熾天使外伝・運命の獅子 番外編・獅子なる
「ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト。
黒いコートに黒髪、黒い目の少年が手に持った雷の槍を投擲する
その槍は幾つもの砲が生えた、いびつな卵形の兵器―通称『AKUMA』に命中し、AKUMAは爆散する
「ちっ、糞エクソシストが!!俺達の邪魔をすんじゃネェェェヨ!!」
一体のピエロの仮面を被ったようなAKUMAが両腕をガトリングガンらしき銃器に
少年は森の木を足場に次々と繰り出される弾丸を軽々と回避、少年の後を追うように銃弾が木を破壊していく
銃弾が当たった木は見る見るうちに黒い
AKUMAの撃ちだす銃弾はAKUMA自身の
「自我がある…と言う事はLv2ですか。それでも僕の敵ではありませんが」
「なぁにふざけた事言ってんだよぉエクソシスト風情がぁ!Lv1ども、コイツを殺っちゃえぇぇ!!」
黒い少年が言葉を発する
その言葉は明確な挑発、それを裏付けるようにAKUMAは激昂し、多数のLv1のAKUMAを呼び寄せる
「Lv1と言えども、この数は少し面倒ですね。テワク!」
「分かっていますわ、
少年が声をかけると同時に木の陰から少女が現れ大量の護符をAKUMAたちに投擲、その護符はAKUMAたちを取り囲むように配置される
「
少女―テワクが声を張り上げ、術を発動。AKUMA達は護符によって動きを阻害され、身動きが取れなくなってしまう
「な、何なんだよこれぇ!体が、重ッ…!!」
「ありがとう、テワク。さ、仕上げだ。ヴィシュ・タル・リ・シュタル・ヴァンゲイト、
「ギ、グギギャァァァアアァァァァ!?!!?ヤ、焼ケル!オ、俺ノボディガァァァァ!!!?」
少年が呪文の詠唱を終えると、その手には燃え盛る炎が生まれる
それをちょうどAKUMAの先頭に居たLv2に押し付けるように当てると、炎は一気に業火へと変化
Lv2ごと大量のLv1AKUMA達を飲み込むほどの火力となって殺到する
テワクの術で動けなくなっていたAKUMA達は成す術もなく業火に飲み込まれ、破壊された
大量の木も一緒に炎に飲み込まれたが、なぜか火はそれ以上燃え広がることは無かった
「…さて、じゃあもうAKUMAはいないみたいだし、戻ろうか?っと!?」
AKUMAを掃討した少年とテワク、その二人を狙って先が尖った様々な色の蝋燭が襲い掛かる
「ハロぉーウルぅー♪僕と一緒に遊ぼうよぉ?」
「うげ、ロード…。君の言う遊びはコロシアイでしょう?そんな物嫌ですよ」
またも少女が現れるが、その少女の顔を見た瞬間少年―ウルは苦虫を噛み潰したような顔となる
その少女―ロードの格好はこの場に似合わずなんともファンシーだ
ゴシックロリータのドレス、先っぽにかぼちゃの顔が付いた傘、そしてミステリアスな灰色の肌に額の十字傷―
「だぁってぇ、僕はノアの一族なんだもん。エクソシストは敵なんだぁ」
「僕は自分から、エクソシストと名乗ったことは一度も無いんですけどね…」
「でもぉ、その団服を着てるんだから狙われても仕方ないと思わない?」
「これも自分で着てるわけじゃなくって、師匠に無理やり着せられてるだけなんですけどね。そもそも僕『聖書の神』を信じてませんし?どちら側といえば悪魔側ですし?」
「アハハハハ!やっぱりウルは面白いなぁ。なんで咎落ちしないのぉ?」
「さぁ?僕が異世界の神の使徒だからじゃないですか?聖書の神も、他の神様の使徒を勝手にどうこうはできないんでしょうよ。貴方達ノアも含めてね」
「ウルさん、そろそろお遊びはやめて下さいません?ノアと親しげに話しあまつさえ主を信じていないなんて、このことを私がルベリエ長官にご報告いたしましたら貴方はたちまち異端審問にかけられますのよ?」
「それは勘弁してくれないかなぁ、テワク」
ああもう、どうしてこんな所にいるんだろうなぁ僕は、とウルは遠い目で空を見上げる
★
始まりは数年前、ウル―フルネームは『ウルティムス・F・L・マクダウェル』が所属する組織の任務を遂行中の時だった
討伐対象のモンスターを倒し、組織の拠点に戻ろうとしたその時、彼の足元に『another』と言う文字が浮かび上がった
その文字を中心に空間が波打ち、彼は足からその空間の歪みに引きずり込まれてしまったのだ
引きずりこまれた先は奇しくも現在の彼らがいるような森の中
彼はそこで、巨大な獣を操ってAKUMAと戦う女性を発見し、彼女に加勢
そしてAKUMAを倒してしまったのは幸運か不運か、ウルは彼女が所属する組織―『黒の教団』に連行され、あれよあれよと言う間にエクソシストに仕立て上げられたのだった
「…(この世界に飛ばされてから
「ですから―聞いてますのウルさん?」
「ああうん聞いてる聞いてる。で、何だっけ?今日の晩御飯はハンバーグだって話?」
「全然お耳に入っていないではありませんの!」
「アハハハハハハハハハ!お、お腹痛いよウルぅー」
ムキーと声を上げてテワクは地団太を踏む
それを見て敵のはずのロードはお腹を抱えて大爆笑をしている
「ま、とりあえず今日のところは引き上げてくれませんか?どうせその内全面戦争が始まるんでしょう?」
「そうだねぇ~、千年公もウルには興味があるっぽいし、ここで殺しちゃうと怒られちゃうかもしれないから今日はもう帰るよぉ」
ロードは自分の能力で、空間移動を可能とする『扉』を出現させる
ドアを開けるとその向こうは形容しがたい空間に繋がっているが、ロードは躊躇せずに足を踏み入れる
そしてドアを閉める直前に、思い出したようにドアからひょこっと顔を出してウルに告げる
「ああそうそう、僕の兄弟がウルに会ってみたいんだってぇ。今度連れてきても良いかなぁ?」
「勘弁してくださいよ。ノア二人を相手するなんて命が幾つあっても足りません」
「ざぁんねん。でも連れてくるよぉ?千年公もティッキーも会いたがってたからぁ」
「まさかの三人ですか。これは流石にシヌカモナー」
「声が棒読みだよウル、じゃあ今度こそまたねー」
それだけ告げると、今度こそロードはドアを閉める
するとやけにファンシーなピンク色の扉は空に溶けるように消えてしまった
「…なんでこんな事になったんだろうなぁ…。早く戻りたいんだけど…」
ウルが呟いたその言葉もまた、空に溶け込んでいった
テワクですよテワク!あの子可愛いのに出番少なすぎませんでしたか!?
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またまた一発ネタでござるます