夢をーー見ていた
それは、私にとっては生まれた時の夢だった
騒がしい艦内CICにて、私は人の形となってそこに居た
「発艦できる機体は全て出せ!!近接対空迎撃システムオンライン
CIWS、AAダブルオートスタンバイ!!」
「クロドドック隊発艦完了!!待機中のラウドック隊を直ちにカタパルトに誘導しろ!!」
「敵戦闘機からの対艦誘導ミサイル接近!!、叩き落せ!!」
それからしばしその喧騒は続き、流れが変化したのはものの十分後だった
「レーダーに新たな反応!!IFF識別信号確認!!ウスティオからの援軍だ!!」
「何機だ!?」
「二機だ!!」
「たった二機だと!?二機で何ができるってんだ!!」
「敵機接近!!対空迎撃、回避共に間に合わない!!」
ズドォォン!!
と、爆発音と共に艦が大きく揺れた
「各部!!被害状況を報告しろ!!
「こちらブリッジ!!被弾した敵機が甲板に墜落した模様!!」
「こちらカタパルトデッキ!!スチームタンク破損!!一番二番カタパルト共に使用不能!!」
私が覚えている・・・一番最初の被弾だった
制御不能になった戦闘機が飛行甲板に墜落炎上、そのせいで艦載機を射出するために必要な
カタパルトが破損・・・実質的に私の艦載機運用能力は失われてしまった
でも、丁度その時からかーーー
空が急に、静かになった
「レーダー回復・・・IFF照会完了、当空域に敵戦闘機と思しき機影を確認できず」
「レーダー回復してないんじゃないのか!?この短時間で二十機以上の戦闘機が
離脱できる訳が無いだろ!!ブリッジ!!甲板要員!!現在空はどうなっているんだ!?」
艦内無線を用いて状況確認を図る、外が見えない閉め切られたCIC内部
「こちらブリッジ!!現在目視距離に敵戦闘機を確認できない!!
あのウスティオの二機が追い払った!!繰り返す
ウスティオの二機が制空権を確保した!!」
ウスティオの二機・・・?
そう思った瞬間、私は甲板に居た
そんな私の疑問よりも速く、艦の横を通り過ぎていった二機の戦闘機
私が運用する事のできない、艦載機ではない戦闘機・・・F-15
その大きな翼の全ての端を蒼く染められた機体と
片方の主翼だけを赤くした機体が通り過ぎていった
「・・・ありがとうございます」
私は頭を下げて二機を見送った
「・・・・」
「どうしたサイファー」
「なんか、お礼を言われた気がした」
「誰からだ?俺には聞こえなかったが・・・」
「いや、そういうのじゃなくてだな・・・」
そのまま帰路に付く二機の戦闘機
その二機が駆け抜けるのは時代の鍵を握る空なのだが
それをケストレルが知る事は当分先の事である
「・・・ううん・・・」
瞼を開けると、私は布団の中に居た
体を起こし、周りを見回して状況を確認する
「あら、起きましたか?」
洗面台で顔を洗浄する一人の女性
その人は赤城さんと同じような色違いの服装をした人が居た
「はろ・・・おはようございます」
いきなり言語を間違いかける・・・システム変更、標準ラングリッジを”日本語”に設定
「朝食の時間が近いです。顔を洗ってから食堂に行きなさい」
と、何か少し冷たげにその人は扉の向こう側に行ってしまった
言われたとおりにするしかない・・・だけど・・・
「これが”起床”なんだ・・・」
不思議な感覚に私は実感した
”生まれ変わり”と、呼ばれる現象を
顔を洗い、櫛で髪を梳いて部屋を後にする
食堂~
「あ、おはようございますなのです」
と、食堂で電ちゃんと会った
「おはよう」
「よく眠れたのです?」
「はい・・・」
欠伸をして、目を擦る
何故だろうか・・・体が軽い
馴染んでいる・・・人の形に私は一日で慣れてしまっていた
ガチャッ バァン!!
「グットモーニング!!おはようございマース!!」
何故かドアノブを捻る音の後に打撃音が聞こえた
「おはようございます」
「おはようございマース、ケストレルさん」
それから三人で朝食を取る
「一応、提督への報告を朝食後に済ませるネー。多分大丈夫だと思いマース」
「ぜ、絶対に大丈夫・・・なのです・・・」
なんか、大丈夫って顔ではないのだけれど
バァン!!
「昨日、俺の部屋が何者かの艦対地攻撃によって風通しが良くなってたんだが
誰か昨日対泊地用艦対陸弾を無許可使用したバカを知らないか?」
突然、金剛さんの後ろに白い服を身に纏った男性が出現する
「提督の自業自得なのデース」
「ま、それとは別にお前に話がある。後で部屋に来い」
「了解デース」
「所で・・・お前か、ウチの艦隊を守ってくれたのは
正規空母クラス・・・ヒューバートクラス七番艦 ケストレル」
「司令官さんは知っているのですか!?」
「ああ知ってる。ま、細かい事はいいからちゃんと朝食食え。
出撃後の艤装稼動チェックの状況、及び作戦報告の提出
その後は二日程うちの司令部は定期休暇だらゆっくりしとけよ~」
そう言ってその人は机の中央に置かれた籠からパンを二個ほど取って部屋を出て行った
「間宮さんが作るぱんは凄くおいしいのデース!!」
「とっても甘いあんこが入っているのです!!」
なんか、楽しそうだなぁ・・・
「とりあえず一つ食べてみるとイイネー」
ぱんを一つ受け取って、ちぎって口に含んでみる
ふわっとした生地の中に、しっかりとした甘みを持つあんこが遅れて心地よい舌触りが伝わる
パン生地の方にはあまり甘くないからか、濃い目にされた餡とのバランスが取れているのか
「・・・おいしい」
何故か笑顔がこぼれてしまった
「おはよ~」
「あ、夕立さんおはようございますなのです」
「おはよう電ちゃん・・・あ!!新しい人!?」
「そうなのです!!」
そうして、私は自己紹介を続けていく
「なんか、あつうらさんと似てますね」
あつうら・・・もしかして
「自衛隊所属ヘリ搭載型イージス護衛艦の?」
「そんな名前でしたよ。詳しい事は判らないけど」
・・・同じ境遇の艦が居たみたいだ
提督執務室
「おはよう、あつうら」
「おはようございます・・・」
うむ、なんか元気が無いな
そんな艦娘にはあま~い朝飯だ
「ほら、朝飯。食べりゃ元気になるってな」
さっき食堂で取ってきた間宮特製のあんぱんだ
間宮ってのはこの第六艦隊司令部に居る糧食担当の艦娘だ
これまた料理がうまいんだな。和食から洋食、イタリア料理からスペイン料理まで幅が大海原なんだぜ
更に、間宮の得意分野は甘味だったりする
このあんぱんも甘味に含まれる訳なんだが、ちょっと市販のやつとは違うんだよな
「・・・いただきます」
そう言って、あつうらがあんぱんを口にする
その瞬間、あつうらの瞳から涙がこぼれはじめた・・・って
「どっ!?どうしたんだ!?口に合わんかったか!?」
その場にへたり込んだあつうらは
「おいしいです・・・この味が懐かしくて・・・日本の味が懐かしくて・・・」
それから、あつうらの航海記録を思い出した
ベルカ事変終結後、オーシアからイーストポイントに回航中にユークの潜水艦に雷撃される
アスロック対潜ミサイル等VLS装備を全て解除した状態、対潜能力を持っていなかった
魚雷はあつうらの左舷後部に被弾、直撃弾による機関部損傷により航行不能に
ユークの潜水艦のIFFの故障で所属不明艦として認識された事による誤射だった
更に追加の雷撃を行ったユーク潜水艦の無線に飛び込んできたのは
日本人の声だったそうだ
そのまま魚雷四本を左舷に受け、更に燃料への引火、ガスタービン誘爆によって
あつうらは、たった五分で全ての回航乗組員共に海中に没した
これは艤装に搭載されたクルージングレコーダーと呼ばれる記憶媒体に残っていた
船そのものの記憶だ
「このぱんを・・・みんなにも・・・たべてもらいたかった・・・」
・・・悲しすぎる
何でこんなにも、この娘達は背負わなくてはならなかったのだろうか?
他の艦娘然り、過去を見ると人には耐えられないほど苦しいものだ
人に置き換えるだけで、その苦味はいっそう強くなる
だからこそ、この世界は存在しているのかもしれないが・・・
「大丈夫だ・・・お前に想われる乗組員達は報われてる。お前はその乗組員の分も
しっかり味わって、しっかり生きるんだ」
何せ・・・生まれ変わりなんだからな
この世界は、戦争によって沈んだ艦達の”もう一つの艦生”であると俺は思っている
コンコンッ
「失礼しマース!!」
ドアを開け放った金剛・・・照準よし、対空防御が疎かだぜ?
足元に引っ張ったワイヤーを放す。その先に繋がるのはーーー
ゴォン!!
天井いっぱいまで引き上げられた特大の真鍮製タライである
支えを失ったそれは重力に引かれてそのまま金剛の脳天へ炸裂★
「・・・・ごぁっ」
ドサッと潔く倒れこんだ金剛
てか、英国淑女とは思えん鈍い呻き声上げたな・・・
「あ・・・金剛さん!?」
と、遅れて入室してきた艦娘・・・ケストレルが金剛を抱え起こす
「誰のせいでこの執務室がオープンテラスよろしく状態になったと思ってるんだ
そんでもって始めまして。私は第六艦隊司令官、乃木亮司だ
ま、名前なんてどーでもいいんだが・・・とりあえずそこのイスにでも腰掛けとけ
金剛、いつまでノびてんだ。さっさと起きて報告書と始末書書いて提出しろ」
「・・・テイトクが悪いのデース」
「まだ言うか。書いたら重大な事教えてやるからさっさと書け。でないと霧島がキレっぞ」
今の物資、資材系の経理はこいつの妹である霧島がやってるからな
大丈夫だ。あいつは姉さえ素手で屠る事ができる動く経理だ、問題ない
「すぐに提出するネー!!」
よし、これでカチコミは回避できたな
金剛にペンと用紙を渡してそのまま続ける
「イーストポイント海上自衛隊所属 DDG240あつうら型ヴァリスタイージス護衛艦 あつうら
オーシア連邦国防海軍第三艦隊所属 ヒューバート型原子力航空母艦 ケストレル
貴艦らに対して俺が聞きたい事は一つだ」
「「?」」
「今のお前達は道具か?それとも人間か?」
俺が聞きたいのはそこだけだ
「・・・・・今は、人です」
あつうらが、俯きながらそう答えた
「道具ではありません」
ケストレルがそう答える
なら、決まりだな
「そうか。では貴艦達の第六艦隊司令部への参加を認める
ま、堅い挨拶はこの辺にして・・・装備の確認だ。まずあつうら」
「は、はい・・・オート・メラーラ54口径127mm速射砲一門
艦首、艦尾MK.41 ,Mod45VLS
搭載ミサイルはシースパロー対空ミサイル
アスロック対潜ミサイル・トマホーク多目的誘導弾
CIWS近接対空防御システム二門・ハープーン対艦ミサイル
そして、アクティブハイマットシステム試験搭載イージス対空監視システム
SPY-3Fプロトタイプレーダー・・・ですが・・・」
「VLSの武装に残弾無し、使用可能な武装は主砲一門、対空機銃二門
ハープーンは残弾僅か二発か・・・短距離魚雷は回航の際には搭載せず」
「・・・ごめんなさい」
「んあ?別に責めてる訳じゃないぞ。第一、お前の長所は火力じゃ無いだろ?
第一に、お前が生まれた理由は”攻撃”なんかじゃないんだからな」
そう、イーストポイントの一国、日本が所有していた護衛艦は戦闘艦ではない
・・・・守る為だけに存在していたのだから
「さて、次はケストレル」
「はい、搭載している艦載機は
F-14Dトムキャット・F-18Eスーパーホーネット・F-35Cライトニング
近接防衛火器としてCIWSを四機、シースパロー発射コンテナ二機
短距離魚雷発射管二機搭載です」
「ふむ・・・各近接対空ユニットの消耗は?」
「CIWSの20mm弾薬が各ユニット残弾数43発
それ以外は・・・消耗ありません」
ふむ・・・それならば
電話を取って火器開発部に内線で繋ぐ
「もしもし開発部か?南に繋げ・・・って本人かよ
新規弾薬の注文だ。種別は主砲弾薬と対空連装火器の弾薬
仕様は追って伝える。あん?直接話がしたいって?
来りゃいいじゃねーか、茶と菓子くらいは出すぞ。んじゃ、よろしく」
受話器を落として、再び艦娘達と向き合う
「さて、とりあえず」
「「??」」
「これの修理、手伝ってくれないか?」
とりあえずこの大穴塞がねーとな
ああ、本当に休日大工になっちまいそうだ
ども、作者です
超中途半端な設定押し込んでしまった気がする・・・
と、言う訳で次回日常編兼設定解説回の予定になりマース
神「大和が宇宙を飛べるように魔改造しよう(提案」
作者「間違ってもショックカノンとか波動エンジンとか載せないからな(断言」
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よろしくお願いします
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この作品は二次創作になります。作者は軍事系に関してはほぼ素人です
作者の独断と偏見とその他妄想で構成されております
というか、それでしか構成されておりません。
これらの設定が苦手な方はブラウザバック等の御英断をお願いします。