No.697277 英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~soranoさん 2014-06-29 00:16:41 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2654 閲覧ユーザー数:2410 |
~夕方・聖アストライア女学院・聖餐室~
「はは……―――話を聞かせていただいて本当にありがとうございます。自分達の中の芯が一本、改めて通ったような心境です。ですが……お話を聞く限り、自分達が期待されているのはそれだけでは無さそうですね?」
冷や汗をかいていたリィンは気を取り直して真剣な表情でオリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。
「え……」
「兄様?」
「えっと……どういう事なんですか??」
「ほう……」
リィンの質問を聞いたエリスは呆け、エリゼとセレーネは戸惑い、オリヴァルト皇子は感心した様子でリィンを見つめた。
「士官学院の常任理事の4名……我が兄、ルーファス・アルバレアに帝都知事カール・レーグニッツ。そしてラインフォルト社会長、イリーナ・ラインフォルトと前メンフィル皇帝にして現メンフィル大使リウイ・マーシルン皇帝陛下ですか。」
「あ……」
「確かにその4名は……」
「どう考えても皇子様とは違う狙いを持ってそう。」
「フフ、その通りだ。―――先程も言ったが既に”Ⅶ組”の運用は私から離れ、彼ら4名の理事に委ねられている。このうち、知っての通り、ルーファス君とレーグニッツ知事はお互い対立する立場にある。イリーナ会長はARCUSなどの技術的な方面に関係しているが、その思惑は私にもよくわからない。リウイ陛下もイリーナ会長同様、何故プリネ姫達を留学させる条件の一つとして自らが常任理事の一人になる事を出した思惑もわからない。そして――――君達の”特別実習”の行き先を決めているのは彼らなのさ。」
ユーシスの指摘に頷いたアリサやマキアス、フィーの指摘を聞いたオリヴァルト皇子は静かな笑みを浮かべて説明した。
「そ、そうだったんですか……」
「……確かに何か思惑や駆け引きなどがありそうですね。」
「ああ、リウイ陛下を除いた3人からは”Ⅶ組”設立にあたって譲れない条件として提示されたものでね。正直、ためらいはしたのだがそれでも我々は君達に賭けてみた。帝国が抱える様々な”壁”を乗り越える”光”となりえることに。」
オリヴァルト皇子の話を聞いたリィン達は黙って考え込んだ。
「フフ……だがそれじゃあ我々の勝手な思惑さ。君達は君達で、あくまで士官学院の生徒として青春を謳歌すべきだろう。恋に、部活に、友情に……甘酸っぱい青春なんかをね♪」
真剣な表情で語った後ウインクをしたオリヴァルト皇子の発言にリィン達は冷や汗をかき
「やっぱ、オリビエはオリビエだね。」
「全く、そこで何故余計な一言を言うのじゃ……」
「まあ、それでこそオリヴァルト皇子だけどね……」
「フフ、そうですね……」
エヴリーヌとリフィアは呆れた表情で呟き、プリネとツーヤは微笑んでいた。
「あはは……」
「……そう言って頂けると少しだけ気が楽になりました。」
エリオットが苦笑している中、リィンは口元に笑みを浮かべてオリヴァルト皇子を見つめた。
「その、先程”我々”と殿下は仰っていましたが……他にも殿下に賛同されている関係者の方々が?」
その時ある事に気付いたアリサはオリヴァルト皇子を見つめて尋ねた。
「ああ――――ヴァンダイク学院長さ。元々、私もトールズの出身で、あの人の教え子でね。”Ⅶ組”を設立するアイデアにも全面的に賛同してくれたんだ。」
「そうだったんですか……」
「確かに学院長には色々と配慮していただいてますね。4人の理事達とは異なり、学院運営に口を出せる立場ではないが理事会での舵取りもしてくれている。何よりも現場の責任者として最高のスタッフを揃えてくれたからね。」
「最高のスタッフ、ですか?」
「もしかして……サラ教官のことでしょうか?」
オリヴァルト皇子の言葉が気になったユーシスは不思議そうな表情をし、ラウラは尋ねた。
「はは、彼女だけではないがね。ただ学院長が彼女を引き抜いたのは非常に大きかっただろう。帝国でも指折りの実力者だし、何よりも”特別実習”の指導には打ってつけの人材だろうからね。」
「え。」
「帝国でも指折りの実力者……」
オリヴァルト皇子の答えを聞いたアリサとエリオットは呆け
「”特別実習”の指導に打ってつけの人材……??」
(フフ、ここまでヒントがあるにも関わらず、わからないのはある意味奇蹟に近いかもしれないわね。)
(そ、そうですね……)
首を傾げているマキアスを見たプリネとツーヤはそれぞれ苦笑した。
「ふふっ、わたくしも噂くらいは耳にしたことがありますわ。”紫電(エクレール)”なんて格好いい呼ばれ方をされている方ですよね?」
「”紫電(エクレール)”……!」
「……やはり……!」
「二人が知っているという事は帝国の武の世界で知られる名前か。」
アルフィン皇女の言葉を聞いて顔色を変えたラウラとリィンの様子を見たガイウスは二人に尋ねた。
「ああ……耳にした事があるくらいだけど。」
「帝国遊撃士協会にその人ありと言われるほどの若きエース。最年少でA級遊撃士となった恐るべき実績の持ち主……”紫電のバレスタイン”―――それが君達の担当教官さ。」
その後リィン達はオリヴァルト皇子達と談笑しながら夕食を取り、食後の紅茶の時間になるとエリゼがリィンを見つめて口を開いた。
「――――さてと。兄様、そろそろそちらの少女―――セレーネさんに関しての詳細な説明をして頂きましょうか?」
「先程のセレーネさんの自己紹介では兄様に”仕えている”や”パートナー”に加えて兄様の事を”お兄様”と呼んでいる事が非常に気になっていたのですが……?」
「う”っ……」
膨大な威圧を纏って微笑むエリゼとエリスに見つめられたリィンは冷や汗をかき
「アハハ……え、えっと。実は―――」
その様子を見て冷や汗をかいて苦笑していたツーヤは助け舟を出すかのように、その場にいる全員にセレーネの事情を説明した。
「ほほう?ツーヤ君の妹君か。フフ、幼い頃のツーヤ君に負けず劣らず可憐な娘だね♪ミント君とツーヤ君の例を考えると、成長すればきっと二人のようにスタイル抜群の素晴らしい美女になるだろうね♪いや~、リィン君が羨ましいよ♪将来美女になる事が確定している可憐な娘をキープしているんだから♪」
セレーネの事情を聞いたオリヴァルト皇子は目を丸くした後リィンにウインクをしたが
「お兄様、少しお下品ですわよ。」
「あたっ。ボクは当然の事を言っただけなんだけどね~。」
アルフィン皇女にハリセンで頭を叩かれ、羨ましそうな表情でリィンを見つめた。
「ほう?”七大罪”の一柱に精霊王女に加えて竜とも契約するとは……やるではないか。」
「エステル並みに異種族達に好かれているね。」
一方リフィアとエヴリーヌは感心し
「フフ、私としては嬉しいわ。ツーヤの妹に会えて。」
「それはあたしもですよ。もう会えないと思っていたのですから……」
微笑むプリネの言葉に頷いたツーヤは懐かしそうな表情でセレーネを見つめた。
「「に・い・さ・ま~~~~~??」」
「うっ…………」
膨大な威圧を纏って微笑む姉妹に見つめられたリィンは表情を引き攣らせた。
「あ、あの。わたくし、お兄様と契約してはいけなかったのでしょうか……?」
その様子を見ていたセレーネは心配そうな表情でエリゼとエリスを見つめ
「―――いえ、セレーネさんは何も悪くありませんので気になさらないで下さい。」
「ええ。全て兄様が悪いだけですから。」
「全くよね!」
「何で全部俺のせいに……というかアリサまで何で一緒に頷くんだよ……」
エリスとエリゼの意見に頷いたアリサの言葉を聞いたリィンは疲れた表情で肩を落とした。
「「?………………(まさか…………!)」」
一方アリサの答えを聞いた姉妹は首を傾げた後ある事を察してアリサを真剣な表情で見つめ
「―――アリサさん、つかぬ事をお聞きしますが……アリサさんも”そう”なのですか?」
エリゼがアリサに問いかけた。
「え?…………!え、ええ、そうよ!言っておくけど、諦めるつもりはないわよ……!」
エリゼの問いかけに首を傾げたアリサだったがすぐに察して真剣な表情でエリゼとエリスを見つめ
「「フフ……」」
「ふふ……」
互いに膨大な威圧を纏って微笑み合い、その様子を見守っていたその場にいる全員は冷や汗をかいた。
(な、何なんだ、一体……)
(うふふ、ついに妹達にアリサの事がわかってしまったわね♪)
(ふふふ、今の所は姉妹が優勢ですから、ここから彼女がどうやって巻き返すのかが見物ですね……)
(アリサ、怖い……)
その様子を見守っていたリィンは表情を引き攣らせ、ベルフェゴールはからかいの表情になり、リザイラは静かな笑みを浮かべ、ミルモはアリサを怖がり
「うふふ、さすがエリスのお兄さんですわね♪」
「いや~、甘酸っぱい青春を楽しんでいるようで何よりだよ♪」
アルフィン皇女とオリヴァルト皇子はからかいの表情で見守っていた。
「コホン。それはともかく……セレーネさん、でしたね?私はエリゼ。リィン兄様の妹です。以後お見知り置きをお願いします。」
「私はエリス。リィン兄様の妹で、エリゼ姉様の双子の妹です、よろしくお願いします。」
「はい!えっと、お兄様の妹ですから……エリゼお姉様とエリスお姉様とお呼びした方がよろしいですか?」
姉妹の事を知ったセレーネに見つめられたエリゼとエリスはそれぞれ目を丸くして互いの顔を見合わせた後、セレーネに微笑んだ。
「ええ、よろしくね、セレーネ。」
「フフ、ついに私にも妹ができて嬉しいわ、セレーネ。」
「はい!よろしくお願いします、エリゼお姉様、エリスお姉様……!」
姉妹に微笑まれたセレーネは嬉しそうな表情で頷いた。
「うむ、姉妹同士仲が良いのは良い事だ!それはそうと……セレーネと言ったな?契約方法はやはりミントやツーヤと同じなのか?」
「はい。わたくし達ドラゴンの”パートナー契約”はキスをする事ですが。」
リフィアに尋ねられたセレーネが頷いて答えたその時
「ちょっ、セレーネ!?」
「「「何ですってっ!?」」」
リィンは慌て、エリゼとエリス、アリサは声を上げて驚き
「まあ♪」
「ほう、こんな可憐な娘にキスをするとは……やるじゃないか♪ハッ、待てよ?という事はミント君とツーヤ君の”パートナー”であるエステル君とプリネ姫も同じことをしたという事だから……ムフフ、これは良い事を聞いちゃったよ♪」
アルフィン皇女と共にからかいの表情になったオリヴァルト皇子はある事に気付いて酔いしれた表情をした。
「フウ、知られてはいけない人に知られてしまったわね……」
「アハハ……次にエステルさん達に出会った時に、からかわないといいのですが……」
「絶対からかうだろうね。オリビエだし。」
オリヴァルト皇子の様子を見たプリネは疲れた表情で溜息を吐き、苦笑するツーヤの言葉にエヴリーヌは呆れた表情で答え
「キ、キスですか……」
「フッ、その場面を是非とも見たかったな。」
「伝承の存在である竜との契約……一体どんな状況だったのか、気になるな。」
エマは頬を赤らめて苦笑し、ユーシスはからかいの表情になり、ガイウスは静かな笑みを浮かべてリィンを見つめ
「アハハ……今考えると、見ている方も恥ずかしかったよね?」
「そ、そうだな。」
「……まあ、本人同士の合意の元なのだから、別に構わぬが……」
「リィン、ロリコン?」
苦笑するエリオットの言葉にマキアスは頷き、ラウラは困った表情をし、フィーは首を傾げた。
「「に・い・さ・ま~~~~~??」」
「リィン、あなた……こんな小さい娘にキスをするなんて……!」
姉妹は膨大な威圧を纏って微笑みを浮かべてリィンを見つめ、アリサは顔を真っ赤にしてリィンを睨み
「し、仕方ないだろ!契約方法がそれしかなかったんだし!それにキスをしたって言ってもキスした場所はうなじだぞ!?」
リィンは慌てた様子で言い訳をしたが
「「「そういう問題ではありません(ないわよ)っ!!」」」
「すみません…………」
エリゼとエリス、アリサに怒鳴られ、肩を落として反射的に謝った。
その後食事を終えたリィン達はエリスに見送られようとしていた…………
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第120話