「フェイリールドさん・・・」
目の前の少女・・・いや、実際の年齢は私の遥か上をいく女性
フィリア・フェイリールドという戦闘機のパイロットは
今は延命器具を繋がれた状態・・・絶命の一歩手前の状態まで陥っていた
「・・・円卓の鬼神・・・教科書に載っているその英雄が
こんなに幼いなんて・・・今だ信じられません」
こんなに幼いのに・・・私よりも若いのに
彼女は・・・世界を救うだけの力を有していた
どうして?・・・そう考えてしまう
そして彼女の傍でその雰囲気の中に居ると
彼女は・・・フェイリールドさんは人とは思えない程に軽く柔らかな空気を纏っていました
今もーーー窓を閉め切った場所なのに、この空間では空気が揺れている
「・・・っ!!がっ・・・あ・・・」
突然、医療機器が荒々しい警告音を発する
「・・・・!!ゴホッ・・・」
口から赤い血を吐き、シーツがその色そのままに染まる
「・・・・うぅ・・・」
苦しそうに・・・手を伸ばす彼女は
届かないものを掴もうとするようにして
「・・・皆・・・ごめん・・・守れな・・・く・・・て・・・」
魘されるように、そしてーーー
・・・そして力なく倒れた
ピーーーーーーーーーー
「・・・そんな・・・」
心拍数検出不能ーーーー心肺停止
「フェイリールドさん・・・」
私の手から携帯端末が滑り落ちる
第二戦闘アリーナ
「来たはいいものの・・・相手が居ないではないか」
時刻ーーー午後六時
アリーナには非常用電源を使用しているのかは判らないが、薄暗い真っ暗な状態だった
所々赤い非常赤色灯が点灯しており、少し不気味な重い雰囲気を醸し出していた
「相手が居ない?俺じゃお前の相手には不足って事か?」
いきなりオープンチャネルで音声が聞こえた
この声は・・・ポートマスという男の教員の声だ
そして、アリーナに点灯していた赤色灯の明かりが少し強くなった
更に霧がでているのか・・・視界があまりよくない
だが、その紅黒く照らされた霧の向こう側に機影を捕捉した
「お前が私の相手か?」
私は問いかけた
「”そうだ”」
オープンチャネルから、千冬さんの声が聞こえた
「”篠ノ乃に命令を下す。今おまえが捕捉した目標を無力化せよ・・・できるものならな”」
最後の高圧的な言い方に、少し眉を潜めた
こんな相手、すぐに蹴散らしてやーーー
「ガルム2、エンゲージ」
いきなり目の前から消えた敵機は、いつの間にか私の後ろに居た
「っ!!」
即座にその位置に雨月を振りぬく
だが、それは空振りに終り
代りに、私は側面から打撃を受けてアリーナの壁まで吹き飛んだ
「かっ・・・はっ・・・!!」
ISが相殺しきれない衝撃を受け、私は少し咳き込んだ
次に顔を上げると、目の前には既に刃を構えたそれは居た
「目標を破壊する」
たった一言
それだけだった
目の前から姿を消し、空気を切り裂く音とスラスターがエネルギーを放出する音が
アリーナにこだまする
「・・・・っ!!正面!!」
直感的に、攻撃が来る方向に構えを取った瞬間
ーーーーシイィン
雨月の切っ先が、まるで外れたかのように切り落とされた
攻撃を完全に防御できる認識範囲に居たはずなのに
相手を捉える事ができなかった
HMDの表示が出ている所には何も無い
相手はーーー紅椿の反応速度の上を行く速度で移動している
何処に居るのか、全くわからない
そでは・・・まるであの時のISの動きそのものだ
そして、その先私に何が起こるのかも想像が付く
ああ・・・何故私はこんなに冷静なんだ
これだけの殺意を向けられていてーーー何故こんなに落ち着いているんだ?
一夏が助けに来てくれるから
「残念ながら、織斑一夏はお前を助けはしない」
思考を読まれたのか、私は暗闇の中に眉を潜めた
「お前のやった事は、あいつが望む”正当な戦闘”ではなく”不条理な暴力”でしかなかった」
「それなら何故!!お前が私を咎める!!」
目の前に現れた影に問いかける
「それはなーーーー俺はお前が傷つけた彼女と
彼女が”守った”この世界を護る為に生きている騎士だからだ」
その言葉を聞いた瞬間、私の意識が暗転した
精神的に、心の底から絶対的な恐怖に身を竦ませた
嫌だ・・・私はまだーーー
死にたくない
「おいおい何だ?専用機っつー最強をもらっておいてその様はよぉ・・・
あいつに傷を負わせたのは突発的な感情の高ぶりだと?
ふざけるな。お前がした事は、新しい玩具を与えられたガキがやった事と一緒なんだよ
お前は何だ?ただ見た目の成長が早い小学生か?
そうじゃないだろ、ちゃんと感情のコントロールができるはずだろうが」
畜生・・・これだから最近のガキは嫌いなんだ
文句ばっかり言う割りには自分が悪い事を認めず、暴走だとさ
「・・・・もう、やめてくれ・・・」
「やめねーよ。お前があいつにやった事がどういう事なのか判るまでな」
左腕の日本刀のようなブレードを破壊し、腕部装甲と稼動ユニット、その他スラスター
展開装甲、こいつが持つ攻撃力、防御力、加速力全てを削ぎ落としてやる
「っ・・・が・・・はっ・・・」
反応させる暇は与えていない。一方的に俺は破壊した
殆どの装甲を砕かれ、強制解除させられた搭乗者がその場に落ちる
「さて、これで俺はお前を殺す事ができる訳だが
現実問題、そんな事が許される世界ではない」
「・・・・・・・」
「だが、これだけは教えておく
彼女と俺は、”それ”が正当化されてしまう場所に居た。
お前には一生理解できない、今この場所のような暗い場所にな」
「・・・やはり、その強さは同じなのだな」
コントロールルームでアリーナの状況をモニタリングしていた私は呟いた
ポートマス・・・いや、ラリー・フォルクという名の男は
その戦歴の数だけの戦闘力、経験値、精神力の強さを秘めた番犬だった
・・・いや、もう番犬という名は相応しくは無いな
何故ならーーー守るべきものを、使命ではなく自分の意思で守ろうとしている
そういう者の事はーーー騎士と呼ぶのだ
紅き翼を持つ騎士・・・”紅騎士”
そしてーーーその騎士が忠義を尽くすただ一人の人物
蒼き翼をはためかせる、絶対的なチカラの象徴
蒼き翼を持つ姫君・・・”蒼姫”
「我ながら笑う程ロマンチックな発想だな・・・」
だが、それは間違ってはいないだろう
その二人の間にあったのは・・・首と首を繋ぐ冷たい鎖ではなく
心を繋ぐ、暖かい手のひらだったのだから
私には無いものを持つ存在
互いを認め、手をとりあい、肩を並べる事のできる存在
「ーーーー”相棒”か・・・」
その言葉の意味を理解した私はマイクに語りかけた
「戦闘終了ーーー勝者”ガルム2”」
「ようフィリア。大丈夫ーーーー」
フィリアが居ると言われた部屋に来た
そこに・・・そのベットの上に寝かされていた
医療機器を外され・・・白い布で顔を隠された人が
ただ一人、その部屋に居た
部屋を間違えたのか?
もう一度、医務室の番号を確認する
その番号と聞いた番号に間違いは無かった
ヒュオッ
開け放たれた窓から部屋に風が流れ込み
寝かされている人物の顔に被せてあった布が風で飛んだ
その顔を見た瞬間・・・俺の中で時間が停止する
「そんなハズないよな・・・・なあ、フィリア・・・返事してくれよ」
無意識に彼女の手を握る
何でだ・・・何でこんなに冷たいんだ?
あの暖かさは・・・どこに行ったんだ?
「なあって・・・おい・・・お願いだからよ・・・」
必死に返事を求めた
だが・・・その求めた返事が返ってくる事は無かった
同時にーーー俺の中で何かが壊れた
何が壊れたのか・・・具体的には解らないけど
それは・・・俺にとって大切な何かだったと思う
そんな事ーーーどうでもいいが
「あ、一かーーー」
「・・・・・・」
廊下を突き進んでいく返事をしない一夏の背中をただ見つめたシャルロットは
呼びかける途中で言葉を失った
そして、そのままフィリアの病室に向かう
「一夏の様子が変だったんだけど・・・フィリア、何か知ってる?」
ただ眠っているようにそこに横たわるフィリアの状態をシャルロットが理解するのは
それから少し遅れてだった
床に落ちている白い布を見て、シャルロットは日本の風習のようなものを思い出した
シャルロットが知っているその風習はーーー”死者の顔には白い布を被せる”というもの
「・・・フィリア?起きてよ・・・起きてよ・・・ねぇ」
体を揺さぶって、一夏と同じように手を握った
ーーーやはり、その手から伝わってきたのは氷のような冷たさと
鼓動を失った・・・恐ろしいほどに静かな感覚だけだった
静かにーーーシャルロットの瞼に涙がたまっていった
「ーーーーフィリアあぁぁぁぁぁぁ・・・・」
二度とさめる事の無い眠りについてしまったーーー大切な人の手に
涙を零した
心がーーー壊れ始める
彼女が母親を失った時と同じように
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・」
声をあげて・・・彼女は涙を流した
「助けてもらったのに・・・今度は僕が助ける番だったのに・・・!!」
そしてーーー彼女の瞳の奥底から
「・・・こんなんじゃ・・・こんな世界なんてーーー!!」
心が真っ赤に染まる程の怒りが沸き起こる
だがーーー
「・・・でも・・・フィリアは篠ノ乃さんを許すんだよね・・・?」
その殺意に似た怒りを急速に冷却させたものがあった
”悲しみは、ただ同じように悲しみしか生み出さない
だからーーー私は、悲しまない。
それに悲しむって事は、それは”立ち止まってしまう”という事だから”
悲しい事が起きても、前に進みたい
そんなフィリアの意思を思い出して、シャルロットは立ち止まらなかった
「でも・・・一夏は・・・」
先程の様子を知っているシャルロットは、ぐっと涙を袖で拭った
「僕が・・・一夏を止めてみせるから!!」
部屋を出て、廊下を疾駆するシャルロットが纏っていたのは
紛れも無い、止まる事無くただ駆け抜ける”疾風”だった
「フィリア・フェイリールドの死亡を確認・・・」
山田先生からの報告に、私はただ不思議な感覚を覚えていた
「ふむ・・・そうか」
横で別に気にしていないような言い方をするポートマスは、おかしいぐらいに平然としていた
「貴様・・・それでも彼女のーーー」
「おっとそれ以上は口に出すなよブリュンヒルデ。アイツが嫌がる」
一瞬で口を塞がれ、声に出そうとした部分を隠された
「じゃあ何故そんなに平然としていられるんだ」
「何故ってだと?そんな事決まってるだろ」
一呼吸置いて、ポートマスはきっぱり言い切った
「あいつは、”必ず帰ってくる”んだよ。どんな時もな
だから俺は、あいつに別れの挨拶を交わした事は無い」
そんな、自信と確信を込めた輝きの目を見た
だが・・・不思議だ
私もーーーフェイリールドは・・・フィリアは、また戻ってくる
そんな不思議で謎めいた確信をしてしまった
どうも、作者で(グキッ)ほごあぁぁぁあ!?
ラリー「誰だテメェ!!こんな連続週一投稿・・・作者じゃねぇだろ!!」
作者「失礼な!!私だってやる時はやるんだぞ!!
つか腕の関節外すな馬鹿妖精!!書けなくなるだろうが!!」
超暴走回(主に作者の妄想が)です
意見感想募集中
よろしくお願いします
Tweet |
|
|
7
|
1
|
追加するフォルダを選択
片羽の妖精は剣を持って力を行使する
それが何の為の力なのかを理解して・・・それを振りかざす
同時刻ーーーその剣と同じチカラを持つ者はーーー