No.701524

超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス

さん

その3
因みに女神側は基本シリアス、マジェコンヌ側はギャグです。

2014-07-17 21:08:58 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:936   閲覧ユーザー数:921

「………貴方は知っていたのですか。

ギョウカイ墓場が犯罪組織マジェコンヌによって占拠されることを、

マジェコンによって女神のシェアが奪われる事を、

私がギョウカイ墓場に女神達を向かわせ結果は女神達が囚われる事を、

そして女神候補生だけがアイエフさんとコンパさんの手によって救出されることを」

『そういう展開があった、それだけ』

 

場所はプラネタワーの会議室。そこには少女がいた。背は人と比べて生まれた赤子より小さく、大きさは広辞苑を縦にしたぐらいの身長。妖精のような外形をして分厚い本に乗っている。幼い顔つきだが、賢者のような怜悧を感じさせる存在。

彼女こそが、プラネテューヌの教祖であり、ゲイムギョウ界の歴史を記録する者であり、嘗て女神教育者であったイストワールだ。

怒っているような、悲しんでいるような、そんな様子で小さいその手に握られた拳はどこに向けばいいのか分からずに目の前に表示されているディスプレイを睨む。

 

「神は全員に都合のいい存在であっても、一人に都合のいい存在ではない……貴方はそう言いました。試練と言い換えればそれは聞こえのいいものですが、貴方の想像が未来にそのまま反映されることはありませんッ...!」

『僕に何をさせたいんだよ。僕はもうゲイムギョウ界にはよっぽどがない限り関わる気はない。老兵は静かに消える様に、元ゲイムギョウ界の支配者だった僕は、今の世代の守護女神達によって倒され、未来の選択肢を譲ったのさ』

 

ぐっとイストワールは場面向こうの親に対して歯を鳴らせた。

状況は最悪だからこそ、縋った存在から言い渡されたのは今の時代を捨てろと言っているようなものだ。

感情論では動くことが多い彼/彼女だが、他人の感情論では動くことは少ない。

だが理解はしている。何度も見た彼/彼女だからこそ、今の状況とこれから起こる未来を知り、最善の選択肢と最悪の選択肢を知っているのだ。

 

『イストワール。僕なら犯罪組織マジェコンヌを物理的になら"一日"で潰せる。"一週間"あれば社会的に抹殺できる。けどそれは、僕がしたことであって、この世界の希望の象徴たる守護女神は指を加えて眺めていたことになる。それを見て、知って、女神を信仰する国民はどう思う?最後の砦、必要とされるジョーカー、希望という輝きは結局は、本人たちの手によって執行されなければならない。僕がすれば女神以上の存在として崇められるか、信仰されるか、はたまた恐怖の原因となる』

「………しかし」

『お前が縋るべき存在は僕じゃない。次世代を担う女神候補生だ。時には崖から突き落とすことも必要だよ。この世界の神は異例として、人と同じように笑い、育ち、成長していくのだから。上がってこれずに朽ちてしまえば、それは仕方がないということで終わり。世は運と成功と失敗が線上に幾度もなく交差して離れて続けていく物だし』

 

神とは己の存在を理由に忠実に役目を全うする機能でしかない。

しかし、人間の様に進化していく守護女神ならば、折れた剣を叩き直し更に強度を増した剣を打ち直すことも可能だと語る。

それに混沌の可能性を孕むが、終極的に言えば世界はマジェコンヌの手によって墜ちるか、女神によって救われるかの二通りしか存在しない。

 

『信じるべき因子は直ぐ近くにあるよ。僕なんて君を作ったのに親らしいこと何一つも出来なかった育児放棄野郎だよ?』

 

それなら、場面越しから分かる程に悲しげな声で喋らないでしないでほしいとイストワールは叫びそうになったが、慎ましく叩かれたノックに流れそうな涙を急いで袖にふき取った。

 

『来たよ、主人公が』

 

待ち遠しい物が訪れ感謝の言葉を口にするように讃えた。

ドアが開き、入ってきた四人の女性。失礼しますと上司を前に言うようにアイエフが入り、続けてコンパ、ユニ、ネプギアが入室する。その表情は四人ともどことなく暗い。

 

「お、おはようございます…」

「おはようございます。ネプギアさん、それに皆さん……」

『やっほー、三年ぶりだね』

「その声、空さん…!?」

 

三年ぶりに聞く懐かしい美声に一同は驚く。なにせ、最後に彼女たちが覚えているのは突如、机に『ちょっと|任務《壊し》に行ってくる』という近くの店に買い物にいくような書置きがされていたのだ。

当然、次元を渡るようなネプギア達にとっては理解できない技を平気で行う規則外を探すことは不可能であり、イストワールに通信をお願いしても音信不通だったのである。

 

『再会を素直に喜びたいところだけど、ちょっと目を離したら厄介ごとが起きているね』

「ーーー今までどうしていたのよ!貴方がいれば、今頃なにもかも解決出来ていたのに!」

『はぁ……、そんなこと言ってたら君は一生候補生だよ?ノワールを超える事なんて無理無理』

「なんですって!?」

「ユニちゃんそれ以上はダメ!」

 

イストワールの隣に表示されているディスプレイに掴みかかろうとしたユニを止めたのはネプギアだった。

 

『ノワールなら自分の手で解決することを選ぶよ。人間に頼るのはいい、だけど僕には頼るな。僕は君達と肩を並べる存在でも、後ろから支える存在でもない。むしろ、君達に立ち塞がる壁だ(それにしても、ネプギアだけじゃなくて、ユニもか……珍しいね)』

「でも、貴方ならお姉ちゃんを助けることなんて簡単でしょ!!」

『自分の足がまだ折れていないのに手を伸ばすそんな甘っちょろい奴の手なんて取らないよ。足の一本や二本無くなるような死闘後に頼られるのなら、考えるけど五体満足で一回負けたぐらいで僕に頼るな女神候補生』

 

イストワールから伝えられなくても、既に知っている展開故に何があったのか既に知っている空は辛辣に言い放つ。

この世界に女神以上の存在がいないからこその言葉だ。彼女たちが諦めれば、次に立ち上がる者はいない。更に立ち上がったとすればそれは人間であり、人間が立ち上がり成果を出してしまえば女神の立場が揺らぐ結果になってしまう。そんな世界的から見た視点をまだ考えるまでに至っていないユニは納得できないままで、ネプギアは複雑な思いで空の声を発するディスプレイを見つめている。

 

「相変わらず手厳しいわね」

『まぁ、正直君達ならなんとか出来るよ。それに下手に僕が出て刺激させてしまえば捕まっている女神達がどうなるか分かんないし』

 

出来なかった道筋(ルート)も見たことがあるのだが、その時はその時だと諦めるしかない。世の中、全て正義が勝つとは定まってはいないのだから。更に力を振るう事は相手を恐怖させること、同じ舞台の上で戦い合うのならともかく、突然出現した天敵に追い詰められた者の行動が冷静じゃなくなることはよく知っている。

 

『(まぁ、あの時みたいに邪神とか僕みたいな異世界からの来訪者だったりしたら話は別なんだけど)』

「空さん。質問なんですけど、いいです?」

『どうかした?言っとくけど、あっちの組織について概要はあまり話さないよ。あくまで別の世界軸での話だし、違ったりしていたら混乱する可能性もあるから』

 

先に釘を刺され口を閉じるコンパ。更に空の知りえる情報は経験談でしかない。

同じ始まりだからと言って、同じ道を辿り同じ終わり方をするとは決まってはいない。どこかで誤差が生まれ、全く別の答えへたどり着く。計算式のように世界は出来ていない。それをしようとした空は自笑しながら、別方向に疑問を膨らませていた。

 

自分の知りえる|道筋《ルート》なら間違いなく彼女は最初から犯罪神としての地位にいたはずだ。

だが四年前は、とある化物によって無理やり女神の地位でありながら犯罪神に墜とされた。その堕天された存在を戻す方法はなく、自分の手でマジェコンヌを滅ぼした筈だった。

イストワールから簡単に説明を受けた犯罪組織マジェコンヌ。

先代の女神たるマジェコンヌの存在を知っている者はこのゲイムギョウ界には存在しない筈、なのにどうして犯罪神として崇められているのかが不明点であった。

思いつくところでは、

 

偶然犯罪組織を立ち上げた者が偶然マジェコンヌと名乗った言葉の偶然。一番納得できない話だ。

マジェコンヌの存在を知ってなおかつ、マジェコンヌを信仰する者。合ったとしても三年での信仰スピードが異常、最低でも十年は必要。

マジェコンヌ自身が指示を出している。看取った側としては信じたくないが一番納得できる話。

誰かがマジェコンヌを知って、それを看板として自らの存在と目的を隠す為にマジェコンヌの名前を利用している。あり得なくもないが、そんなことをしようする連中はいたとしても圧倒的に力が足りない。

 

『(うーん、どういう事なんだろう。これも世界の修正力って奴?それにしても強引すぎる様な、確かに女神以上の存在が出来ない作っていた理は破壊されたから、いつかはそういう奴も出るだろうとは思っていたけど、速すぎるし賢すぎる。そもそもモンスター類は紅夜が抑えているからなんで再出現したんだ?誰かがマジェコンヌがばら撒いたディスクを量産したのか?……分かんないことが沢山あるなぁ)』

「空さんはゲイムギョウ界外の存在なら手を貸すという事ですが、ゲイムギョウ界内なら私達の手で解決しろという事です。しかし、今はゲイムギョウ界の女神を信仰するシェア率は控えめに言って絶望的です」

「控えめで、絶望的って……相当不味いってことですよね。手はあるんですが?」

『勿論、なきゃ物語は始まらない。だけど一つだけ忠告がある---紅夜にもし会ったら逃げろ全力で』

 

湖に落された雫が大きく波紋を造るように。

その一言は彼女たちの心を酷く揺らした。

妙に渇いた口の中から必死に言葉を紡ぐ。

 

「ど、どういう意味よ……?どうして、紅夜に会ったら逃げないといけないのよ…」

『女神と冥獄神。この二つの存在はお互いを殺し合う関係だ。君達と過ごした紅夜はまだ落ち着いていたけど、もう紅夜という魂魄が冥獄神に近づいている。完成していれば幾らかは冷静だろうけど、あんな不安定な状態で宿敵を見たら、正気でいられるか……』

「ねぇ、紅夜はこっちの状況を理解していると思う?」

『冥獄界に流れる負という激流に流れる声を識別して理解して納得するほどの余裕があれば来ると思う。だけどダメだ。アイエフやコンパはいい、だけど女神は絶対に会うな。近づくな。触れるな。殺される』

 

ディスプレイから発せられる威圧感を込めた言葉。

反論は許さないその脅迫のように発せられる事実に一同は口を開くことが出来ない。

四女神が集まっても傷一つなく圧倒した存在。その容姿もこの世の物であろうかと疑問を抱く程に美しい。しかし、夜天 空と言う存在は鬼神のような容赦の無さと厳しさの中に微かな優しさを持つ人物であることをイストワールは知っている。故にこれは紛れの無い真実だと確信を持って頷いた。

 

『そういうこと、女神候補生でも女神としての義務を果たせよ。君達がすべきことは女神の救出とシェアの回復、それ以外の事は考えない方がいい。辛くなるだけだし、イストワール。後は頼むよ』

 

そんなことはないと訴えたかったが、反論するほどの力がなく肩を震わせることしかできない二人の女神候補生。

二人に何を語ったならいいのか、伝えられる嘗ての思い人が女神たちを殺す存在に近づいている事実はあまり現実的に理解しがたい者であった。

しかし、それを理解しなければならない。何故なら彼女たちは女神候補生なのだから。

相変わらず恐ろしいと思いながら、イストワールはゆっくりと語り始める。ゲイムギョウ界の希望を。

 

「犯罪組織マジェコンヌの目的で最も考えられるのは、犯罪神マジェコンヌと呼ばれる災いの召喚。それも時間の問題となってきたゲイムギョウ界ですが私達にはまだネプギアさんやユニさんを含めた女神候補生がいます。そしてもう一つ、空さんの作り出した女神が不在時に大陸を補助システムーーーゲイムキャラという存在が」

 

それを聞いても、ネプギアとユニに気持ちは晴れる事は無かった。

 


 
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