No.699680

紅と桜~二人の想いに始まりを~

雨泉洋悠さん

花陽ちゃんのにこちゃんへの想いを描かないと、
私が書きたい物語が終わらないんですよ。

これで、残りの流れが確定しました。
次であれやって、残りであそこまで書こうと思っています。

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2014-07-10 02:14:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:551   閲覧ユーザー数:551

   紅と桜~二人の想いに始まりを~

              雨泉 洋悠

 

 今日のお空は、灰色のお空です。

 にこ先輩がどこからか部室に持って来てくれた、七夕の為の小さな笹に取り付ける飾りを、作っています。

「せっかくの七夕なのに、ちょっと、残念です」

 窓の外を見ながら、そんな事を言ってみたら、にこ先輩が、窓際に置かれた小さな笹に、七夕飾りを取り付けながら、こんな事を言いました。

「七夕の日はね、曇や雨の方が良いのよ」

 私が、その言葉に首を傾げていたら、にこ先輩は、得意げな顔で、言葉を続けます。

「その方が、織姫も彦星も、一年に一度きりのデートを邪魔されないですむでしょ?」

 にこ先輩、そう言って笑いました。

 何時も、私が見ている笑顔です。

 にこ先輩の、部長としての、私達を思いやってくれている事が、良く解る、優しい顔です。

 時々、面白い事を言ったりとか、正直私には良く解らない行動も、たまにはあったりもする、にこ先輩です。

 でも、こう言う時に、ふと見せる、素敵な一面が、格好良くて、尊敬出来ちゃう、そんな、素敵な、先輩なんです。

「確かに、そんな風に考えると素敵です、ロマンチックです!」

 にこ先輩と話していると、私は何だか何時も気分が高揚して来ます。

 ちょっと、特別なものを、感じちゃいます。

 

 私は、幸せです。

 

 こんな身近に、尊敬出来ちゃう、素直に憧れる事が出来る、にこ先輩が居ます。

 そんなにこ先輩が、何時でも私の事、私達の事を、気に掛けてくれています。

 こんな幸せな事、私はついこないだまで、自分に起こるなんて、思ってもみませんでした。

 私がにこ先輩の事を、尊敬の眼差しで見つめていると、にこ先輩は、少しだけ寂しそうに笑って、言葉を続けます。

「うん、ロマンチックよね。私もロマンチックだと思うし、憧れる面もある。でもね、私はそんな、一年に一度だけのロマンチックなデートよりもね、何気なく一緒に居られる、普通な毎日の方が、やっぱり、好きかな」

 その寂しさの向こう側の、にこ先輩の気持ち、今少しだけ浮かんでいる寂しさの相手、私は凛ちゃんと一緒に、もう気付いちゃっています。

 その事を思うと、少しだけ、にこ先輩の気持ちが移っちゃったみたいに、寂しさを感じます。

 にこ先輩は、うちの部で唯一の三年生で、部長だから、私と凛ちゃんみたいに、一日中ずっと一緒には、居られません。

「その言葉も、凄く、解ります」

 にこ先輩の気持ちを思うと、私はそれ以上の言葉が、出て来ませんでした。

「ね、必然的に別れざるを得なかった織姫と彦星には悪いけれども、やっぱりずっと一緒に居られる方が素敵よね。そう言えばさ、最近また、良い感じのスクールアイドルが出て来てて……」

 取り付けを終えたにこ先輩は、そう言いながら私の隣に座ると、自分の鞄の中から、何時も買っていると言う、アイドル雑誌を取り出して、私に見せてくれます。

 私にとって、にこ先輩とアイドルについて盛り上がる事が出来る、大好きな楽しい時間です。

「うわあ、この子達可愛いです」

 雑誌の中の女の子達、キラキラしていて、皆素敵です。

「でしょでしょ、これで三人共中学生なんだって、凄いわよね、将来有望よ」

 アイドルの話をしている時のにこ先輩は、凄く楽しそうで、私も楽しいし、楽しそうなにこ先輩姿を見られるので、私は凄く幸せな気分になれます。

 でも、そんなにこ先輩が、アイドルの話をしている時以上の、一番嬉しそうな顔をする瞬間を、私は知っているんです。

「この子達が、来年音ノ木に入って、アイドル研究部に入ってくれたら良いのになあ」

 そんな素直な気持ちが、言葉に出ちゃいます。

「……そうね、そんな風にうちの部も、もっと賑やかになると良いわね」

 にこ先輩、ちょっと寂しそうに、そう言いました。

 私はこう言う時に、自己嫌悪です。

 来年の話なんてしたら、にこ先輩が寂しくなってしまうのは、解っている筈なのに。

 もっとちゃんと、自分の話す言葉の意味、考えてから話さないと、何時でも笑っていて欲しい人を、哀しませちゃいます。

 それでも、そんなにこ先輩が、廊下から聞こえる音と声を聞き付けて、期待に一杯の、ちっちゃな子供みたいな、幼い感じの表情をします。

 私だけが見る事が出来る、にこ先輩の特別な表情です。

 その期待の向く先への、にこ先輩の気持ちを思うと、私は切なくなります。

 こんなにも先輩は、私が目の前に居る事にも、気に掛ける余裕が、無くなっちゃうぐらいに、どうしようもなく、その人の事を、想っているんです。

 私は、そのにこ先輩の気持ちと、多分同じ感じの気持ちを、ずっと前から、私にとって一番大切な人に対して、想っているから、その想いの、強さも、どうしようもなさも、どれだけの気持ちが自分の中に溢れてしまうのかも、知っているから、尚更、その胸が締め付けられるような気持ちを、感じ取れちゃいます。

 その相手が、そこに、自分の直ぐ傍に、居てくれる事が、どれだけ嬉しい事か、私には、解るんです。

 今だって、廊下からは、二人分の足音と、話し声が聞こえて来るから、にこ先輩が今、本当に私と同じ気持でいると言う事が、言葉が無くても、伝わって来ちゃいます。

 にこ先輩の胸も、いま、私の胸と同じように、締め付けられるように、高鳴っていると思います。

「だから、私は今日だけなんて嫌なんだってば」

「でもでも、今日しかないからこそ、燃え上がるというのもあると思うにゃ」

 部室のドアが開いて、にこ先輩と私が待っていた、二人が入って来ます。

「そう言う凛の、ロマンチストな部分も解るけどね」

「真姫ちゃんはやっぱり、結構現実的だにゃ」

「それは否定しないけど、別にロマンチックなデートが嫌な訳じゃないからね」

 その姿が、この場所に現れた瞬間に、にこ先輩はその姿を見つめながら、一瞬だけ、ちっちゃな子供みたいな、可愛らしい笑顔を、浮かべるんです。

 私だけが知っている、にこ先輩の、秘密の姿です。

 真姫ちゃんに、教えてあげたいとも思うけど、私が真姫ちゃんに教えちゃったら、きっとにこ先輩は嬉しくないんです。

 だから、真姫ちゃんが、ちゃんとした意味で、にこ先輩事を解るようになってあげて、にこ先輩のこう言う顔を、当たり前に見られるようになれたら、良いなって、ちょっとだけ、凛ちゃんにも言えない、ちょっぴり切ない気持ちもあるけれど、そう、思います。

 二人が、私達の隣に座ります。

「二人とも、何話してたの?」

 にこ先輩が、さっきの話の内容を、二人に聞いています。

 その表情は、さっきまでの気持ちを、奥に潜めて、先輩の、部長の顔をしています。

 私も二人の話が、気になっています。

「ああ、凛がね、一年に一度だけのデートはロマンチックだって言うから、私はそれよりもいつも一緒に居られる方が嬉しいって言ったの」

 真姫ちゃんはいつもの様に髪を弄って、にこ先輩から視線を逸らします。

 誰ととは言わないけど、凛ちゃんと私には、解っちゃってます。

 そんな真姫ちゃんを見る、にこ先輩の瞳が、凄く優しくて、嬉しそうです。

「そっか、真姫ちゃんはそうなんだ」

 やっぱり二人は、出来る事なら、いつでも一緒に居たいんです。

「凛はね、やっぱりどうしても一年に一度きりのデートとか良いと思うんだーかよちんもそう思うでしょ?」

 凛ちゃんが、私に顔を向けて、聞いてきます。

 凛ちゃんがそう思うのは、私と凛ちゃんが何時でも、一緒に居られるからかなあって、ちょっと自惚れちゃいます。

 私がロマンチックに感じたのも、それが理由なのかなって。

 にこ先輩と、真姫ちゃんからすれば、贅沢な憧れだと思うけど、私の凛ちゃんへの答えは、だから決まっています。

「うん、一年に一度だけの、ロマンチックなデート、憧れちゃうよね」

 凛ちゃんと私にも、一年に一日、特別なデートの日を、作っちゃおうかな。

「でしょーかよちんならそう言ってくれると思ったー」

 こう言う時の凛ちゃんの笑顔は、何度見ていてもやっぱり最高に可愛くて、凛ちゃんには絶対に言えないけれども、抱きしめちゃいたいと、思ったりもしちゃいます。

「だからー、私だってそう言うロマンチックなデートが嫌な訳じゃないって言ったでしょ?」

 真姫ちゃんは凛ちゃんにそう言いつつも、ちらっと、にこ先輩の方を見ます。

 にこ先輩、その視線に気づいているのかいないのかまでは解らないけれども、真姫ちゃんの方を見ながら、少しだけ、意気込んだ顔をしています。

 真姫ちゃんはにこ先輩にだけ、さり気なく伝えたいんだろうし、にこ先輩も気付かれないようにと思っているのだと思います。

 けれども、凛ちゃんと私には、どちらもバレバレです。

 凛ちゃんと、思わず目を合わせて、小さく笑い合っちゃいました。

 その時に、凛ちゃんが、窓際の飾り付けられた笹に、気付いたみたいです。

「あ、七夕飾りだにゃ」

 凛ちゃんが、小さな笹を指差しています。

「うん、知り合いに笹を貰ったから、部室用に持って来たのよ、七夕だしね。そうだ、皆願い事短冊に書いて、吊るしなさいな」

 そう言って、にこ先輩は今度は鞄から四人分の短冊を取り出します。

 にこ先輩のはピンク、真姫ちゃんのは赤、凛ちゃんのは黄色、私のは緑です。

 多分、にこ先輩の事だから、七人全員分用意して来てるんだと思います。

 みんな、願い事を書き始めます。

「どんなお願い書いてるのよ?ちょっと見せなさいな」

「恥ずかしいからダメです、見せません」

「えーケチ」

「ケチなんて言われても見せませんからね」

 にこ先輩と真姫ちゃん、楽しそうです、良かった。

「凛ちゃんは何書いたの」

「んー、はい。かよちんのも見せて」

 凛ちゃんのと、短冊を交換します。

 そこには、こう書いてありました。

 

 かよちんとロマンチックデートする

 

 凛ちゃん、嬉しいけど願い事じゃなくて、確定型になっちゃってるよ。

「じゃあ、今日帰ったら日にち決めようか」

 こういう事を、当たり前のように言わせてくれる凛ちゃんが、やっぱりとっても可愛いんです。

「うん!かよちんのお願いごとは、かよちんらしいね!」

 私が、短冊に書いた願い事。

 

 みんな、ずっと一緒に

 

 にこ先輩と、真姫ちゃんの事、お願いしてあげたかったけど、目に見えて解る書き方をしちゃうのはダメかなと思ったから、今居るミューズのメンバーみんなが、ずっと一緒に居られる事を、お願いしてみました。

 真姫ちゃん、短冊をどうにか見ようと周りを動き回るにこ先輩に、どうにか見られないように、必死で頑張ってる。

 本当にもう、これじゃあ二人が凄く仲が良い事、誰にでも直ぐバレちゃうよ?

 

 ねえ、にこ先輩、解っちゃうよね、真姫ちゃんて、本当は、凄く、解りやすいの。

 

 ねえ、真姫ちゃん、知ってる?

 本当はにこ先輩ってね、凄く、解りやすい人、なんだよ。

 

次回

 

 


 
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