No.69611

女の子として、覇王として 最終話

komanariさん

やっと書けました。

最終話です。

今回も初挑戦で戦闘描写をやってます。

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2009-04-20 02:13:58 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:16658   閲覧ユーザー数:12189

一刀たちから、洛陽防衛成功の伝令が来たのは、私たちの所にはじめの伝令が来てから、5日目のことだった。

 

援軍要請を受けて、すぐに反転しようとしたのだけど、五胡がそうはさせまいと攻撃を強めたため、それを撃退し、反転するまでに1日かかり、蜀の軍勢と別れ、そこから大急ぎで洛陽への道を急いでいる途中で、伝令と行きあった。

 

報告によれば、洛陽は一刀の指揮のもと2日間の防衛戦を耐え抜き、攻めて来た軍勢は雪蓮率いる呉の援軍によって撃退されたということだった。

 

私は、伝令に一刀が消えていないか。一刀に何か異変はなかったか。聞かずにはいられなかった。

 

私の勢いに気圧されたのか、伝令の兵は戸惑いながらも、

 

「は、はい。北郷さまはこれと言った怪我もなく。私が伝令に出立するときも、自ら私にお声をかけてくださいました。」

 

と答えた。

 

「そう・・・・・。」

 

そう言ったけど、私は不安だった。

 

(あの時のように、みなには隠しているだけかもしれない・・・。)

 

そう思う心は、決して消えなかった。

 

「・・・・・」

 

「華琳様。洛陽も無事ということですので、行軍の速度を落としてもかまいませんか?先の戦い、そしてこれまでの強行軍で、兵たちも疲労しております。それに、華琳様ご自身も、最近よくお休みになられていらっしゃらないのでしょう?」

 

伝令を受けた後、不安な考えに駆られ、何も指示を出さない私に、桂花がそう進言してきた。

 

「・・・・」

 

「華琳様・・・。」

 

私が返事をしないでいると、桂花が心配そうに私を呼んだ。

 

「・・・・そう・・・ね。皆に指示を出して頂戴。」

 

本音を言えば、そんなことしたくはなかった。早く洛陽に行って、一刀に会いたかった。

 

兵たちなどのことは構わず、私一人だけでも、急いで洛陽まで馬を飛ばしたかった。

 

そう思う「女の子」としての私の思いを、「覇王」としての私が律した。

 

今、私だけが先を急ごうとすれば、兵たちに不安を与える。その不安は兵たちだけでなく、国全体に広がり、やっと手に入れた平和が、また失われてしまう。

 

(王が取り乱せば、国全体が取り乱す。王とはそういった存在。そして私は王の中の王、「覇王」なのだ。)

 

私の中にいる、二人の私。

 

「女の子」としての私は一刀を思い。「覇王」としての私は国を思っていた。

 

(私はどうしたら・・・)

 

その問いは、洛陽に着くまでのひと月弱の間、私を悩ませ続けた。

 

 

 

 

洛陽に到着すると、まだ戦いの傷跡が来て取れる城門の所に一刀と雪蓮が立っていた。

 

「みんな、お帰り!」

 

そう言って手を振る一刀を見て、私は少し安心した。

 

「華琳様。」

 

そう微笑みながら声をかけてきた秋蘭に、私はうなずいて答えた。

 

城門の所まで来て一刀を見ると、出発前より少したくましく見えた。

 

「華琳。お帰り。」

 

そういう一刀の瞳の中には、いつものやさしさと、何かを決意したような真剣さがあった。

 

「・・・えぇ。」

 

その一刀の瞳に、私は言おうとしていた言葉を言えなかった。

 

(前の時の様な感じはないけれど、ほんとに変わったところはないのかしら・・・)

 

一刀の目を見つめたまま、そう考えていると、雪蓮が割って入ってきた。

 

「ぶーぶー。さっきから二人の世界に入ってるけど、ここの窮地を救ったあなたの友達には挨拶はないわけ?」

 

「・・・そうね。挨拶が遅れたことを謝るわ。ありがとう雪蓮。あなたのおかげで、私たちは家を失わずにすんだわ。」

 

「ふふ。どういたしまして。それと、華琳。私が来たおかげで失わずに済んだのは家だけじゃないわよ?」

 

雪蓮はいたずらっぽく笑った。

 

「私が来なかったら、きっとあなたの大切な人も危なかったんだから。」

 

そう言いながらちらちらと一刀の方を見る雪蓮。

 

「・・・えぇ。そうね。重ねて礼を言うわ。一刀を守ってくれてありがとう。」

 

私は雪蓮に頭を下げた。

 

「えへへ。どういたしまして。」

 

そう言って雪蓮は微笑んだ。

 

「それに、私も一刀のこと好きだしね。一刀、いい男だし。」

 

そう言いながら一刀の方にいたずらっぽい視線を向けた。

 

「ちょ、ちょっと、雪蓮。冗談はやめてくれよ。」

 

一刀は雪蓮の言葉に少し焦った感じでそう言った。

 

「ふふ。冗談じゃないんだけどなぁ・・・。」

 

「と、とにかく。王城に行こう。」

 

一刀はそう言うと、王城の方へと私たちを急かした。

 

「さっきは、私たちが来なかったらって言ったけど、一刀も頑張ってたんだからね。」

 

雪蓮は、歩きながら私に話しかけた。

 

「私たちが来た時も、敵の攻撃をちゃんと防いでいたし、兵もきちんと指揮出来てたみたいだしね。」

 

「・・・そう。」

 

雪蓮の話に、私はそう返すことしかできなかった。

 

私は、魏の子たちと話す一刀の方ばかり気にしていた。

 

王城までの間、私は一刀と一言も話せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

王城に入り、皆で玉座の間で戦勝祝の宴を開いた。

 

「この度の戦、みなの奮闘のおかげで勝つことができた。今宵は存分に疲れをいやしてほしい。」

 

私のあいさつで始まった宴だったけれど、私は心から楽しむことができていなかった。

 

城に着いてからも話すことができなかった一刀を、私はずっと気にしていた。

 

周りの娘たちも、そんな私の気持ちを感じ取ったのか、どこかよそよそしい感じで、宴は喧騒に包まれることなく、気まずい雰囲気が漂っていた。

 

そんな雰囲気の中、一刀がスッと立ち上がり、玉座の下まで来た。

 

「一刀・・・。」

 

そう言った私を一刀は、城門の時と同じ、真剣な目で見つめていた。

 

「華琳・・・・。」

 

私の名を呼んだあと、一刀は少し黙った。

 

「・・・」

 

私も一刀が話し始めるのを待った。

 

「・・・・今回の防衛戦成功の褒美ってもらえるのか?」

 

そう言った一刀に、春蘭や桂花あたりが、少しざわついたけど、一刀が真剣な瞳のままだったから、私も真剣に答えた。

 

「・・・えぇ。あなたが望むものをあげるわ。何がほしいの?」

 

私の言葉に、春蘭や桂花が黙った。宴はシーンっと静まり返り、一刀の答えを待っているようだった。

 

「・・・・・」

 

一刀は、私から目をそらさないまま、スゥっと覚悟を決めるかのように息を吸った。

 

「俺に・・・。」

 

一刀の言葉をその場にいる皆が待った。

 

「俺に・・・・、稽古を・・・つけてくれないか?」

 

「「「「「「「「「「・・・は?」」」」」」」」」」

 

その場にいた皆が、声を上げた。

 

私も予期していなかった一刀の答えに、あっけにとられていた。

 

「だめ・・・か?」

 

そう不安そうに玉座の下から私の方を見上げる一刀に、少し「可愛い」と思ってしまった私は、さっきまでの緊張感がふっと途切れてしまっていた。

 

「・・・いいえ。それぐらいでいいのなら、いつでもいいわよ。」

 

私の答えを聞いた一刀は、真剣な表情を変えないままだった。

 

「そうか。なら、今からでもいいか?」

 

そう言った一刀に、桂花がかみついた。

 

「ちょっと、そこの全身精液男!華琳様は行軍でお疲れなのよ!なんで、あんたなんかの稽古の相手を、華琳様が務めなきゃなんないのよ!!あんたなんかその辺の猪春蘭とでも稽古してればいいでしょ!」

 

「お、おい桂花!猪とはどういうことだ!!」

 

「ふん。馬鹿みたいに突き進むことしか知らない馬鹿に、猪って言って何が悪いの!?」

 

「な、何だとぉ!!」

 

「何よ!!」

 

「姉者。少し落ち着いてくれ。華琳様のお答えがまだだ。桂花も華琳様のお答えを聞くまで少し静かにしてもらおうか。」

 

「ぐぬぬぅ・・・」

 

「ふん!!」

 

春蘭と桂花のやり取りを秋蘭が鎮めると、皆も私の答えを待った。

 

「・・・」

 

私がもう一度一刀を見ると、一刀は真剣な表情を崩していなかった。

 

「・・・わかったわ。誰か、私の絶を持ってきてちょうだい。」

 

「ありがとう。」

 

一刀はさっきまでの真剣な表情をふっと崩して微笑んだかと思うと、キッと表情を引き締め、自分の武器を持ってきてもらうように、兵に声をかけていた。

 

「か、華琳様!!」

 

桂花の言葉を手で制して、私は玉座を降りた。

 

「悪いけど食事を少し後ろに下げてくれるかしら。外はもう暗いから、ここで行うわ。」

 

私はそう言って、食事を片付けさせた。

 

 

 

 

 

稽古ということだったので、刃をつぶした稽古用の絶と、同じく刃をつぶした一刀の剣(真桜が作った一刀の国の剣。確か刀と言ったかしら。)が玉座の間に運ばれ、宴に参加しているみんなは、少し後ろに下がっていた。

 

「稽古ということだけど、いつも私が春蘭とやっている方法と同じでいいわね?」

 

私と春蘭がしている稽古とは、いわば真剣勝負のこと。そのことは一刀もわかっていた。

 

「あぁ。かまわない。」

 

そう一刀が答えると秋蘭が審判をすると名乗り出た。

 

「あら。審判が必要なら私がするわ。」

 

そう雪蓮が申し出た。

 

「・・・そうね。雪蓮にお願いするわ。」

 

私は雪蓮の申し出を受け入れた。

 

「ありがと。・・・・それでは、両者前へ。」

 

雪蓮の合図で、私と一刀は向かい合い、武器を構えた。

 

すーーーぅ。

 

一刀は大きく息を吸い込んだ。それとともに、一刀が放つ覇気が膨れ上がった。

 

(少し見ないうちに、ほんとにたくましくなったわね。)

 

私の正面には、初めて出会ったときのようなひ弱な若者ではなく、激戦を戦い抜いた屈強な男が立っていた。

 

「それでは・・・始め!!」

 

雪蓮の合図とともに、一刀が突っ込んできた。

 

「はぁーーーーあ!!!」

 

気合いをこめた叫びとともに上段から振り下ろされる刀を、私はくるっと回りながら右へよけた。

 

「ふっ!」

 

よけた回転の勢いをそのまま使い、絶で一刀がいた場所を薙いだ。

 

ガキィィン!!!

 

一刀はその薙ぎを刀で受けとめた。と思った瞬間、一刀はしゃがみこんだかと思うと、絶を受け止めた刀を横に寝せ、絶がたどった軌道のすぐ下をなぞるように切り裂いた。

 

昔の一刀では考えられないような動きだったけれど、私によけられないような剣撃ではなかった。

 

ガスッ!!

 

私は絶の柄を床につきたて、その反動で後ろへとよけた。

 

一刀ははじめからそれを予期していたかのように、しゃがんでいた状態から一歩踏み出し、私がよけた方向へと追撃をかけてきた。

 

(本当に、強くなったのね。)

 

一刀の成長を少し喜びながらも、こちらに向かってくる一刀を見据えた。

 

「はぁ!!!」

 

(でも、まだまだね。)

 

気合いとともに放たれる突きを、ぎりぎりまで見据えた。

 

「甘い!!」

 

絶の刃の背の部分でその突きをそらし、柄の部分で一刀の脇腹を打った。

 

ドスッ!!!

 

「くっ!」

 

そのまま走り抜けた一刀は、一瞬痛みに顔をしかめたが、すぐに表情を引き締めた。

 

「脇が甘いわ。突きをするのなら脇をしめて、もっといい時期を選びなさい。」

 

私の言葉を受けて、一刀は一度うなずくと、また攻撃を始めた。

 

 

 

 

「・・・・はぁあ!」

 

あれから、何度一刀に攻撃を当てたのだろうか。もう一刀は最初の速さや技のキレを失っていた。

 

「だから、そんな早さじゃ駄目だと言っているでしょ!!」

 

ドズッ!!

 

「ぐあぁ!!」

 

幾度も絶の攻撃をあてられた場所に、再び攻撃当たるたびに、一刀は叫び声を上げ、その場に倒れ込んだ。

 

「兄様・・・。」「隊長・・・・。」

 

先ほどから繰り返されている光景に、流琉や沙和が声を上げた。

 

「もう立てないようね。」

 

先ほどから何度も倒れ、何度も立ち上がってきた一刀だったが、今の攻撃はかなり効いていたようだった。

 

「さて、これくらいにしましょうか。」

 

一刀に背を向けて、歩きだそうとした私に一刀の声が聞こえた。

 

「まだ・・・・だ・・・。」

 

「・・・ふぅ。」

 

私は息を吐き、後ろを振り返らずに言った。

 

「まだってもう立てないじゃない。そんな状態じゃ戦えもしなのだから、もう終わりよ。いいわよね。雪蓮。」

 

確かに一刀は強くなっていた。沙和に勝てたというのも頷けるだけの実力が確かにあった。

 

でも、それくらいの実力じゃあ私に一撃だって当てることなんかできはしない。

 

私は、雪蓮の稽古終了の言葉を待った。

 

「・・・いいえ華琳。まだ終わりじゃないわ。位置に戻って。」

 

「!!」

 

予期していなかったその言葉に、私が振り返ると、そこには一刀がふらふらになりながらも立っていた。

 

「まだだ・・・。まだ俺は、華琳に伝えなきゃいけないことを・・・・伝えて・・・ない・・・・!」

 

力強さはなかったけど、芯の強さが感じられた。

 

「・・・わかったわ。その伝えなきゃいけないことが伝わるまで続けましょう。」

 

その強さに答えるためにそう答えたのだけど、すぐに、そう答えたことを後悔した。

 

 

 

 

ドスッ!!

 

「っ・・・・・!!!」

 

もう声も出ていなかった。

 

ドサッ・・・

 

一刀は受けた攻撃の勢いを止め切れず、その場に倒れ込んだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

一刀は、痛みに耐えながらも、また立ち上がろうとしていた。

 

「もう・・・いいでしょう?・・・・あなたの体ももう限界なのだから、もうやめなさい・・・」

 

そういう私の言葉を、一刀は聞かずに、刀を支えに立ち上がり、何とか刀を構えた。

 

「・・・まだだ。まだ、華琳に・・・・」

 

消え入りそうな声が、静まり返った玉座の間に響いた。

 

「・・・」

 

誰も話そうとせず、ただ一刀の言葉を待っていた。

 

声は発していなかったけど、流琉や沙和、そして季衣は一刀の姿に涙を流していた。

他のみんなも、涙を流すのを耐えているようだった。

 

「・・・・・・華琳に・・・、戦場でも・・・・使えるって・・・ちゃんと・・・役に立つって・・・伝えられて・・・・・・・・ないっ!!!」

 

「!!!!」

 

その言葉に、私の胸が締め付けられた。

 

「今回のが・・・・華琳の・・・・わがままだったことは・・・分かって・・・るっ!!」

 

なんとか言葉を発しながら、一刀は刀を振るった。その速度は、もはや始めたときの1割を欠けていた。

 

ガンッ!!

 

「ぐぅっ!!」

 

その遅い剣撃を後ろに一歩下がってよけると、振り下ろした刀が床にぶつかり、一刀はその反動でまた倒れ込んだ。

 

「それでも・・・それでも・・・・どんな理由であれ・・・・あの時・・・言われた・・・・理由は・・・」

 

一刀は再び刀を支えにして立ち上がろうと、もがいていた。

 

「理由は・・・俺に・・・足りないものが・・・あったから・・・」

 

なんとか立ち上がった一刀は、もう一度、刀を構えた。

 

「足りないものが、あったから・・・華琳のわがままを・・・・受け入れなきゃ・・・いけなかった・・・」

 

ふらふらとした足取りで、こちらに向かってくる一刀に、私は涙をこらえるのに必死だった。

 

「だから・・・次の時は・・・そうならないように・・・華琳に・・・・役に立つって・・・伝えなきゃ・・・」

 

一刀は刀を振りかぶることもできず、構えた位置より少し高く上げた。

 

「指揮は・・・防衛戦で・・・証明・・・できた・・・」

 

少しずつ上がっていく刀と、上げるたびに苦しそうに顔をゆがめる一刀を私は必死に見つめた。

 

「だから・・・武芸でも・・・・役に立つって・・・伝えなきゃ・・・・・・・ならないんだぁぁぁ!!!!」

 

ガキィィンッ!!

 

絞り出すような一刀の気合いとともに振り下ろされた刀を、私はこの日初めて受け止めた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

絶で受け止めた刀の向こうから、一刀は私の目を見つめていた。

 

「・・・・」

 

私はその目を見つめ返し、少しの間私たちは見つめあっていた。

 

その光景を周りの皆は静かに見守っていた。

 

「わかったわよ・・・。」

 

一刀の気持ちを、一刀の思いを受け止めて、私はそう答えた。

 

「あなたが戦いでも使えるって、認めて・・・・あげるわよ。」

 

一刀が欲していたであろう答えを、私は答えた。

 

カランッ!

 

「よかっ・・・たぁ・・・」

 

「ちょ、ちょっと、一刀!?」

 

私の答えを受けて、緊張が途切れたのか、刀を手から落とした一刀が、私の方へと倒れ込んできた。

 

「ちょ、ちょっと、孕ませ男!!あんた何やっ・・・むーむー!!」

 

「桂花。すまんが、空気を読んでくれ。」

 

周りで、桂花と秋蘭の声が聞こえたけど、すぐに一刀の方に意識を戻した。

 

「・・・わがままだなんて、なかなか言ってくれるじゃない。」

 

「はは・・・でも・・・わがまま・・・だったん・・・だろ?」

 

一刀は私の腕の中で、そう微笑んだ。

 

「・・・・」

 

私は答えなかった。

 

「・・・・・あと・・・もうひとつ・・・伝えなきゃ・・・・いけない・・・ことが・・・あるんだ。」

 

そう囁くように言った一刀の声に、私は耳を澄ませた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・のは・・・・・・・・・・・・いいよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・から。」

 

 

一刀が発した、私にしか聞こえない大きさの囁きは、それまでずっと私を苦しめていた悩みを、きれいに取り去った。

 

「・・・・・・ばか。」

 

「今回に限っては・・・・華琳も・・・・そうだろ?」

 

そう言いながら一刀は私の方に顔を近づけた。

 

「・・・・うるさいわよ。」

 

私も一刀の顔に手を添えて、私の顔に近づけた。

 

「・・・愛してるよ。・・・俺の可愛い女の子。」

 

その一刀の言葉が嬉しくて、私は一刀にキスをした。

 

「・・・・ばか。」

 

 

 

キスを終えた後もずっと見つめあう私たちに、咳払いをして周りの事を思い出させたのは、審判をしていた雪蓮だった。

 

 

 

 

 

 

 

~蛇足~

 

 

「ねぇ、ねぇ。あの時一刀になんて言われたの?」

 

それまで洛陽に駐留していた雪蓮たちが呉に帰る日だった。

 

「うるさいわよ!雪蓮は早く帰らないと、冥琳に殺されるわよ!!冥琳たちに1カ月以上仕事押し付けたんでしょ!?」

 

「冥琳に怒られるのは、たぶん確定だから、今から騒いでもしょうがないじゃない。それよりも、今は、華琳がなんて言われたのか気になってしょうがないの!ね?いいじゃない。おしえてよぉー!?」

 

雪蓮のそんな言葉に、私はあの時の一刀の言葉を思い出して、少し頬を赤くしていた。

 

「顔赤くするぐらいうれしい言葉だったの!?」

 

その表情を見逃さなかった雪蓮に、つっこまれてしまった。

 

「・・・ふぅ。」

 

「あら。やっと話す気になってくれたの!?」

 

そう言いながら、キラキラした目で私の言葉を待つ馬に乗ったままの雪蓮を、私は笑顔で見上げた。

 

「ふふ。」

 

「何なに??」

 

私から答えが聞けると、わくわくした様子を隠さない雪蓮が、じっと私の言葉を待っていた。

 

「それは・・・ねっ!!」

 

パシンッ!!

 

私は言葉と同時に、雪蓮の乗っている馬を叩いた。

 

「ひひーん!!!」

 

「わ!ちょ、ちょっと、まって・・・きゃー!!」

 

突然叩かれたことに驚いた馬が、雪蓮を乗せたまま走りだした。

 

「それじゃ、冥琳によろしくね!」

 

走り始めた大将の後を追って呉の軍勢も馬を走らせ始めた。

 

「お、覚えときなさぁーい!!」

 

遠くから聞こえてきた雪蓮の声に、私は手を振ってこたえた。

 

 

 

雪蓮を見送って、一刀が寝ている王城までの道のりを戻りながら、私はあの時の事を思い出した。

 

 

・・・あの時。一刀が私に言った言葉。

 

たぶん、わざと私にしか聞こえないように言ったあの言葉。

 

 

「華琳が・・・女の子に・・・なるのは・・・・俺の前・・・だけで・・・いいよ。俺はもう・・・二度と・・・華琳の前から・・・消えたり・・・しない・・・から。」

 

 

(あんなこと言われたら、惚れ直しちゃうじゃない・・・。)

 

そんなことを思うと、私の頬はまた赤く染まっていた。

 

 

 

「女の子」としての私と、「覇王」としての私の二人の私に押しつぶされそうになっていた私は。

一刀の言葉によって、一人の「華琳」として王城への帰路を急いでいた。

 

 

(ふふ。そろそろ、「旦那さま」って呼んでみようかしら。ここ2カ月来てないし・・・・・。)

 

 

私は少しお腹をさすり、大好きな人のいる王城へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

どうもkomanariです。

 

なんとか、書きました。

 

前回の作品に多くのご支援、コメントをくださった方々。本当にありがとうございました。

 

 

さて、戦闘描写も初挑戦で書いてみました。

 

でも、結果はひどいことに・・・・

 

あぁ、戦闘描写も難なく書けるような文才がほしい・・・。

 

 

話も、ちょっと強引な感じだったかもしれません。

 

その辺を不快に思った方がいらっしゃいましたら、お詫びいたします。

 

 

今回で一応最終話になりましたが、

 

僕なんかの作品で、華琳様の可愛さを少しでも表現できていれば幸いです。

 

それでは、今回も閲覧していただき、ありがとうございました。


 
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