アイドルマスター 貴音v雪歩
「雪歩、私貴女のことが好きになってしまったようです」
「え?」
ライブの後、事務所からの帰り道。暗いからと途中まで一緒に
四条さんと歩いている途中の道で言われた。
人の気配はなく私たちを見ているのは夜空に浮かぶ満月だけだった。
「ええええええ!?」
夜だからか私の驚きの言葉がよく通った。
叫んでから思わず口を押えるがもはや手遅れで。
だけど誰にも聞かれてなかったからまだよかった。
「ふふ」
「も、もう四条さん冗談やめてくださいよぉ」
とかいいながら私の胸はこれ以上ないくらいドキドキバクバク鳴っている。
嫌な気持ちなどなく、むしろ嬉しいくらいに思っていた。
なんだろう、親友とかでも良いけどまたそれとは違った感覚に戸惑う。
「冗談ではないのですけれど・・・」
「うっ・・・」
ですよね。
四条さんの表情からすぐ読み取ることができた。
彼女は真剣に私に向き合って言っているのだ。
でも私達女の子同士だし。
そんな躊躇いの間に四条さんは私が困ってると思ったのか
ちょっとさみしそうに笑ってこう伝えてきた。
「雪歩を困らせるつもりはなかったのですが・・・今のことは忘れてください」
「え、四条さん?」
「・・・」
「ちょっと、待ってください・・・」
さっきまで横で並んで歩いていたけれど、急に四条さんは
私より少し先に歩いていく。私は追いかけるのが精いっぱいで
何だか胸がさっきと違って苦しく感じていた。
「四条さん待って・・・、四条さん!」
どんどん姿が見えなくなっていきやがては消え去っていき、
辺りの雰囲気も真っ暗になって怖くなって私は四条さんのいた
方向に手を伸ばして大声をあげていた。
「雪歩、大丈夫ですか? うなされていましたよ」
「あ・・・夢・・・?」
夢だけど夢じゃないこの感じ。途中までは明らかにこの前までの
出来事だったのが私の夢の中で少し悪夢として扱われている
ようだった。
やっぱりあの中途半端に終わったのが気になりすぎて
こうなってしまったのだろうか。
ため息を吐く私に四条さんは変わらず優しく接してくれた。
私に対して態度が怖くなったのはうやむやにしたあの直後だけ。
次の日から普段通りだった。
私はどう接したらいいのだろう。言われた通り忘れたほうがいいのだろうか。
でも言われたことを思い出すとチクチクと私の心が痛んでいく気がしていた。
忘れられないよ・・・。
「どうした、二人とも。今日はいつもより元気なさそうだけど」
私と四条さんの二人で仕事合わせのダンスレッスンを行っていたときに
プロデューサーに心配された。四条さんは笑みを浮かべながら
何でもないと答えていたが私は表情をそんなに上手く作れなかったから。
プロデューサーに気付かれて、呼び出されてしまった。
こっそりと連れ出す感じで部屋から出て行った。
四条さんは一人で復習するようにと言われて
その通りにダンスの練習を始めていた。
人気のない廊下で壁にもたれたまま、私はプロデューサーの顔を見た。
「何かあるなら言った方がいいよ。雪歩は溜め込んじゃダメなタイプだからね」
「あの・・・」
私は何だか告げ口でもするような気持ちになって苦しくなったけど。
結局自分では解決できそうにないし、このまま時間が経つと
もっといけないかと思ったから思い切ってプロデューサーに告白する。
「そう、貴音が・・・」
「はい・・・」
「雪歩はどうなの?」
「え?」
「雪歩はそう言われて嫌なの?」
「そんなことないです!」
嫌という単語を聞いて、全然そんなことないのをつい声大きめに
言ってしまった。四条さんにも聞こえているだろうか・・・。
「だったら貴音にもそう言ってあげないと。
表面上なんともなさそうに見えるけどけっこうきつそうだったわ」
「ほんと・・・ですか?」
「えぇ、苦しんでるのは雪歩だけじゃないのよ。
両想いだったら止まってる必要もないじゃない」
「私・・・怖いんです・・・」
「何が?」
「これ以上踏み込むと今までの関係が壊れてしまいそうで。
すごく居心地よかったから怖くて・・・」
「ふむ・・・」
「だって女の子同士ですよ。例えプロデューサーが良くても
仲間とか周りの見る目が」
「そうやって自分の気持ちより周りを気にしすぎる癖。よくないよ」
「え・・・」
「大事なのはまず気持ちから。後どうするかなんていくらでも
考え付くんだから」
「でも私は何も浮かばなくて・・・」
「あはは、何のために私がいるの」
「プロデューサー・・・」
「みんな良くやっていけるならその道を示すのも私の役目。
そこは安心していいわ。今大事なのは雪歩が貴音とどうしたいのか」
プロデューサーに問いかけられて私は背を預けながら俯いて
少しの間頭の中で整理していた。そしてたどり着いた結論は。
「やっぱり四条さんの言葉に応えたいです」
「そう、なら言ってきなさい。コーチには私から言っておくから」
「ありがとうございます、プロデューサー」
話してすっきりした表情でお礼を言うとプロデューサーは
雪歩はその笑顔が一番かわいいと言って、私の背中を軽く押して
一緒に部屋まで戻った。
プロデューサーの言葉通り二人きりにしてくれた部屋の中で
少し息の上がってる四条さんが私の正面まで歩いてきた。
「おかえりなさい、雪歩」
「ただいま戻りました」
少し安堵したとは言え、まだこれから伝えるのが本番だから
緊張で少し手が震えていて、今にも穴を掘って埋まりたい気持ちを
抑えながら四条さんの手を握った。
「あの、四条さん。お話があります」
「雪歩?」
「ねぇプロデューサー、最近貴音と雪歩仲いいよね」
「どうしたの、美希。唐突に」
「うん、前から仲良いなぁって思ってたけど前にレッスン言ってから
もっと近づいたというか、恋人同士っぽいなって」
「どうして美希はそういうことは敏感なんだろうね」
「何か言った?」
「いや、別に・・・」
「美希」
「なーに?」
「例えば二人がそういう関係だったとしてどう思う?」
「どう思うも何も、幸せだと思えるならそれでいいと思えるの」
「そう、今美希から見て二人はどう見える?」
「とっても幸せそうなの!美希もそういう相手欲しいな」
「あのね、あくまでもアイドルなんだから公ではいちゃつかないでよね。
美希は相手できたらその辺が不安だわ」
「あはは、そうかも」
レッスンに向かってきっちりノルマをこなした後の帰り道。
「雪歩、私あの言葉ずっと大事にしますから」
「また思い出してるんですか!?」
顔を真っ赤にして狼狽える雪歩が可愛くて私はこの間告白された
話を時々こっそり話している。そのたびにかわいい反応や新しい反応を
くれるから楽しいし幸せに感じられる。
「四条さん、この前新しいラーメン屋さんが近くにできたので
一緒にいきませんか?」
「なんと興味深い情報でしょう。ぜひともご一緒に行きましょう」
ラーメンもとても興味深かったけれど雪歩と一緒というのが
今の私にとっては一番重要なことで。好きな彼女と一緒に食べるものは
どんなものでも、どんなものよりも美味しく感じるに違いなかった。
「四条さん?」
「雪歩…貴音と…呼んでくれませんか?」
互いに照れながら顔を赤くして誰もいない通路でそっと口付けを交わした。
これから先、少しずつ彼女と共に人生を歩めれば良い。
しばらくの間、お互いに視線を逸らすことができず甘い気持ちに浸ってから
事務所へとゆっくりと戻っていったのだった。
終
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ブログに書いていたもの。
お互いの呼び方よく覚えてない上に調べもしない
めんどくさがりですが少しでも楽しんでもらえれば幸い。
ちなみにPは女性です(多分)
ゲームはだいぶやってるんですけどね(OFA)
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