No.706047

IS~歪みの世界の物語~

闇傷さん

 ISと呼ばれる作品と、私が「小説家になろう」で同じペンネームで書いている作品「蒼の眼を持つ死神」という作品のコラボ作品です。

 舞台はISの世界ですが、ISを見てない人用に作ったので、そこのあたりは見逃してください。
 ちなみに、更新はゆっくりです。気長に待ってください~

2014-08-03 22:41:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:999   閲覧ユーザー数:968

 

1.歪みの始まり

 

 とある、魔法を使い、科学が未発達の世界があった。

 軍が国を治め、戦争もなく、平和な場所。

 

 

 そんな国の中、町から離れた森の中、若い少年一人立っていた。その周りには、気絶した人間が転がっている。

 倒れている彼らは、通行人を襲う山賊。

 それを倒した人物は15、6歳ぐらいの少年だった。

 少年は、肩までかかる水色の髪をゴムで一つにまとめていて、中性の顔立ちに目は黒曜石のように黒く輝いている。スタイルも筋肉質でもなく極端にガリガリでもないため、見る人の多くが綺麗な少女と思う姿をした少年だった。

 「シグ・シリオン」それが、彼が名乗っている名前であり、軍の人にとっては、恐れられている人物でもあった。

 

「さて、連絡も出したし……後はもういいかな?」

 

 山賊を気絶させることが今回の任務。捕えて連行するのは、もうすぐ現れる軍人たちの役目だ。つまり、俺はもう何処かに行っていいということだ。

 

「とは言っても、暇だな……」

 

 ポリポリと頭を描きながら、町のある方向へと向かう。

 さて、何か面白いことでもないかな……。

 

 

 ―――――――――――。

 

 

「ん……何だ?」

 一瞬、何かが動いた。

 生き物?風?

 ………いや、違う。何だ?

 興味半分で、何か違和感があった方向を向く。

「何もない……いや……」

 

 違和感。何かあるが、何もない。

 ………何だ、この感覚?

 

 少し警戒しながら、歩く。

―――――突然、光が視界を覆った。

 あまりにも不意打ちな光に、目がまともに光を食らった。

 

「……っ!閃光弾!?魔法か!?」

 

 誰かからの攻撃を警戒し、後ろに大きく下がる。

 だが、それがさらに不思議なことを起こすきっかけとなった。

 後ろに下がったと同時に、そこには地面がなかった。

 

「なっ!?」

 

 体が落ちていく。

 落とし穴にしては……深すぎる。

 

「くそ……一体何なんだよ……!」

 

 目は……まだ慣れない。

 状況もよく理解しないまま、シグは無抵抗で落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

―――――とある世界。

 シグのいる世界とは交わるはずのない『平行(パラレル)世界(ワールド)

 その世界のある場所で、白い光が集まり、『扉』を作った。

 

 そう、シグをこの世界へと移動させるための『扉』

 突然光が集まれば誰かに見られるが、その世界はまだ日が昇っており、人目につきにくい場所にあったので、誰にも見られることは無かった。

 

―――――たった、二人を除いてだが。

 一人は真紅の長い髪を持つおとなしそうな少女。ある場所に歩いている途中に偶然光を見た。

 一人は水色の短い髪を持つ学生服を着た少女。彼女はその光を見ると、楽しそうに笑みを浮かべ、光の集まっている場所に向かった。

 

 なぜ、シグがこの世界に来たのか。

 それはこの世界に居る人にはわからない。

 ――――そして、シグが来たことで、不安定な世界が、さらに歪み始めたことも。

 

 それを知る人間は、誰もいない。

 

 

 

 

 

「よっ………と」

 

 両腕に袋が破けそうなほど、大量の物が入った買い物袋を持った少年が、小さい路地を歩いていた。

 歳は15、6くらい。身長も同世代の平均よりも高く、少し伸ばしている黒髪に爽やかな印象を与えるような少年の容姿とは裏腹に、手に持っている買い物袋が、どこか家庭的な父親のような雰囲気を出している。

 

「あ~……やっぱり、重いな」

 少年がポツリと呟く。

 独り言にしては大きい声だが、彼の周囲には誰もいなかったので、他人に聞かれるようなことは無かった。

 

「せっかく千冬姉もかえってきているのに……やっぱ、隼人に手伝ってもらった方がよかったかな?」

 

 一度買い物袋を置き、大分疲れている肩を回す。グキッ。という音が鳴り、地味な痛さに少年は眉をひそめた。

―――――そのとき。

 

「………うん?」

 

 近くから、ゴンッ!という音が微かに聞こえた。楽器が出すような心地よい音ではなく、金属のような硬い物同士がぶつかったような音。

 

(なにかあったのか?)

 

 いつもなら聞かないような音に、興味半分で音のした方へ行く。

 

 

 そしてそこには―――――人が、倒れていた。

 その光景を見た少年は絶句した。

 別に、倒れているわけではないということなら、驚くにしろ絶句まではいかないだろう。

 そう、コンクリートでできた道路と、倒れている人の頭に血が付いていなかったら。

 

「―――っ!大丈夫ですか!?」

 

 我に戻った少年は、倒れている人の近くによる。……が、返事はない。

 ただ、気を失っているだけ。

 そんな楽観的考えは、倒れている人から流れ落ちる血が壊した。

 

「おい、大丈夫か!?返事しろ!」

 

 痛まないように体を軽く揺らす。 

 その時、水色で隠れていた顔が見えた。

 綺麗だ。

 身長などを見ると大人っぽいが、それとは反対の幼いような可愛らしい顔立ち。それに加えて水色の髪がとても合っている。目を閉じ、傷を負っているのに、それでも美しさはまったく失っていな――――

 

「~~~!は、速く救急車を……」

 

 変な思考を消して、ズボンのポッケから携帯電話を取り出す。

 だが、それを開いた瞬間、少年は二度目の絶句をした。

 『圏外』という、2文字を見て。

 

「—―――――」

 

 頭の中が真っ白になる。いつもなら目にしない文字が、普段この場所で使っても現れない文字が、何故か出ている。

 

(何で、こんな時に……!?)

 

 無意識に、少年は奥歯を噛みしめていた。

 

 

「………っ……」

 

 少年に発見された人―――――シグ・シリオンは、傷の痛みで、少しずつだが意識を回復させていった。

 

(ここはいったい……そして、私は誰?)

 

 一人でふざけていると、ツッコミを入れるかのように頭に激痛が走る。洒落にならないほどの激痛だったので、冗談は止めて真面目に状況を整理する。

 

(確か……光に包まれて……)

 

 問題は……それからだ。俺の記憶が正しいのなら――――

気が付いたら、俺は大空に居た。

 この時点で、正直夢であってほしいと思ったのだが、落下する時のすさまじく強い風に叩かれて、夢でないというのがわかった。

 それから………痛っ!!

 高いとこから落下したせいか、打った頭が割れそうなほど痛かった。

 

「~~~!は、速く救急車を……」

 

 微かに、誰かの声が聞こえた。目を開ける。かすれて見えたが、近くに、同じ年くらいの少年が、俺の近くで慌てていた。

 

(心配……させてしまったな……)

 

大丈夫だ。心配しなくていい。

 そう声をかけたかったのだが、口から出たのは、蚊が鳴くような小さな声。そうやら、体は自分で思っている以上にひどい状態のようだ。

 自分の体を何とか動かそうとしている間に、少年が動いた。彼は息を必要以上に吸い込み――――

 

「――――――――止めろ!!!!!

 ……~~~っっ!」

 

 彼がやろうとした事を、反射的にさっきの声とは比べ物にならないほどの大声を出して止めた。同時に、無茶して大声を出したせいか、脳に直接メスを入れられたような激痛が襲いかかった。

 

「お、おい!大丈夫か!?待ってろ、今人を」

「止めて……ください……!誰も……呼ぶな……!」

 

 全身に広がっていく激痛と、こみあげてくる吐き気を耐えながらなんとか話す。

 空から見た風景を思い出す。

 現実味の無い、けど、そうとしか考えれない一つの仮説が、シグの頭の中に浮かんでいた。

 その仮説を確かめられるまで、大騒ぎになりたくない。少なくとも、今はまだ。

 

「大丈夫……ですから……」

「どう見ても大丈夫じゃないだろ!誰かに救急車を――――」

 

「俺は……大丈夫……だから、そっと……しておいてくれ……」

 

 無理に笑顔を作って、微笑んで見せた。……たぶん、作り笑顔なのはバレバレだろうけど。

 彼は少し戸惑った表情をしたが、俺の目を見て、ゆっくりと立ち去って行った。

 

「……はは、少し…悪いことしたな……」

 

 苦笑が漏れる。

 実際、体の方は異常な体質のおかげか、この短時間で最初の時よりも格段に良くなっている。

 

(もう少し休んでから、情報を集めるか……)

 

 そう思った時、氷水が入った透明の袋が目の前に出された。

 さっきの少年が、それを出してくれていた。

 

「人は呼んでいない。……けど、このまま何もせずに立ち去るのも嫌だからな」

 

 受け取ってくれ。彼の眼がそう言っている。

 

「……受け取れないって言ったら?」

「ここに居させてくれ。……迷惑かもしれないけど、何かさせてくれ」

 

 いたずら半分にした質問の返答に、シグは小さく笑って氷水を受けとった。

 

「……ありがとう。

――――俺はシグ。シグ・シリオンだ。シグでいい。君は?」

「織村一夏だ。俺も一夏で良い、よろしくなシグ」

「ああ。よろしく、一夏」

 

 ……このとき、シグは少年に……一夏に、自分の名前を言ったのが、不思議に思っていた。

 俺は人を、少なくとも、初対面の人を信用しない。名前なんか、名乗ることもなかったのに……

 

(………ああ、そうか)

 

―――――眼が似ている。

 意志が強い人に。

 俺の事を怖がらない、数少ない人の眼に。

 

 なんとなく、彼とは良い友達になれそうな気がした。

 

 

 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択