No.706749

貴女と見ている景色を見せたくて

雨泉洋悠さん

4日遅れの穂乃果ちゃん誕生日おめでとう!記念

といいつつも、何時もと変わらずににこまきが基本。
そこに海未ちゃんの穂乃果ちゃんへの想いを加えています。

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2014-08-07 02:31:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1007   閲覧ユーザー数:1004

   貴女と見ている景色を見せたくて

              雨泉 洋悠

 

 貴女の見ている景色を見たくて、貴女の背中を追いかけました。

 

「真姫、その後、尾崎さんとはどうですか?」

 放課後の音楽室、真夏の陽射しが射し込む中で、ピアノの前に座る真姫に問い掛けました。

 少し考え込んでいた様子の真姫が、少々驚いた表情で、こちらを仰ぎ見ます。

 次に向けての曲作り、真姫にしては珍しく、滞りがちのようですので、雑談に交えて、お聞きしておきたいと思ったことを、聞いてみます。。

「まこちゃんですか?今までと変わらずに、お手紙のやり取りしていますよ。最近はメールも良く来るようになりましたけど」

 尾崎まこさん、真姫にとって、ここに辿り着くための、最初の重要な一歩を受け取った、大切な人。

 初めてお会いした時、あの日から余りにも間が無さ過ぎて、彼女のためにも、真姫のためにも、何もしてさし上げることが出来ませんでした。

 お会いするのは、もっと先の事だろうと、思っていましたので。

「ああ、そう言えば希先輩と仲良くなったって言ってました。まこちゃんの事だから穂乃果とかにこ先輩と仲良くなるかなって思ったんですけど」

 意外そうな真姫の表情、そう言った所が、真姫が本来持っている、純粋で素直な、素敵な部分ですが、尾崎さんも流石に、直ぐに穂乃果やにこ先輩と仲良くなるのは、難しいでしょう。

 彼女の真姫への想いが解りますから、真姫が特別に感じている二人には、特に、先輩には、きっと、複雑な想いがあるでしょう。

 しかし、やはり希先輩が何らかの想いを持って、尾崎さんと親しくなられたのですね。

 私がその役目を、お引き受け出来無かった分、やはり私はあの歌を、真姫と共に完成させる役目を、担うべきなのでしょう。

 とは言え、今はひとまずは次に向けた曲作り。

 何とか真姫の方で、真姫の感性の助けになる様な話を、雑談の中から拾って頂けたら良いのですが。

「まこちゃんと穂乃果って、ちょっと似ているところがあるんですよね。多分気は合うと思うんですけど」

 穂乃果、尾崎さんと似ていると真姫が言う、私の大切な幼馴染。

 確かに、一度お会いしただけではありますが、真姫の言う穂乃果と同じ雰囲気というものを、尾崎さんには私も少し感じました。

 真姫が穂乃果に惹かれるのも、無理からぬ事だったのでしょう。

 その点については、真姫に先輩が居てくれたことは、私にとっては、幸いだったのかもしれません。

 ただ、あんまり真姫が穂乃果を優先しすぎるようだと、先輩が少し心配ですね。

 先輩は意外と、辛くても、あまり表に出して下さるタイプではないですから、中々私には上手いフォローが出来ません。

 やはり、そこは希先輩の役目なのかもしれませんね。

 先輩の誕生日が過ぎて、次は穂乃果の誕生日、二人の誕生日は結構近いのです。

「まもなく穂乃果の誕生日ですね、先輩の時と同様に皆でプレゼントとパーティーをやりますが、真姫の方は何か個人でも別で用意したりはするのですか?」

 真姫が先輩に、何か特別なものを差し上げたであろうことは察しが付いていますので、それを穂乃果にも、と考えているのかどうか、少々意地悪な質問をしてみます。

「穂乃果にですか?うーん、穂乃果には何も思いつかないから特別には何も無いと思いますよ」

 少しだけ考えつつも、何の裏表も無さそうな表情で答える真姫。

 つまりは、先輩には何かどうしても差し上げたいと思う、特別なものが出来たから、差し上げたということですね。

 その気持ち、真姫には大切にして欲しいと思います。

 特別な何か、それを思いつく相手なんて、普通は一人、私にだって二人しか居ません。

 しかし、穂乃果は何とも。

 先輩が、あまり思い詰め過ぎないことを、願いたいですね。

 真姫にはやはり、ちょっとだけ、純粋すぎるものを、感じてしまいますね。

 それが真姫の大切な魅力の一つだと思いますし、きっと先輩にとっても掛け替えの無い尊いもの。

 だからこそ、先輩はその部分も大事にしてあげたくて、必要以上に傷付いてしまう時もあるかもしれません。

 私も、時にそうですから。

「海未先輩は、穂乃果にはやっぱり何かあげるんですか?」

 真姫が純粋な疑問を、瞳に浮かべて、上目遣いで聞いてきます。

 こう言う時の真姫の姿、これもまた先輩を惑わす姿、なのでしょうね。

 私でも、やはり何か感じるものはありますから。

「ええ、今年は先輩に、良い事を教えて頂いたので、サントリナと言う花を贈るつもりです。しっかり育ててもらうつもりです」

 にこ先輩にお聞きした、穂乃果の誕生日にまつわる花。

「サントリナ、どんな花ですか?あ、やっぱり良いです、にこ先輩に聞いてみます」

 嬉しそうな真姫。

 ああ、こう言う先輩が居ない場所で、先輩の事を考えている時の、真姫の純粋な好意を反映した、素敵な笑顔。

 先輩にも見せて差し上げたいですが、真姫のこのような姿だけは、私達だけのものにせざるを得なさそうですね。

「海未先輩は、穂乃果のことを本当に大切に思っているんですね」

 な、何を突然、真姫が唐突に驚くようなことを言います。

「ま、まあ幼馴染ですから」

 真姫が唐突にこういう事を言ってくる時、私はとても、恥ずかしいです。

「海未先輩の歌詞、何時でも穂乃果の事を中心にして描いているのが、解ります。そんな時、幼馴染って良いなあって思います」

 ま、まあ、それについては否定しません。

 何時だって、私に新しい景色を見せてくれるのは、穂乃果です。

「でも、真姫だって、誰かの為にと思って、曲を作っているのではありませんか?」

 少しだけ、真姫の思うところをつついてみましょう。

「私の場合は、誰かの為にというよりも、漠然と皆のためにですね。そのうち、理由が出来れば、誰かの為にって曲も作ってみたいですけど」

 ピアノに視線を落としながら、その先は遠くを見ているような真姫。

 真姫が、今視線の向こう側に感じている、先輩の事を、純粋に思いながら曲作りが出来る日、そんな日が来るといいですね、真姫。

「そうですか、きっとそんな日は来ますよ。こないだのあの曲も、完成したらきっと誰かの為にと、真姫は思うと思いますよ」

 真姫が、視線を上げて微笑みます。

 その笑顔、あの曲を披露する時に、ちゃんと先輩にも、見せて差し上げてくださいね。

 

 穂乃果の背中、ことりと二人で、その背中を追いかけてきました。

 穂乃果が、私とことりの手を強引にひっぱてくれて、真姫を巻き込み、花陽と凛を引き入れ、にこ先輩を連れ出し、希先輩と絵里先輩をも導いた。

 穂乃果が居てこそ、私達は一つになれました。

 私とことりが、貴女と見ている景色を、皆に見せたくて、想いを言葉にしました。

 そして今も、穂乃果とことりと、皆で見ている景色を、誰かに見せたくて、皆の想いも一緒に、言葉にします。

 

 穂乃果、誕生日、おめでとう。

 


 
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