士希「あ、いたいた、ルネッサ!」
私と士希、そしてリインとレーゲンでミッドチルダにやって来た。
この前約束した通り、士希が援助しとるというルネッサちゃんに会うためや
ルネッサ「お久しぶりです、士希さん、レーゲン君。あの、こちらの方々は?」
ルネッサちゃんは私らをチラチラ見て聞いてきた。少し、人見知りかな?
はやて「こんにちはー、八神はやて言います。それでこっちが…」
リイン「リインフォース・ツヴァイと言うです!よろしくですよ!」
ルネッサ「あ、はい。ルネッサ・マグナスと言います。よろしくお願いします?」
ルネッサちゃんは戸惑いながらも自己紹介してくれた。
ちゃんと挨拶できるなんて、ええ子やなぁ
士希「ルネッサにはまだ言ってなかったな。実ははやて、俺の恋人なんだ」
ルネッサ「え!?あの士希さんに恋人が?」
ルネッサちゃんはとても驚いていた。
結構クール系やと思ってたけど、表情には出る子なんやな
リイン「ルネッサちゃんは、士希さんにどんなイメージを持ってたんですか?」
ルネッサ「女運が悪い、シスコン、ヘタレ野郎と」
士希「あっちゃ~…否定できねぇ」
士希は頭を抱えていたが、私はそんな事言ったルネッサちゃんの毒舌っぷりにびっくりやったわ
ルネッサ「しかし、士希さんの恋人と言うことは、あなたは私の母親になると言うことでしょうか?」
はやて「げほっげほっ!?」
ルネッサちゃんの真っ直ぐな言葉に、私は思わずむせてしまった。は、母親?
はやて「え、えと、もしかして士希が、ルネッサちゃんの父親って事?」
ルネッサ「はい。一応これでも保護責任者で、俺の事はお父さんでも良いんだからね、
とか言っていたので」
いやいや、流石に子どもはアカンやろ。年齢的に4つしか変わらへんのやで?
このドアホウ(士希)はこの子に何吹き込んでんねん
はやて「さ、流石に母親はムリあらへんかな?せめてお姉さんとか…」
ルネッサ「お姉さん、ですか。姉系、それもまた新鮮ですね。
では今後、あなたの事はお姉ちゃんと呼べば良いでしょうか?」
はやて「え!?あ、うん」
ん?何かおかしい気が…
ルネッサ「では、んっ、んんっ……お姉ちゃん!」
ルネッサちゃんはロリ系のボイスで私の事をお姉ちゃんと呼んで来た。
今まではそんな感じやなくて、クール系やったのに
士希「あ!じゃあ俺の事はお兄ちゃんって呼んで!
俺の実妹はみんなお兄ちゃんって呼んでくれないんだよ。な?頼むよ!」
ルネッサ「クソ兄貴」
士希「ぐはっ!?」
レーゲン「し、しきさーん!?」
今度は絶対零度な、感情の無い声で呼んだ。その結果士希は血反吐を吐き、ぶっ倒れた。
レーゲンだけが心配する中、私とリインは微妙な気分になっていた
はやて「なぁリイン、この子、ちょっとズレてない?」
リイン「ちょっと、では済まない気が…明らかに何かに毒されてるような気がするです…」
リインの意見には同意や。なんかこの毒舌も、その産物のような気が…
はやて「なぁルネッサちゃん、ルネッサちゃんは、普段何して過ごしとる?」
ルネッサ「普段、ですか?そうですね…ミッドの勉強か、娯楽で言えば地球の本や漫画、
アニメが好きですね」
あぁもう、絶対それや!絶対アニメの影響や!
しかも教育に悪そうな方の、深夜とかにやってそうなアニメや!
はやて「士希さん?いったいこんな可愛らしい女の子に、どんな娯楽与えてんのかな?」
士希「え?地球の娯楽と言えば漫画とかって聞いたから、適当に送ってたんだけど…
まずかったのか?」
無自覚かい…
ルネッサ「ていうか士希さん、頼んでもないのにポンポンポンポンいろんな物を送って来るのはやめてください。気を遣い過ぎです」
ルネッサちゃんはため息交じりに言う。なんていうか、すごいしっかりした子やな
士希「いやだって、お前あんまりワガママ言わないし…」
ルネッサ「はぁ…例えあっても、頼む前に用意されたんじゃワガママも何もないですよ。
だいたい、士希さんは過保護過ぎるんです。この前だって、私が学校に通い始めたら…」
………ちょっと待って
はやて「ちょ、ちょっとええかな?もしかしやんでも、
ルネッサちゃんがワガママ言わんのって、言う必要がないからって事?」
ルネッサ「はい。施設にいた周りの子ども達は、だいたいワガママを言って何かを貰っていますが、私の場合何かを言う前に押し付けられるので、言いようがないんです」
ルネッサちゃんの発言を聞き、私は士希に目線をやる。
士希は目を逸らして冷や汗をかいていた
はやて「士希?」
士希「…はい」
はやて「やりすぎ」
私は、今回なんでルネッサちゃんに会いに来たのか説明した。
するとルネッサちゃんはため息をついて士希を見た
ルネッサ「まったく見当違いです。私がワガママを言わないのは、
現状で満足していると言うより、与えられ過ぎているからです。
お金も必要以上にある、娯楽も勉強資料も充実している。これ以上何を望めと?」
私は冷たい眼差しで士希を見る。すると士希は弁明しようと立ち上がった
士希「いやだって!女の子だよ?年頃の女の子なんだから、いろいろ必要じゃん?それに、
普段一緒に住めないんだから、最低限不自由しないようにするのが保護者の責任じゃん!」
はやて「せやかてな、やり過ぎてもアカンねん。
ルネッサちゃんはしっかりしとるからええけど、普通こんなされたら堕落してまうで?」
ルネッサ「その通りです。現に、増え過ぎて処分に困っていたDVDを、
他の施設の子にあげたら、その子は堕落しました。今じゃアニメの虜です」
士希「そんな…俺が間違っていたのか…?」
士希はがっくりと膝を着いた。こいつが将来、親バカになるのは目に見えてしまった
ルネッサ「はぁ…それでも、気を遣ってくれてありがとうございます。結構、嬉しいですよ」
士希の姿に見兼ねたのか、ルネッサちゃんがフォローに入った。ものすごくできた子やな
士希「ルネッサ……よし、一緒に住も…」
ルネッサ「それは嫌です」
しかしドSやった
はやて「なんでルネッサちゃんはミッドに?手続き済ませたら士希と住むこともできるよな?」
士希の事を嫌っとるようには見えへんけど…
ルネッサ「そうですね…単純に士希さんといることに身の危険を感じるというのもあるのですが…」
前言撤回。多分嫌われとるな
ルネッサ「第97管理外世界って、確か魔法文化がないところですよね。
そこに住むと、故郷に戻ることが困難になってしまいます」
はやて「故郷って、『オルセア』?なんでわざわざ?」
めちゃくちゃ危ない世界やのに…
ルネッサ「確かにあそこは、私が生まれた時から戦争ばかりしていますが、それでも、
私の故郷です。望郷の念が消える事はありません。
それに、私が行けば救える命があるかもしれないじゃないですか」
確かに、地球におったら次元世界の移動は困難を極める。
時空転移はなかなか難しい魔法やでな。でも、戦争ばっかりの国やのに、
帰りたいって思うもんなんやな
はやて「ルネッサちゃんは偉いなぁ」
素直にそう思った。誰かを助けようとする心構えは、素晴らしいと思う
ルネッサ「…それはきっと、士希さんの影響でしょう。
かつて士希さんは、たった一人で銃弾飛び交う地獄から私を助けてくれました。
助けられた私は疑問を抱きました。何故この人は、自分の命を顧みずに私を救ってくれたのか。
すると士希さんは、『救える範囲にいたから救った。なら、救うのが当たり前だろ?』
なんて事をさも当たり前のように言いました。この人は馬鹿だと思いました。
それと同時に、憧れもしました。
あぁ、この人みたいに、私も誰かを救える事が出来ないだろうかと」
それが、確か3年前の話なんやんな?13歳の時からそんな事しとったんかいな。
確かに馬鹿や、馬鹿やけど…
はやて「…自分、なに顔赤らめとるん?」
士希「い、いや、昔の事話されるのは、ちょっと苦手と言うか、
恥ずかしいと言うか…昔の俺はそんな中二くさいセリフ吐いてたんだなぁと思うと…」
士希は悶えていたが、それでも、人を救ってる士希はカッコいいと思った
ルネッサ「それが今じゃ、ただの変態シスコン野郎です。あ、昔からそうでしたか。
はやてさんはこんな士希さんのどこに魅力を感じたんですか?」
確かに士希って、いろんな意味でどうしようもない時があるけど…
はやて「純粋に想ってくれてるのは伝わって来るし、それにしっかり護ってくれる。
そういうところが嬉しくて、好きになったんかな」
あ、なんやこれ。自分で言っといて、めっちゃ恥ずかしなってきたぞ…
ルネッサ「ほぅ。士希さんはずいぶん愛されているんですね」
士希「あ、あははー…」
レーゲン「しきさん、顔真っ赤ですね」
リイン「はやてちゃんも同じくらい真っ赤です」
お互いこういうのに慣れてないんです…
士希「うお!レーゲン!リインちゃん!二人掛かりは無理だって!弾幕が厚すぎる!」
リイン「これでもまだ、なのはさんの弾幕の方が厚いですよ!」
レーゲン「え!?なのはさんって何者なんですか?」
士希は、リインとレーゲンが展開する魔力弾による弾幕を捌き切る遊びをやっていた。
私とルネッサちゃんは、そんな様子をベンチに座りながら見ていた。
なんでもルネッサちゃん、私だけに話があるとのことや
ルネッサ「あんなに楽しそうな士希さん、久しぶりに見ました」
ルネッサちゃんは冷や汗ダラダラで魔力弾を捌いてる士希の様子を見て言った
はやて「そうなん?」
ルネッサ「はい。私を救ってくれた頃の士希さんの表情です。
士希さん、少し前までは、元気ありませんでしたから」
士希の元気がなかった?
はやて「なんかあったん?」
ルネッサ「わかりません。ですが、2年程前から、士希さんはあまり笑わなくなりました。
私が何かあったのかを聞いても、士希さんは答えてくれませんでした。
それが、半年くらい前までの士希さんです」
半年前って言うと、地球で言うところの4月か。
そう言えば確かに、出会った頃の士希って、あまり笑っとるイメージはなかった。
微笑はあっても、今みたいに心から笑っとるような事はなかったと思う
ルネッサ「それが今じゃ、あんなに楽しそうにはしゃいで…」
士希はギャーギャー言いながらも、魔力弾を弾いとった。
その姿が、とても楽しそうやった
ルネッサ「士希さんはよくわかりません。
知らないうちに落ち込んで、そして知らないうちに元通り。
でも、元通りになった理由はわかります。八神はやてさん、あなたの力です」
ルネッサちゃんは少し微笑んで、私に向き直って言った。
とても子どもらしいとは言えない、大人びた笑顔やった
はやて「私は…私はなんもしてへんよ。むしろ逆や。私は士希に支えられてばっかりやで。
私、管理局員で結構忙しいのに、士希は文句も言わずそばにおってくれる。
私を癒してくれる。笑顔で迎えてくれる。やのに私は、あまり士希に何ってやってあげれてへん」
そう、私は士希に助けられてばかりや。士希の彼女やのに、彼女らしいことは…
ルネッサ「案外それが、士希さんの支えになっていたのかもしれません」
ルネッサちゃんはとても真剣な様子で、私を真っ直ぐ見つめてきた
ルネッサ「はやてさんは、士希さんに助けられていると言いましたが、
その実本当に救われているのは、士希さんじゃないでしょうか。
士希さんは、きっと元軍人です。あの人は、私と同じ匂いがしますから…
だからもしかしたら、それが原因で心に傷を持っているのかもしれません。
そして、多くの兵は、大切な人がそばにいるだけで救われると思います。
はやてさんは、どんなに忙しくても、必ず士希さんのもとへ帰っています。
一緒に過ごしています。それが、士希さんの救い、なんじゃないでしょうか」
ルネッサちゃんは最後に一言「わかりませんが」と付け足した。
士希と一緒に過ごしてた事が、士希を知らず知らず癒してた、って事なんやろか?
ルネッサ「…ふふ。はやてさんに自覚は無くても、私はそう思います。
だって今も、士希さんははやてさんの事を気にかけていますから」
ルネッサちゃんは苦笑いでため息をついた。確かに、士希は時々こっちを見とるようやった
ルネッサ「はやてさん、本当にありがとうございます。
あれでも、私の保護責任者なので、感謝しています。
どうかこれからも、士希さんをよろしくお願いします」
最後にルネッサちゃんは頭を下げてお願いしてきた。
なんや、やっぱりルネッサちゃん、士希の事嫌いやないんやな
はやて「うん、いろいろありがとうな、ルネッサちゃん。
あ、私の連絡先教えとくで、なんかあったら連絡して。いつでも協力するからさ!」
ルネッサ「はい。ありがとうございます。必ず、連絡します」
ルネッサちゃんとの交流が、士希の過去に触れた気がした。
まだまだ謎は多いけど、少しずつ、士希の扉の鍵を開けてっとる、そんな気がした
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こんにちは!
今回はサウンドステージXよりあの子が登場します