No.706669

欠陥異端者 by.IS 第二十一話(本番より準備の方が楽しいって、本当?)

rzthooさん

のほほんさんのデレって中々、想像がつかない・・・

2014-08-06 21:15:03 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1090   閲覧ユーザー数:1067

一夏「却下だ」

 

"ええええええぇぇっ!?"と、一年一組女子総勢30名以上が、批判めいた声をあげた。

だが、俺は一歩も引くつもりはない。何故なら─────

 

一夏「"織斑一夏のホストクラブ""織斑一夏とツイスター""織斑一夏とポッキー遊び""織斑一夏と────こんなの認められるかぁ!! 誰が喜ぶんだ、こんなもん!」

 

谷本「私は嬉しいなぁ、断言する!」

 

一夏「はぁ!?」

 

岸原「そうだそうだ! 女子を満足させる義務を全うしろ!」

 

その他にもグチグチと理不尽な文句を言われ続け、俺では手が負えなくなってきた。

しかも副担任は副担任で・・・

 

一夏「はぁ・・・先生からも何か言ってください」

 

真耶「えっ!?・・・え、え~と、ポッキーゲームなんて良いと思いますよ」

 

こんな時に千冬姉がいれば・・・はぁ~。

 

一夏(せめて零が同じクラスだったら、心強かったのに・・・)

 

 

 

 

 

鈴音「う~~~~~~~ん」

 

根本「・・・決まらないわね~」

 

ティナ「ってか、鈴にクラス委員の進行なんて出来るのか疑問だわ」

 

鈴音「そこ! 文句言う前に、良い案を出しなさいよ!」

 

零「・・・」

 

午後の授業二時間分を使い、学園祭で開くクラスの出し物を決めようとしているのだが、さっきからこんな感じで前に進めていない。

その時、一組の方からどっと歓声が上がった。

それを壁越しに聞く私達の教室の雰囲気が、一層暗くなった。

 

青柳「・・・せ、先生。このままじゃ何も決まりませんよ」

 

小林「ん~? まぁ、今日で完璧に決めなければいけないって事でもないし、しょうがないんじゃない?」

 

二組一同「「「・・・」」」

 

最近、合コンで知り合った男性とうまくいっているらしく、本業の教務が適当になっている・・・よく教師できるよな。

その先生の一言によって、その後の時間は誰一人として言葉を発すことがなかった。

 

 

 

 

 

鈴音「もうっ! 何なのよ、あの先生はっ!!」

 

零「あ、あの、食堂で大声を出すのは────」

 

鈴音「うっさい! 何も発言しなかったアンタに言われたかないわよっ!」

 

鈴音さんは、食堂のテーブルに置かれた水を一気に飲み干す。

昼休み・・・私は鈴音さんと二人で昼食を取っていた。

一夏達は屋上でお弁当を開くみたいだが、鈴音さんはそれを拒み、視線だけで"面貸せ"と私をここに連れてきたのが、ここまでの流れ。

 

鈴音「何で、あたしだけ一夏と別のクラスなのよ・・・[ブツブツ]・・・」

 

どうやら、私は愚痴をぶつけるためだけに呼ばれたようだ。

大した期待も無かったから、脱力することは無い・・・逆に、こんな関係も悪くない気がする。

 

鈴音「"男"の一夏がいる時点で、殆どの客を持ってかれて─────そういえば、零も"男"じゃん」

 

零「・・・今更ですか?」

 

鈴音「だって、普段から丁寧に話すし、外見も中性的だし、女装すればそれなりに・・・って今はそんな事どうでもいいや。とりあえず、一夏が率いる一組に対抗できるのは、アンタだけなのよ」

 

そう言われてもねぇ~・・・

 

零「一夏さんと私じゃ、人気の差が果てしなくありますよ。それに加えて、燕尾服着用の一夏さんです。既に校内に情報が出回って、学園問わず大騒ぎなんですから」

 

布仏さんからの口コミだから事実かは不明。しかし可能性はかなり高いだろう。

 

鈴音「じゃああれよ。今から人気を集めるわよ」

 

零「どうやって?」

 

「あ~~」と鈴音さんは、天井に視線を泳がせ顎を指でトントンと叩く。

その後、数秒間腕を組み、残った昼食を口にかきこんで、もう一度水を飲み干した。

 

鈴音「・・・自分で考えて。じゃっ!」

 

零「ちょ、ちょっと!?」

 

 

 

 

 

楯無「それで、私に上級生の橋渡し役になれ・・・と。いいわよん♪」

 

あまり頼りたくはなかったのだが、会長に尋ねてみれば、快く受け入れてくれた。

 

楯無「なら、さっそく行きましょう!」

 

零「今、放課後なんですけど」

 

楯無「いいからいいから」

 

学園祭に関する資料をほっぽり出して、俺の手を握って生徒会室から連れ出す。

 

零「また、布仏先輩に怒られますよ」

 

楯無「だって最近は、ずっとデスクワークで退屈してたんだもん」

 

零「はぁ・・・」

 

この人は相変わらずだな・・・。

 

零「それで、どこに連れていくんですか?」

 

楯無「二年寮よ。そこに私より使える人物がいるわ」

 

生徒会長権限発動によって、私は二年寮に引っ張られた。

廊下で二年生の女子達とすれ違うと、不思議そうにこちらを窺う。

そんなの気にせず、会長は私の手を引いて目的の寮室に到着し、ノックもせずに入室した。

 

楯無「薫子~、良いネタ持ってきたわよ~」

 

零「"薫子"って・・・まさか、あの─────」

 

黛「ふぁ? ふぁっちゃん、ほかえり」

 

黛 薫子・・・二年生にして新聞部のエース。

一夏さんに色々と取材をしている風景を目撃しているから、顔は覚えている。

そんな黛先輩は、まだ五時過ぎだというのに歯を磨いており、私服姿だった。

 

黛「ひょいとまっへへ」

 

歯ブラシを咥えたまま、洗面所へ向かう黛先輩を余所に、会長は私の手を引いたまま部屋に招き入れた。

黛先輩と相部屋らしい会長は、私からようやく手を離してベットに腰を下ろし、私もその隣に座らせてもらう。

同時に、黛先輩が帰ってきた。

 

黛「それでネタって?・・・もしかして、落合君?」

 

その質問に会長がにんまり顔で返すと、黛先輩の表情がキラキラと輝きだした。

 

黛「本当!? いや~、最初の頃は完璧拒否状態だったから、はんば諦めかけてたのよね~・・・なら、さっそく聞きたかった事を根掘り葉掘り」

 

零「・・・そういう事ですか」

 

確かに、短期間で学園全体に自分の事を知ってもらえる手段として、新聞部を活用するのが良策。

 

楯無「まず、学園全体に落合君がどういう人なのかを広めてからじゃないと、上級生とのコミュニティーを作りにくいでしょ」

 

零「ええ・・・まぁ、確かに」

 

黛「なるほどね、そういう目的か・・・よっし! なら、巻きで進めて明日に掲示するわね。では、さっそく─────」

 

いつの間にか用意された録音機とカメラをこちらに向け、数々の質問をぶつけてきた。

聞かれたことは、よく一夏さんにしている質問。主に、女子受けが宜しいものばかりだった。

 

黛「ハーレム状態の織斑一夏君に対して、何か思う事はありますか?」

 

零「ん~・・・一夏さん自身に思う事はないんですけど、小細工なしに"告白した者勝ち"な戦いに見えますね」

 

黛「なるほど、確かに一理あるけど、恋する乙女には色々あるってことを忘れないでね」

 

楯無「そうよ。特に、あの五人は性格的にも特殊だし」

 

会長もね・・・

 

黛「それにしても、会長と落合君は仲がいいわね。生徒会室の出入りが多いって風の噂で聞いたけど・・・もしかして、付き合ってる?」

 

零「いや、そんなことは─────」

 

楯無「バレちゃった? 実はそうなのよ!」

 

零「は?」

 

隣に座る会長が、私の腕に絡みついてきた。

むにゅっと柔らかな感触が腕から伝わってくるが、理性フル回転させて引き剥がしを試みる。

 

零「こ、ここで冗談はやめてください!」

 

楯無「ええぇ~~」

 

零「ええぇ~~、じゃないです! 勘違いされたら────」

 

黛「大丈夫、大丈夫。この人の性格はよ~く知ってるから」

 

楯無「ちぇ~、つまんない」

 

黛「でもでも! 落合君の赤面ゲット♪」

 

カシャッと、フラッシュが焚いた。

 

黛「最初はこんなもんかな? じゃあ、最後にたっちゃんとの関係を教えて」

 

零「関係って・・・」

 

チラッと会長を見ると、にたにたと含み笑いを浮かべていた。明らかに楽しんでやがる。

というか、普通に"先輩と後輩"と言えばいいはず・・・だけど、何か言えない・・・あれ?

 

零「・・・」

 

楯無「・・・え? な、なによ? そんなに見つめて///」

 

零「あっ、いや・・・別に」

 

直視された会長が珍しく恥ずかしそうに顔を赤くし、恥じらいの仕草をする。

その反応に私も顔を赤くし、離れた会長の体温が恋しくもあった。

 

黛「あらら? まさか、本当に"そういう関係"?」

 

楯無「ちょ、ちょっと! こんなの冗談に決まってるでしょ!」

 

零「・・・」

 

黛「ちょっと残念そうね」

 

零「っ・・・そ、そんな訳ないでしょ」

 

楯無「むっ! へ~、私にそんな魅力はないと?」

 

あなたは本当に面倒な人だな・・・これ以上、混乱させないでくれ。

 

黛(・・・なるほどね。これは一夏君とは、種類の違う修羅場が見れそう。面白くなってきた♪)

 

零「もう、私は失礼します・・・それでは黛先輩、よろしくお願いします」

 

黛「任せておいて~!」

 

逃げるように寮室から出る。

自分からお願いしたことだが、ようやく解放されたと安堵に息を────

 

楯無「置いていくなんて酷いじゃない」

 

零「うぉわ!? け、気配消して後ろに立たないでください!」

 

楯無「置いていく方がわるいの」

 

そう言って、また私の腕に絡みついてくる。

 

楯無「それで?」

 

零「え?」

 

楯無「何で、私の事を見つめてたの?」

 

からかう目的ではなく、純粋な疑問として投げかけてきているようだ。

上目遣いで、前のめりに顔を覗き込んでくる。

 

零「何でもないですよ。ただ、何を答えたら正解かを吟味していただけです」

 

平静を装って解答すると、会長は「ふ~ん」と納得していないご様子で、腕から離れていく。

 

楯無「じゃあ、私の橋渡しはここまでだから」

 

零「あ、はい。ありがとうございます」

 

楯無「うん♪ じゃ、まったね~!」

 

そう手を振って、悠々と去っていく会長。

 

零「・・・」

 (何故に、部屋に戻らないんだ・・・?)

 

階段を下っていく会長を見つめながら、しばし首を傾げるのだった・・・。

 

零「・・・って、いつまでもここに立ち尽くす訳にはいかない」

 

さっきから上級生たちが陰から監視されている。

この視線が、疑わしい視線から好奇な視線に変えなければならないと思うと、先が思いやられる。

ため息をつきながら、二年寮を出て、一年二組の教室に置き忘れた荷物を取りに戻った。

その帰り────

 

本音「おっとっとっと~~!」

 

零「げっ!」

 

[バササァッ!]

 

廊下に散らばる大量の紙片。その紙片に埋まる私と、相変わらず危なっかしい布仏さん。

私が階段を上り終えて曲がり角にかかった時、丁度良く紙片に視界を遮られていた布仏さんに接触した。

普通、足音とかで分かるものなのに、まったく気が付かなかった・・・。更識家の従者だから、そのような技術が体に染みついているのか? だったら、それは布仏さんにとって無駄な能力だな。

 

本音「う~~・・・あっ、れいちん」

 

零「あ、うっ」

 

ヒラッヒラッと被っていた紙片がこぼれ、布仏さんと目が合う。

すると、いつぞやの"不可抗力による猥褻"を思い返してしまい、またキョドってしまった。

とりあえず、その場の紙片を拾い集める。それに合わせて、布仏さんも慌てて紙片をかき集め始めた。

 

零「・・・」

 

本音「・・・」

 

その間の会話は一切ない。

私は黙って、紙束の2/3を持つ。

 

本音「だ、だいじょう────」

 

零「また、転ばれたら困るので。これ、職員室ですか?」

 

本音「あ、う・・・うん」

 

私が歩き出すと、その三歩後ろをとことこと布仏さんが付いてくる。

上履きが廊下を擦る音が時々聞こえるぐらいで、静か過ぎる時間。

思っていたよりも、職員室までの道のりは長く、胃に穴が開きそうだ。

 

零「失礼します」

 

その解放の時が訪れた時、私は心底ホッとした。

紙の束を職員室に届け終わり、布仏さんに一言を告げてから帰寮しようとする。

 

本音「ま、待ってよ~・・・」

 

零「え?」

 

袖越しに袖を掴む布仏さん。

 

本音「気にしてないから[ボソッ]」

 

零「ぁ・・・」

 

本音「じ、じゃあ~、まったね~!」

 

振り向きもせず、俺を抜いて走っていく布仏さんは、相変わらず遅い。

私は呆気に取られながら、嬉しくて頬が緩んでしまった。

 

 

 

 

 

楯無「ほれほれ~、お縄につけぇ!」

 

一夏「ちょ、ちょっとやめてください!」

 

部屋に戻ってみれば、会長が同室の一夏を襲っていた。

 

零「・・・何してんの?」


 
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