど、」
故人ではないのだけれど。
「会えないのは知ってるからなぁ・・・・」
会いたくてたまらなくても、何処に居るのかは分からない。
時折、夜に思い出しては泣きそうになっちる自分に気付く。
「あの人みたいになりたいなぁとはずっと思ってる」
無理に決まっている。
そんな事を思う。
「もしさ、その人そっくりに演技して、はめようとする奴とか居たらどうする?」
「・・・・さぁ・・・・どうかな・・・・
考えたこともなかったけど。」
どうするだろう。
考えにふけっているのか、女性は言いよどむ。
(もし、フェイクが居たら・・・・?)
女性の顔に妙な笑いが込み上げた。
「・・・・」
ふと、鐘の音に気付いたのか、二人ともふと顔を上げた。
「結婚式かぁ・・・」
喫茶店の席から、
幸せそうな二人の顔が垣間見える。
「幸せそうな人って、見ていて幸せになるよね」
二人ともにやにやしている。
「お幸せに」
よく晴れた空に鐘の音が響く。
「そういえば、そう言う自分はどうなのさ。」
ややあって、
「いないなぁ」
沈黙の後、
「独身が一番気楽だよね・・・・」
(逃げ、かな・・・・)
いつも心に思うのは一人なのに、その人には会うすべすら分からないでいる無様な自分から逃げている。
そう、心の片隅で女は思った。
喫茶店の中、話は続く。
少し離れた所から、
ライス・シャワーの歓声が聞こえていた。
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