No.697357

ガールズ&パンツァー 隻眼の戦車長

『戦車道』・・・・・・伝統的な文化であり世界中で女子の嗜みとして受け継がれてきたもので、礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子を育成することを目指した武芸。そんな戦車道の世界大会が日本で行われるようになり、大洗女子学園で廃止となった戦車道が復活する。
戦車道で深い傷を負い、遠ざけられていた『如月翔』もまた、仲間達と共に駆ける。

2014-06-29 10:50:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:698   閲覧ユーザー数:673

 

 

 story04 羨ましい事

 

 

 次の日にグラウンドの戦車倉庫の前に見つけた戦車が並べられていた。

 

「『八九式中戦車甲型』、『38t軽戦車』、『M3中戦車リー』、『Ⅲ号突撃砲F型』、『Ⅳ号戦車D型』、それと『五式中戦車チリ』。

 どう振り分けますか?」

 

「見つけたもんが見つけた戦車に乗れば良いんじゃない?」

 

「そんな事でいいんですか?」

 

「では、我々は38tに。お前達はⅣ号に乗れ」

 

「え?は、はい」

 

 生徒会の広報の生徒に言われて、西住はとっさに返事をする。

 

「では、Ⅳ号Aチーム。八九式Bチーム。Ⅲ突Cチーム。M3Dチーム。38tEチーム。五式Fチームとする。

 明後日はいよいよ教官がお見えになる。粗相の無いように綺麗にするんだぞ」

 

 それから生徒達はそれぞれの戦車の前に向かう。

 

 

 

 

「ガッチリしていますね」

 

「いいアタックが出来そうです」

 

 八九式の前に元バレーボール部のメンバーがそれぞれの言葉を漏らす。

 

 

 

 

「砲塔が回らないな」

 

「象みたいぜよ」

 

「パオーン」

 

「たわけ!Ⅲ突は冬戦争でロシアの猛攻を押し返した凄い戦車なのだぞ!フィンランド人に謝りなさい!」

 

「「「すみません!!」」」

 

 と、歴女チームはⅢ突の外見の事を言うと一人が渇を入れ、残り三人は一人が指した方を向いて頭を下げる。

 

 

 

 

「大砲が二本もあるね」

 

「おっきくて強そう」

 

「・・・・・・」

 

 M3を前に一年はそれぞれ感想を言う。

 

 

 

 

 

「それにしても、中々個性のある戦車ばかりですね」

 

「あぁ」

 

 五式の前に立って如月達はそれぞれの戦車を見ていた。

 

 どの戦車にも車体や砲塔に漢数字が描かれており、五式は『零-壱』八九式は『壱』、M3は『四』、Ⅳ号は『六』、Ⅲ突は『七』38tは『八』と白い文字で描かれている。

 しかし『弐』と『参』、『五』が無いのも気になるが、何より五式の零-壱と言うペイントが一番気になる。

 

「でも、五式だけオーラと言うより、場違いな感じがしますね」

 

「あぁ。中戦車でも、大きさがティーガーⅠ並にあるのだからな」

 

 他の戦車と比べても、五式が断然に大きい為、結構目立っていた。

 

 

 

 

 それからそれぞれ体操服に着替え、戦車を洗車(別に狙ってない)を開始する。

 

 

 

「錆びだらけの鉄屑のスクラップに埋もれていたとあって、錆移りが酷いですね」

 

「あぁ」

 

 五式中戦車の砲塔側面や車体の錆を水を当てながら鉄たわしやデッキブラシなど様々な道具を用いて錆を取っているが、これがかなりこびり付いている。

 

「それに車内もかなり錆が多くてめちゃくちゃ錆臭いですね」

 

 車内より坂本がぼやくと、車体前部の左側の副砲席のハッチを何度も叩いて強引に開けて、上半身を外に出す。

 

「こいつは根気よくやらないと終わりそうに無いな」

 

「そうですね」

 

「はい」

 

「・・・・・・」

 

 私は気合を一段と入れて鉄たわしやデッキブラシを動かす。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 それからしばらくして五式の錆取りが終わって、他の戦車も洗い終えて、自動車部と整備部(どういう部活なのかは知らんが)によってレストアされるようになった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 予想以上に身体を使ったので、筋肉痛で痛い身体で住んでいるマンションへと歩いていた。

 

(しばらく力仕事をしていないと、こうも身体が鈍るか)

 

 左腕を一回回して肩の凝りを解そうとしたが、一瞬左腕より皮膚が引っ張られるような痛みが走る。

 

(くっ。やっぱり不便だな)

 

 痛みがした所を右手で摩りながら歩く。

 

(だが、待ち遠しいな。久しぶりに戦車を動かせるとなると)

 

 腕の痛みの他に、如月は久しぶりに感じる高揚感に浸っていた。

 

 

 

 

「あっ、如月さん」

 

「・・・・?」

 

 と、前方の左側の角より呼ばれて、そっちに目をやると西住と武部、五十鈴、秋山の四人が居た。

 

「西住か。最近よくばったりと会う事が多いな」

 

「そ、そうですか?」

 

「あぁ。所で、武部たちはなぜ一緒に居る?」

 

 まぁ友達だから一緒に居るのに不自然は無いが、この時間帯で一緒なのは少し疑問がある。

 

「それは、今からみぽりんの部屋に遊びに行くって話になったの」

 

「西住の?」

 

「よかったら翔さんも一緒にどうですか?みぽりんの部屋で夕食会をしようと思うんですが」

 

「・・・・・・」

 

 帰り道は同じで、マンションの部屋も隣同士なので、特に問題も予定も無い。

 

「部屋に戻っても暇なだけだ。その言葉に甘えさせてもらおう」

 

 そうして如月は西住達と一緒に寮のマンションに向かう。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 西住の部屋に着き、色々とあったが夕食会の準備が整った。

 

「それじゃぁ、食べよっか!」

 

「はい」

 

「はい!」

 

「はい!」

 

「あぁ」

 

 

『いただきます!』

 

 手を合わせ、声を合わせて言い、テーブルに並べられているお皿の中にある肉じゃがのジャガイモを箸で挟んで口に運んで食べる。

 

「うーん!おいしい!」

 

「本当ですわね」

 

「あぁ。味がしっかりと付いているな」

 

 意外な特技に少し驚く。

 

 

「いやぁ、男を落とすのには肉じゃがが一番だからねぇ!」

 

 武部はさっきと違って、メガネを掛けていた。いつもはコンタクトなのだが、こういう本気な時?はメガネでするらしい。

 

「・・・・落とした事、あるんですか?」

 

「うっ!な、何事にも練習でしょ!」

 

 無いのか。まぁ、努力が無駄にならなければ良いな

 

「と言うより、男子って本当に肉じゃがが好きなんでしょうかね?」

 

「そういう話は聞いた事が無いな」

 

「都市伝説ではないでしょうか?」

 

「そ、そんなはずないもん!雑誌のアンケートに書いてあったもん!」

 

 その雑誌のアンケート自体が怪しいな。

 

 

「お花も素敵ですね」

 

 と、西住はテーブルに置かれているビンに挿している白い花を見る。

 

「すみません。これくらいしかできなくて」

 

 先ほど五十鈴は肉じゃがのジャガイモの皮を剥いていた所指を切ってしまっている。その後に武部が続きをやって、五十鈴が花を生けた。

 

「ううん!お花があると部屋が凄く明るくなるよ!」

 

「・・・・ありがとうございます」

 

 しょんぼりとしていたが、西住が褒めると五十鈴は笑みを浮かべる。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「じゃぁ、また明日!」

 

「おやすみなさい!」

 

「おやすみなさい!」

 

 夕食会を終えて、如月と西住は寮の前で武部、五十鈴、秋山を見送った。

 

「・・・・武部に五十鈴、秋山、か。いい友達だな、西住」

 

「そ、そうですか?」

 

 如月の呟きに、西住は少し意外そうに驚く。

 

「私はそういう友達がお前やまほ以外に出来た事が無いからな。羨ましいよ」

 

「そ、そうですか?私はむしろ、如月さんが羨ましいです」

 

「そうか。だが、それでも私はお前が羨ましいよ」

 

「え?」

 

 西住はキョトンとする。

 

 

 

「さてと、もう寝るか」

 

 如月は深く言わずに部屋に戻る。

 

「あっ!待ってください!さっきのどういう意味ですか!?」

 

 西住は慌てて如月の後を追って理由を聞こうとする。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 その頃―――――

 

 

 

「戦車道が復活か」

 

 学園艦のある場所に、五人が集まっていた。

 

 五人とも一人を除いて頭に結んだ余りが腰まで伸びている白い鉢巻を巻いていた。白く裾が広い股付きの袴の様なズボンに白い長ランを前開きで着ており、中に黒いシャツを着ているが、リーダー格の女子だけは胸部全体にさらしを巻いている。

 

「戦車道を選択し、優秀な成績を出した生徒には食券100枚、遅刻を200日見逃し、更に通常授業の三倍の単位も与えられるって言う豪華な特典付きっすね」

 

「私達にとってはそそられる話だけど、何かいきなり過ぎる話な気がしますね」

 

「・・・・・・」

 

 五人の内一人が呟くと、隣に居る女性は目を細める。

 

 生徒会とは言えど、景品があまりにも豪華すぎるのだ。

 

「それに、そんな条件をよく先生たちが認めたよな。さすがに生徒会にそこまでの権限は無いはず」

 

「杏の事だからな。ただでそんな豪華すぎる条件をせんこう達から許可させたってわけじゃないだろうし」

 

 赤毛のロングヘアーをポニーテールをしてそこに簪を挿しており、右目を黒い眼帯で覆ったリーダー格の女子・・・・・・『二階堂(にかいどう)明日香(あすか)』が腕を組む。

 

「何かわけありな理由があるんですかね、リーダー?」

 

「さぁな。だが、特典は今の俺達には、無視し難い内容だ」

 

「そうっすね。うまく行けば二年越しの卒業も夢ではないっすね」

 

 隣に居る同じ赤毛で後頭部でまとめているショートヘアーで茜色の瞳を持ち、ボーイッシュな顔立ちの女子・・・・・・『中島(なかじま)空(そら)』が両手を握り締める。

 

「だが、私達の減点がそれ以上を上回っていたら、特典を得ても留年記録がまた一年と更新されるだけ。それでは無駄骨だ」

 

 と、緑っぽい黒髪のミドルヘアーの根元をゴム紐で縛り、青緑の瞳を持つボーイッシュな顔立ちの女子・・・・・・『三枝(さえぐさ)江美(えみ)』が右手の人差し指を伸ばす。

 

「・・・・・・」

 

 腰の位置まで伸ばした銀髪で赤い瞳を持つ大人びた雰囲気であるが、同時に不思議な雰囲気を醸し出して、唯一鉢巻をしていない女子・・・・・・『高峯(たかみね)舞(まい)』は眉間にしわを寄せる。

 

「それはそれで、リーダーは戦車道を参加するのですか?」

 

 と、黒髪で根元をゴム紐で縛っているロングヘアーに二本のアホ毛が立っており、|浅葱《あさぎ》色の瞳を持ち八重歯が特徴的な女子・・・・・・『青嶋(あおしま)響(ひびき)』が二階堂に聞く。

 

「まぁ杏から誘いがあったんだよな。『卒業の為に戦車道取らないか』って」

 

「うわぁ、それはまた痛い所を突いて来たっすね」

 

 中島は苦笑いを浮かべる。

 

「しかも、確実に卒業できるようにしているって言う話だ」

 

「信憑性がある情報ですね。二年も留年して、更に問題を起こした上で成績に出席率が最悪な私達をそう簡単に卒業させられるとは思えません」

 

「そうっすよね。でも、あの角谷の事っすから、何か策でもあるんすかね?」

 

「あいつは何も根拠なしに言うやつじゃない。もしかしたら可能性があるかもな」

 

「・・・・・・」

 

 

「まぁ、どっちにしても、戦車道を参加するのはまだ後の事だな」

 

「今は様子見って事っすね」

 

「あぁ。それで、中島。見つかった戦車を見てきたか?」

 

「はい!全部で六両で、特に目を引いたのは五式中戦車があった事っすね」

 

「五式中戦車か。そいつは中々いいのがあったな」

 

「旧日本陸軍が造り出した最強にして最後の戦車ですからね」

 

「それ以外はⅣ号にM3、38t、Ⅲ突、八九式でしたね」

 

「うわぁ、微妙なのが多い」

 

「それで勝てるかどうか怪しいな」

 

 三枝は腕を組んで首を傾げる

 

「主力となるのはⅢ突とⅣ号、五式ぐらいっすね」

 

「M3も一応主力にはなるんじゃないか?火力は十分あるし」

 

「・・・・・・」

 

 

「まぁ、私達が参加するとなれば、戦車には困りませんからね」

 

「そうっすね。あ、そういえば近々ここに戦車道の教官が来るみたいっすよ」

 

「そうか。なら、こっそりと見学ぐらいしてみるか」

 

「いいっすね!」

 

「そうですね。戦車道がどんなものかを見るチャンスです」

 

「・・・・・・」

 

「それなら決まりですね」

 

「あぁ。なら、中島。教官が来て戦車道の授業を行う時間を調べろ」

 

「了解っす!」

 

 そうして話は終わって解散する。

 

 

 

 

 

 


 
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