No.698255

ガールズ&パンツァー 隻眼の戦車長

『戦車道』・・・・・・伝統的な文化であり世界中で女子の嗜みとして受け継がれてきたもので、礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸。そんな戦車道の世界大会が日本で行われるようになり、大洗女子学園で廃止となった戦車道が復活する。
戦車道で深い傷を負い、遠ざけられていた『如月翔』もまた、仲間達と共に駆ける。

2014-07-03 15:24:01 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:584   閲覧ユーザー数:565

 

 

 

 story06 決着

 

 

 

 如月達がD,Eチームと交戦したいた時より少し前・・・・

 

 

 

 

 

 今の私達の状況はかなり追い詰められていた。

 

 

 開始地点からすぐに八九式のBチームが砲撃をしてきて、とっさにその場から逃走するも、前方からⅢ突のCチームが迫ってきて、二両の集中砲火をかわしながら何とか逃げていた。

 

 

 けど途中で進路上に一人の女子生徒が眠っていて、私はとっさに声を上げると女子生徒は起き上がり、その場から跳び上がってⅣ号に乗り上がって来た。

 

 しかもその女子生徒というのが、今朝私が急いで学校に向かう途中で眠そうにして、学校まで私が連れて行った生徒だった。

 

 その女子生徒・・・・冷泉麻子さんはどうやら武部さんと幼馴染らしい。

 

 でも砲撃が襲ってくるので私は冷泉さんをⅣ号の中に入れさせる。

 

 

 

 その後吊橋まで来て、私はとっさにⅣ号から降りて通れるかどうか確認して、Ⅳ号を誘導する。

 

 しかし五十鈴さんが操作ミスをしてⅣ号が吊橋のワイヤーを切り、そのまま橋が大きく揺れる。

 

 このままだとⅣ号が橋から落ちてしまう。

 そう思った瞬間にⅣ号の後部に何かがぶつかって大きく揺れる。

 

 そこには追いついたⅢ突がおり、先ほどの砲撃でⅣ号の後部に着弾していたけど、撃破には至っておらず、さっきの着弾で何とか落下は免れた。

 

 しかし着弾の衝撃で操縦手の五十鈴さんが気を失ってしまい、私はとっさにⅣ号に乗り込む。

 

 

 

 

 

 

 そして今の状況に至る。

 

 私は気絶した五十鈴さんを通信手の席に座らせる。

 

「はぁ・・・・。操縦は苦手だけど、私がやるしか―――――」

 

 と、私が操縦席に向かおうとした瞬間、突然Ⅳ号が動き出し、そのままバックして安定する。

 

「っ!」

 

 とっさに操縦席を見ると、そこには冷泉さんがⅣ号のマニュアルを見ながら座っていた。

 

「麻子運転できたんだ!?」

 

 それを見た武部さんは驚きの声を出す。

 

「今覚えた」

 

「今っ!?」

 

 砲手の秋山さんが驚きの声を出す。

 

「さすが学年主席!」

 

 と、武部さんが感心している間に八九式が機銃を放ってくる。

 しかしⅣ号は前進ではなく、後退している。

 

「何か下がってるよ!?」

 

「分かってる」

 

 と、冷泉さんはクラッチを外すとシフトレバーを入れ替えてからアクセルを踏むと、Ⅳ号はそのまま前方へと走り出す。

 

 直後に八九式とⅢ突が砲撃を行い、前方に砲弾が着弾するも、それによって起きた煙を突っ切る。

 

 

 

「・・・・違うんです。そんな活け方――――」

 

 と、五十鈴さんが寝言を呟くと、直後に着弾の衝撃が車内に伝わってそれに驚いて目を覚ました。

 

「大丈夫?」

 

「あっ、はい!すみません」

 

 と、浅く頭を下げる。

 

「ううん。ゆっくり休んでて」

 

「いえ、大丈夫です!」

 

 五十鈴さんはそのまま前を見て、一安心してすぐに気持ちを切り替える。

 

「秋山さん!砲塔を回転させて!」

 

「了解!」

 

 秋山さんはすぐに砲塔の回転ハンドルを回して砲塔回ると、私と武部さん、秋山さんも砲塔の回転に合わせて回る。

 

「って!向こうも狙ってる感じだよ!!早く回ってよ!!」

 

「旋回速度はコレが限界です!」

 

 何とか砲撃が来る前に砲塔の回転が終える。

 

「発射用意!!」

 

 私が指示を出すと、冷泉さんはⅣ号を停止してくれた。

 

 

「撃てっ!!」

 

 

 ドォォォォォンッ!!!

 

 

 私が叫んだ直後に轟音と衝撃と共に砲弾が放たれ、主砲の閉鎖機が開いて空になった薬莢が排出されてかごに入る。

 

 放たれた砲弾は一直線に飛んでいき、Ⅲ突の主砲の近くに着弾し、直後に白い旗が上がる。

 

 

 

「す、すご・・・」

 

「じんじんします・・・・!」

 

 砲弾が放たれた際の音と衝撃で二人は驚いていたけど、私はすぐに次弾の装填に入る。

 

 

「次は八九式!」

 

「はい!」

 

 私は天井の排気口のハッチを開けて秋山さんに伝える。

 

 

 砲塔を八九式に向けていると、八九式も主砲より砲弾を放ってくるも、明後日の方向へと飛んで行き、直後にⅣ号の主砲から砲弾が放たれ、八九式に着弾した後に白旗が揚がる。

 

 

 

「っ!前から翔さん達の戦車が来るよ!」

 

「っ!」

 

 私はハッチを開けて前方を見ると、如月さんの乗る五式中戦車がこちらにやって来る。

 

 

 

「凄い!一気に二両も撃破するなんて・・・・!」

 

「さすがは西住さん」

 

「あれが・・・・西住流の・・・・」

 

 さっきまでの様子を見ていた三人は唖然としていた。

 

(よくあの状況から逆転出来たものだな)

 

 覗き窓を覗いてⅣ号を見る。

 

「だが、これで決めさせてもらう」

 

 如月は早瀬に停止命令を下し、鈴野と坂本はⅣ号に狙いを付ける。

 

 

 

 

「冷泉さん!出来る限り車体を斜めにしてください!

 秋山さんは五式の砲塔根元か車体下部を狙ってください!」

 

「なるほど!五式中戦車の砲弾をまともに受けないようにするんですね!」

 

 秋山さんはとっさに砲塔を回転させると、冷泉さんも狭い橋の上で出来る限り車体を斜めにする。

 

 

 

 

「向こうも狙いを付けたか。だが、もう遅い。

 主砲、副砲撃てっ!!」

 

 如月が叫んだ瞬間に鈴野と坂本が引き金を引くと、轟音と衝撃と共に主砲と副砲より砲弾が放たれ、一直線にⅣ号の砲塔へと向かっていく。

 

 しかし、主砲の砲弾は角度をつけた車体装甲に火花を散らして弾かれ、副砲はギリギリ当たらずに外れる。

 

「弾かれた!?」

 

 まさか弾かれるとは思っていなかったので、坂本は驚く。

 

「・・・・やはり、足場が不安定な場所だから衝撃が分散されたのか。それに車体を斜めにしたのが大きいな」

 

 内心で舌打ちをすると、とっさ砲弾を取り出して再装填をしようとする―――――

 

 

 

 ズガァァァァンッ!!!

 

 

 

「わぁぁっ!?」「きゃぁぁっ!?」「ぐっ!?」「うわっ!?」

 

 その瞬間五式の車内に衝撃が走り、如月は砲塔の壁に背中を打ち付けてしまう。

 

 衝撃からして、恐らく右側の履帯付近に着弾したのだろう。

 

「やってくれる!後退しろ!」

 

「は、はい!」

 

 早瀬はとっさにギアを入れ替えてアクセルを踏んで五式が後ろへと下がるが―――――

 

 

 

「っ!?」

 

 すると何か鈍い音がして、突然車体が右に傾いて左へと動く。

 

「何をしている!旋回しろとは言ってないぞ!」

 

「そ、それが――――」

 

 

 

 しかし早瀬が言う前に、突然車内に衝撃が走る。

 

「「「「っ!?」」」」

 

 それによって車内が揺さぶられる。

 

「(側面をやられたか!)」鈴野!」

 

「はい!」

 

 とっさに鈴野は砲塔を回転させてⅣ号に狙いを付けると、私はとっさに装弾機に砲弾を乗せ、砲尾のスイッチを押して棒で砲弾を薬室に押し込んで装填する。

 

 鈴野が引き金を引いた瞬間、轟音と衝撃と共に砲弾を放つが、Ⅳ号も僅かに遅れて主砲より砲弾を放ち、五式の砲弾がⅣ号の砲塔正面に着弾し、Ⅳ号の砲弾が先ほど命中した箇所に着弾する。

 

 

 

 そして同時に五式とⅣ号が戦闘不能になった事を知らせる白旗が揚がる。

 

 

 

『Bチーム八九式、CチームⅢ号突撃砲、DチームM3、Eチーム38t、行動不能!それとAチームⅣ号、Fチーム五式。同時に行動不能。よって引き分けとする!』

 

 そうして超野教官より試合終了の無線が告げられる。

 

 

 

 

「引き分けか」

 

 車内に煙が立ち込める中、如月はキューポラのハッチを開けて車外へと出ると、五式中戦車から降りる。

 

「・・・・そういう事か」

 

 視線の先には、右側の履帯が外れて右に傾いている五式中戦車の姿があった。

 

(さっきの鈍い音は履帯を繋ぐピンが折れたのか・・・)

 

 腕を組んで、大きく欠けた履帯カバーにめり込んでいる砲弾を見る。

 

(怪我の功名と言った所か。あの時のM3の砲弾がAチームにチャンスを与える事になろうとは)

 

「ふぅ」とため息を付いて吊橋上で行動不能になっているⅣ号を見る。

 

(だが、面白かったぞ、西住)

 

 ニヤリと口角を上げる。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「中々すげぇな」

 

「そうっすね」

 

「えぇ」

 

「これほどとは・・・・」

 

「・・・・・・」コクコク

 

 その頃二階堂達は裏山の一番高い所にある木に登り、そこから双眼鏡で試合の様子を見ていた。

 

「物凄い音でしたね」

 

「あぁ」

 

「いやぁ!何にしても全部が凄かったっすよ!特にあの五式と西住流の家元が乗っているⅣ号が凄かったっすね!」

 

「そうだな。あの2両で4両の戦車を撃破しているのだからな。そして最後は相打ちか」

 

「さすがは家元の娘か。それにあの五式にはかなりの手馴れが乗っているようだな」

 

「みたいですね。最後履帯が切れなければ向こうが勝ってもおかしくはなかったですね」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

「まぁ、今回で戦車道が凄いって言うのは分かったが、もう少し様子見だな」

 

「そうっすね。今回はお試しって感じでしたからね」

 

「それではいつでも参加出来るように『あれ』を調整しておきますね」

 

「頼む。中島はいつもどおり情報収集だ」

 

「了解っす!」

 

 そうして二階堂達は木を降りてバラバラに山の中に散る。

 

 

 

 

 

 

 


 
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