No.699338

ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』

piguzam]さん

あなた、賭け事はお好(ry

2014-07-08 13:17:24 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5071   閲覧ユーザー数:4460

 

 

前書き

 

 

 

今回は超ッ!!ご都合主義ッ!!!

 

 

でも、あんまり突っ込まないで下さい(´;ω;`)ウッ…

 

 

頑張って頑張って頭を捻りましたが、これ以上の展開が思いつかない。

 

 

駄目で馬鹿で糞な駄作者をどうぞお許し下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「出張ゲリラライブ型、神様チャンネ~ルッ!!ハァ~イッ!!お元気かしら、定明く~ん♪中々楽しませてくれる人生送ってるじゃない♪」

 

……さて、どうした事だろうか。

明日に備えて眠りに入った筈の俺こと城戸定明。

何故か俺を転生させた、あのえっちぃ服を着た神様と御対面中。

どこかのスタジオの様な作りの部屋の中心でマイク片手にノリノリな神様……つまりこれは――。

 

「俺はまた死んだんですか?っていうか寝てる間に襲撃とか誰だっての」

 

「ノンノン。君はバリバリ生きてるよー。ただちょーっと用事があって、君の意識だけこっちに来てもらったの。相馬っちもさっき呼んでたとこだしねー」

 

「相馬も?」

 

どうにも俺は死んだ訳じゃなく、神様の用事でこっちに呼ばれたらしい。

相馬も呼ばれたって事は、あのボコボコにしたオリ主も呼ばれたんだろうか?

 

「アレは一番最初に呼んでパパパッと終わらせたよ。転生させた時から何ともオリ主らしい願いばっかりだと思ったけど、やる事為す事テンプレ過ぎて興味落ち気味ー。終いには私の事ババアだなんて言ってくれちゃってさ。頭きたからサッサと帰らせたよ」

 

額に少し青筋を浮かべながら不機嫌さを隠さない神様に脱帽。

オリ主ぇ……せめて自分にとんでも無い力をくれた上に転生までさせてくれた相手には少しくらい敬意を払えよ。

マンガで憧れた力を持たせてくれただけでも一生モンの奇跡で、その上俺とは違って望んだ世界に転生させて貰ったんだろ?

その後の事は自分の努力次第だけど、そこまでお膳立てされたら普通は敬うのが礼儀だ。

良く転生したく無いっていうのは聞くけど、俺は前世が凄く早く終わっちまったから普通に転生したいと思った。

それで目の前の神様がチャンスをくれて、しかも憧れのスタンド使いにまでしてくれた。

そんな大恩人にババアは無いだろババアは。見た目お姉さんじゃん。

果てしなくどうでも良いが、アイツの判断基準が未だに謎だ。

 

「え~っと、何の用事ですか?」

 

「あぁうん。それなんだけどねー。頑張ってる君と相馬っちにごほーびあげよっかなーってさ。私考えちゃった訳なのですよ」

 

話が進まないのでオリ主の事は頭から放り投げて、俺は神様に用件を尋ねる。

すると神様はニコッと微笑みながらそんな事を言ってきた。

ご褒美?そんなモンを貰うほどに大層な働きをした覚えは無いんだがな。

と、俺の考えを読んだのか、神様はニヤリと笑う。

 

「充分にしてるよー。面倒くさがって関わろうとしない君が、まさか女の子の為に身体張るなんて信じられなかったもんッ!!しかも未だにフラグ立つ匂いがしないという落とし目当てじゃない所とか、ワクワクするねッ!?」

 

同意を求められても困るんですが?

 

「まぁそういう訳で、見てる私を楽しませてくれた定明君にあげるご褒美は……こちらッ!!」

 

何処からか鳴り出したデレレレレレーとかいうドラムロールの後、ジャンッ!!という締めの音で音が鳴り止む。

そして何時の間にか現れていたでかいボードに、幾つかの項目が書かれていた。

 

「まず一つ目は、『ココ・ジャンボ』の進呈。定明君にあげたスタンド能力の『ミスター・プレジデント』を使うには、ジャンボちゃんが必要でしょー?」

 

「あっ、これはすげえありがたいです、はい」

 

最初に貰ったご褒美は、俺にとって凄く良いモノだった。

『ココ・ジャンボ』とは、第5部に登場したスタンド使いの『亀』だ。

こいつは第5部のギャング組織、パッショーネに訓練されたスタンド使いで、普段は何の変哲も無い亀そのもの。

しかし背中の『甲羅』に彫られた鍵型の溝に発動の切っ掛けとなる『鍵』を差し込む事で、スタンド使いの亀になる。

その能力は『ミスタープレジデント』という能力で、鍵の中心部に装飾された宝石の中に『部屋』を作る事が出来る能力だ。

この部屋はクローゼットに机、ソファーがあり、何と電気も通ってる優れモノ。

冷蔵庫にテレビもあるので、ちょっとした宿泊には使える移動基地に近い。

さすがにこの能力は俺では使えないので鍵の状態で保存しておいたんだが、これで漸く使えそうだ。

……ってか、何でジャンボちゃん?

 

「だってこの子メスだもん。って事で、君のお家の直ぐ傍に転移させておくからね。はい次いってみよーッ!!」

 

ナチュラルに心を読まれたが、そんな事気にしてたら話が進まない。

っていうか神様なんだからそんな事ぐらいお茶の子歳々だろうと納得しておく。

そして、次のご褒美が……。

 

「次はこれ。すっごく便利だよ♪『スタンド2体までの同時操作を可能』ね。良いでしょ?」

 

「え?マジで良いんですか?」

 

これには驚いた。

今まではちょっとした能力程度なら同時に使えてたけど、スタンド自体の運用を可能にしてくれるなんて。

目を見開いて聞き返す俺だが、神様は少し苦笑いを浮かべてた。

 

「うーん。ぶっちゃけた話、今まではアヌビス神だけだったけど、良く考えたらジョジョの原作って、『二人のスタンド能力』を合わせて戦うキャラも居たでしょ?ホル・ホースしかり、スクアーロしかりって」

 

「はい。確かに居ました。コンビで戦う事で、相手を確実に追い詰めるタイプの奴等」

 

「ホル・ホースなんか『一番よりNO,2』が人生哲学だったぐらい、相方を重要視してたしね。っていう事で、アヌビス神+銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)以外にも、夢の組み合わせって大事だと思ってさ。今回のご褒美に繋がったの」

 

「あー、なるほど……まぁ、一人で二体操るっていう違いはありますけど……」

 

「そこは仕方無いよ。定明君だって、あんまり人にスタンド貸したくないでしょ?」

 

神様の言葉に、俺は大仰に頷く。

何だかんだ言っても、俺にとってスタンドってのは、俺が憧れた力だ。

それをアリサ達みたいに少しでも助けになればって意味で貸す以外にスタンドを貸すつもりは無い。

何より誰もがスタンド使いになれるって訳じゃねぇしな。

 

「それに同時操作は可能にしたけど、操るのは定明君自身だよ?ちゃんと意識しないと直ぐにスタンドはどっちかが消えて一体になっちゃうし、片方の能力に縛られて一体しかスタンドを使えない時もあるからね」

 

「え?」

 

「当たり前じゃーん。君が操作するのに、君が意識しなきゃどうしようも無いよ」

 

マジか。いや、まぁそりゃそうだよな。

例えば一体のスタンドでラッシュを繰り出してもう一体で能力を使う。

それはつまり、頭で理解して同時に操らなきゃならないって事だ。

エニグマの紙みたいに一度紙にしたらそれで制御を離れる訳じゃ無いから、操るならしっかりと考えなきゃ駄目って訳か。

それとルールに縛られて本来の能力が使えなくなる、スタンドの相性も大事になった。

こりゃまた暫くは特訓続きになるな……面倒だが、自由に使える様になれば戦力アップに繋がる。

 

「って事で、私からのご褒美進呈番組はこれにて終了ッ!!これからも楽しい人生を、期待してるゾ☆」

 

神様が最後にパチッとウインクをした瞬間、俺の意識は急速に薄れて闇に落ちていく。

意識が落ちる前に見えたのは、楽しそうな笑顔で手を振る神様の姿だった。

 

ピピピピピピピピピッ!!

 

「……朝、か」

 

眠りから醒めた俺はけたたましく鳴る目覚ましを止めて、ベットから起き上がり背伸びをする。

そのままラフな格好に着替えてから下に降り、顔を洗って歯磨きを済ませ、既に起きていた父ちゃんと母ちゃんに挨拶する。

二人も俺に挨拶を返し、俺は朝飯まで裏庭で身体を動かしてくると言って玄関に向かった。

確かココ・ジャンボは家の前に居るって言ってたし、回収しねーとな。

「ご飯出来たら呼ぶわね~」という母ちゃんの言葉に返事を返しながら外に出ると、玄関の前に鍵の形の彫りが入った亀が鎮座していた。

間違いない、亀のココ・ジャンボだ。

 

「よっと……まぁ、今日からよろしくな。ココ・ジャンボ」

 

「……」

 

持ち上げて話し掛けるが、当然亀なので返事は来ない。

しかし抵抗せずにジッと俺を見ているだけなので、まぁ嫌われてはいないだろう。

後は母ちゃん達が飼っても良いと言ってくれるかどうかって所か……。

 

「良いわよ~。亀さんって見てると和むのよね~♪」

 

「まぁ亀は物影が好きだし、わめいたりウロチョロする生き物じゃ無い。母さんが良いなら父ちゃんも良いぞ……しかし、何だ?この鍵の窪みみたいなものは?」

 

と、あっさりとOKが出て拍子抜けだが、まぁ許可が出て良かったと安堵する。

そして今日は両親も休みなので、出掛けるついでに亀の飼育用の水槽とか必要な物を買ってきてくれるらしい。

俺も一緒に行く事になりそうだったが、今日は家でゆっくりしたいと断り、二人だけで出て貰う事にした。

その方が今日の作戦には都合が良いからな。

とりあえず朝飯をまだ作ってるという事で父ちゃんと母ちゃんは家に戻り、俺は裏庭で特訓を開始する。

ココ・ジャンボも一緒に外だ。

 

「ふぅ……良し。――スタープラチナ」

 

まずはスタープラチナを呼び出して、傍に待機させる。

さて、どんな感じで使えるのやら……。

 

法王の緑(ハイエロファント・グリーン)

 

続いてハイエロファントを強く念じて呼び出すと、本当に傍に現れた。

だが少しでも気を抜くとどっちかが消えそうだ。

やっぱり呼び出せる事は呼び出せても、同時に操作するとなるとかなり難しい。

今の状態じゃオラオラすら出来ないぐらいだ。

 

「これは、慣れるまでやるしか無いか……じゃあ、次に……スタープラチナ・ザ・ワールドッ!!」

 

一瞬で世界がモノクロに変わり、俺以外の全ての時間が止まる。

ここまでは何時もと変わらないんだが――。

 

「――ッ!?」

 

う、動けない……ッ!?喋る事も出来ねえ……ッ!!

やっぱり無理があったか……ッ!!これが片方の能力に縛られるって事かよ……ッ!!

時間が停止したと同時に俺の動きまでもが縛られ、時を止めたスタープラチナですら動けなかった。

これは多分、DIOに時を止められた時の承太郎さんと同じ現象なんだろう。

知覚出来ても動けない……いや、知覚出来るからこそ余計に恐ろしいッ!!

これが、承太郎さんの感じてたDIOとの戦い……その一端にすらならないこの状況ですら、マジでブルッちまいそうだ。

 

「――グッ!?ハァーッ!!ハァーッ!!ハァーッ!?……これは、効くなぁ」

 

そして、停止時間が解除されたと同時に呼んでいた二体のスタンドが同時に消えて、俺は地面に膝を付く。

全力フルマラソンでもしたかの様に大量の汗を流しながら、俺は荒い呼吸を吐いて息を整える。

 

「フ、フウゥー……ッ!!……停止した時間の中に入門出来ないスタンドを操って時を止めると、ああなっちまうのか……これが相性の問題ってヤツだな」

 

今の訓練で分かった事が一つ。

スタープラチナやザ・ワールドの様な時間停止の能力は、他の能力との相性が抜群に悪い。

本来止まった時の中を動けるスタンド以外を持ち込んだ事で、本体の俺にも影響が出たんだろう。

スタープラチナはOKでも、もう一体はNO。

なら、両方のスタンドを操っている本体の俺は?

その結果が、さっきの止まった時を認識出来ても動けないっていう矛盾だ。

この関係で行くなら時間操作系のスタンドは全て全滅だな。

 

「まっ、それが普通にして当たり前だ。原作以上の能力なんて欲張り過ぎるか……いや、まぁ既に全スタンド持ってる時点でアレだよな……兎に角、今は二つのスタンドを同時に操れる様にならないと」

 

俺は呼吸を整えてから立ち上がり、再び二体のスタンドを動かす訓練を行う。

それから暫く訓練を続けてから風呂に向かい汗を流した。

さすがに汗だくで飯は食べたくねえよ。

訓練自体は今日が初めてだから上手くいく筈も無く、同時に操ると凄くパワーダウンする。

動きも遅いし力も無い。本来の力を全然発揮出来ねえ。

これは暫く訓練だけにして、もしも戦う事があったら一つのスタンドで戦う方が賢いな。

新たに得た力の恩恵を確かめ、俺は美味しい朝食にありつくのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

時間は進んで11時過ぎ。

両親は既に買い物に出掛けていて、家には誰もいない。

俺はココ・ジャンボを連れて一人で近所の公園に足を踏み入れていた。

相馬が管理局の船に戻るのは夕方からと聞いているので、俺はこの空いた時間にやれる事をやるつもりだ。

即ち、アリシアちゃんの蘇生を可能にする方法を探さなきゃならない。

そんな訳で色々と考えているんだが……何か良い方法は無いか?

 

「少なくとも、アリシアちゃんの肉体は既に死んでる……けど、死体事態は綺麗な状態で残ってて損傷は無い」

 

プレシアさんの記憶では、アリシアは魔導実験の事故の際に漏れたエネルギーと酸素が反応した結果、室内の酸素が失われ窒息死とあった。

しかしプレシアさんが直ぐに遺体を保存していたお陰で、身体自体の損傷はほぼ無い。

 

「肉体が無事なら、アリシアちゃんの魂の戻る体はあるって事だ……けど、問題はどうやって戻すかだよなぁ……」

 

ジョジョの中でも、稀だがそういう場面はあった。

死んだ筈のジョセフ・ジョースターが第3部で承太郎さんの無茶な蘇生方法で蘇った事もあったし。

あの時、ジョセフさんの魂は確かに天に昇った筈なのに戻ってきていた。

承太郎さん自身も「死体から死体への輸血」と言ってたのにも関わらず、だ。

どんだけしぶといんだよ、ジョセフさんは。

他にも、ジョルノ・ジョバァーナがゴールド・エクスペリエンスでブチャラティさんを擬似的に蘇らせてたな。

本人は狙った訳じゃ無えけど、ゴールド・エクスペリエンスが与えた生命エネルギーのお陰で『体は死体だが、生きてる魂』という何とも奇妙な状況になってた。

所謂、リビングデットの状態になってた訳だ。

 

「でも、それは完全な復活じゃ無えし、プレシアさんがキレるだろうな……」

 

いやもう、ホントどうしようか?

他に考えられる手段としては、『D4C』を使う事だ。

物体に挟まる事で、自分や他の生き物、物体を別の世界へと渡らせる事が出来るスタンド。

しかし自分以外の物体は別の世界で同一の存在に出会うと問答無用で消滅させてしまう恐ろしい能力を持ってる。

それが、Dirty Deeds Done Dirt Cheap(いともたやすく行われるえげつない行為)、『D・D・D・D・C』の頭文字を略して『D4C』と呼ばれるスタンドだ。

こいつを使って、この世界と良く似た別の世界へと自分自身を飛ばす。

行き先は『こことは違う自分以外の転生者』が居る次元の世界で、アリシアちゃんの蘇生を可能にした世界。

無限に広がる並行世界の中からその世界へと飛び込んで、他の転生者に協力を仰ぐ。

これが一番確実な方法だろう。

しかしまぁ他の世界に飛んだ所で、その転生者が協力してくれるかは五分五分の確率だけどな。

 

「もしもこの案が無理なら、最悪ポルナレフさんみたいにココ・ジャンボの中で幽霊として住んでてもらうか……ん?」

 

と、色々とアリシアの復活案を考えていた俺だが、ふと何かが頭の片隅に引っ掛かって言葉を止める。

待て、今俺は何を考えていた?

D4C?いや違う……ゴールド・エクスペリエンス?これも違う。

ジョセフ・ジョースター……魂?……『魂が戻る』?……ッ!?待てよ、もしかしてッ!?

俺はある一つの仮説を思いついて、その場から立ち上がって奥の茂みに入る。

そこで昨日プレシアさんから貰った簡易式転移ポートというのをポケットから取り出す。

……荒唐無稽でやれる自信なんて皆無だが……試してみる価値はある筈だッ!!

俺は転移ポートを起動して、時の庭園へと転移した。

 

「あら?どうしたのかしら、ジョジョ君?今日はこっちに来るとは言って無かったと思うけど……」

 

『お兄ちゃん?』

 

転移したのは俺が昨日プレシアさんと戦った玉座の隣の部屋だ。

そこには既に投影式のモニターに向かうプレシアさんと、その後ろで椅子に座るアリシアの二人が居た。

アリシアの遺体の入ったポッドもここに移されてる。

テスタロッサとの話し合いの為に、ここへ移したんだろう。

俺は二人の質問を無視してズカズカとアリシアの遺体へと歩み寄り、体を確認する。

見た感じでは、外見に損傷は見当たらないが……。

 

『ち、ちょっとお兄ちゃんッ!?私の体をジロジロ見ないでよーーーッ!!』

 

そう考えていたら、顔を真っ赤に染めたアリシアが目の前に出て俺の視界を塞いできた。

まぁ、確かにこれはちょっとダメ過ぎたな。

少し頭を冷やして冷静になりながら、俺はこっちへと不思議そうな視線を向けるプレシアさんと向き合う。

 

「プレシアさん。ちょっと聞きたいんですけど、アリシアちゃんの体に損傷は無いんですか?」

 

「……損傷とは、どういう意味かしら?心臓が動いていない。脳波が感じられないという意味では、アリシアの体は間違いなく損傷してるけど」

 

「それ以外です。えーっと……生きていない、という意味以外で、例えば内臓が一部壊死してるとか」

 

「無いわ。アリシアの肉体を保存してるこの液体は特別製でね。皮膚から内蔵に至るまで、全て当時のままよ。このまま生き返っても不思議じゃないくらいに」

 

俺の言葉が真剣なのを感じ取ってくれたのか、プレシアさんも真剣に言葉を返す。

良し、肉体が無事なら、多分魂が戻っても普通に生きる事が出来るだろう。

でも少し念には念を入れておくに越した事は無いだろう。

 

「ちょっと念入りに、体の方を治しておきますんで……『クレイジーダイヤモンド』ッ!!」

 

俺はクレイジーダイヤモンドを呼び出して、ガラスケースを通過させてアリシアの体に拳を触れさせる。

スタンドは概念的に言えば精神体のエネルギー。

だからこそ、物体を通り抜けて向こう側にあるモノのみに干渉する事も出来る。

承太郎さんがDIOとの戦いで、スタープラチナを自分の内部に入れて心臓だけを止めたのと同じ原理だ。

 

『キャーーッ!?お、おお、お兄ちゃんのえっちぃーーッ!?』

 

「いてッ!?ち、ちがッ!?俺が直接触れた訳じゃ無えだろッ!?」

 

『そ、それでもダメーーーーッ!!』

 

クレイジーダイヤモンドで触れたのは頭部なのに、アリシアはそれですらダメだったらしく、俺をポカポカと殴ってくる。

地味に痛いので、俺は慌ててクレイジーダイヤモンドを戻して遺体から距離を取る。

それでもまだ警戒してるのか、歯を剥き出しにして唸るアリシアの霊体。

……こうして見てると、地味にアリシア(霊体)がスタンドに見えなくも無いな。

 

「ジョジョ君、一体どうしたの?……もしかして、アリシアを復活させる方法が見つかったのかしら?」

 

「……かもしれない、っていう可能性ですけどね」

 

事の成り行きを見守っていたプレシアさんが、表情に縋る様な想いを籠めて俺を見てくる。

俺はそんなプレシアさんに何とも煮え切らない答えを言いながら視線を合わせる。

 

「かもしれないとは、どういう事?」

 

「確証が無いんですよ。この方法ならいけるかも、って衝動的に思っただけですから」

 

「……試せるのなら、話してみてくれない?」

 

「本気ですか?正直、賭けみたいなものですよ?」

 

上手くいかなかったら、アリシアちゃんの魂の保証は出来ない。

そう続けて言っても、プレシアさんは真剣な表情を崩さずに俺を見ていた。

 

「例えそうでも、私にはもうアリシアを生き返らせる方法が無いの……ジュエルシードを使うのは、ハッキリ言って最悪の手だったわ。アリシアだけで無くフェイトの事も何とかしないといけない私には、もうジュエルシードを使う事は出来ない……今の所アリシアを助けられる可能性があるのはジョジョ君の力だけなの。勿論、アリシアが嫌ならしないけど」

 

真っ直ぐに自分の娘の……いや、自分の娘『達』の事を第一に考えた言葉を発するプレシアさん。

今の彼女には誰かを犠牲にしてでも、という最悪の考えは無いらしい。

そういう人の為に協力するのは俺だって問題は無い。

寧ろ何とかして助けてあげたいぐらいなんだが……如何せん、この方法には根拠となる自信なんてこれっぽっちも無い。

やっぱり分の悪い賭けは止めて、D4Cで世界を渡って他の転生者に助けを求めるか。

 

『良いよ。お兄ちゃん……その方法を試してみてくれない?』

 

しかし今度は当事者であるアリシアちゃん自身が俺に頼んできた。

振り返ると、其処には覚悟を決めた表情を浮かべるアリシアが居る。

 

「本気か、アリシアちゃん?どうなるか全く分からないんだぜ?それにもう一つ方法はあるんだ」

 

「もう一つ?それはどういう方法なの?」

 

決死の覚悟を決めた表情のアリシアちゃんに焦って、俺は言わなくても良い事を口走ってしまう。

しかもそれを聞いたプレシアさんに目敏く聞き返された。

……どうしたもんか……話すか?D4Cの能力の事を?

本当なら自分のスタンド能力の事をベラベラと喋る様な事はしたく無いんだが……。

頭の中で割りと最低な事を考えているが、目の前に居るプレシアさんの真っ直ぐな目を見てると、自然に溜息が出てしまう。

……仕方無え。話すか……一度協力すると思った以上、隠す訳にはいかねえだろう。

多分この二人なら誰にも話さない様に頼めば守ってくれるだろうし……いざとなったらヘブンズ・ドアーで記憶を消す。

プレシアさんも管理局の事を嫌ってるから、管理局に俺の事をバラす事も無い筈だ。

憶測や予想ばっかりだが、人を何時迄も疑ってたら誰も信じられなくなっちまう。

そんな疑心暗鬼の塊にだけはなりたくねえ。

承太郎さんや仗助さんだって、自分のスタンド能力がバレる可能性があっても、困ってる人相手に能力を使う事を惜しんだりしなかった。

なら、一度助けると決めた相手を疑って能力を出し惜しむなんて出来る筈も無いじゃねえか。

 

「……他の誰にも喋らない事を誓ってくれますか?管理局は勿論、テスタロッサやアルフにもです」

 

俺が最後の確認の為にそう聞くと、二人は顔を見合わせて暫く考えこむ。

やがて結論が出たのか、二人は少し複雑そうな顔で俺に視線を戻した。

 

「……誓うわ……話してくれる?」

 

「……分かりました……俺の持ってる能力の一つなんですが――」

 

真っ直ぐに真剣な目で俺を見てくるプレシアさんを見て、俺も覚悟が決まった。

だからこそ、俺は二人にD4Cの能力の事を話した。

多次元の並行世界へと渡れる能力の事。

そしてその世界はこことは似て非なるパラレルワールドも存在する事。

その数多の可能性の世界から、死者蘇生の能力を持つ人間に協力を仰ぐ事を。

さすがに俺が転生者という事は話せないので、その辺りの話は一切してはいない。

 

「――以上が、俺が考えていた最後の手段です」

 

「……平行世界……そんな場所を自由に渡れるなんて……とんでもないレアスキルね。いや、ジョジョ君は魔導師じゃないから、厳密には違うのよね」

 

『ふえー。凄いんだね、お兄ちゃんの力って』

 

「ふふっ。そうね、アリシア……じゃあ、さっきジョジョ君が考えたのは、どういうものなのかしら?それも話してくれないと、どっちの案が良いのか比べようが無いのだけど……」

 

俺の力、というよりはD4Cの能力の半端無さに驚いて目を丸くするアリシア。

そんなアリシアを微笑ましそうに見ながらも、俺に更なる質問を重ねるプレシアさん。

それもそうか、まだ俺が考えた案の方は話してないし……。

 

「もう一つの方なんですけど、これは別の能力を使います……来い、『オシリス』」

 

俺の呼び掛けに応じて、俺の背後から現れる大型のスタンド。

つぶらな瞳に分厚い唇、そして指の先っぽが吸盤みたいな形になった姿。

詳細は話していないが、既にスタンドが見える様になってるプレシアさんと幽霊のアリシアは、俺の背後のスタンドを見て目を丸くする。

プレシアさんがスタンドの姿を見るのはこれが初めてだもんな。

 

「こ、これは……ッ!?」

 

『わッ!?ま、また違う人が出て来たッ!?』

 

スタンドという存在を初めて認識して驚くプレシアさんと、何体かのスタンドを見てるアリシア。

意味は違っても驚いてる二人を無視して、俺は口を開く。

 

「こいつも俺の能力の一つ、『オシリス神』っていうんですが……コイツの能力を使って、アリシアちゃんの魂を『実体化』します」

 

背後に浮遊するオシリス神を指差しながら、俺はスタンドの名と能力を口にする。

オシリス神はアヌビス神と同じくエジプト9栄神を司る名のスタンド。

第3部でダニエル・J・ダービーが使っていた『魂を奪う』能力を持っている。

その能力の詳細だが、勝負前に対戦相手へ「魂を賭ける」という宣言を(言葉でも文書でも、例え冗談や誘導されたものであっても対戦相手が明確な意思表示を示せば良い)をさせることで、敗北を認めた相手の魂を無条件で奪う。

また、対戦相手本人ではなくても友人や肉親の魂も賭けの対象にでき、証明文を一筆書かせることでその場にいない人物にもスタンドを発動できる。

つまりどんな賭けであっても、俺が勝てば魂を能力で取り上げる事が出来てしまう。

そしてここが一番重要なんだが、相手から奪った魂は『コインとして実体化』する事が出来る。

つまり俺が考えたプランはアリシアちゃんと出来レースの賭けをして、アリシアちゃんの魂をコインとして俺の『支配下』に置く事だ。

こうする事で本来は幽霊として留まるか、あの世(あるか知らねえけど)に昇るしか無いアリシアちゃんの魂を俺が引き止める事が可能になる。

 

「それでここからがこのプランの賭け要素になるんですが、オシリスが作った魂のコインは俺が負けを認める事で、『搾取した魂は自動的に肉体へ戻される』って事です」

 

そう、オシリスが作ったコインは俺が負けを認めれば強制的に支配力を失い、元の体に戻る様になっている。

この能力を応用して、『幽霊のアリシアちゃん』をコインとして『アリシアちゃんの魂』に固定する。

更に俺がプレシアさんと出来レースをして負ければ、『オシリスの能力で魂として固定化されたアリシアちゃんの魂は自動的に肉体へと還元されるんじゃ無いか?』という事だ。

現に第3部のダービーとの戦いでは、脈が無くなって事実上死んだ筈のポルナレフさんとジョセフさんは魂が戻った事で生き返っている。

しかしここで違いが出てくるとすれば、その後でダービーが承太郎さんとの戦いに負けて正気を失った時の事だ。

正気を保てなくなったダービーのコントロールを離れて、オシリスが今まで魂と化したコインも全て解き放たれていった。

ここでそれを見ていたアブドゥルさんは「あの世に解き放たれたようだな」と言っていたが、ここで違いが生じる。

何故、目の前のジョセフさんとポルナレフさんは生き返ったのに、他の魂はあの世へ行ったのか?

 

 

 

ここからは俺の推測なんだが、それは『肉体が五体満足で有るか否か』だったと思う。

 

 

 

魂を失った肉体は事実上生命活動を止めてしまう。

そうなれば肉体に残る道は、腐敗という止めようの無い現象だ。

しかしジョセフさんとポルナレフさんの肉体は生命活動を止めて数分だったのが幸いしたのか、その後も普通に動いてる。

ブチャラティさんの様な不完全な復活では無く、完全な復活。

恐らく今までダービーが奪ってきた魂の持ち主の肉体は、普通に火葬されてしまったんじゃないのだろうか?

一般人にはスタンドは見えないし理解も出来ない。

だからダービーのスタンドに魂を奪われたなんて誰も想像が付く筈が無いんだ。

なら、ギャンブル中に心臓麻痺で死んでしまったとして処理されてもおかしくない。

逆に、死体を長期間綺麗に保存する術だなんて無かった筈だ。

それなら、『肉体を完璧な状態で保存されてる』アリシアちゃんは、オシリスのルールに則って肉体に戻れるんじゃないか?

それを思い出し、推測して俺はこの案が上手くいくんじゃないかという考えに至った。

 

「……確かに、ジョジョ君の言う通りの能力なら、理論上は可能ね……でも、賭け要素っていうのはそれだけじゃないんでしょう?」

 

俺の推測した理論とオシリスの能力を聞いたプレシアさんは5分ほど考えこんでからそう聞いてきた。

ちなみにアリシアは理解できなかったのか頭を捻って唸っているのでスルー。

 

「はい。まずオシリスで……いや、俺の能力で幽霊のアリシアちゃんに干渉は出来るんですが……問題は、アリシアちゃんを『能力の枠に収められるか』です」

 

最初に言った通り、オシリスは人間の魂を強制的に奪い取れるんだが、ここが俺の不安要素だ。

それは『既に幽霊の状態のアリシアちゃんを能力の対象に当て嵌められるのか?』に尽きる。

ダービーがコレクションにしていた魂は全て『生きている人間から』奪い取ったモノ。

既に死んでるアリシアちゃん自身……つまり幽霊を能力で縛れるのかはまた別問題になる。

もしかしたら能力が発動しないかもしれないし、逆にコインにしたアリシアちゃんの魂が肉体に戻るかも分からない。

幽霊に戻るだけの可能性も無きにしもあらずってトコだ。

でも、岸辺露伴が杉本鈴美さんにヘブンズ・ドアーで干渉して能力を使えたんだから、多分イケる気もする。

アリシアちゃんの肉体もクレイジーダイヤモンドで完璧に治したし、可能性は充分にある筈だ。

そう説明すると、プレシアさんはアリシアちゃんへと視線を移す。

 

「……どうする、アリシア?私は貴女が望むなら、今ジョジョ君が言った方法以外にも探すつもりだけど……貴女はどうしたいの?」

 

『うーん……私は、お兄ちゃんにお願いしたいかな』

 

「おいおい。本当に良いのか?さっきも言ったけど賭けの要素が強いし、異世界に渡った方が確実だと思うぞ?」

 

『でも、それって結局は他の人にお願いするんだよね?知らない人に頼むより、私はお兄ちゃんにお願いしたんだけど……』

 

アリシアちゃんは俺にそう言いながらも微笑みを浮かべる。

まぁ確かに、アリシアちゃんの言いたい事も分かる。

自分が生き返れるかどうかは他人に懸かってるのなら、知ってる人間の方が良いというのは当たり前だ。

例え他の世界で実績があっても、今回も上手くいくなんてのは自分達には分からない。

 

『だから、お兄ちゃんにお願いしたいの。もしも上手くいかなくても私はお兄ちゃんを恨んだりしないし、駄目だったら駄目でスッパリ諦められるよ。本当なら生き返れる筈なんて無いんだもん』

 

随分と諦めが良いというか、サッパリとした答えというか……。

アリシアちゃんの言葉を聞いて、プレシアさんは苦い表情を浮かべる。

……僅か5歳で死んじまった娘にこんな言葉を言わせてしまう、それが悔しいんだろうな。

俺としても前にプレシアさんに言ったが、可哀想だって気持ちはある。

だからこそ、何とかして俺はアリシアちゃんを生き返らせてあげたい。

傲慢だってのは分かってる。

でも、折角チャンスを得て貰ったスタンド能力だ。

数少ない転生というラッキーに出会えたんだから、俺がその力を好きに使っても良いだろうよ。

 

「……分かったわ……ジョジョ君……お願い出来るかしら?」

 

アリシアちゃんの覚悟、決意を聞いてプレシアさんも納得がいったのか、俺にお願いしてきた。

しかしプレシアさんの目には、誰が見ても分かるぐらいに不安が渦巻いてる。

……こりゃ責任重大だな……でも、やってやる。

 

「……分かりました……じゃあ、アリシアちゃん。俺の前の椅子に座ってくれ」

 

『うん』

 

俺はプレシアさんにしっかりと頷いてから、アリシアちゃんを椅子へ促す。

それに頷いて椅子に座る間に、俺達を挟むテーブルの上にトランプを取り出して二枚、伏せて置いた。

 

「ルールはシンプル。どっちのトランプが数字が高いかを当てるゲームだ。俺は左に賭ける」

 

『じゃあ、私は右に賭けるね』

 

これでゲームは成立。

後は重要なワードになる『あの言葉』を言うだけだ。

真剣な表情を浮かべるプレシアさんとアリシアちゃんに視線を向けてから、俺はあのワードを口にする。

 

「賭けるかい?――アリシアちゃんの『魂』を?」

 

『……うん――賭けるよ、『私の魂』を』

 

「……グッド」

 

これでオシリスの能力が発動する条件は整った。

後はこのゲームが終わってからオシリスがちゃんと発動するかどうか。

……上手くいってくれよ、頼むから。

俺は深呼吸しながらカードを捲る。

まず、アリシアちゃんのカード……ハートの9。

そして俺のカードは、クラブのJ。

この時点で、賭けは俺の勝ちとなった。

 

ドォワァアッ!!

 

『あッ!?』

 

「ッ!?アリシアッ!?」

 

瞬間、俺の背後に居た筈のオシリス神が急にアリシアちゃんの傍に現れ、アリシアちゃんを捕まえた。

良しッ!!スタンドの能力は発動したぜッ!!

オシリスに捕まえられたアリシアちゃんは驚きの声をあげるも、オシリスはそれに構わずアリシアちゃんをグニュグニュと捏ね始める。

まるで粘土細工の様に捏ねたかと思えば、次の瞬間には――。

 

バァアアアンッ!!

 

『――』

 

手の平でアリシアちゃん自身を挟み込んで、平たく潰してしまった。

その様子を見てショックを受けた様に呆然としてしまうプレシアさん。

そして、オシリスが合わせていた手を離すと、その手の平から一枚のコインが落ちてくる。

俺はそのコインを床に落ちる前にキャッチした。

 

「良し……プレシアさん。これがアリシアちゃんの魂です」

 

「ッ!?ア、アリシアはッ!!アリシアは大丈夫なのッ!?」

 

表面に人の顔が描かれたコインを見せると、プレシアさんは取り乱しながら俺に詰め寄る。

目の前で自分の娘が捏ねられた挙句に叩き潰されてコインにされれば、取り乱しても仕方無えだろう。

それを理解してるから、俺は落ち着いてプレシアさんに声を掛ける。

 

「大丈夫ですよ。俺がこの状態で気絶したり死んだりしなきゃ、魂はあの世に飛ぶ事はありません……さっ、早く賭けを続けましょう。問題無いっつっても、何時迄もこの状態には出来ませんから」

 

「そ、そうね。ごめんなさい、取り乱しちゃって……今のと同じ要領でやれば良いのね?」

 

「はい。俺は自分の魂じゃなくてアリシアちゃんの魂を賭けます。それでプレシアさんに負けて、上手くいけば……オシリスは魂をコインから肉体へと返す筈です」

 

「上手くいかなければ、恐らくアリシアは幽霊に戻る……若しくは……」

 

魂の楔が開放されて、あの世に昇る可能性もある。

最後までは言わなかったが、プレシアさんもそれは理解している。

だからこそ、プレシアさんは二の足を踏んで何も言わない。

もしも運が悪ければ、もうアリシアちゃんとは話す事も触れ合う事も出来なくなる。

しかしもう賽は投げられちまったんだ。

ここから引き返す事は出来ない。

それも覚悟していたのか、プレシアさんは直ぐに表情に覚悟と決意を滲ませる。

 

「ジョジョ君。私もアリシアの魂を取り戻す為に同じゲームをするわ……『私の魂を賭けて』」

 

「グッド……では、カードを机に伏せますよ?」

 

俺の言葉に頷き、さっきのワードを口にした事で、オシリスはゲームを受諾した。

掛け金はプレシアさんの魂と、俺の持つアリシアちゃんの魂。

そしてさっきと同じ流れで、俺は二枚のトランプを机に伏せる。

 

「じゃあ、俺は右のカードに賭けます」

 

「なら、私は左に」

 

「分かりました……では……いきます」

 

サクサクと前口上を終わらせて、俺は伏せたカードを捲る。

俺のカードはダイヤの8。

そして……。

 

「待ってちょうだい……私に捲らせてもらえない?」

 

プレシアさんのカードを捲ろうとすると、プレシアさんがそう申し出てきた。

問題は無いので俺はカードから手を離して、プレシアさんの前に出す。

プレシアさんはそのカードを見ると2,3回深呼吸をして、ゆっくりとカードを掴む。

そして、真剣な表情でカードを捲り始めた。

 

「……アリシア……生き返ったら、ピクニックに行きましょう……私とアリシア――フェイトとアルフも……一緒に……」

 

嘗て日記に書き込まれていた夢を叶える為に、プレシアさんはカードを捲る。

出たのはハートのQUEEN。プレシアさんの勝ちだ。

 

『――』

 

すると、アリシアちゃんのコインから煙の様に魂が噴き出してきた。

ッ!?どうだッ!?

 

「ッ!?アリシアッ!!」

 

プレシアさんが悲鳴をあげる中、空中に現れたアリシアちゃんの魂は――。

 

 

 

吸い込まれる様に、『ポッドの中の肉体へと』入っていく。

 

 

 

その状況を呆然とした表情で見守るプレシアさん。

俺は、アリシアちゃんの体へと魂が吸い込まれた時点で、確信に近い思いを抱いていた。

その思いを裏付けるかの如く――。

 

『――ゴボ』

 

「ッ!!?ア、アリシアッ!!!」

 

ポッドの中のアリシアちゃんの『目』が僅かに見開かれ、口から気泡が出始めた。

それを見てプレシアさんはポッドに駆け寄ると、コンソールを操作してポッドを全開にする。

急に開放された液体が部屋に開放され、傍に居たプレシアさんの体を豪快に濡らすも、プレシアさんは気にも留めない。

そのまま彼女はアリシアちゃんの体を抱きとめて、アリシアちゃんに声を送る。

 

「アリシアッ!!アリシアッ!!」

 

「――――お母、さん?」

 

「あ…………あ、ぁ……ッ!?ア……ア゛リシア゛ァァア゛……ッ!!」

 

「……お母さん……お゛がぁざぁああ゛ん……ッ!!」

 

目を覚まし、触れられる、生きてる。

ちゃんとこの世界に生きる人間として、生き返ったアリシアちゃん。

プレシアさんは生き返った我が子を抱きかかえたまま床に座り込み、子供の様に泣く。

声を上げて、ボロボロと涙を零す姿は――紛れも無い『母親』の姿だ。

アリシアちゃんもやっぱり生き返れて嬉しい気持ちは変わらなかった。

幽霊の時とは違い、ちゃんと生きて触れ合える……それを理解したからこそ、プレシアさんと同じ様に泣いた。

死っていう別れから、奇跡の出会いを果たせた親子。

俺はそれを部屋から出て、苦笑いしながら聞いていた。

服はポッドから溢れ出て来た液体でびしょ濡れになっちまってる。

 

「あーあ。昨日は血だらけにされるし、今日はびしょ濡れ……最近の俺はツイてねぇなぁ……」

 

部屋の中に響かない様に小声で呟きながら、俺は部屋を後にして転移ポートを起動させる。

……長年の夢が叶い、感動の再会を果たした親子の場面に、俺は邪魔者だ。

ここはお決まりのあの台詞でも言っときますか。

 

 

 

「城戸定明はクールに去るぜ」

 

 

 

その言葉と同時に、俺は時の庭園を後にした。

 

 

 

 

 

 

と、いう訳でアリシアちゃん復活( ̄ー ̄)ニヤリ

 

 

痛だだだだッ!?石を投げないでお願いしますッ!?

 

ん?空から何か……ってヤドクガエル降らせないであばばぁ~~~ッ!!?

 

 

 

 


 
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