No.697546

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第124話

2014-06-30 00:05:15 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2069   閲覧ユーザー数:1926

 

7月26日、夏至祭当日――――

 

夏至祭当日、リィン達は巡回をしてサラ教官に報告し、サラ教官の指示によってアルフィン皇女達が向かうマーテル公園に向かい始めた頃にはアルフィン皇女、セドリック皇子、オリヴァルト皇子をそれぞれ乗せたリムジンが王宮から出発し、それぞれの目的地に向かっていた。

 

~車内~

 

「ふふっ、たまにこうして皆の前に出るのもいいわね。どうせだったらエリスも着飾って一緒にデビューできたらいいのに。」

エリスと共にリムジン車内の席に座っているアルフィン皇女はエリスに微笑んだ。

「ふう……無茶を言わないで下さい。親しくしてくださっているとはいえ、所詮は男爵位の家格……それも今では”裏切り者”として忌み嫌われている他国の貴族……姫様と並んで波風を立てるなどあってはならぬ事かと思います。第一、他国の場でそのような事をすれば、メンフィル帝国の皇族や貴族の方々が黙っていません。」

アルフィン皇女の言葉に疲れた表情で溜息を吐いたエリスは指摘した。

「古いわね~、政府や帝都庁に平民出身のトップがいる時代に。それに昨日会ったリフィア殿下を見る限り、そのような些細な事を気にする方には見えなかったわよ。あ、ひょっとしてお兄さんを踊りのパートナーに誘った事、まだ怒っているとか?ふふっ、来年本当にダンスの相手をお願いしちゃおうかしら?」

「も、もう……姫様、しつこいです!」

本気で考え込む動作をしているアルフィン皇女の様子を見たエリスは怒気を纏ってアルフィン皇女から視線を逸らした。

「うそうそ、許してエリス。ふふっ……でも良かったじゃない?リィンさん、あの様子だとまだ恋人はいなさそうだし。」

エリスの様子を見たアルフィン皇女は慌てて言い訳をした後ウインクをし

「………………(まあ、私と兄様が結婚する事は”決定事項”なんですけどね。)」

ウインクをされたエリスはリィンと結ばれた夜を思い出し、頬を赤らめて自然と静かな笑みを浮かべた。

 

「ふふ、周りが素敵な方ばかりだから油断してると危ないと思うけど。」

「…………そうですね。でも…………兄様の性格なら……私達の………を奉げられた……に……責任……るでしょうし、その心配は……用……けどね。」

「エリス……?」

自分の言葉に頷いた後嬉しそうな表情で小声で呟いたエリスの様子を不思議に思ったアルフィン皇女は尋ねたが

「フフ、何でもありません。ほら姫様、市民の方々がご挨拶を期待されていますよ。」

エリスは笑顔を浮かべて答えを誤魔化した。その後皇族を乗せたリムジンはそれぞれの目的地に到着し、アルフィン皇女はエリスと共に”クリスタルガーデン”に向かい、レーグニッツ知事の案内によってクリスタルガーデンの中へと入って行った。

 

~マーテル公園~

 

「エリス……皇女殿下のお付きとして来ていたのか。」

遠目でアルフィン皇女達がクリスタルガーデンに入って行く様子を見守っていたリィンは口元に笑みを浮かべた。

「ふふっ、よっぽど姫様から信頼されてるんだね。」

「……しかし皇女様、さすがのオーラかも。」

「うん、さすが皇族の象徴たる”紅”の衣装がお似合いだな。

フィーの意見にラウラは頷き

「ええ……わたくしもいつかアルフィン皇女殿下のような淑女にならないと……!」

「ふふ、セレーネならいつかきっと、なれるわよ。」

決意の表情をしているセレーネをツーヤは微笑ましそうに見守り

「むむ、パトリックのヤツがちょっと羨ましくなってきたぞ。」

マキアスは若干悔しそうな表情をした。

 

「よし―――ここは大丈夫だ。手早くランチを取って各街区の巡回を再開しよう。」

「ん。」

「お昼過ぎにはリウイ陛下達を乗せた”モルテニア”が空港に到着しますから、気を引き締め直して巡回しましょう。」

リウイの提案にフィーとツーヤはそれぞれ頷き

「うーん、このまま何事もなく終わるといいんだけど……」

「ええ……」

考え込みながら呟いたエリオットの言葉にセレーネは不安そうな表情で頷いた。

 

その後昼食を取ったリィン達は再び巡回を再開したが特に何も起こらず、一端通行規制されていたドライケルス広場に向かって再び巡回すると意外な人物達を見つけた。

 

同日、14:40―――

 

~ガルニエ地区・ドライケルス広場~

 

「トワ会長……!アンゼリカ先輩も……」

リィンは驚きの表情でトワとアンゼリカに近づいた。

「あ~っ、リィン君たちだ!」

「おっと……これは奇遇じゃないか。」

「ハーシェル生徒会長……」

「アンゼリカ先輩も……珍しい場所でお会いする。」

「フッ、これも女神の巡り合わせというものだね。ラウラ君、フィー君とツーヤ君もよかったら私と一緒に―――ん?そちらの少女は何者かな?」

セレーネに気付いたアンゼリカは目を丸くしてセレーネを見つめた。

 

「その娘はセレーネ。あたしの妹で、ちょっと理由があって一緒に行動しているんです。」

「セレーネ・アルフヘイムと申します。以後お見知り置きをお願いします。」

「わ~、ツーヤちゃんの妹なんだ。フフ、確かによく見たらツーヤちゃんに似て可愛いね。」

「………………………」

ツーヤに促されて自己紹介をするセレーネの様子をトワは微笑ましく見守り、アンゼリカは呆けた表情でセレーネを見つめ

「―――セレーネ君、だったね?是非とも!今から私と一緒に帝都巡りをしようじゃないか!」

目の色を変えてセレーネを見つめて言った。

 

「え、えっと…………す、すみません。ツーヤお姉達と一緒に帝都を回っていますので。」

「勿論、あたし達は用事がありますので、アンゼリカ先輩の誘いはこの場で断らせて頂きます。」

「ガックシ…………」

しかしセレーネとツーヤの答えを聞き、心底残念そうな表情で肩を落とした。

 

(先輩も懲りないな……)

(あはは……噂どおりの人みたいだね。)

アンゼリカの様子を見たリィンは呆れ、エリオットは苦笑していた。

「そういえば、導力バイクでトリスタから来たんですか?」

その時リィンは二人の背後にある導力バイクに気付いて尋ねた。

 

「ああ、そいつを使えば40分くらいで着くからね。トワを後ろに乗せてきたわけさ。」

「ふむ……機械の馬みたいなものですか。」

「なんかカッコイイ。」

アンゼリカの説明を聞いたラウラとフィーは興味ありげな表情で導力バイクを見つめた。

 

「あはは、アンちゃんの運転、激しいから大変だったけど。は~、でもお祭りはいいよね~。これでテロリストの心配がなければ言うことはないんだろうけど……」

「ど、どうしてそれを―――」

「もしかしてサラ教官から何か聞いたんですか?」

トワがテロリストの存在を知っている事にマキアスは驚き、ツーヤは真剣な表情で尋ねた。

「うん、君達の実習に関してはわたしも少しお手伝いしてて……昨日も、知事さんからの要請を教官に取り次いだんだよね~。それで、ちょっと心配になってアンちゃんと見に来たんだけど。」

「そうだったんですか……」

「何やら見えないところでお世話になっているようですね。」

「感謝。」

「えへへ、別に大したことはやってないんだけど……」

リィン達に尊敬の眼差しで見つめられたトワは恥ずかしそうな表情で答えた。

 

「おや、細かい手続きや書類作成も手伝っているんじゃなかったかい?サボリがちなサラ教官に代わって各方面への連絡もしているそうだし。」

「そ、そうなんですか!?」

「教官……ちょっとは見直したと思ったんだが……」

「うーん、さすがにちょっとサボリすぎかもね。」

「というかレーヴェさんも何で手伝わないんですか……」

トワの話を聞いたリィンは驚き、マキアスは呆れ、エリオットは苦笑し、ツーヤは疲れた表情をした。

 

「ま、まあまあ。教官達だって忙しいんだし。それにしても、リィン君たち、皇女様と会ったんだよね~?いいなぁ、わたしも一目でいいから見たかったんだけど……」

「はは……俺達も驚きましたけど。」

「たしかに噂どおり”天使みたい”だったかも。」

(アルフィン皇女と同じ”天使”で呼ばれているレンさんとは随分違いますけどね……)

トワに羨ましがられたリィンは苦笑し、フィーは自分の感想を口にし、ツーヤはレンとアルフィン皇女を比べて苦笑していた。

 

「は~、いいないいなぁ。」

「フッ、皇女殿下の愛らしさは帝国の至宝といってもいいが……リィン君の妹さん達も素晴らしい素質を持っていたね。エリゼ君とエリス君だったか……またお目にかかりたいものだよ。」

「ああ、エリスだったらちょうど殿下の付き人として園遊会に出席している所ですね。エリゼはリフィア殿下の専属侍女長として、この後控えている園遊会にリウイ陛下やリフィア殿下達と共に出席すると思います。」

「ほ、本当かい!?むむ、皇女殿下にエリゼ君とエリス君、それにフィー君とセレーネ君を加えたら……究極15s(フィフティーンズ)の出来上がりじゃないかっ!」

リィンの話を聞いたアンゼリカは血相を変えて大声で叫んだ!

 

「なんか参加させられてるよ?」

「悪い気はしないかも。」

「フフ、セレーネはどうなの?」

「えっと……皆さんの中に入るなんて、光栄です。」

エリオットに指摘されたフィーは口元に笑みを浮かべ、苦笑するツーヤに見つめられたセレーネは微笑んだ。

 

「くっ、こんなことなら父上の言いつけに従って園遊会に出席しておけば……いや、さすがに麗人たる私がドレスを着るわけには……しまった、それならタキシードを着て行けばよかったじゃないかっ!」

一方アンゼリカは真剣な表情で悩みぬいた後ある結論を出して心底悔しそうな表情で拳を打ち付けた。

「アンちゃん、どうどう。」

そしてその様子を見たトワに諌められている様子をリィン達は冷や汗をかいて見守っていた。

 

「なんだなんだ、揃い踏みかよ~?」

「クロウ先輩………」

「あれ~、クロウ君?」

「なんだ、君も来てたのか。」

するとその時クロウがリィン達に近づいてきた。

 

「フン、まーな。」

「そう言えば”夏至賞”に行くとか言ってましたけど。」

「メインレースの結果はどうだったんですか?」

「聞いてくれるな……まさかあそこでブラックプリンスが来るなんて誰が予想できんだよ……しかもランバーブリッツが2番手に差し込んでくるなんて大番狂わせもいいとこだぜ……」

エリオットとマキアスに尋ねられたクロウは悔しそうな表情で答えた。

 

「ああ、4-5で当たりか。わざわざ懸賞ハガキを出した甲斐があったみたいだな。」

「って、しれっと特賞を当ててんじゃねーよっ!?もうヤダこのオンナ……」

そして何事もないかのように答えたアンゼリカの話を聞いたクロウは信じられない表情で声を上げた後肩を落とした。

「フッ、これも日頃の行いの差というものだろう。」

「あはは、アンちゃん異様にクジ運とか強いからねぇ。」

肩を落としたクロウの様子をアンゼリカは静かな笑みを浮かべて見つめ、トワは苦笑し、リィン達が冷や汗をかいて見守っていると鐘の音が聞こえて来た。

 

「3時の鐘だね。」

「そろそろ各地の行事も終わるくらいの時間かな?」

「それに”モルテニア”もそろそろ到着する頃ですが……――――!どうやら来たようですね。」

「え…………」

ツーヤの言葉を聞いたリィンが呆けて、ツーヤや仲間達と共に空を見上げると巨大な戦艦が帝都の空港に近づき、着陸しようとしていた。

 

 

 

次回、まさかの人物達がちょっとだけ登場して活躍しますww


 
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