No.706172

妖世を歩む者 ~3章~ 1話

ray-Wさん

これは、妖怪と人間、そして"人妖"の住む世界のお話です。
"人妖"の女の子の容姿等は、GREEのアプリ『秘録 妖怪大戦争』を参考にしています。
※既にこのアプリは閉鎖となっています。

拙い文章ではありますが、楽しんでいただければ幸いです。

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2014-08-04 13:43:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:357   閲覧ユーザー数:357

3章 ~歩き出す者~

 

1話「成果」

 

「今日で半月。期限の最終日です」

 

陽介とアトリに、焦った様子はない。

途中で諦める気はなかった。途中でクリアできるとも思わなかった。

サクヤの鍛錬は、"この日"のためのもの。それを2人は理解していた。

 

「北へと向かう意思は、変わらないんですね」

 

今更な問いかけ。

 

「はい」 「うん!」

 

陽介達の決意は変わらない。

 

「それなら始めましょう。これで最後です」

 

3人は武器を構えた。まともな構えを知らなかった陽介も、余裕を示していたサクヤも、今はしっかりと構えている。

 

動いた影は2つ。

 

「ハァーーーッ!」「――――ッ!」

 

陽介とサクヤだった。アトリはまだ動かない。

力と速さの増した陽介の攻撃が、サクヤへと向かう。

 

しかしやはり、サクヤには届かない。

サクヤはいつかの再現のように、陽介の後ろへと回り込む。

 

――― キンッ

 

刀と鎌がぶつかる音。気配を読み、陽介はサクヤの攻撃を防いだ。

しかし、陽介が振り向く先には、すでに2本目の鎌が迫っている。

 

「ハァー!」

 

速さでは遠く及ばないが、腕力なら負けない。ましてや陽介は両手で風斬を持ち、サクヤの鎌を持つ手は1本づつ。

抑えの鎌ごと風斬を動かし、陽介は2本目の鎌を防いだ。

 

「やりますね」

 

たとえ鎌が2本あっても、1本では風斬を抑えきれない。

膠着した2人のところへ、3人目が現れる。

 

「やぁーーー!」

 

アトリの薙刀が、サクヤの背後から迫る。

 

「はっ!」

 

風斬を流すように払い、サクヤは横へと飛んだ。

 

「ごめん、抑え切れなかった」

 

「いえ、まだまだこれからです!」

 

アトリはサクヤに向かっていく。一度は体勢をくずしかけたサクヤも、すでにアトリの攻撃に備えている。

 

「やぁー!」

 

アトリのまっすぐな攻撃を、サクヤは難なく防ぐ、いや、防ぐだけではない。2本目の鎌による反撃がアトリを襲う。

 

「くっ」

 

攻撃から防御へと移行して鎌を防いだアトリだが、それにより1本目の鎌が攻撃に加わる。

次から次へと迫り来る鎌。アトリが苦戦した連撃である。

 

だが、今のアトリは違った。

 

「やぁーーーー!」「―――ッ!?」

 

2本の鎌を同時に弾いたそれは、回転する薙刀だった。

アトリの前で円を描く薙刀が、一時的にアトリを護る盾となる。

 

意表を突かれたサクヤだが、すぐに薙刀の回転速度が落ちていることに気づいた。

盾となるほどの回転を長い間続ける力は、アトリにはなかったのだ。

 

速度の落ちた回転から隙を見出したサクヤは、正確にそこへと攻撃を仕掛ける。

回転させることでしっかりと握られていなかった薙刀は、サクヤの攻撃に大きく払われた。

 

(ここまで払えば戻せない)

 

サクヤはアトリが"流れ"にのせた攻撃をすると考え、構えた先にそれを見つけた。

 

自分へと向かってくる、陽介を。

 

その行動は、サクヤにとって不可解だった。

陽介の進路は、完全にアトリの"流れる"攻撃を邪魔するものだったからだ。

 

しかし陽介はすでにそこまで迫っている。

陽介がアトリの攻撃を妨害するのであれば、陽介の攻撃さえ防げばいいのだ。

 

1本の鎌で流し、1本の鎌で反撃をする。

抑えられていない状況からであれば、流すことはできる。

 

陽介は下に構えた風斬を思い切り上へと振り上げた。

 

――― ガキィィィン!!

 

刃の打ち合う音が、大きく響き渡った。


 
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