「ギアンさん!」
「大丈夫よ。下がっていて! ──はぁっ!」
──月光が降り注ぐ夜の街道で、まるで示し合わせたかのように拳を交差する二体の【降魔】。
向かい合う巨体が、まるで示し合わせたかのように間合いを詰め、拳と拳がぶつかり合う。
その質量と威力のぶつかり合いは、轟音となって静かな夜の森に響き渡り、踏み込み砕ける足元の大地と、激しくぶつかり合い、凹み、ひび割れ、あるいは砕けた【降魔】達の装甲が飛び散る。
やがてそれは撃ち合った衝撃により、弾けるように後方へと大きく間合いを離す事となる。
両者睨みあう形となるも、即座にギアンが体勢を整えて【呪印符針】を構え、それをトレースした【降魔】が戦闘態勢を再展開。
はぐれ【降魔】を打倒する為にその間合いを詰めて近接戦に入る。
対するはぐれ【降魔】も、眼前の敵であるギアンとその【降魔】を打破せんと迎え撃つ体制で拳を放つも、正規のマスター・【フェルシア流封印法師】に操られる【降魔】を捕えられるはずもなく。
カウンターにカウンターを貰う形で逆に殴られ、蹴られ、その度に体の装甲を砕かれ、破片を飛び散らせ……しかし、それでも己が体の動く限り、愚直に拳を振い、蹴りを出し、相手を打倒しようと闘い続けていた。
しかし──
「──遅いっ!」
「────!」
──上記のようにギアンという、高位術者の完全制御下にある【降魔】と、長期間メンテナンスも碌に受けず破損したまま放置され、動く度にギシギシと音を立てるようなあちこちガタが来ているリナのはぐれ【降魔】とでは、その動作の差は歴然。
初撃の拳の交差以降、はぐれ【降魔】が受ける攻撃は目に見えて増加し、打撃の応酬を積み重ねれば積み重ねるほどに破損が広がっていく事となる。
攻撃が交差する度、重量感を持って何度となく地面に倒されるはぐれ【降魔】。
ドロドロに汚れ、ボロボロにひび割れた身体はいつその動きを止めてもおかしくないほどに損傷がひどく、蓄積されたダメージは甚大であった。
倒れる度、これでもう動けないと思わせるほどに打ちつけられるはぐれ【降魔】ではあったが……それでも、はぐれ【降魔】はその動きを止める事はなかった。
繰り出す拳が避けられ、空ぶりバランスを崩した所にギアンの【降魔】の右拳の攻撃がカウンター気味に入り、胸部装甲を破損させて仰け反るはぐれ【降魔】。
そんな状態でも尚、放たれるはぐれ【降魔】の拳。
しかし、そんなお粗末な攻撃をギアンが見逃すはずもなく……冷静に見極めて自身の【降魔】に左拳での迎撃を指示し、再び【降魔】の拳と拳が激突する事となる。
─【術式起動】─
「?! っ防御術式展開!!」
─【術式起動】─
衝突時の衝撃、轟音と共に砕け散る装甲と指のパーツ。
不完全な体勢で放たれたはぐれ【降魔】の一撃と、万全な体勢で放たれたギアンの【降魔】が放つ拳では、その威力の差は歴然であり、一方的にはぐれ【降魔】の手が弾かれる……そう思われた瞬間。
はぐれ【降魔】は、所々砕け弾かれた手を強引に開き、ギアン【降魔】の手首を握りつぶす勢いで掴み取る。
その所為で吹き飛ぶはずのはぐれ【降魔】にひっぱられる形で前のめりにそのバランスを崩すギアンの【降魔】。
咄嗟に両脚を踏みしめて引っ張られる体をその場に固定し、どうにか一緒に吹き飛ぶのを防いだギアンと【降魔】ではあったが──
吹き飛ぶのを防いだその反動で、まるで限界まで反っていたバネが返るように返ってきたはぐれ【降魔】がその間合いを強引に詰める事となる。
ギアン達が次の攻撃に備え、迎撃の意思を見せる中……唐突に椀部から蒸気のように【魔力】を排出するはぐれ【降魔】。
それと同時に椀部装甲に青白い線が奔り、装甲が軋む音と共に青い光が奔った部分が勢いよく、手首から肘にかけて花咲くようにアンテナ状に展開される。
展開された内部装甲にはびっしりと魔力文字が術式となって刻まれており、それらが全て青白い光を放ちながら起動。
──尤も、これまでの戦闘の無理や破損が激しかったのか、その時点で展開状態を維持出来ないほどにボロボロな装甲が椀部より剥がれおちて落下。
花弁が欠けたような形となり、術式が不規則な展開になりつつも……はぐれ【降魔】はその術式を止める事なく。
「──これは……ルイと同系統……冷気。氷結の術式っ!」
「……!! その戦法は……まだ憶えていたのね。……──」
やがてその術式の余波は、周囲の温度を極度に低下させ、霜を降ろし、足元の大地や草を凍らせていく結果を生み出していく。
──凍結術式。
それは……魔獣への憎しみに染まっていたリナが、俊敏に動きまわる魔獣を確実に仕留める為、その動きを停止させるモノとして選択し、【降魔】に組み込んだ術式。
──幾十、幾百、幾千。
繰り返し、繰り返し、何度も、何度も何度も。
『魔獣殺し』と恐れられるほどに血に染まり、闘い続けてきたリナが得意とした戦法の一端を担う術式であった。
それは……はぐれ【降魔】となった今でも、その身に深く染み込んだ動作として刻まれ、収束する魔力が展開された装甲に刻まれた術式に従い、その力を増していく。
─『【術式展開】』─
対して、ギアンも即座に【降魔】の胸部装甲に刻まれた防御術式を展開。
至近距離……まさに捨て身と言えるような攻撃から自身を護るため、前面に防御障壁を展開する。
ほぼ同時……しかし、前置きが無かった分はぐれ【降魔】の術式展開は早く。
─【凍結晶氷】─
─【守護障壁】─
「くっ……!!」
はぐれ【降魔】の放つ冷気の爆発が、白い輝きとなって視界を遮る。
その術式の直前、辛うじて発動した【守護障壁】が冷気を遮るも……元々が【月の王】級の大型魔獣を氷結させ、氷の檻の中に閉じ込めるという術式である為、【守護障壁】が間に合った頭・胴体部分と、後方にいたギアン以外の【降魔】の体が氷結術式の中に囚われる結果になってしまったのだ。
元々装甲にはこう言った術式に対する抵抗術式が刻まれているのではあるが、リナの組み上げた術式は怪力を持つ魔獣達をも拘束出来るほどの強烈な術式である。
【呪印符針】に魔力を込め、【降魔】の術式抵抗・拘束術式からの脱出を試みるギアンではあったが……自身に向けられた事によって初めて分かった、リナの術式の想像以上の威力に顔を顰める結果となってしまう。
現状、動けない自分の【降魔】は事実上戦闘不能だったからである。
(──しっかりしなさい……ギアン! 余計な事は考えない! 今は……戦闘中なのだから)
……自ら内に抱える悩み・思考の所為で判断が遅れ、【降魔】が動けなくなった事に悔しさを滲ませながらも、はぐれ【降魔】の次の攻撃に対処する為、視界を埋める氷結の白が収まるのを待つギアン。
徐々に白い冷気が下へと降り、視界が確保される頃に、ギアンの目に映ったものは──
「──!! 制御術式が正常に働かなかったのね! ──勝機っ」
──破損した術式を強制起動したのが祟ったのだろう。
本来であれば相手だけを凍結させるはずの術式が自身にフィードバックし、組み合った手ごと自らの右腕を凍りつかせ、動けなくなったはぐれ【降魔】がそこにあった。
いつもと同じ術式を起動したにも関わらず、いつもとは違う結果を齎した自身術式の結果に混乱し、どうにかして右腕を動かそうともがくはぐれ【降魔】。
それを見て勝機を悟り、動けない【降魔】をそのままに、即座に思考を切り替え単身で決着をつけるべく凍りついていない自分の【降魔】の右腕を上り、左腕へと飛び移ってはぐれ【降魔】の眼前へと肉薄するギアン。
「……もう、いいのよ。──おやすみなさい……──」
愚直に、唯ひたすらに行動原理に従い、動き続けるはぐれ【降魔】に、小さく懺悔をするかのように語りながら、自らの【呪印符針】を振り上げるギアン。
──刃が月光に煌めき、はぐれ【降魔】のコア部分である、むき出しとなった胸部へと真っ直ぐに振り下ろされる【呪印符針】。
「────!!」
「──え?! なっ……!! ぐっ!!」
しかし……ギアンを眼前に捕えたはぐれ【降魔】が、もがくのをやめて迎撃を選択。
【呪印符針】に頭突きをして刃を逸らし、装甲が【呪印符針】に削られ嫌な音を立てる中、勢いそのままにギアンに叩きつけられる事となる。
半ばカウンター気味に頭突きを食らったギアンが辛うじて展開した防御術式によってそのダメージを軽減するも、後方で半ば氷像になっている自身の【降魔】に激突。
前面の衝撃と、後方での激突の衝撃に挟まれ、苦悶の顔をして肺の息を吐き出した所で、自身の【降魔】の手に着地。
肺に空気を取り入れようと大きく息を吸い込み、せき込む中。
「────!!」
「ゴホッ、ゴホッ…………なっ?! そんな……自分の腕を?!」
──ギアンの目の前で氷結から抜け出る為に強引に自らの腕を引きちぎり、無理矢理に自由を勝ち取るはぐれ【降魔】の姿を目にする事となる。
千切れた部分をスパークさせ、無くなった腕の重さと千切れた反動でバランスを崩し、仰け反って膝をつくはぐれ【降魔】。
しかし驚くべき速度で即座に立ち上がると、自らの障害であるギアンと【降魔】を視界に移し、残る左腕を持って敵を粉砕せんと振りかぶり、体をひねり、間合いを詰めてその拳を撃ち放ったのだ。
動けない自分達に対して放たれたその攻撃の危険性を察知し、即座に【降魔】の手を蹴って【降魔】を壁とし、後方に退避するギアン。
それと同時に氷結に巻き込まれなかった【降魔】の右腕ではぐれ【降魔】の攻撃を迎撃するも。
「──あ、ぐぅっ!!」
「ギアンさん!!」
あたかも、先ほどとは真逆な対図。
氷結し、下半身の駆動がままならないギアンの【降魔】の拳に力が乗るはずもなく……撃ち合った拳は、はぐれ【降魔】の遠心力の乗った拳によって拮抗も出来ずに砕け弾かれながら跳ねあげられる事となった。
そして……その跳ねあげられた拳は、後方に退避中で空中に浮かんでいたギアンを下から突きあげる裏拳となって打ち据える。
自身の危険感知能力が最大限の警鐘を鳴らす中、即座に防御術式を展開して辛うじて直撃は避けたギアンではあったが……【降魔】の拳という圧倒的質量の攻撃は、防御術式の上からでもギアンの全身を激しく打ち付け、ダメージを与えるには十二分な威力であった。
みしみしと音を立てて体を突き抜けるその衝撃と激痛によって意識を失い、吐血しながら空中高く舞いあがる事となったギアン。
やがて自由落下し始めたその身体が、木々の枝を折り、太い枝に時折引っ掛かりながらも地面目掛けて落ちる中。
「──っっと! ギアンさん! 意識はありますか?!」
「っ……ごほっ、ごほっ! じ、ジン! 何故ここに──!! 後ろ!!」
「っは!!」
危険な状況だと判断したジンが、即座に驚異的な身体能力で駆け出し、木々の幹を蹴り、飛び映りながらも空中でギアンを確保する。
ジンに抱きかかえられた衝撃で体中に走る痛みによって意識を取り戻したギアンが、せき込みながらもジンの顔を見て驚愕する中。
その背後から迫るのは巨大な拳であった。
落下してきたギアンを完全に仕留めようと放たれたはぐれ【降魔】の剛腕は、ギアンの声と自身の戦闘経験から察した危険回避能力によって目の前の樹木を蹴り、後方宙返りをして回避行動したジンの下すれすれを通過していく事となる。
ギアンを抱えたまま、空中で逆様になってはぐれ【降魔】顔の横を通り抜けていくジン。
それを逃さないと言わんばかりに軋んだ音を立てて見送るはぐれ【降魔】。
遅れたように轟音と共にジンが回避の為に蹴った樹木がはぐれ【降魔】の拳によって粉砕される。
爆発音にも似た音を立て、砕けた幹から上の部分が森の中に倒れ落ち、土煙をあげる。
「すごい威力……流石は【四天滅殺】の一角」
「……じ、ジン。もう大丈夫よ、だから……お願い、下がって!」
「……そんな身体でその言葉は……説得力がないですよ、ギアンさん」
「っ……! ごほっ! ごほっ!」
ギアンを抱え、柔らかく地面に着地し移動するジンは、その破壊力に驚愕しつつも粉砕した際の埃を目くらましにしてギアンをすこし離れた木陰に隠し、ギアンに攻撃が行かないようにする為、自らを囮とする為に土埃の中を風を切って走り出す。
ジンに対して制止を呼び掛ける声をかけようとするギアンではあったが……咳込む喉がその声を伝える事はなく。
やがて土煙が晴れる中、はぐれ【降魔】は視界内に動くジンを補足する。
既に先程までのギアンとの戦闘を終えたものと判断したかのように、動くジン一点だけに焦点を定め、行動を開始すはぐれ【降魔】。
その様子に必死に思考をフル回転させ、事態を打開しようとするギアンではあったが……目の前ではぐれ【降魔】が体を前傾姿勢に、間接駆動を無視して腕を旋回させはじめる姿が映り、ギアンが悲鳴に近い警告の叫び声をあげる。
脚部に刻まれた術式を起動し、その巨体の移動速度を加速。
──回転速度による遠心力。
──突進速度。
──巨椀の質量。
──【降魔】全体の質量。
その全てを用いて、まるで弾丸のように踏み込みと同時に地面を抉りながら、ジンに肉薄するはぐれ【降魔】。
「──ジン=ソウエンが符に問う。答えよ……其は何ぞ」
─【発動】─
対するジンもまた、ギアンの声に答えるかのように立ち止まって振り返りながらポーチから呪符を抜き放つ。
まるで壁が突進してきているように錯覚させるようなはぐれ【降魔】の攻撃を冷静に視界に納めながら、両手に構えた呪符に蒼白い魔力を流し込み、起動させるジン。
瞬く間に両者の間合いがつまり、一足先に自らの間合いに入ったはぐれ【降魔】の剛腕が突き出される。
地面から跳ねあがり、視界を遮る土煙をあげながら迫る巨大な拳。
しかし……それはただの力押しの拳であり、速さも力強さもあれど、技巧は存在しない一撃。
奇しくも拳や蹴りの一挙手一挙動、そういった動作の一つ一つを極め、一撃必殺なものに昇華せんとしたカインとの死闘をくぐりぬけたジンにとって、その一撃は遅く。
ジンは冷静に拳を横に避け、交差と同時に【風刃】の呪符でその腕を斬り落とすという、思い浮かべた戦闘イメージのままに行動を開始しようと一歩踏み込む。
しかし──
「──ゴホっ、駄目! やめて……やめてよぉ……私達は、
「──っ!?」
──間合いを詰め、互いの攻撃が今まさに交差せんとする両者の間に……痛む体を推してこちらにやってこようとし、地面に横たわる形で見守っていたギアンの悲痛な叫び声が木霊する。
──それは。
狂おしいほどの悲しみで満ち溢れた悲壮なる叫び。
そして……その内容はジンの動きを止めるのに十二分な内容であった。
その意味を理解し、思わず動揺してしまったジンの眼前に迫る拳。
内容が内容なだけに、呪符での攻撃を断念。
避けるだけに徹し、一旦距離を取る為の戦術を練り直したジンの目の前で──
「……──え?」
「……あ……あ、ああ……てぃ、たぁ……」
──強制的に、地面を削りながら両足を停止させ、土埃の中で強引にその動作を止めるはぐれ【降魔】。
その強引な停止は、全身にみしみしと軋む音を立てるほどの衝撃となってはぐれ【降魔】を襲うが……徐々にその動作はゆっくりと前進を止め、その拳は確かに、ジンの眼前で停止する事となったのである。
見境なく、無差別に眼前に映る全てを排除するという……はぐれ【降魔】の概念を打ち砕くその行動。
──それはまさしく、他者の……ギアンの声を理解し、呼び掛けに答えたという事。
それは叫んだギアンでさえ、【フェルシア流封印法師】の知識では理解不可能な……しかしながら現状を理解すれば、こみあげてくる想いがその瞳から涙となって零れだす事となる。
未だジンを視界に捕えながらも、拳を指し出したままの状態で停止し、動かないはぐれ【降魔】。
それを見たジンが呪符をポーチに納め、眼前で停止している巨大な拳をそっと撫でなでても反応はなく、それならばとゆっくりとはぐれ【降魔】の前へと足を進めるジン。
じっとジンを追う視線を送りながらも、決して体を動かそうとはしない【降魔】に、より近くで詳細な情報を得ようと【
まるで電気回路のように魔力がはぐれ【降魔】の全身を駆け廻るのを見て、ジンが顔を険しくする中……その魔力を受けたはぐれ【降魔】が反応し、その体を振わせる。
──確かに、目の前のはぐれ【降魔】は……
バランスの比重の悪い、巨大な手足に似つかわしくない細い胴。
巨大な手足を動かす為の駆動部、胴体部分・砕けた胸部装甲奥にあったのは……鍛え抜かれた、しかしながら丸身を帯びた、女性の体。
半透明になっている顔部分の砕けたバイザーから覗くのは……傷つき流れる赤い滴と、茶色い……頭髪。
──下から中を覗きこめば……そこに在るのは瞳に光がない、見開かれ、無表情なままの……幼さの残る女性の顔。
「──…………本当に、……本当に。【フェルシア流封印法師】は……人間の……死者の体を【
「──……っ……」
──リキトア領内・オキト邸の図書館ともいえるような書庫で、推測混じりのものとして得ていた知識。
それは……ジンにとっては間違いであって欲しいと願ってやまない内容のものであった。
しかしながら現実は……残酷で。
──我が国の優秀な衛士・闘士がその命を失った時、その優れた肉体を用いて【
リナが生死不明となり、ほどなくしてギアン自身が【フェルシア流封印法師】になった時。
何故、アルセンやティタ、リナが死んだ時に捜索の手が鈍かったのか、また捜索に乗り気ではなかったのかが納得がいかず、国家最高戦力として得た権限を駆使し、禁書と呼ばれるような閲覧が難しい資料まで隈なく調べ尽くした事によって判明した……衝撃的な、そして……知りたくなかった事実。
──【降魔】の素体となる者は、術者に近しいものが相応しい。
総じて現代までの歴代の【フェルシア流封印法師】は、
──その理由は、行動基本理念に術者の守護を刻み離反を防止する為。
悲しみが癒える間もなく【降魔】と封印法師の称号を与えられ、国家最高戦力へと祭り上げられていった歴代の【フェルシア流封印法師】達。
──及び術式制御の親和性を高める為であり、素体となるものは心臓部に魔導動力炉を導入。
──全身の神経・筋繊維を導線として魔導回路とし、体液を循環させて素体の死後硬直を防ぐ事。
大事な者を失った理由は各人様々ではあったが……総じて封印法師達は己の大事な者を失った理由たる外敵を、国家の敵を排除する為、己が身体を省みず闘い続けた。
──形状は自由ではあるが、【呪印符針】には制御術式を刻み、制御術式を受け取る素体内部・頭部・脳内に受信・制御術式を埋め込む事。
その結果、彼あるいは彼女達は……体を壊し、その命を失っていったのだ。
──尚、【降魔】の製造法・製作方法・制御法は【フェルシア流封印法】の秘中の秘であり、この情報を第一秘匿と見なし、この知識の漏洩は重罪である。
そして、その度に……その者達の血縁関係者や、親類・親友と言った者達が封印法師として戦場に赴くという連鎖を生みだしていたのである。
しかし……前述の命の落とし方はまだ、封印法師としては幸せなほうだった。
実際のところ……封印法師の死因の原因として最も多いのは……精神錯乱による発狂の後の……自殺。
そして、それに次ぐ死亡原因は……内情を深く知り、何かしらの動きを見せた故の……粛清だったのである。
自らの身を省みないほど、復讐心と破壊に染まる心を持って【降魔】を行使した結果、その【降魔】の正体が……自分がそうなってしまうほど大事に思っていた人であったというその事実。
それは……大事な人を失った喪失感と悲しみを、復讐という代償行為で辛うじて心を、戦闘を正当化していた彼等にとって、その心を砕くに十二分に余りある内容だったのだろう。
その矛先は……自身に、また……国へと向かう事となるのだが……そうして自殺した、あるいは粛清された者達もまた【降魔】に流用される事となり……関係者と契約を結び、再び戦場に舞い戻り、その拳を振う事となるのである。
──それは……まさに深き業が生み出した負の連鎖。
学術都市を謳うフェルシアが手を出した禁断の知識にして、【フェルシア流封印法】・国家最高戦力としての代償と国の闇そのものである。
──ギアンも、これを知ってしまった当初、発狂寸前の精神状態に至った。
自らの【降魔】を呼び出し、震える手で【降魔】のバイザーを捲った時の……声にならない絶叫と絶望。
自分達の目指していた【フェルシア流封印法師】というものがどういうものかを十二分に理解した時、ギアンの心を埋め尽くしたのは……互いにその道を目指そうと夢に見、共に切磋琢磨をした親友二人への……後悔と懺悔。
そんな状態のギアンに対し、下される今回の任務。
もはや……ギアンの心に余裕などなかった。
知る前であれば、理知的な彼女は速やかに任務を遂行し、あっさりと完遂していたであろう。
【四天滅殺】の一角、【フェルシア流封印法師】の名は伊達ではなく、その歴史の中でも尚、彼女は指折りに優秀なのだから。
しかし……既に彼女の頭は、知ってしまった知識の重さと残酷さで限界を迎えており……ぐちゃぐちゃでまとまりのない思考のまま、任務に出た彼女は……ジンと出会う事となったのである。
その結果……ジンを親友のリナと見間違うという、普段の彼女であれば到底するはずのない間違いを犯してしまい、一度ひび割れた心があげる悲鳴のまま、すがるようにジンに独白をし……そして今。
──自らの心を吐露するかのように、かつての友に、届くはずのない願いを、親友の名を叫んでしまうのも無理はなかったのだ。
そしてそんな彼女の心からの叫びは、かつての親友は……失ってしまった大切な友であった【降魔】・ティタは、その動きを止める。
それは……ギアンにとってどれほど意味を持つ事だったのか。
そしてジンの言葉は、【降魔】の内情を、【フェルシア流封印法】を知っているが故にギアンの心をかき乱すには十二分であり、拳を固く結び、その手と口元から血を流させるにあまりあるものだった。
はぐれ【降魔】の目の前に居たジンは、ようやく体を起こしたギアンが再び崩れ落ちる気配を察し、肩越しに視線を送る。
俯いて顔こそ見えないが……震える体と、地面に落ちる涙の滴は……その悲しさを如実に露わしており、その内心を思い、自らの発言を省みて俯くジン。
そんなジンが視線を外した後ろ……急停止で間接駆動部分に無理が祟ったのか、ガクンとはぐれ【降魔】が力を無くし膝をつく姿があった。
まるで騎士が最大限の礼を取るかのような姿となったはぐれ【降魔】の状態に、慌ててゆっくりと崩れ落ちそうになる体を支えようとするジン。
はぐれ【降魔】もまた、自身の体を支えようと、拳を握っていた左手を広げて──
「…………えっ?」
「……………………えっ?」
──地面につくのだろうと思っていたその手は……予想に反して先程からずっと見つめていたジンへと真っ直ぐ伸び。
支えようと駆けよったジンをがっちりと……しかしながら優しくキャッチ。
いきなりの行動で呆気にとられ、そのまま捕縛されてしまうジンと、その声で涙目で顔を上げたギアンが、目の前の現状を理解出来ずに、遅れてあげた声が響く中。
「え? ちょ! ええ~~~ぇ……ぇ……」
「…………え? え?! ま、待ちなさい! 待って! ティタァアアア!!」
軋む間接からまるで廃熱するかのように【魔力】を吹きだしながら勢いよく立ちあがったはぐれ【降魔】は、唐突にその身を翻し森へと駆けだしたのだ。
眼前に立ちはだかる障害物を避け、あるいは粉砕しながら脚部の術式を起動し、魔力を噴射しながら加速するはぐれ【降魔】。
その速度にドップラー効果で声を残しつつ、離れていく二人に、慌てて制止の声をかけるギアンではあったが……ジンを胸に抱き、駆けだしたはぐれ【降魔】がその動きを止める事はなく。
「ああ、もう! 【降魔】……全力起動! 抵魔力最大! 呪縛破壊!」
─【御命了承……全力起動・開始】─
ギアンが痛む体を強引に起こし、苦痛に顔を歪ませながらも自らの【降魔】を全力起動させる指示を出せば、その命を【呪印符針】から受けとった【降魔】が全身へと魔力をほとばしらせる。
その身に魔力を電気回路のように駆け廻らせ、その回路状の部分から【魔力】を放出。
それが氷結術式に亀裂を入れ、やがて全力起動による全身装甲展開によって氷が砕き散らされる事となる。
氷の蒸気と、魔力の放出で土埃があがり、一瞬視界が遮られるも……【降魔】に指示を出して自分をその肩に乗せさせ、はぐれ【降魔】の後を追うように指示を出すギアン。
術式から抜け出すのに時間がかかってしまった為に、既に視界には映らないほど遠くに行ってしまったはぐれ【降魔】。
しかしながら、足跡を消す等の思考のないはぐれ【降魔】の通り道は、破壊痕となって残っており、わき目も振らず、唯一直線に伸びているその道は……まるで目指すモノがこの先にあるかのようだった。
「──……まさか、ね……」
視線の先……はぐれ【降魔】の向かう方向に心当たりがあるギアンは、【降魔】の上で一人静かにかぶりを振って顔を伏せる。
──それはかつて、彼女が最も幸せだった時間を思い起こす場所。
失ってしまい、行き場を無くした想いが……還る場所だったのだから。
「──やられたわね。まさか……このタイミングで、か」
「……あたし、やばい方向にしか思考がいかないんだけど……これって、最悪の方向に向かってない?」
「…………最悪中の最悪。【フェルシア流封印法師】・ギアン=ディースは……【降魔】の裏を
─『…………』─
──同時刻。
離れた位置から隠密行動でジンを追い、見守っていたっていたドロゥ・ヴィ・チャダの三人は……フェルシア政府中枢に侵入していた他の
何らかの企みを持ってジンに接触しようとする、この国の最高権力者・フェルシア統括院長と合わせず、国外まで隠密にエスコートするはずだったその目論見は、表の最高戦力である【フェルシア流封印法師】ギアン=ディースと出会った事で瓦解。
しかも、現状……はぐれとはいえ、【フェルシア流封印法師】の【降魔】が、ジンを攫って移動すると言う状況。
更には、はぐれ【降魔】を止めるためとはいえ、【降魔】最大の秘密を……ジンは知ってしまったのだ。
影である三人は、その事情の複雑さ、危険さに頭を抱える事となってしまったのである。
「……
「そだね。ダスなら公正に判断してくれるはず」
「……【
自分達では判断できないと、影を取り仕切る役目も担う、【
情報共有の為、同一回線につないでいた
「──
「よかったぁ、あたし荒事と事後処理は得意だけど、こういうのは苦手なんだよね~」
「……潜入組の
「クルダ国境からだものねえ……あの子が国境越えてからずっと走りっぱなし?」
「うわ、きっつー!
──ダスの鶴の一声で、【
何よりも最優先事項は、国賓級のお客様……『聖王女のお気に入り』であり、才能の塊であるといっても過言ではない美少年、ジン=ソウエンの命。
ドロゥ達三人からの諜報・推測結果からジンが体術的にもかなりの腕を持つ【
「……あの子も……
「……どう、かな。あの行動……
「同感。──どうして。
─『…………』─
もはや最低限の穏行だけを身に纏い、全速力でジンを抱えるはぐれ【降魔】、そしてそれを追うギアンに追従する三人。
他のメンバー達との細かく密な連絡が交わされ、絶えず位置情報を確認しながら追う三人ではあったが……追うギアンの背、そして先を行くはぐれ【降魔】の背を見つめながら、ふと言葉を零す。
それは……疑問と、期待。
そして……憐憫の入り混じった言葉であった。
それに同意しつつも……淡々と、しかし切なく、悲しみを含んだチャダの声に、沈黙する二人。
『──事は起こってしまっているんすよ。それを嘆くよりも、まずは先を見るっす』
『そうよ。我々が対処すべきは、過去に非ず。今を……そして……何よりも先を見なければならない、我々は……
「──……うん」
「そうね……わかった」
「あいよ!」
──念話でその言葉を聞いていたシュナが、その嘆きを断ち切るかのようにそう念話を返し、イクが目的達成を最優先にという意味合いを込めて再度指示を出す。
即座に意識を切り替え、ギアン達へと意識を集中させる三人。
「──っ! はぐれ【降魔】が止まったわ! 隠密警戒!」
「長距離支援準備」
「……完了。いつでも」
やがて……視線の先では森から抜けだし、開けた場所へと出たはぐれ【降魔】がその動きを停止する姿と、ギアンもまたそれに追従してその場に抜けた瞬間を捕え、三人は即座に穏行の結界を展開。
ジンの知覚にひっかかるであろう感知範囲へと侵入しつつも、はぐれ【降魔】がジンを害そうとした場合に備え、対処術式の起動準備を行う三人。
「──願わくば」
「その想いが」
「……
祈るように、紡ぐ言葉が続けられる中。
見守る三人の視線の先では……ジンと彼女達の物語が、再び紡がれようとしていた。
──ジンを優しく胸に抱き、唯ひたすら真っ直ぐに、わき目も振らずはぐれ【降魔】がやってきた場所は……森の中でも開けた場所。
森の一角にぽっかりと空いた空間は思いのほか広く、山を背後にする形でそこにあったのは……月光を水面に抱き、その周囲に咲き誇る花々が月の光を吸収し、美しく輝く幻想的な水源の光景。
傾斜のある小高い丘から流れ出る湧水が段差のある高台から小さな滝となって注ぎこまれ、出来あがった小さな池は周囲をよく映す鏡のよう。
思わずその美しさに、自身の危機を忘れ目を奪われるジン。
「っと……ここ、でいいの?」
「──……」
そんな中、ゆっくりと優しく膝をついてジンをその場に降ろすはぐれ【降魔】。
自分を害する意思が感じられないはぐれ【降魔】の行動に、ジンが素直にそう問いかければ……静かにジンに背を向け、滝へと向かうはぐれ【降魔】。
滝の前で一度振り向くと、静かに自分を見て佇むジンの姿を再確認。
ゆっくりと、自身の体を滝の水で洗い流すかのように滝の奥へと手を伸ばし、身体ごと滝の裏へと消え……戻ってきたはぐれ【降魔】が手にして帰ってきたのは……一本の剣と思しきものであった。
月光に鈍く輝くその剣は、錆が浮かびながらも尚、芯を残し。
その身に刻まれた魔力文字は……その剣がギアンが持っていたように、【フェルシア流封印法師】の持つ【呪印符針】である事を指示していた。
そっと指で【呪印符針】の刃の部分を掴み、軋む音を立てながらジンの目の前へと戻るはぐれ【降魔】。
そこに──
「──……そんな……嘘、嘘よ……なんで、ここ、ここに……ねえ、なんでよ、ティタ!」
後から追いついてきたギアンが、【降魔】と一緒に森を抜け、広場へと姿を現した。
そして……この場所に抜け出た瞬間、【降魔】の肩の上のギアンは目を見開いて口元を押さえ、必死に涙を堪えようとして堪え切れず、慟哭する。
──そう。
ここは……彼女達が出会い、その優しい日常が……始った場所。
月光に輝く花は、課題としてかつて求めたもので。
彼女達は……必死にキシュラナから辿りついた先で。
──アルセンにより、彼女達が救われた……あの場所だったのである。
【降魔】の肩から地面へと降りたったギアンは、そのまま力なく崩れ落ちた。
涙を流す顔を手で覆い隠し。
ぐちゃぐちゃになった想いは、とめどなく涙となって溢れ。
隠しても隠しきれない悲しみは、掌を、腕を伝って地面に染みを作る。
──必死に、考えないようにしていた。
ただ成すがまま、指示された事をこなし、流される日々。
──知らなければ良かった。
後悔だけが残る現状、【フェルシア流封印法師】という立場。
──目指さなければよかった。
そうすれば……二人を、アルセンを……無くす事は無かった。
それは……懺悔。
後悔の果てに、彼女が迷い込んだ思考の袋小路。
声にならない慟哭。
止まらない悲痛。
蹲るギアンの傍で、佇む【降魔】。
──確かにそこにいるのに……語り合う事はない。
そんなギアンの心を思い、そっと被りを振るジンの目の前で、はぐれ【降魔】……ティタニアが、ジンの前で立ち止まり……ぎしぎしと音を立てながらも地面に片膝をつく。
その行動に驚くジンの目の前にゆっくりと差し出されるのは、かつてリナがその手にしていたのであろう……ティタニアが手にした【呪印符針】の柄。
それは……傍から見ればまるで剣を捧げる騎士のようでもあり、彼女の居たキシュラナ流に言うならば、主に対して己の剣を捧げる……主を見つけた【
「──……俺は【フェルシア流封印法師】じゃないよ? そんな俺にその剣を……【呪印符針】を、渡そうっていうの?」
「────」
「……それは……貴女と、リナさんの大切な繋がり。それなのに、俺に手渡すっていう意味が、分かってるの?」
「────」
静かに、バイザー越しに見えるティタニアの顔へと視線を向け、諭すように声をかけるジン。
対する彼女が、そのジンの言葉に返せるはずもなく。
しかしながら差し出された【呪印符針】が下げられる事もなく。
その場に響き渡るのは……押し殺したギアンの嗚咽のみであった。
微塵も眼前から動く事なく、答えを待つかのように差し出されたままの柄とティタニアを見比べ、困惑した表情で見返すジン。
「……ギアンさんにも間違われたけど、俺はリナさんじゃないよ?」
「────」
視線と視線が交差する中、確認するかのように語りかけ続けるジン。
──当然、答えはなく。
「──……そう、だよね。
「……っえ? ジン、貴方何を………………え?!」
そうティタニアに声をかけながら、溜息混じりにそっと【呪印符針】の柄に手を伸ばすジン。
しっかりとジンが【呪印符針】の柄を掴んだのを確認して、その手を離し、右手を胸に当て頭を垂れるティタニア。
先程からはぐれ【降魔】であるティタニアに語りかけるジンの言葉を聞きつつも、その光景を直視できずに俯いていたギアンが、溜息混じりに発したジンの言葉に反応して顔をあげると……その眼に映った行動、光景に絶句する事となる。
──ギアンには、その光景全てが理解できなかった。
【フェルシア流封印法師】として知る常識が、目の前で起きる現実全てを拒絶していたからだ。
第一に、【降魔】となったモノに個々の意思は存在しない。
第二に、【降魔】との契約はもっとも親しい人物唯一人、唯一回であり、二度目の契約は在り得ない。
第三に、【降魔】は主を失えば高い確率ではぐれ【降魔】と呼ばれる暴走する存在となり、破壊するしか手がない。
──目の前に広がる現状は……その全てを否定していた。
今まさに、頭を垂れるティタが差し出したのは……己の主となるべきものが持つ、自身の制御術式が込められた【呪印符針】。
それは即ち、【
「っ……いえ、そんなの無理よ……だって、その契約術式はリナとティタを繋ぐ……彼女達だけの絆。まして、ジンは【フェルシア流封印法師】ですらない。それを再契約するだなんて……」
しかし。
【降魔】の、【フェルシア流封印法師】の実情を知るギアンだからこそ、ジンとティタニアが再契約をするなど不可能だと分かってしまう。
『もしかしたら、【降魔】となった今でも……ティタの意思が残っているのかもしれない』
本来では在り得ない【降魔】の行動に、そんな淡い期待を胸にしつつも……自分も一度見間違えたように、一瞬リナに、契約者に見え誤作動したのだと、ギアンが自分を納得させる目の前で──
「───こう……だったよね。──
─【──…………魔……魔導……魔導回……回路……──魔導回路……起動】─
「────えっ?」
──【
【呪印符針】に魔力を込め、【呪印符針】の刃で掌を斬り、傷口から流れ出る赤き血潮を【呪印符針】の柄・術式制御中枢である鍔元のコア・そこから続く刃先に垂らし、契約の為の触媒として線を引くジン。
ジンの血は高濃度の魔力を持って【呪印符針】とジンを繋ぐ役割を果たさんと、術式中枢である鍔のコア部分に浸食。
「絶対意思力制御──」
一度その身に【
鍔のコア部分が回転し、ギリギリと錆びを落としながらシリンダー状になった鍔が展開され、内部に満ちるジンの過剰なまでの魔力を蒸気のように排出する。
それを目を見開いて見守るしかないギアンは、目の前で何が起きているかを理解しながらも、しかし絶対に在り得ない事と否定する思考がその動きを抑制する中で──
「──ジン=ソウエンが【呪印符針】に問う。──答えよ、其は何ぞ」
─【意思力判定成功】─
「っ?!」
──奇跡を目撃する事となる。
ジンの魔力によって【呪印符針】に刻み込まれた【降魔】起動の術式が再展開され、先程放出された魔力がその場を満たす。
❝『──我は制御……──絶対意思制御。貴公の意思により【降魔】を起動せし者也』❞
「あ……あ……ああ」
【呪印符針】の魔力文字が完全に展開され、呪符のように高らかにその効果を謳い上げながら──
─【降魔起動】─
──軋む体を毅然と立ちあがらせ。
傷つき砕け、ぼろぼろになったその姿で尚。
彼女は……はぐれ【降魔】であったティタは、ジンの背後に再臨する。
その姿は先程と同じで。
しかしながら、その体に迸るは……ジンから注がれる、過剰なまでの魔力により満ち足りていて。
再び、ジンを主とした事によって膝をつき、頭を垂れる【降魔】……ティタニア。
「う……そよ、そんな……ありえない……!! ありえないわっ!! なんでっ!!」
「──契約、完了。……ん?」
目の前で起きた現実に、混乱する思考を抑えきれず、後ずさるギアン。
【呪印符針】を一閃、契約の完了を告げて【降魔】ティタニアに向きなおるジン。
見上げる先、光のない瞳をジンに向けるティタニアの砕けたバイザーから見える口元が……何か言葉を形にするのを発見する。
それは……声にはならず。
しかし……確かに、その覚悟を伝える唇の動き。
『──今度こそ……護りぬく』
──生前も、【降魔】となった後も。
リナを、そしてギアン・アルセンとの繋がりを護りきれなかった……彼女の心残りから成る、誓い。
新たなる主となってくれたジンを、今度こそ失わないように。
その身を賭して守り抜くと言う覚悟であった。
「──……あっ」
「……!! あ、ああ……あああああ、ああああああ! ティ、タアァ!!」
唇を読んだジンが驚愕を表情に浮かべる中、見つめ合うティタニアの頬を伝う……赤き滴。
それは……目から流れ出る……血涙。
光を宿さぬ瞳から流れ出す、彼女の心のようであった。
呆然としていたギアンが、その血涙を見て痛む体を推し、必死に張ってその足元へと進みでる。
やがてティタニアの足元まで辿りついたギアンが、【降魔】の足にすがりつくように抱きしめ、滂沱の涙を流しながら感情を爆発させる。
もはや体裁など気にする事なく。
まるで……出会った時の少女時代のように泣き崩れる。
ティタニアの左手に乗り、顔の眼前まで持ちあげさせたジンが、壊れたバイザーを外してティタニアの顔をむき出しにすると、血涙と汚れ傷ついた顔を泉の水で濡らした綺麗な布で拭きあげ、優しくその頬を撫でる。
目と目を会わせ、優しく微笑みを浮かべるジンではあったが──
「──……あれ? でも……もしかして……」
「……ぐす……? どうしたの、ジン?」
──ジンと契約した事が契機とはいえ、顕著に示されたその唇の動きは……明らかに、確実に。
ティタニアという個人の意思を示す者だった。
それならば……【降魔】ティタニアは、ティタニア個人としての意思がまだ失われていないのではないかと推測し、即座に【診析】の呪符をティタニアに発動するジン。
そんなジンの行動にようやく涙を拭いて復帰したギアンの目の前で……蒼い奇跡が白い札に次々と刻み込まれていく。
ディアスの失敗を糧とし、発動された【診析】の呪符は、余すところなくその全域を解析。
──そしてその結果。
「……なんて……光景。フェルシアにも【
「…………やっぱり。肉体は……心臓部分に備え付けられた魔導炉から循環する魔力が全身の神経を改造した魔導回路を通って伝達・循環。……死体を利用する【
「っ──────?!」
ジンの術式・技量に驚愕し、感心していたギアンの目の前で……【降魔】の根幹を成す、フェルシアの秘中の秘を暴く事となってしまう。
それは、ギアンの調べた【降魔】のそれよりも尚深く入り込んだ内容であり……【降魔】の裏側どころか国の裏側ですら読み解いたような発言。
絶句し、息を飲み……顔面蒼白になるギアン。
「──ジン! それ以上は口にしないで! 駄目よ! 忘れなさい!!」
「……今更ですよ、ギアンさん。もう……ティタニアさんと契約もしちゃったんですし」
「うっ……だけど、流石にそれは……まずいのよっ! その内容を知れば……わかるでしょう? フェルシアという国家の【四天滅殺】の一角、国家最高戦力が……人の道を踏み外したモノだなんて。これが露見すれば……最悪、聖王女様の手により、このフェルシアという国が抹消されかねない大事。それ故、【降魔】の内情は第一秘匿として扱われ、知った者の口を
ジンの発言を遮るかのように必死にジンを説得しようと試みるギアンではあったが……それに返すジンの答えは決まりきっていて。
後ろに立つティタニアの手に手を置きながら苦笑するジンに怯みつつも、ジンの発言、知ってしまった事がこの国の重要機密であり、命を狙われてもおかしくない事態だと告げるギアン。
「……そうなれば……ギアンさんも敵にまわらざるをえない、ですか?」
「──っ馬鹿にしないでっ! 貴方は……ティタを、はぐれ【降魔】から【降魔】に戻してくれた。私は、その恩を仇で返すような真似を……私が出来るはずないじゃない! ……そうね……これを……貴方が外した、ティタの……いえ、はぐれ【降魔】のバイザーを持って討伐完了の証とするわ。……貴方はこのまま国境へ。何事もなかったかのようにクルダへ戻って頂戴。……私と貴方は、今夜、
静かに、確かめるようにギアンに問いかけるジン。
その内容に激昂し、声を荒く返答を返すギアンが、自分を落ちつける為に深呼吸の後、ゆっくりと地面に転がっている壊れたバイザーへと手を伸ばす。
そして……確かにジンと視線を合わせ、今日のこの出会いを『無かった事にする』と言い聞かせる中。
「……それがベストだったんでしょうけど……ごめんなさい、ギアンさん。ちょっと……遅かったみたいです」
「……え? はっ……っ!! 貴方達は……」
ジンがその気配感知の範囲内に人の気配を察知してしまう。
内密な会話が内密でなくなってしまった事を謝罪しながらも、ギアンの肩越しに視線を送る先、そしてその視線と言葉に素早く振り向き、【呪印符針】を抜き放って構えるギアンが目にしたのは……まるで自然から染み出すかのように姿を現す人影であった。
『────気がついていたとは……流石ですね』
「っ!! 貴方達はまさか……【
『是。我々は【
「──俺を?」
『是。……貴方はやはり御自身の立場を理解されていないのですね。……聖王女から直々に身分証を渡される等、立場上聖王女様の御使いとして国に入ったのと同義と見なされます。そのような方にこのフェルシア国内で
「……なるほど、ね」
──唐突に景色が人型に歪み、その姿を露わにするその人影は、フード付きの白いコートに顔を覆い隠し、目だけが空いたマスクを付け、無機質な声で語りかける5人組。
ギアンがその容姿から【
「……ねえ貴方達、この国に彼が入った時から守護役を?」
『是。貴女も知っての通り、この国は知識の宝庫と称されるが故に……いろいろと
「そっかあ。なら……ときどき感じていた気配は、貴女達だったんですね」
『是。……しかし、流石はジン殿ですね。普通ならば気付く事も出来ないのが、我等なのですが……』
ギアンが確認する為に声をかけて会話を交わし、隠密術式を持ってしても気付かれていた事に驚嘆を示しながらジンを褒め称える一同。
その様子を視界に納めつつも、現状で得られた状況整理・情報整理を行っていたギアンがそっとその瞳を開き……深い溜息と共に自ら出した結論を口に出す。
「……なるほど……ね。この子、か。──はぐれ【降魔】がこのタイミングで院長閣下の管理する
『──……是。流石に企みの内情までは掴んでいませんが……恐らくは』
「──え?」
──この国は以前も記した通り、知を求める探究者達が治める学術都市である。
その知識は多岐にに渡り、様々な研究が成されてはいるものの……あまりにも知識を求める姿勢が貪欲な彼等は、時として道徳や理性といったありとあらゆる全ての事柄を無視し、発揮される事があるのだ。
……その所為で、過去に何度となく行われた、外道・外法・禁呪と言われた非道を極める実験の数々。
それを戒めとし、二度と起こさせないように管理するのがこの国の代表者として選出され、国の全権を担う学術都市フェルシア学院・院長の座についたものの役目である。
そして、そういった者を捕縛するのが国家最高戦力たる【フェルシア流封印法師】の役目であり、それを公正に裁くのが【
しかし……今、ジンを巻き込んで展開されるこの事件は……その国のトップ、統括院長その人が起こしている事件なのだ。
その動きを察知した【
狙いが明確であっただけに、護衛として実働部隊が動いたものの……表だって【フェルシア流封印法師】が関わった為に更に、ジンが第一秘匿内容を知ってしまうという、余計に深刻な事態になってしまったのである。
「……一応確認するけど、
『是。……第一秘匿の件は想定外ではありますが、既にはぐれ【降魔】は
【呪印符針】を構えたまま油断なく問いかけるギアンに対し、即決でジンを見逃す事に同意する実働部隊員達。
自分達の役割の下、表のギアンをどうやって説得するかに意識を向けていた彼女達にとってギアンの提案は歓迎すべきものであり、反対するものではなかったからだ。
『……無論、ジン殿には、この事を決して口外しないように念を推す必要がありますが』
「……言わないよ。言えるわけがない。言えば……ティタニアさんも、ギアンさんも……そして、貴女達も処罰の対象になるんでしょう?」
「……ごめんなさいね、こちらの勝手な事情に巻き込んだというのに。……貴女達、申し訳ないのだけれど周囲の警戒をお願いしていいかしら。……表に出てはいけないのでしょう?」
『是。助かります。……ギアン殿は依頼達成の後迷っていたジン殿と出会い、国境まで連れてきたという事でお願いします。……院長閣下が次の手を打つ前にお急ぎ下さい』
「ええ」
ギアンの言葉に即答し、先程の会話通りに……しかしギアンとジンが出会った事を不自然に想われないような内容の言い分を提案しつつ、ジンに秘匿の順守をお願いしてその体を再び自然に溶け込ませるように透明にしていく実働部隊員達。
自分達を中心にして、円陣を組むようにして散らばったのを感じながらジンがギアンへと視線を送れば──
「──【
─【魔導回路停止・収集開始】─
【呪印符針】を一回転させ、逆手に持ったギアンがそう告げれば……その背後で【降魔】が光の粒子となって【呪印符針】のコアへと吸い込まれていくのが見て取れた。
それを【
それに従い、ティタニアもまた光の粒子となってコアへと吸い込まれていく。
やがて、巨大な質量が跡形もなく無くなったその場に残る二人。
「……まさか……
「……はい!」
ジンが一目見ただけで【降魔】のノウハウを学び、実行できる事に驚愕しつつも……今は稚拙こそが最も尊ばれるとばかりにいち早く国境を抜ける為、荷物を手に走りだす二人。
自分の身体よりもはるかに重く大きいリュックサックを背負って尚、自分に軽々ついてこれるジンの身体能力に驚愕しながらも、常人には出せない速度で国境へと向かい……ほどなくして一度見た国境の見張り台が視界に飛び込んでくるのだが──
「──おかしいわね。何故あれほどに警戒が厳重なのかしら」
「……そうですね。城壁の上の明かりも大分多いみたいですし……何かあったんでしょうか?」
「はぐれ【降魔】の件かしら……ともかく言ってみない事にはわからないわね」
「はい」
そこに見える国境は、赤々と等間隔に松明を灯し、城壁を越えるものを逃がさんとするばかりに厳重なものだったのである。
壁にはその強度を増す術式が魔力文字となって輝いており、まるで戦時下のような厳重さに困惑する二人ではあったが……ともかく国境を越えなければ始まらないと足を運ぶ。
「──止まれ! このような時間に何者かっ!」
「【フェルシア流封印法師】ギアン=ディースである。街道での任務中に少年を確保した。クルダからの客人と言う事でこちらに案内したのだが……何事か」
「っ! 失礼しました! ……おお! その御姿は……ジン殿! 御無事でしたかっ!」
「はい。……えと、どうしたんですか?」
「実は──」
もう深夜というべき時間にやってきた二人に対し、ジンの入国手続きを行った隊長が大声で誰何の声をあげる。
それに答え、ギアンが【呪印符針】を持って身の証を立てれば、慌てて膝をつき、謝罪の言葉を口にする隊長。
ギアンの視線を受けジンが隊長の前へと姿を現わせば、ジンの無事な様子にほっと一息をつき、現状国境で起きている事を話し始めた。
「──魔獣の大攻勢、ですって?」
「はっ。夜半過ぎになりましょうか……クルダ側、【
「さっきから壁を叩くような音は……」
「はっ。魔獣共が壁や門を破ろうとその身を叩きつける音ですな。
─『…………』─
隊長の説明を裏付けるかのように壁の向こうから響く獣の唸り声。
痛みを訴える悲鳴や、部下を叱責する怒号。
壁にぶつかり砕かんとする衝撃が響き、矢の風切り音が飛び交い、魔力文字が顕現し、その破壊を撒き散らす爆発音、氷結音、電撃音が木霊する。
慌ただしく行きかう兵士達が、武器の補充や【呪印杖】と呼ばれる、何度も使える呪符のような効果を持つ魔導具をもって城壁を駆けあがっていく姿を見ながら……ジンとギアンの二人はこの状況に意図的なものを感じ視線を交わす。
「……私も迎撃にでましょうか?」
「いえ、その……ギアン=ディース殿にはその……院長閣下より直通回線が繋がっておりまして……こちらに」
「……わかったわ」
どさくさにまぎれ、自分とジンが迎撃に出てその間にジンを逃がす事を考えたギアンではあったが……流石に門を開ける訳にもいかず。
ジンの身体能力を持ってすれば城壁から飛び降りる事も可能なのだが……如何せんそうすれば衝撃に弱い荷物の鉱石が大変な事になる可能性が高かったのである。
どうしたものかと思考を巡らせた中、ギアンがここに来たら繋ぐようにと言われていたのだろう、隊長が報告をした通信魔導機へと案内されるギアン。
『【フェルシア流封印法師】ギアン=ディース。はぐれ【降魔】、御苦労さまでした』
「はっ。……申し訳ありません、討伐部位としてこのバイザーしかまともに残ったものがありませんでした」
『いえいえ、結構ですよ。討伐の証としては十二分すぎます。……
「!! っ……はっ」
『【フェルシア流封印法師】として、国賓・ジン=ソウエン殿をこの騒動が終わるまでの間、国で一番護り手のある院長府で預かる事とします。丁重に、確実に護り届けなさい』
「…………はっ」
『頼みましたよ』
依頼をしたこの国のトップである院長との声だけの通信を行う中、その内容……はぐれ【降魔】討伐を
(……そんな事、呼ばわり! それに……やられたっ! クルダ国境からジンが帰る際の対策も万全かっ! まさか……これほど大規模な事までしてジンを逃がさないようにするなんて……一体何を考えているの!!)
思わず魔導機を叩きつけたい衝動にかられながらも、どうにか冷静を装い、隊長に礼を言って任務を遂行すると告げて魔獣迎撃で慌ただしい衛士達の見送りを受けながら国境を後にする二人。
城壁への攻撃、怒号が木霊する砦を背に──
『──やられましたね』
「……ええ。まさか……ここまでするとは、ね。街道を旅していた人達も……この様子では」
「っ……俺、一人の為に、ここまで?」
──苛立ちを隠せない様子のギアンに声をかけれず、目的地である院長府へと足を向ける二人。
ほどなくして護衛の任をこなしていた【
それに同意しながらも忌々しげに振り返り、砦の壁を見つめるギアン。
そして……この状況は自分のせいなのかと呆然と言葉を呟くジンに対し、慌ててジンを見つめ、揃って首を横に振り、否定の意を表す二人。
『否。間違ってはいけません。確かに、狙いはジン殿でしょう。ですが……これはジン殿のせいなどではありません。貴方は狙われた犠牲者であり、この全ては事を起こした人物の責任なのです。この件でジン殿を責めるものがいたとしても……それは筋違いというもの。全ては院……いえ、犯人の責任なのです』
「そうよ。身勝手な知識欲からくる……暴走。もはや狂気よ。……以前から黒い噂はあったのだけれど……どうやら本当のようね」
「……はい」
しっかりと不安そうな顔をするジンを見つめ、こんこんと諭すように話しかける二人。
どうにか飲み込めたといった様子で頷くジンに頷き返しつつも……現状把握に思考を切り替える事となる。
「……私達の行動などお見通し、と言ったところなのかしらね」
『……不明。しかし……明らかにこの状況は
「……やっぱり、ね」
溜息混じりにフェルシアへと重い足取りを見せながら歩く三人が情報整理をする中、【
険しい顔でその報告を聞くギアンが苦々しく頷く中で、ジンが不思議そうな顔で【集獣香】についての質問をする。
「……なんですか? その……【集獣香】って」
『読んで字の如しですよ。人間にはほとんど感じられませんが……鼻の効く魔獣にとっては興奮剤……麻薬に近い効果を発揮する第一級危険薬物です。中毒性があり、より近くで嗅ぐほど興奮が高まる効果があります』
「元々は、狩人が効率よく得物を捕える課程で生み出された獣をおびき寄せる為の罠だったの。ところが……統率が出来ない魔獣という不確定要素を用いて、より効率よく他国を滅ぼせると考えた過去の学者達がこの濃度をより高く凝縮し、興奮率を高めた結果がこれ。倫理的に使用が認められないと過去の【
『理解不能。あの狡猾な院長が、何故このような雑で成り振りかまわない作戦を立てる必要があったのでしょうか』
「……証拠など残さないという事なのでしょうけどね。……
そして……二人の説明内容を聞いたジンは……絶句する事となる。
──効果を知っているという事は……この効果を見聞・実証する為の実験が行われたという事。
そう……過去、この効果を実証する為製作者は実験と称して近隣の村へこの【集獣香】を投げ入れたのだ。
その匂いに惹かれ、群れ集い、興奮から狂気に駆られ、村へと殺到し、暴れ、砕き、食いちぎる魔獣によって滅ぼされた村。
その結果に
それに興味深そうに頷く者達と、戦慄を持って驚愕する者達、そして……義憤を露わにして罵倒する者達。
当然の如く……その罪状を持って製作者は処断・死罪となったのだが……最後まで何故そうなったのかを理解できず、無罪を主張しながら死んでいったのである。
また、その研究成果をより踏み込んで研究すべきとする者や、その内容の開示を示すものまで居る始末。
それ故……知識欲優先で人道的な観点を持たないそういった議員・研究者達を法の下に公正に裁く存在として【
「……急ぎましょうギアンさん。どういう理由かわかりませんけど、それだけなりふり構わない相手だというのなら……恐らく次の手も考えているはずです。……
─『っ!!!』─
二人の会話を聞いていたジンが何かを悟ったように急に表情を引き締め、二人の間へと言葉を投げかける。
一瞬間が空くものの、その意図を理解して驚愕を示し、ジンへと顔を向ける二人。
「……確かにそうね。もうこれだけの事をしでかしている。……無い話じゃないわ」
『至急、他の実働部隊に調査させます』
「頼むわね」
ジンを足止めする為だけに国外に魔獣を展開したのだとすれば……今度はジンが確実に都市内に
現状……都市を護る為の戦力をも国境に回している為、国内で魔獣の大攻勢など始まってしまえば……その混乱と混沌、被害は計り知れないものとなるだろう。
ギアンが視線を送れば、即座にその姿を消して対応に出向く【
──同時刻。
『──在るでしょうね』
─『断定っ?!』─
ギアン・ジンと別れ、即座に【集獣香】の件を【
その言葉に口をそろえて驚愕しつつも、それならばどうやって捜索すればいいのかを議論する中で──
『簡単ですよ。人々の多い場所……街や村の周辺を探ればいいのです。
『確かに。……一番近いのは私達──』
『緊急連絡。話に割り込み失礼。──奴が動きました』
─『っ!!!』─
淡々と、しかしながら怒りを僅かに滲ませた機会音声のようなダスの声が、アレと呼ばれる人物の思考を知りつくしたかのように言葉を発する。
それが誰かを理解している【
『──先程、魔導回線を用いてギアン殿とジン殿を呼び寄せたようですが……それに対しての準備、ですか?』
『はい。現在、迎え入れるはずの学院長府において、【降魔】の起動魔力残滓を確認。それと同時に【封印魔力障壁】の起動を確認しました』
『っ!! ……なるほど。天才【
『……本性が出ましたね。元来……
─『是!!』─
その報告内容に、言葉の端に苦笑を滲ませながらも……覚悟を決めてシュナとイクを呼び寄せるダズ。
それに勢いよく答えたシュナとイクが、他の3人と円陣を組み──
『──……イク、シュナ。後からいくけど……ぼっこぼこにしてやって! 頼んだよ!」
「あの腐った眼鏡の鼻をへし折って、床に這いつくばらせて下さい」
「──断罪、任せた」
「──……ええ。任せなさい。私達の全ての負債……払わせてやるわ」
「任せるっす。……悉くを……ブチのめしてやる」
実働部隊のマスクを上げ、怒りを滲ませながら拳を突き出すドロゥ・ヴィ・チャダに頷きながら、同じく拳を突き出して会わせるイク・シュナ。
深く頷くと同時に拳をぶつけ会い、それぞれの役目の下に散っていく5人。
ジンが別行動となったためにその感知能力を気にしなくてもよくなった彼女達は、必要最低限の隠密性を維持したまま……先程までの鬱憤を晴らすかのように、脚部の魔導術式を起動し、まさに爆走とよべるほどの速度で森を駆け抜けていった。
遠く国境からは未だ収まらぬ獣達の咆哮と闘いの音が鳴り響き、それを知らぬ人々は夜の喧騒と帳の中。
急激に動き出した事態は、それに比例するかのように急速に終息へと向かっていく。
「国賓・【
─『……』─
ギアンに先導され、辿りついたのは……様々な実験に耐えられるようにと堅牢な作りを誇る実験場の役割も果たす国の中枢・学院長府。
国境でのいざこざの為に近衛兵や衛兵がほとんど派遣された学院長府は門番を残し人が居らず。
門番がジンの到来を告げる声を張り上げながらもその門を自分で開ける。
ギアンが門番に労いの言葉をかける中、魔導の光によって燦然とライトアップされた廊下をギアン先導の下に進んでいくジン。
大きな扉が並びたち、その間に小さな廊下が等間隔に並ぶ建物の構成を【
誰何の声にギアンが答え、それを確認するや否や、マホガニーの扉がゆっくりと開きだす。
左右対称の巨大な本棚にぎっしりと埋め尽くされた書籍。
部屋の中央に在るのは、なんらかの研究資料であろう、紙束の数々。
窓際にあるのは、重厚な作りの机と、書類。
そして──
「──ようこそ、お待ちしておりましたよ。クルダにその名を馳せる、幼き天才【
「あ……いえ」
ワインレッドのスーツ風な術式法衣に身を包んだ、眼鏡をかけ、口髭、顎鬚を生やした如何にも紳士風な男性がジンの到来を待ちわびていたと言わんばかりに輝く笑顔で重厚な椅子から立ち上がり、ジンの下へと歩みを進めながら謝罪の言葉を口にする。
今まで聞いていた評判とは裏腹に、柔らかい物腰に困惑を僅かに浮かべつつもそれに答えるジン。
やがて、来客用のソファーに腰をかけるように促して対面する院長とジン達。
「おっと失礼しました……心躍る出会いに我を忘れるとは……私もまだまだですね。私はこの学術都市フェルシアを統括管理する役目を仰せつかっています、フェルシア統括学院長・ジュタ=ナクリデヴィスと申します。どうぞよろしくお願いします」
「……先程呼ばれた通り、【
自らが性急すぎた事に自嘲・苦笑を浮かべ、改めて自己紹介を交わす院長・ジュタの言葉に自己紹介で返すジン。
傍にいたギアンが話し合いならば席を外す旨を伝えるも、それを片手で制し、自らの秘書に歓待の為の料理を運ばせ、共に食べるようにと誘うジュタ。
テーブルを埋め尽くすような豪華な食事が並べられ、秘書の女性が甲斐甲斐しく小皿におかずをよそって三人へと手渡していく。
やがて院長がその口に料理を運ぶのと共に食事会が始まり──
「──これが、君が作り上げた呪符。確かに、我が国にも製法・使用用途は伝わっていますが……流石に作り上げた当人が持っている呪符は違いますね!」
「ありがとう、ございます」
「何、謙遜なさる事はありませんよ! これほど斬新で画期的で、効率的な呪符など見たことがない。世紀の発明といえるでしょう!」
──ジンが作り上げた【診析】・【光癒】の呪符を肴とし、上機嫌にワインを煽りながらジンを褒めたたえるジュタに曖昧な笑みで返すジン。
先程から無言でそのやり取りを見つめながら、内心の警戒を最大限にしてジュタの動向を監視し続けるギアン。
場違いなほどに明るい称賛の言葉が木霊する院長室。
その間も秘書が甲斐甲斐しくワインを注ぎ、料理を取りわけ、空いた皿を片付け、やがて食後の紅茶がテーブルに置かれる頃。
「そろそろお休みの時間かと思いますが、最後にちょっと見てもらいたいものがあるのです。よろしいですか?」
「見てもらいたいもの、ですか?」
「──院長閣下?」
「何、心配する事はありません。これほど斬新なものを作れるジン殿のその頭脳を拝借し、今後の実験・研究に役立てたいだけなのですから」
そう言いさっと手を上げたジュタに反応し、秘書が持ってきたのは……奥の机の上に会った、分厚い表紙の手記。
自身の研究成果が記されたであろう、付箋が張り巡らされたそれをジンの目の前に置くジュタ。
「私も一研究者として、一学者として様々な知識を取り入れ、それを統合して多種多様な研究成果を残してきました。しかし……それらはすべて、もう一段階上の効果が見込めるのではないか、と思いましてね。現状、それらを生み出した自分自身ではその壁を破る事は不可能と考え、新しい意見を取り入れる為に意見をもらいたいのですよ」
「はぁ、そうなんですか」
「……院長閣下の研究成果であれば、私は──」
「いえいえ、ギアンもここに。よければ君の意見も聞いてみたいからね」
「……──よろしいのですか?」
「もちろんですよ。忌憚のない意見を聞かせてもらいたい」
柔和な笑みを浮かべつつ、その分厚い表紙をめくって二人に内容の確認を促すジュタ。
怪訝そうな顔をしつつも、その内容を目にする二人が見れば──
「────?!」
「なっ……これはっ!!」
「どうです? 私の研究成果の数々は。特に……最後の項目。画期的だと思いませんか? 常々、【降魔】というのは無駄が多すぎると思っていたのです。私の考案した新しい【降魔】は、その無駄を省いた構成になっているのですよ」
──そこに書いてあったのは……薬のとある成分を毒物として生成する方法。
より強力な【集魔香】を作り上げる製法。
そして【降魔】の作成方法、その過程・工程。
さらに、【降魔】を改良する為に執拗に繰り返された……
そして……最終的にジュタが辿りついた【降魔】の新しい形が記されていたのである。
そのどれもが、この国の第一秘匿に抵触する内容であり、狂気と妄言が形となったようなそれらは……正に害悪の塊であった。
【
「──っ……貴方は……! この字は我が師アルセンのもの! あらゆる病に、あるいは体を欠損した人々に、【降魔】の技術を流用して対応せんと、研究し、書きあげていた大事な手記だっ! 葬儀のごたごたで
「……やれやれ、激昂するんじゃぁない
「っ…………!!! き、さまっ!」
憤怒の形相で立ち上がり、悠然と座って紅茶を飲むジュタに怒号を浴びせるギアン。
対して……ギアンをまるでモノを見るような無機質な目で見下し、先程までの真摯的な表情を豹変させ、狂気を浮かべて醜悪な笑みを浮かべながら差も当然の事と言葉を返すジュタ。
「……最後の、これ、は……全身を使う【降魔】を、今までの
「おお……流石は! まさか一瞬でそこまで読み解き、理解するとは! いい、君は実にいいぞ、ジン=ソウエン。既に
「なっ……まさか、そんな……そんな事の為に、こんな大掛かりな事をしてジンを呼び寄せたというの?!」
そんな中、手記を手に俯き、震える声で確認するかのようにじっと耐えながら言葉をジュタに投げかけるジン。
その言葉からジンの頭脳の明晰さ、その理解力に輝くような笑顔でいい実験材料を見つけたと視界に捕えるジュタの狂気が交差する。
そのあまりにもな内容、そして……国を犠牲にするような大掛かりな事をしてまで、成そうとしたのが個人の研究を完遂させる為だと知り、怒りを通り越して絶句し、叫ぶギアン。
「──そんな、事だと? この私のっ、研究をそんな事呼ばわりだと?! この院長である私の知性を! 研究を愚弄するとは何事だっ! この実験材料風情がぁ! この私は最もこの国で尊く! 崇高で知性ある人間っ! この私こそが絶対っ! たかがモノに成り下がった【
そのギアンの言葉を聞き、上機嫌から一転狂気を孕んだ激昂を見せるジュタ。
既に目は狂気以外の何者をも映さず、自分以外のもの全てを材料だと言い切るその言葉。
やがて言葉が進むにつれて宣言するかのように哄笑するすの姿はまさに……人ではない何かのようであった。
「─
「ジン=ソウエンが符に問う。──答えよ、其は何ぞ!」
そう言い切ったジュタの言葉に対し、抜杖するギアンと呪符を構えるジン。
もはや目の前のモノは……人ではない、唯の外道。
倫理や道徳等範疇外であろう、目の前のモノにこれ以上喚かせないよう、存在そのものを赦しがたいものに感じた二人は、最大限の能力を持って目の前の存在を打破しようと自らの戦力を起動させようとして──
「っ?! な……起動しないですって?!」
「っ……!! 魔力文字が展開しない! 一体どうなってるんだ?!」
「おっやあ? どうしたのかねえ? この私に……何をしようというのかねえ!!」
──ギアンの【呪印符針】も、ジンの呪符も……その呼び掛けにまったく反応しなかったのである。
思いもよらぬ展開に動揺する二人の目の前で、さも馬鹿にしたように侮蔑の笑みを浮かべて自らが腰に差していた【呪印符針】を抜杖し、ギアンに切りかかるジュタ。
鍔迫り合いをする両名ではあったが、その圧倒的な腕力によってギアンが競り負け、吹き飛ばされるギアンと、それを後ろに回って受け止めつつ、間合いを離して後方へと飛び下がるジン。
「馬鹿な……術式無しでどうやって身体強化を?!」
「……気でもない……あれは……!! まさか……!!!」
「いい、実にいい……! その理解力! 私の目指す最高の【降魔】……その【
──一応は【フェルシア流封印法師】の一人であるジュタ。
しかしながら……ジュタ自身はそのような怪力の持ち主ではなく、その体を何らかの術式で強化しなければ現状のような一撃を出せはしない。
まして、同期にティタやリナの居たギアンとは違い、運動など畑違いとばかりに研究に没頭していた人物である。
在る程度の戦闘能力があるとはいえ、【降魔】も使わずに闘えるほど肉体的には強くなかったはずなのだ。
それがこの結果。
ギアンの顔には理解出来ない現状に対して混乱する様が伺えた。
対してジンは……呪符が発動しない現状が、何かしらの妨害があってこそと認識し、【
そして、そこから入ってきた情報は──
「……だから。その顔……頭だけ残して消えてくれたまえ!」
「っジン! あぶないっ!」
「っ!!」
狂気の笑みを張りつけたまま、暴威のままにその【呪印符針】をジン目掛けて叩きつけようとするジュタの一撃。
それを屈んで避け、返す刀で袈裟斬に振り下ろされる斬撃がジンを襲うも、それを後方宙返りで避けた先。
重厚な木彫のタンスを一撃で粉砕する。
もはや初期のイメージなど欠片もない凶悪な笑みを張りつけて振り向くジュタ。
それに戦慄をもって慄くギアンと、【
「……
「ふん。当たり前じゃないかぁ……我々の知識は宝! それを……刀や武術などといった野蛮な行為でしか自身を測れない蛮族と、自然の中でしか生きられないような哀れな野性児達に蹂躙されていいはずがない! だから……我々は力を求めたのだよ! そして……私はついに辿りついたのだ! 【降魔】よりもより効率的に作り上げられる、
─【魔導回路起動】─
ジン達の目の前で、ゆっくりと【呪印符針】を旋回させた後、床に突き刺して魔力を通し、起動させるジュタ。
鍔と柄部分がシリンダー状に展開され、蒸気のように魔力を吐き出す。
それはやがて地面に
「絶対意思力制御ぉ! ジュタ=ナクリデヴィスが【呪印符針】に問う! 答えよ……其は何ぞぉ!」
─【意思力判定成功】─
【呪印符針】に刻み込まれた【降魔】起動の術式が展開され、魔法陣が輝きを放つ。
❝『──我は制御……──絶対意思制御。貴公の意思により【降魔】を起動せし者也』❞
─【降魔起動】─
そして……姿を現したのは……まるで巨大な鎧が動いているかのような、通常の【降魔】のように胴体が細いといった不自然なバランスがない形の【降魔】であった。
巨大な手足に見合った巨大な胴体が備わり、冑状の堅牢な頭部を持つその姿。
それは既存の【降魔】ではありえない姿であり──
「……な、によ、それ……それは……一体」
「わからないかねぇ? 天才などともてはやされたモノが聞いてあきれる! これこそ……究極の【降魔】っ! 人の脆弱な肉体を極力排し! 肉体の
顕現した【降魔】二体の姿に思わず呆然とするギアンを見て、満足げに、そして自慢のおもちゃを人に見せる子供のようにはしゃいで狂気の笑みを浮かべるジュタが、高らかにそう宣言する。
──そう。
ジンが最後に目にした、彼の手記に書かれていた内容。
それは……人の肉体全体を使うのではなく、その
その過程で、人体の代わりとなるパーツ……ギアンの言い分であれば、アルセンが義手や義体用に研究していたものを
思考錯誤という名の
「──なるほど。自分自身を除外し、この建物内部での魔力文字・術式の起動を阻害する術式を……
「──……ここに誘い込んでジンを罠に嵌める為に、フェルシア中枢の警備を空け、【集獣香】を使い国を危機に陥れるっていうの?! 自分の研究を……その狂った研究の為に、この国を犠牲にしようというのかっ! ジュタァァアア!!」
「黙れぇ! この私の名前を気安く呼ぶんじゃあない! 院長閣下とそう呼ばないかぁ!! ──まあいい。欲しいのはあくまで
何故自分達の術式が起動せず、ジュタの術式だけが起動するのかを【
それを煩わしげに一蹴し、再び狂気を浮かべて【呪印符針】を指揮者のタクトのようにジン達に向けるジュタ。
──モノ言わぬ鎧姿の巨大な質量が、【降魔】が使えないギアンと、呪符の使えないジンへと迫る。
むき出しになった狂気は止まる事を知らず。
今まさに凶器となってジン達に牙を剥こうとしていた。
登録名【蒼焔 刃】
生年月日 6月1日(前世標準時間)
年齢 8歳
種族 人間?
性別 男
身長 140cm
体重 34kg
【師匠】
【リキトア流皇牙王殺法】 カイラ=ル=ルカ
【
【
【キシュラナ流剛剣
【基本能力】
筋力 AA+
耐久力 AA
速力 AA+
知力 S+
精神力 SS+
魔力 SS+ 【世界樹】
気力 SS+ 【世界樹】
幸運 B
魅力 S+ 【男の娘】
【固有スキル】
解析眼 S
無限の書庫 EX
進化細胞 A+
疑似再現 A
【知識系スキル】
現代知識 C
自然知識 S
罠知識 A
狩人知識 S
地理知識 S
医術知識 S+
剣術知識 A
【運動系スキル】
水泳 A
【探索系スキル】
気配感知 A
気配遮断 A
罠感知 A-
足跡捜索 A
【作成系スキル】
料理 A+
家事全般 A
皮加工 A
骨加工 A
木材加工 B
罠作成 B
薬草調合 S
呪符作成 S
農耕知識 S
魔導機作製 C New 【降魔】の【
【操作系スキル】
魔力操作 S
気力操作 S
流動変換 C
【戦闘系スキル】
格闘 A
弓 S 【正射必中】
剣術 A
リキトア流皇牙王殺法 A+
キシュラナ流剛剣
【魔術系スキル】
呪符魔術士 S+
魔導士 EX (【世界樹】との契約にてEX・【神力魔導】の真実を知る)
フェルシア流封印法 C→B New 初期解析の結果、習得。【降魔】ティタニアとの契約。
【補正系スキル】
男の娘 S (魅力に補正)
正射必中 S (射撃に補正)
世界樹の御子 S (魔力・気力に補正)
【特殊称号】
真名【ルーナ】⇒【
自分で呪符を作成する過程における【魔力文字】を形どる為のキーワード。
【
【ランク説明】
超人 EX⇒EXD⇒EXT⇒EXS
達人 S⇒SS⇒SSS⇒EX-
最優 A⇒AA⇒AAA⇒S-
優秀 B⇒BB⇒BBB⇒A-
普通 C⇒CC⇒CCC⇒B-
やや劣る D⇒DD⇒DDD⇒C-
劣る E⇒EE⇒EEE⇒D-
悪い F⇒FF⇒FFF⇒E-
※+はランク×1.25補正、-はランク×0.75補正
【所持品】
呪符作成道具一式
白紙呪符
自作呪符
蒼焔呪符
お手製弓矢一式
世界樹の腕輪
衣服一式
簡易調理器具一式
調合道具一式
薬草一式
皮素材
骨素材
聖王女公式身分書
革張りの財布
折れた士剣
金属鉱石・魔鉱石
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いつも読んでくださっている方々、大変お待たせいたしました(;´д⊂)
三ヶ月間、ネット環境のないところに出張しておりました…….
もはや忘れ去られているかもですが、ようやく投稿になります(´・ω・`)
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