No.70313

真・恋姫無双 蒼天の御遣い3

0157さん

やっと出来ました3作目。

だけど物語が遅々として進まないことに、文才が無いのではと最近自身を無くしてます。

まぁ、このスタイルを変えるつもりは ないのですが。

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2009-04-25 01:33:08 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:47473   閲覧ユーザー数:32408

ここは天水にある城の政務室。

 

その一室に眼鏡をかけた少女――賈駆文和こと詠が落ち着きも無くうろうろと歩き回っていた。

 

「どこに行ったのよ・・・月は・・・」

 

そうぽつりと呟くが、返ってくる答えなどあるはず無く、部屋にむなしく響くだけだった。

 

月がいないと気づいたのは半刻(一時間)ほど前。政務の合間にとった休憩の時間が終わっても、戻ってこないことを知った詠は最初、日向ぼっこでもして時間を忘れているのだろう、と思っていた。ぼんやりとした子だから充分にありえると。

 

しかし、心当たりのある場所をすべて回っても見つからなかった詠はただ事じゃないと思い、城にいる者たちを使って聞き込みを始めた。

 

そしたら驚くべき報告があった。『董卓様らしき人影が森の中に入っていくのを見た』と。

 

詠は血の気がひいていくのを感じた。ここら周辺には賊はめったに出てこない。しかし、ここ最近は賊が増えてきているし、何よりも人を襲うのは人だけではないのだ。

 

つい昨日、ここの近くの森で虎を見たという報告があった。

 

発見した者も遠目で見ただけで人的被害がなかったので、月には知らせずこちらで処理しようと討伐隊を編成していたのだ。

 

それがまさかこんな事になろうとは!詠は思わず手のひらを机に叩きつけ報告した兵士に怒鳴りつけるように命令した。

 

「今すぐ編成した討伐隊を森に向かわせなさい!!月を見つけたなら保護すること!虎を

見つけたらなら直ちに討つようにと!」

 

「はっ、はい!」

 

命令を聞いた兵士は慌てて部屋を飛び出していった。

 

そして今に至るのである。

 

「・・・・・・月・・・」

 

すでに何度目かの呟きをした詠のもとに一人の兵士が息を切らして報告してきた。

 

「賈駆様!董卓様が見つかりました!」

 

その報告を聞いた詠は思わず兵士のえり元をつかみあげた。

 

「ゆ、月が見つかったって本当!?月は無事なの!?」

 

「今・・か・ら・・そ・の・・・報告・・を・・・・賈・駆・・様・・・・苦・・し・い・・・」

 

段々顔が青くなっていく兵士に言われて、はっ、と詠は手を放した。

 

「す、すまなかったわね。それで・・・月は無事なの?」

 

「ゲホッ、は、はい、着ていた服が所々破けているのを見ましたが、これといって目立った外傷などはありませんでした。ただ・・・・・・」

 

「ただ、何よ。はっきり言いなさい。」

 

月が無事だという報告を聞いて安堵したが、途中で兵士が口をつぐんだのを見て訝しげになりながらも先を促した。

 

「はい、実は――――」

 

兵士の報告を聞いた詠は、

 

「・・・はぁ!?」

 

思わず素っとん狂な声を出してしまった。

 

 

「あの城です、一刀さん。」

 

背負っている月が肩越しから指をさし示した。

 

「ああ、見えてるよ月。」

 

森を抜けてからしばらく歩いていると、確かに城壁らしきものが見え初めてきた。

 

ちなみに、真名はもう許してもらっている。理由を聞くと、「命の恩人で天の御遣い様だから。」、だそうだ。

 

前の理由はともかく、後の方はいまいちよく分からなかったが、信用されるのは悪い気分ではないので呼ばせてもらうことにした。

 

そうして話していると、城門から人と馬が十数人(頭)出てきた。

 

「誰か出て来たね。」

 

「誰でしょうか?」

 

「旗が見えるね・・・・・・紫紺色の・・・『賈』・・・かな?」

 

自慢じゃないが視力は両方2,0だ。

 

「詠ちゃんです!」

 

月の声が嬉しそうに弾んでいた。

 

「どうやらお迎えが来たようだね。」

 

俺達はそのままゆっくりと城に歩き出した。

 

 

 

 

 

 

一刀たちの所にたどり着いた詠は兵士の報告通りの状況に思わず眉根を寄せた。

 

その内容は、『董卓様が貴族らしき風体をした少年に背負われている』、ということだった。

 

発見した討伐隊の隊長は、董卓様がご無事で、しかも、城に向かっているらしいので監視をするだけに留めるとのことだった。

 

確かにその隊長の判断は正しかった。この日の光で輝いた見たこともない服を着た少年は確かにどこかの貴族に見えるだろうし、そういった連中と事を構えるのは厄介なこと極まりないからだ。

 

詠は少年に背負われている月を見る。愛する主君の無事な姿を見て今すぐ駆け寄りたい衝動に駆られたが今は我慢する。今はこの男の素性を知るのが先だ。

 

しかし、改めて月の状態を見ると報告どおり、服のいたるところが破けている。しかも、いつもはきちんと着付けている服も所々乱れている。

 

そう、まるで「何か」をされた後のようだ。

 

詠は思わず、「ちょっと、あんた!ボクの月に何かしたんじゃないでしょうね!?もし、そうならただじゃおかないわよ!!」と、目の前の少年を怒鳴りつけたくなるが、ここはグッと我慢する。

 

「あなたはどちら様でしょうか?出来れば名前を聞かせてはくれませんか?」

 

詠は硬い笑みを浮かべて尋ねた。言葉に多少のとげが含まれてはいたが・・・

 

しかし、少年は意に介さず質問に答えた。

 

「俺の名前は北郷一刀だ・・・・・・彼女が賈駆か?月」

 

一刀は月に聞いてみたが、月が返事をする前に目の前の少女がいきなり怒り出した。

 

「ちょっと、あんた!!どこの世間知らずの貴族か知らないけど何勝手に月の真名を呼んでいるのよ!訂正しなさいよ!訂正!」

 

今までの態度をかなぐり捨て怒り出した少女を見て、一刀はまず誤解を解くことにした。

 

「・・・二つほど、誤解があるようなんだが。」

 

「なによ!?言ってみなさいよ!」

 

少女は今にも噛み付きそうだった。

 

「一つは、俺は貴族ではない。ただの一般市民だ。二つは、勝手に呼んでいるわけではない。ちゃんと本人に了承をもらっている。」

 

「・・・本当なの?」

 

疑わしげな目で一刀をにらむ。

 

「君は俺と会ってから一度もこの子の真名を呼んでなかっただろう?だとすれば、本人から聞くしか知りようが無いじゃないか。」

 

「月・・・本当?」

 

一刀の理路整然とした答えを聞いても納得できないのか、少女は月本人に聞いてみた。

 

「うん、本当だよ詠ちゃん」

 

月は微笑みながらそう答えた。

 

(・・・やっぱりこの子が詠ちゃん――賈駆文和なんだな。)

 

一刀が一人納得していると、

 

「どうして!?こんなどこの誰かも知らない馬の骨なんかに!?」

 

他にも、怪しいだの、信用ならないなど、月を説得?している詠に月は降ろしてくださいと一刀に頼んだ。降ろされた月は詠に話した。

 

「詠ちゃん、私ね、虎さんに襲われちゃったの。」

 

そのことを聞いた詠はピタリと押し黙ってしまった。

 

「私は一生懸命走ったけど逃げ切れなくて、もう駄目って思ったときに・・・・・・」

 

「こいつが・・・助けてくれたの?」

 

詠の言葉に月は頷く。

 

その途端、詠の瞳から涙が溢れ出した。

 

「月・・・ごめんね。」

 

「・・・?どうして謝るの詠ちゃん?」

 

「昨日・・・この近くの森で虎を発見したって報告があったんだ。だけど被害が特になかったからこっちで処理しようって思って月には知らせてなかったの。だから私の所為で月は・・・」

 

「そ、そんなの詠ちゃん所為じゃ――」

 

「そうだな。君の所為だ。」

 

月の慰めの言葉をさえぎって一刀は言った。

 

「君がそのことを月に言っていれば月が森に行くことも、虎に襲われることもなかっただろう。それに君がいかに軍師とはいえ、そして少人数とはいえ、火急の事態でもないのに主君にうかがいもせずに兵を動かそうとするなど言語道断だ。謀反の疑いをかけられても仕方のないことを君はしたんだぞ。」

 

一刀の言葉に詠はうつむき、拳を震わせながら唇をかみ締める。すべてが正論であるがゆえに何も言い返せないのだろう。

 

「そ、そんなあんまりです!詠ちゃんは私の為を思って!」

 

一刀のあまりに辛らつな指摘に月も詠を弁護する。

 

「そう、君の為を思って君を危険にさらしてしまった。」

 

一刀の淡々と述べる事実に月は目に涙を溜めはじめた。

 

その姿に心が痛むがそれでも追及をやめるわけにはいかない。

 

「それに恐らく彼女は嘘をついている。」

 

「嘘・・・・・・ですか?」

 

もうすでに泣き出してしまいそうな月がポツリとそう呟いた。

 

「ああ、正確には、『まだ話してないこと』、になるのかな?」

 

一刀は詠に首を向けるが彼女はうつむいたままで何も言わない。

 

「彼女は確か、『被害が特になかったからこっちで処理しよう』って言ったよな。」

 

「・・・?それが嘘なんですか?」

 

「いや、それは本当のことなんだろう。俺が言いたいのは、だ・・・・・・」

 

一刀はじっと詠を見据えたまま言う。

 

「被害が特にないからっていうのは月に黙っている理由にはならないってことだよ。」

 

詠の肩がピクリと震えた。

 

そう、被害がないならそう言えばいいのだ。その上で虎を討伐するために兵を動かしますと、ただそう言うだけで問題は一切なくなるのだから。

 

「じゃあ、どうして詠ちゃんは・・・・・・?」

 

「それは恐らく、推測になるけど――――」

 

月の疑問に、一刀は自分なりの考えを述べようとすると、

 

「やめて!言わないで!」

 

今までうつむいたまま黙っていた詠がいきなり顔を上げ制止の言葉を張り上げたが、一刀は無視した。

 

「――野生の虎とはいえ討伐隊を出すこと・・・・・・殺すように命令させることを月にさせたくなかったんだと思うよ。」

 

一刀の言葉で辺りは静寂に包まれた。聞こえるのは周りの兵士達と馬の息遣いだけだ。

 

「・・・それは本当なの?・・・詠ちゃん?」

 

最初に静寂を破ったのは月の搾り出すような声だった。

 

「ち、違うわよ月!それは全部こいつの口からでまかせよ!」

 

詠が慌てて一刀の言葉を否定するがその挙動からしてすでに肯定しているも同然だろう。

 

月もそのことが分かったのか、今まで溜めていた涙かいっせいに溢れ出した。

 

「ごめんなさい、詠ちゃん。私がしっかりしてないせいで詠ちゃんに迷惑を――――」

 

「月、それはちがうよ。」

 

「・・・どういうことですか?」

 

一刀が月の言葉をさえぎると、月と詠がこちらを向いて月が尋ねた。

 

「確かに君は彼女に多少の苦労をかけてしまったようだけど、彼女は決して迷惑とは思ってないはずだよ。それに・・・」

 

「・・・それに?」

 

月が聞き返した。だから、一刀は彼女の間違った所を指摘してあげた。

 

「こういうときは謝罪の言葉ではなくて、もっとふさわしい言葉があるだろ?」

 

「「・・・・・・?」」

 

月と詠は一刀が何を言いたいのか分からなかった。

 

仕方なく、一刀はさらに助け舟を出すことにした。

 

「月、君が俺と会ったとき、君は最初、俺に何て言おうとした?」

 

月はそれで気づいたようだった。俺の顔を見て頷くと詠に向き直りその言葉を言う。

 

「『ありがとう』詠ちゃん。今までこんな私を支えてくれて・・・」

 

「月・・・」

 

詠が目を見開いて呟いた。

 

「・・・私、今まで甘えてたんだと思う。『詠ちゃんは私よりも上手く出来るから』って・・・・・・それを言い訳にして詠ちゃんばっかりに重荷を背負わせていたんだと思う・・・」

 

詠が口を開いた。「そんなことはない!」と言いたかったのだろう。しかし、月が、「だけどね・・・」と、続ける。

 

「私、頑張るから。頑張って、詠ちゃんだけじゃなくてもっとたくさんの人たちを支えてあげたいから・・・・・・だから、詠ちゃん・・・」

 

そこで月は言葉を切ると、詠に対してペコリと頭を下げた。

 

「こんな私を・・・・・・これからも支えてくれますか?」

 

「月・・・・・・月ぇぇ~~~!」

 

「ひゃう!?」

 

詠は感激のあまりか号泣し、月を抱きしめた。

 

「ボク・・・支える・・から・・・・・・月を一生支えるからぁ!」

 

「うん・・・!」

 

詠の気持ちが伝わったのだろう、月も涙を流しながら返事をして詠を抱き返した。

 

周りにはさっきまでの重々しい雰囲気はなく、代わりに暖かい空気が流れ込んできた。

 

二人が泣き止んでからしばらくして、詠が月から離れて一刀の方を見る。

 

「あなた・・・北郷一刀と言ったわね?」

 

「ああ」

 

一刀が返事をすると、詠が深々と頭を下げた。

 

「まずは、月を助けてくれてありがとう。家臣として、そして、この子の親友として礼を言うわ。・・・・・・・・・それと、あなたへの数々の非礼な言葉も取り消させてもらうわ・・・・・・ごめんなさい。」

 

「こっちこそ君に酷いことを言ってしまったからな。おあいこだから気にするな。」

 

詠が顔を上げるとその表情は、さっきまでの硬さがとれ、思わず見惚れるような笑顔をしていた。

 

「改めて自己紹介をするわ。我が名は賈駆、字は文和、真名は詠よ。よろしくね。」

 

「・・・・・・いいのか?会ったばかりなのに真名で呼んでも?」

 

詠が真名まで名乗ったその真意を読み取り一刀は聞いてみた。

 

「別にいいわよ。月は真名を許しているし、それに色々助けてもらったみたいだし。」

 

「そうか・・・なら、こちらも改めて自己紹介しよう。俺は北郷一刀。姓は北郷、名は一刀で、字と真名がない。」

 

「ふぅん、字と真名がないなんて随分変わってるわね。どこの生まれなの?」

 

「あー、それはだなぁ・・・」

 

詠の質問に、一刀は言葉を濁した。よもや、「生まれは東京の浅草だ。」なんて言っても分かる訳ないだろうし・・・

 

「詠ちゃん。一刀さんは天の国から来たんだよ。」

 

俺がどう話すか考えていたら、月が顔を輝かせながらそう言った。

 

「・・・えっと・・・・・・どういうこと?」

 

流石の稀代の軍師もこの突拍子もない発言は理解できなかったようだ。

 

一刀は思わず嘆息しながら、これまでの経緯を説明した。

 

 

「ふぅん、こいつが噂の『天の御遣い』・・・ねぇ。」

 

そう言って詠は一刀をじろじろと値踏みしていた。

 

「俺も自分のことを『天の御遣い』だなんて思ってないんだけどね。」

 

一刀もそう言って肩をすくめた。

 

「一刀さんは絶対『天の御遣い』様ですよ。」

 

月がそう断言する。

 

そう。何故か月は一刀のことを天の御遣いと信じて疑わないのだった。

 

「ボクはその流星っていうのは見てないんだけど・・・」

 

詠がそこで言葉を区切ると、周りにいた兵士のうちの一人が言った。

 

「その流星なら私は見ましたが。」

 

「本当なの?」

 

詠が尋ねるとその兵士は頷いた。

 

「はい。私の他にも、城や町に見た者が大勢います。町からは調査依頼が出ていました。」

 

「聞いてないわよ、そんなこと。」

 

兵士の報告に詠は眉根を寄せるが、

 

「はぁ、董卓様の捜索でそれどころではなくなりましたので・・・」

 

その言葉で何も言えなくなってしまった。

 

「・・・と、ところであんた、これから行くあてとかはあるの?」

 

詠が突然そう尋ねてきた。

 

「いや、無いけど」

 

この世界には来たばっかりなんだから、あるわけがない。

 

「じゃあ、私たちの所に来ませんか?」

 

月が遠慮がちにそう提案した。

 

「それは願ったり叶ったりだけど・・・いいの?」

 

一刀は月の隣にいる詠にも聞いてみる。

 

「別にいいわよ。あなたには月を助けてもらったのだから、これくらいはしておかないと月の器量が疑われるわ。」

 

詠も真名を許してくれただけあって、それなりに信用してくれているらしい。

 

「そういうことなら、お言葉に甘えるとするかな。よろしくね。月、詠」

 

「はいっ!」 「まぁ、一応よろしくするわ」

 

これから世話になる二人と挨拶を交わし一行は城へ行くのだった。

 


 
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