No.700920

恋姫無双 武道伝 10話

やはからさん

お待たせしました、武道伝10話になります。お待たせした分ちょっと長めです。書き方とかで、「こういう書き方は中二過ぎて萎える」みたいなのがあればどんどん行ってください。
ちなみに設定上今は凪は硬功夫も気弾も使えません。

2014-07-15 01:38:46 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1549   閲覧ユーザー数:1386

 

 

楽進に推手の修練法を教えてから数日、李文達が利用している宿に来客があった。その時は風が対応したのだが、どうにも自分達も武において自信があるから、義勇軍に入れてはもらえまいか、とのことだった。風は自分が仕切っているわけではないから、と断った。しかし相手もそのくらいでは諦めず、後日お伺いしますと約束を取り付けていったのであった。

 

「しかしわざわざ義勇軍にねぇ。よっぽど官軍が嫌いなのか?」

 

来訪があった日の夕方、風から報告を受けた李文達は顔を合わせて相談していた。郭嘉と風の万一のこともあるから、面会するにしてもせめて賊を討伐した後にすべきではないかと主張に対し、星は有能な将が一人いればそれだけ被害は減るのだから、とりあえず会ってみるべきではないかと自分の意見を述べる。それぞれの意見に一理あるのだが、結局は李文の

 

「会ってみればわかるだろう。賊の仲間だったら義勇軍が結成されてると知った時点で襲ってきてるだろうしな」

 

という言葉で面会することに落ち着いた。郭嘉はその後もぶつぶつ言っていたが、決まったことをいつまで行っても仕方がないと割り切ったのか、普段のキリッとした雰囲気に戻っていた。

 

「しかし腕に自信があるとは言っているが、どこまで信用できるのやら。義勇軍に参加しようという時点で眉唾な気もしないが」

 

自分のことなど棚に上げ、まだ会っていない者の実力を疑う星。そう言えば来訪者の名を聞いていなかったな、と風に聞けば、

 

「確か関羽雲長と言っていましたが」

 

などという答えが返ってくる。関羽と言えば三国志でも1,2を争う有名どころの武将である。個人的には三国志の関羽はあまり好きではないが、実力については心配はいらなさそうだ。

 

「おや、子文はそのものに心当たりがあるのか?」

 

俺が一人頷いていると、それを目にした星が水を向けてくる。ここにきて隠し事は無しだということか。

 

「ああ、趙子龍や張文遠と同様に後世にまで名を残す英傑だ。実力も十分あるだろう。伝承が正しく、そのものが本当に関雲長ならば、だが」

 

「それはそれは、是非確認せねばならんな。我が武勇に並び名を馳せるに相応しい者かどうかを」

 

俺の言葉に強者との戦いを想像して笑みを浮かべる星。三国志の中では蜀で肩を並べる二人だが、この世界ではどうなのだろうか。贔屓と言われるかもしれないが、蜀で好きな武将は趙雲くらいなので是非星には頑張ってもらいたい。

 

「おにーさんの知っている関雲長はどういった人間なのですか?多少なり知っていて損は無いでしょうし、教えてもらえないですかねぇ?」

 

脇腹をちょんちょんと突きながら風が聞いてくる。俺はあんまり好きな将ではないから、鵜呑みにするなよと念を押して覚えている関羽の人となりを話す。

 

「関羽には張飛と劉備という義兄弟がいて、そいつらと共に天下統一を目指す。義に厚く、礼を持っており、生涯劉備という主人に尽くす。俺のいた世界では神格化されている人物だ」

 

「おおー、まるで将の鏡ですねー。そんな関雲長さんのどこが好きではないのですか?」

 

「関羽は自尊心が高くてな、部下には優しかったが同格の人間は見下していた。それに現実を見ない綺麗事を並べて多くの民を戦に駆り立てたからな」

 

将足るは己が罪を背負い歩くべし。戦で他人の命を扱う将がその責任を放棄するなどあるまじき行為だ。

 

「なるほど、おにーさんは自分の行動に責任を持てと言いたいわけですねー」

 

「確かに、将としては唾棄すべき行為ですね」

 

俺の考えに賛同する風と郭嘉。だが星だけは難しい顔をしている。

 

「確かに将が自らの責を主の命を盾として逃避するなど唾棄すべきかもしれん。だが、それは自分が背負う責の重さを理解しているが故ではないのか?そして理解しているがためにその重さに耐えきれず主の命と逃避し、自らが壊れぬようにしたのではないだろうか?」

 

「それが温いと言っているのです。覚悟もなく人の命を奪うなど、言語道断ではないですか」

 

「ならば稟よ、お主は戦場で他人の命を背負いつつ、正気でもって人を殺めることが出来るのか?お主は人を貫く感触や、断末魔の叫びを間近に感じたことがあるのか?」

 

いつもの皮肉げな言い方ではなくまっすぐな物言いでもって郭嘉に問いかける星。星は今まで二人の用心棒をしていたと言っていた。それはつまり、二人の代わりに賊から守り、屠ってきたということだ。郭嘉達の行為は星からすれば関羽と同じなのかもしれない。自らは力がないからと手を汚さず、向こうは賊だからと自分を偽る。星もそれがどうとは思わない。そうでなければ正気を保つことなどできないからだ。だが、自分を棚に上げ他人の生き方や覚悟を批判するのは許せなかった。人には人の事情がある。関羽とて並々ならぬ覚悟を持っていたかもしれないのだ。

 

「ともあれ話してみなければ分からないということですねー」

 

空気の悪くなったところにいつも通りの風の声が入ってくる。稟もほっとしているところを見るに、星の言いたいことがしっかり伝わったのだろう。

 

「俺や郭嘉だと先入観が強すぎる。そういう点でも星と風が関羽と話し、もとい力試しをするのが良いだろう」

 

「むう。私が関羽さんに対して悪印象を持っているとは思わないんですか?それに向こうは将として雇用を希望しているのに代表者たるおにーさんが顔を出さないおつもりですか?」

 

飴を頬張りながら訪ねてくる。

 

「もちろんその場には立ち会うさ。俺達から意見はなるべくしないということだ。それに風は悪印象だからという理由だけで関羽を退けたりはしないだろうと思ってな」

 

頬をぷにぷにと突いてやる。おお、これが若さか、気持ちの良い弾力が押し返してくる。

 

「それだとおにーさんや稟ちゃんは感情で人を選んでいるように聞こえてしまいますよ?・・・おにーさん、あんまりしつこいと嫌われてしまいますよ?」

 

風はされるがままにしつつ、反論、もとい面倒を押し付けるなと言ってくる。あ、最後にちょっと怒った。

 

「できる限り不安要素は取り除くべきだと思っただけさ。そしてお互いに不利益にならないようにと俺なりに考えたわけだ。やってくれるだろ?」

 

あえて最後の一言を付け足す。頬がぷく~と膨れているが反対の言葉は出てこなかった。

 

「郭嘉もそれでいいな?無いとは思うが関羽に掴みかかったりするなよ?」

 

一人瞑目していた郭嘉にも言葉を向ける。

 

「李文殿がそう言い、風がそれでいいというのなら否はありません。が、私の目で見て納得できない場合はその場で意見させていただきます」

 

いかにもそこは譲らないぞというように眼鏡を押し上げる。まあ軍師にとっては戦場で命を懸けるに等しい人間になるのだから、意見ははっきり言えるほうが良いだろう。

 

「決まりだな。関羽はいつ来るんだ?」

 

「話では明日返事をもらいに来ますとのことでしたよー」

 

また急なこって。義勇軍だから時間があると思っているのか、それともただの自分勝手なのか。会えばわかるしまあいいか。

 

「じゃあ明日そのまま手を借りるか決めよう。郭嘉、明日は休みだと皆に伝えておいてくれ。星、ちょっと付き合え」

 

郭嘉に伝達を任せ、未だに槍をしごいている星に声をかけ、宿に向かう。風も郭嘉がやるならば心配ないと判断したのか、俺たちの後をついてくる。

 

 

「それで?わざわざこんな美女に声をかけておいて呼んだ理由も教えてくれぬのかな?」

 

どうやら星はご立腹らしい。明日に備えて体を動かそうとでもしていたのか。並々ならぬ気迫に満ちている。

 

「そうプンスカ怒るな。ちょっと体を動かそうと思っただけだ。せっかくだから一緒に舞でもどうかと思ってな」

 

なぜ今なのだ。全く子文は空気が読めない。そんなことをブチブチ言っているのが聞こえてくる。というか誘った人間の前でそういうことを言うものではないだろう。さすがに俺でも傷付くぞ。そんなことを思いながら錫杖をシャランと鳴らす。星と風の意識がこちらに向くのを感じる。その視線を受けながら一歩踏み出し錫杖を突き出す。そのまま半身を捻り、柄ですくい上げるかのように振るう。シャラン、シャラン、タン・・・ダン。時に震脚を、時に突きを。今まで何千、何万と繰り返してきた動作をまた繰り返す。套路でもなんでもない、俺が自分の中で消化し、昇華させてきた動きだ。自然と自分の意識が透けていくのを感じる。

 

 

 

 

「星、ちょっと付き合ってくれ」

 

明日子文をして英傑と言わしめる関羽なるものと手合せするというので、少し体を動かそうと思いきや、子文に声をかけられた。もしかしたら手合せでもしてくれるのかと期待したが、聞けばともに舞おうという話。期待を裏切られた上に、私は今まで舞など舞ったことなどない。そんなことも相まってついついぶつぶつ言ってしまっていた。

 

 

シャラン

 

 

子文の錫杖が鳴ると、自然と下を向いていた意識がそちらへ向いた。子文が錫杖を突き、振り、すくい上げ、打ち下ろしている。これは舞の動きではない。自分で舞ったことはなくとも、旅芸人などが待っているのを目にしたことは何度もある。子文のそれは、私が目にしたものとは全く違うものに見える。流れるような動作、とは少し違う。なんというのだろうか、川の流れのような動きというべきか。時に濁流のような激しさが、時に飲み込まれるような深さが感じられる。子文の錫杖のような長物を扱う星だからこそわかる。舞などと言っているが、これは子文が身に着けてきた『武』である。そしてそれを自分に伝えようとしている。そのことに気付き、思わず視界が滲むが、見逃すわけにはいかない。目を見開き。子文の動きを目に、心に焼き付ける。

 

 

 

シャラン

 

 

最後の一振りを終え、錫杖を下ろすと星が目元をぬぐい、近づいてきた。

 

「子文、お主の舞で私の心は奮ってしまったのだが・・・当然共に舞ってくれるのだな?」

 

「美人の誘いは断らないのが流儀なんでな。俺でよければお相手しよう」

 

ちょんちょんと腿を突く感触に振り返ると、風がいい笑顔でこちらを見ていた。言いたいことは言わずともわかる。仕方ないなと肩をすくめて頭にポンと手を乗せる。

 

「麗しい風様も一緒に舞ってもらえませんかな?」

 

「そこまで言われれば仕方ありませんねー、風も参加してあげるのですよー」

 

 

 

その夜、子文は郭嘉に面倒を押し付けて自分達だけ楽しんでいたのをお説教されたのであった。

 

あとがき

 

最近資料になる映画を探しています。ドニーやジャッキーの出てくるものはかなり見たのですが、八極拳や太極拳を題材にしたものは少ないんですよね。

ところで皆さんおすすめの恋姫ssがあればぜひ教えてください。

 

来月までには更新したいなあ

 


 
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