下らない夢
C1 示唆
C2 誇り
C3 移り気
C4 鼓舞
C5 旗の向うは
C1 示唆
アヴェロン騎士王府、ミルトレット川の横にあるラグラグーン城。玉座の間。玉座に座るアヴェロン騎士王府の騎士アーサーの異父兄弟のウーサー。隣にはウーサーの軍師で老人のヘンリー。ウーサーの前に跪くアヴェロン騎士王府に籍を置く黒薔薇の君で黒いマントを羽織った騎士ヴェルガドット。ウーサーはヴェルガドットを見下ろす。
ウーサー『これはこれは珍しい客人だ。』
口角を上げるヴェルガドット。
ヘンリー『普段、口のきいたことのないような黒薔薇の君がいったい何の用で?』
立ち上がるヴェルガドット。
ヴェルガドット『今回、貴殿の兄君が騎士王府の長となることを画策していると小耳にはさんでな。』
眉を顰めるウーサー。
ウーサー『兄が…。』
顔を見合わせるウーサーとヘンリー。ウーサーは顔を上げ、ヴェルガドットを見つめる。
ウーサー『我々はそのような話は聞いていない。』
頷くヴェルガドット。
ヴェルガドット『やはり。我々の得た情報によると貴族連合と結託し、彼らに自身を騎士王府の長と任命させるらしい。』
肘かけを叩き、立ち上がるウーサー。
ウーサー『何だと!』
腰に手を当て、目を細めるヴェルガドット。
ヴェルガドット『偉大なる伝説の騎士ペンドラゴンは血縁にかかわらず最も優れた騎士が騎士王府の長に就くべきとおっしゃった。』
歩き出すヴェルガドット。
ヴェルガドット『誇り高き騎士たちはその言に従い、正々堂々と誇りを持って騎士王府の長の座を巡って争った。君の父上もそうだ。』
頷くウーサー。
ヴェルガドット『だが、君の兄上は隠れて他人の力を使い騎士王府の長となろうとしている!それが、果たして正々堂々たる誇りを持った我々アヴェロンの騎士のやり方か?我々も、ターキィン卿をはじめとする騎士達も不満を募らせいる。』
ウーサーは顎に手を当て、頷く。
ウーサー『うむ。その通りだ。兄の姑息な手段は許せん。』
頷き、ウーサーの顔を覗き込むヴェルガドット。
アヴェロン騎士王府、ラグラグーン城。玉座の間。窓から黒馬に乗って、黒いダークネスナイト級人型機構に乗り込むヴェルガドットを見つめるヘンリー。
ヘンリー『要件も手短に行ってしまいましたな。』
頷き、立ち上がるウーサー。彼は数歩歩き、玉座の間の天窓から差し込む光に手をかざす。
ウーサー『ヘンリー、父が行けなかったこの梯子は登れるか?』
ウーサーを見つめるヘンリー。ウーサーは拳を握る。
C1 示唆 END
C2 誇り
深夜。アヴェロン騎士王府、ラグラグーン城。城壁に立つウーサー。隣にはヘンリー。
ウーサー『この様な夜分に時間を指定するとはな。』
風が彼らの衣服をはためかす。現れる人型機構群。
ウーサー『来たか。城門を上げい!』
城門の下のウーサーの部下Aがウーサーを見上げる。
ウーサーの部下A『はっ!』
上がる城門、入ってくる人型機構群。
アヴェロン騎士王府、ラグラグーン城城内。其々の人型機構から降りてくるアヴェロン騎士王府の騎士達。ウーサーは彼らの前に立つ。
ウーサー『勇敢なるアヴェロンの騎士達よ!兄の卑劣なやり方に対してよくぞ決起してくれた!』
ウーサーを見つめ、雄たけびを上げるアヴェロン騎士王府の騎士達。
ウーサー『私が君たちを招集し、この城に招いたからには、私を次の騎士王府の長と認めるものとする。』
ウーサーを見つめ頷くアヴェロンの騎士達。騎士達を見回すウーサー。
ウーサー『では、署名を。』
アヴェロン騎士王府の騎士Aに署名書を渡すヘンリー。アヴェロン騎士王府の騎士Aはペンでサインする。次々と騎士王府の騎士達を回って行く署名書。
アヴェロン騎士王府、ラグラグーン城城内。ウーサー、その隣にはヘンリー、ヴェルガドットとアヴェロン王国の剛腕の騎士タークィン、そしてアヴェロン王国の騎士達が居る。ウーサーを見つめた後、アヴェロン王国の騎士達を見つめるヴェルガドット。
ヴェルガドット『さて、作戦だが、これより隊を二つに分け、一つはブラックレッドドラゴン城方面へ向かい、もう一つはホトムズ海峡を渡るアーサーの部隊を討つ為に待機する。』
タークィン『きゃつは我々の決起を知らん。我々は友軍として、討つべき敵の隣にまんまとつくことができる。もし、きゃつを取り逃したとして居城であり王府でもあるブラックレッドドラゴン城さえ落としてしまえば問題はない。後は我々が…。』
口角を上げ頷くヴェルガドット。眉を顰めるウーサー。
ウーサー『待て、ヴェルガドット卿にタークィン卿。それではだまし討ちではないか!我々の決意表明もない!』
眉を顰めるヴェルガドットにタークィン。
タークィン『油断しているところを討つ。戦の鉄則だ。』
ヴェルガドット『これはアーサーを討つ好機なのですよ!』
タークィンはヘンリーを見つめる。
タークィン『ヘンリー殿も何か言われよ!貴殿なら分かるはずだ。折角の好機、下らぬ…。』
タークィンを睨み付けるウーサー。
ウーサー『この様な姑息な手段、兄と同じだ!!』
ヴェルガドットを睨み付けるウーサー。
ウーサー『ヴェルガドット卿、貴殿は私に兄のやり方は正々堂々たる誇りを持った我々アヴェロンの騎士のやり方ではないと言ったな。』
舌打ちするヴェルガドット。目を細めヴェルガドットを見つめるタークィン。
ウーサー『私は騎士王府の長になる男だ!偉大なる伝説の騎士ペンドラゴンの言葉に従い!ここに騎士の誇りを示す!』
ざわめきが起こる。顔を合わせるアヴェロン騎士王府の騎士達。ヴェルガドットに耳打ちするタークィン。2、3回頷くヴェルガドット。
ウーサー『明日の朝!我々は妥当アーサーの決意表明をする!!』
剣を抜き、高くかざすウーサー。
C2 誇り END
C3 移り気
ラグラグーン城城壁に腕組みをして立つウーサー。ヘンリーが彼の後ろから現れる。ヘンリーの方を向くウーサー。
ウーサー『おお、ヘンリーか。』
一礼するヘンリー。
ヘンリー『殿。考え直していただけませんでしょうか。』
眉を顰めるウーサー。
ウーサー『ヘンリー。貴様まで何を言う!我が父は騎士の誇りを持ち、どの戦場においても正々堂々と敵と戦った!貴様も見ていただろう!』
眼を閉じ、俯くヘンリー。
ヘンリー『気持ちは私も同じです。』
ウーサー『ならば、私は父の進んだ道を行く!そして、私は今、父の成し遂げられなかった騎士王府の長になれる道に立っているのだ!』
顔を上げ、ウーサーを見つめるヘンリー。
ヘンリー『ですが…。』
ヘンリーは城内に居る騎士王府の騎士達を見つめる。
ヘンリー『彼らは揺らいでいます!結束を促すためには…。』
眉を顰めた後、城壁から外の方を向くウーサー。
ウーサー『は、馬鹿らしい。彼らはアヴェロン騎士王府の騎士だ!曲がりなりにも騎士道を持ち、重んじて…。』
砲撃音。砕けるラグラグーン城城壁。よろめくウーサーとヘンリー。ざわめきが起こる。城壁間近に来るヴェルガドット機、コックピットのハッチに居るヴェルガドット。
ヴェルガドット『ウーサー卿!右にランスロット、左にガヴェインの部隊が展開している!』
眼を見開くウーサー。
ウーサー『何だと!!?』
ヴェルガドット機の横に付くタークィンのグレイトナイト級人型機構。コックピットのハッチに居るタークィン。
タークィン『奴ら渡河してくるぞ!』
ウーサー『決意表明も表していない!いったいなぜ…。』
タークィン『知るか!ともかく我々の計画は感づかれたのだ!俺はアーサーを追いかける!先に行くぞ!』
コックピットのハッチが閉じ、部下のナイト級人型機構と共に場外へ出ていくタークィン。ウーサーを見つめるヴェルガドット。
ヴェルガドット『敵は渡河している最中!今こそ討つべしだ!』
ヴェルガドットを見つめるウーサー。ヴェルガドットは城内の動き回るアヴェロン騎士王府の騎士達を見つめる。
ヴェルガドット『彼らも動揺している。敵に先駆けし、これを抑えることができるのは長としての君の力だ。』
ウーサーの肩を叩くヴェルガドット。城内の動き回るアヴェロン騎士王府の騎士達を見つめ、頷くウーサー。
ウーサー『分かった。』
城壁から駆けていくウーサーとヘンリー。
C3 移り気 END
C4 鼓舞
ミルトレット川の岸。ウーサーの乗るグランドナイト級人型機構及びヘンリーの乗るグレイトナイト級人型機構及び、ウーサーの配下たちの乗るナイト級人型機構が陣を張る。
砲撃音。
左右で水飛沫が上がり、ミルトレット川を渡河するガヴェインの配下のナイト級人型機構の大軍及び及びランスロット配下のナイト級人型機構の大軍を照らす。ヘンリーは目を見開く。
ヘンリー『…大軍!』
砲撃音。
砂煙が上がり、抉られた地面が現れる。川を指さすウーサー機。砲撃と銃撃、弓撃を繰り返すウーサー軍。所々で水飛沫が上がり砕けるランスロット及びガヴェイン配下のナイト級人型機構。ヘンリー機のコックピットのモニターに現れるウーサー配下Bの顔。
ウーサー配下B『駄目です!きりがありません!』
舌打ちするヘンリー。川岸に手を掛けるランスロット及びガヴェイン配下のナイト級人型機構。ヘンリー機は大剣を抜き、ランスロット及びガヴェイン配下のナイト級人型機構を突き刺す。手を伸ばし、川に沈んでいくガヴェイン配下のナイト級人型機構。
周りを見回すヘンリー。ランスロット及びガヴェイン配下のナイト級人型機構達と切り結び、ウーサー機、及びウーサー配下の人型機構達。
彼らは次第に押されていく。破壊されるウーサー配下のナイト級人型機構多数。コックピットのハッチから出るウーサー配下Cがランスロット及びガヴェイン配下のナイト級人型機構達にアサルトライフルを連射するが、踏みつぶされる。
ウーサー機のコックピットのハッチが開き、現れるウーサー。
ウーサー『聞け!勇敢なる我が配下よ!これは我らの名誉の戦いである!姑息な手段を取った兄を誅する!そして我らの不滅な誇り高き魂を世界に示すのだ!』
雄たけびを上げ、ランスロット及びガヴェイン配下のナイト級人型機構の大軍を川岸に押し戻すウーサー軍。コックピットのハッチの上で指示を出すウーサー。ウーサーの方を見て、微笑むヘンリー。
ヘンリー『我々はまだ行ける!オラァ!!』
ヘンリーは前方のランスロット配下のナイト級人型機構を切り捨て、コックピットの部分を踏みつぶす。
砲撃音が所々で鳴り響き、砂煙が上がる。
砲弾の破片が、ウーサーの首に深く突き刺さり、ウーサー機のコックピットのハッチの中に転げて入って行く。目を見開くヘンリー。立ち止まり、胴体を斬られるウーサー配下のナイト級人型機構。機器のボタンを何回も押すヘンリー。
ヘンリー『殿!殿!』
仄かな七色光が漏れるウーサー機のコックピット。
ウーサーの声『全軍!前進!』
ウーサー機を見つめ、眼を見開くヘンリー。雄たけびを上げ前進するウーサー配下の人型機構達。
ウーサーの声『我らの道を示せ!アヴェロンの騎士道は不滅だ!行け!進め!我らの誇りの為に!』
ヘンリーはコックピットのハッチを開き、ウーサー機に駆け、登って行く。
ヘンリー『殿!殿!!』
ウーサーの声『そして、王府の騎士達よ!我らが闘い見たか!魂を燃やせ!勝利は我らにあり!正義と名誉は我らにある!』
コックピットのハッチを開くヘンリー。中には、眼を開き、椅子にもたれかかり、喉に深く刺さった砲弾の破片から血を流しているウーサーの死体がある。
ヘンリー『殿!殿!』
ウーサーの死体に駆け寄り、抱きかかえるヘンリー。彼の眼からは涙があふれ出る。
ヘンリー『若!若!!』
ウーサーの死体の胸に顔をうずめるヘンリー。ランスロット及びガヴェイン配下のナイト級人型機構の大軍を川岸に押し戻すウーサー配下の人型機構達。ラグラグーン城に一斉に上がる黒薔薇の旗。
砲撃音。
ウーサー配下の人型機構の一つが砕け散る。後ろを向くウーサー配下の人型機構の一つ。ラグラグーン城から飛ぶ砲弾。ヘンリーはウーサーの体を抱き上げる。揺れるウーサー機。
ヘンリー『若!参りましょうぞ!』
動き出すウーサー機。全滅するウーサー配下のナイト級人型機構。ランスロット及びガヴェイン配下のナイト級人型機構がウーサー機に切りかかる。七色に輝くウーサー機。
ランスロット及びガヴェイン配下のナイト級人型機構の剣が折れる。躍りかかるランスロット及びガヴェイン配下のナイト級人型機構がウーサー機を七色の光で弾きながら進み、ウーサー軍の旗を取るウーサー機。
C4 鼓舞 END
C5 旗の向うは
グランド平原を進む七色に輝く。ウーサー機。左右から切りかかるナイト級人型機構の大軍。彼らを弾き、切り捨てるウーサー機。地平線に見えるブラックレッドドラゴン城。ウーサー機コックピット内、操縦席に座り、ウーサーの死体の頭を撫でるヘンリー。
ヘンリー『若…。見えますか。あれがブラックレッドドラゴン城です。』
ナイト級人型機構を切り捨て、コックピットに蹴りを入れるウーサー機。
ヘンリー『もうすぐです。もうすぐ…。』
ナイト級人型機構の大軍に四方から取り囲まれながらも彼らを弾き、切り捨てながら進む七色に輝くウーサー機。
ナイト級人型機構はウーサー機に切りかかるが、全て弾き飛ばされる。ブラックレッドドラゴン城の城門に辿り着くウーサー機。
ヘンリーはウーサーの死体の方を向く。
ヘンリー『若。もうすぐ騎士王府の長になれますよ。』
ウーサー機は剣で城門を切り裂き、蹴り飛ばす。ランスロットの乗るホーリーナイト級人型機構とガヴェインの乗るホーリーナイト級人型機構がウーサー機に切りかかる。ウーサー機はそれらの振りかざす剣を握るり、投げ飛ばす。涙を流すヘンリー。
ヘンリー『爺は嬉しいですぞ。若の晴れ姿を見られるまで生きることができて…。』
揺れるウーサーの死体。ウーサー機は城の壁を登る。ウーサー機を見上げるランスロット機とガヴェイン機、及びナイト級人型機構。ウーサー軍の旗を靡かせ、城の玉座の間の屋根の上に立つウーサー機。
弓、銃をウーサー機に向けるアーサー軍の兵士達。ウーサー機はウーサー軍の旗をブラックレッドドラゴン城の屋根に突き刺す。ウーサー機内部、操縦席に座るウーサーの死体。跪くヘンリー。
ヘンリー『お喜び下さい!我々はウーサーの居城ブラックレッドドラゴン城を占拠致しました!』
ウーサーの死体を見て立ち上がるヘンリー。ウーサー機のコックピットのハッチが開く。駆けて行き、ウーサー軍の旗に向けて手を差すヘンリー。
ヘンリー『見てください。若の旗がはためいておりますぞ!このブラックレッドドラゴン城の玉座の間の真上に!』
銃撃音。
弓撃音。
銃弾がヘンリーを貫き、背中に弓が3つささる。口から血を流すヘンリー。
ヘンリー『おめでとうございます!これで晴れて若は騎士王府の長!』
銃弾が、体を貫通し、弓がヘンリーの頭に突き刺さる。
ヘンリー『こんなに嬉しい事はございません!』
ヘンリーはよろけながら、コックピットのハッチの端に歩いていき、ウーサー軍の旗を見つめる。銃と弓が一斉にヘンリーに向かう。
涙を流すヘンリー。
ヘンリー『亡き父君の果たせなかった夢、成し遂げられたこと!本当に本当に爺は…。』
大量の銃弾に体を切り裂かれ、大量の弓が突き刺さるヘンリー。
ヘンリー『うれしい…です…。』
コックピットのハッチから落ちていくヘンリー。
ヘンリー『…ぞ。』
打ち付けられるヘンリーの体。音が鳴り響き、ウーサー軍の旗がはためいて七色に輝きだす。
C5 旗の向うは END
END
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