いつもの様に、執務を行っていると珍しく華琳が入ってきた。
「一刀、今大丈夫かしら?」
「あぁ、どうかしたのか?」
「その・・・・・・・市に降りるわよ」
「あぁ、もう少し待っていてくれ、これまで終わらせるから」
「しょうがないわね・・・・・・」
そう言うと邪魔になるのを避けるためか、部屋の外に出て行った。
「早く仕上げないとな・・・・・」
声に出して気合いを入れると、再び執務に向かっていった。
「華琳~」
「あら、意外と速かったわね」
「頑張ったからね、それじゃ・・・・・」
「あ、お兄さん、こんな所に居たんですか」
「ん?どうかしたのか」
「はい~、治安維持の今後の方向性について、意見を伺おうかと~」
「そうか・・・・・」
ちらりと華琳の方を見ると、顎で行って来いという指示を受けた。
「それでは、お兄さんを借りていきますね~」
しっかりと手を握ると、そのまま歩いて行った。
「ちょっと!風!」
「ん~どうかなさいましたか~華琳様?」
「なぜ、手をつなぐ必要があるのかしら?」
「ぐ~」
「起きなさい!」
「おぉっ!つい答えたくないことだったので、寝てしまいました」
「理由も言えないようなら、一刀を渡すわけにはいかないわ」
何かに気づいたのか、腕を引き一刀を自分の方へと戻そうとしている。
「ん~覇王曹操ともあろう者が、自分の言った言葉を簡単に変えるとは~なかなか大変なことですよね~」
言われたことの意味を理解したのか、苦虫を噛み潰したような顔をすると、いつもよりも足音を立てながら、自室の方へ歩いて行ってしまった。
「もういいわ・・・・早く終わらせてきなさい」
「はい~」
「それじゃあ、華琳行ってくるよ」
手を引かれながら、歩いて行っている方はどう考えても市のほうであった。
「ふ、風?執務室じゃないのか?」
「はい~、実情を見ながら考えていただこうと思いまして~」
「そうか・・・・・・」
ちらりと後ろを見ると、そこに華琳の姿はなかった。
「それでは、行きましょうか~」
「あぁ」
「何よ・・・・・あんなにデレデレしちゃって・・・・・・市の方に行っているの?」
二人が歩いて行くのを思わず隠れて見てしまった。
「なっ・・・・・・覇王曹操とあろうものが・・・・・・盗み見なんて・・・・・」
「違うわ、待てないから市に降りるだけよ」
「そうよ、風と一刀が気になってるわけじゃないんだから」
そうつぶやきながらも、隠れてこそこそとついて行っている。
「お兄さん」
「ん?どうした」
「こっちです」
そう言うと、一刀を細い路地に引き込んだ。
「狭いところだね」
「もう少しです~」
しばらくすると、開けた空間に出た。
「ここまで来たら大丈夫ですね~」
広場の中央あたりに腰を下ろすと、自分の横をポンポンと叩きここに来いと上目遣いで催促してくる。
「はいはい・・・・・全くって・・・・・」
座ったそばから、膝を枕にしてすぐに寝息を立て始めた。
「す~」
「全く・・・・・しょうがないな・・・・・・」
「ちょっと、いいかしら?一刀」
「・・・・・・・へ?」
「何でこんな所にいるのかしら?」
背後に立っていたのは、なぜか絶を構えている華琳であった。
「・・・・・・か、華琳さん・・・・・・?どうして絶を構えていらっしゃるんでしょうか?」
「言わなくても分かっているんじゃないの?」
「・・・・・・おぉ、お兄さんの危機ですね~」
「あら、あなたも絶の錆になりたいのかしら?」
「すぅ~」
「起きなさい」
「おぉ!思わず現実逃避をしてしまいました」
一度溜息を吐くと、絶をさげた。
「風、あなた・・・・・私から、一刀を奪うつもりかしら?」
「いえ~、お兄さんを奪うつもりはありませんが~お借りしているだけです」
話しながらも、頭を一度も膝から離すことはない。
「そう・・・・・・とりあえず、一刀の膝から頭をどけましょうか?」
「すぅ~」
「起きなさい!」
「おぉ!お兄さんの膝の感触が良すぎてついつい眠ってしまいました」
そう言いながら、立ち上がったかと思ったら、今度は一刀の足の上に座った。
「一応、言われた通りに頭は放しました~」
そろそろ、怒りが頂点に達そうとしているときに、立ち上がった。
「それでは失礼します~」
何事もなかったかのようにそのまま、その場を去って行った。
「何だったんだ?」
「どうでもいいわ、市へ行くわよ」
そのまま、華琳に引き摺られるようにして、市へと出て行った。
その晩・・・・・・・
「ん~今日は疲れたな」
「そうですか~、私としてはもうひと頑張りしてもらいたいんですがね~」
いつの間にか、寝台に風が侵入していた。
「ふ、風!いつの間に」
「先ほどちゃんと、声をかけましたよ~それに、華琳様もいますから」
「風には気付いて私には気づかないのね?・・・・・・今夜はお仕置きが必要みたいね」
「そ、そんな・・・・・・」
次の日の朝、なぜかぐったりしている北郷一刀と風、華琳が目撃されたとか、されてないとか。
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大変長くお待たせしました、蜀編を期待していた方、申し訳ありません、次回は蜀編愛紗VS~をお届けしたいと思っています