No.694377

とある傭兵と戦闘機(IS編第7話) 騎士の剣

二学期が始まり、本格的なIS戦闘訓練の授業が導入される事となり
その記念すべき最初の授業は・・・一部特定の人物達にとって
忘れられる事のない事件となってしまう

2014-06-16 00:00:10 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3508   閲覧ユーザー数:3398

 

今日の授業はーーー今期から採用された一日IS操縦訓練日程

 

つまり、一日中ISの操縦訓練の日である・・・そのまんまじゃんか

 

 「では、今日の訓練内容を説明する

 

  今後のカリキュラムを組むための参考にする為に現段階での個人戦闘力のデータを取りたい

 

  その為、クラス全員でデスマッチを行う」

 

はうっ!?いきなり物騒な言葉出てきたんですけど!?

 

それから説明をなんとなく聞いていって。最終的に解った事

 

 ”織斑先生って、省いちゃいけない所を省く人だ”

 

うん・・・段階を踏もうよ段階を

 

 「それでは、最初に専用機持ちに代表してもらい実演してもらうから前に出ろ。

 

  それと、フェイリールドは訓練機代表として打鉄に搭乗しろ」

 

え?何で?

 

でも指示だし、仕方ない・・・従わなかったら私の明日は地獄になるし

 

 「はあ・・・わかりましたよ」

 

溜息を付きながら前に出る

 

 「ふむ・・・(妹は最終目標だな)」

 

 「ら、ラウラ・・・えっと、フィリア・・・その、よろしく(できれば・・・相手にはしたくないなぁ)」

 

 「量産型であろうと手加減はしませんわ(それでもフィリアさんとの戦闘は極力避けたいですわ)」

 

 「よろしくな(近くに居るやつから何とかしないとフィリアには勝てないな・・・)」

 

 「ふんっ・・・!!(これで私の勝利は確実になったな)」

 

・・・・・・・・・イラッ★

 

 「まあ、よろしくお願いします」

 

始まったら回避に専念しようと思っていたんだけど、気が変わった。

 

ーーーーぶっつぶしてあげる?

 

 

 

 

 

 

 「では、戦闘を開始せよ・・・・始めッ!!」

 

ビーッと、試合開始のアラームが鳴り響いた

 

その瞬間、私は瞬間加速を実行

 

 「え・・・!?」

 

私の加速に反応し損ねたシャロの腕部を掴み

 

 「なっ!?」

 

セシリアに思いっきり投げつけた

 

 シュィィィィン

 

そのまま加速を続け、更に戦闘を行っていたラウラと篠ノ乃さんに

 

加速中に展開した一対の接近戦用ショートブレードを投げつける

 

 「っ!?」

 

 「邪魔をするな!!」

 

あらあら、そんなに熱くなってさ・・・

 

ラウラが剣を弾き、そのままプラズマブレードを振りかざしてくる

 

それを腕部物理シールドで弾き、そのまま私はラウラの顔面を掴んで

 

 「むぐっ!?」

 

アリーナ地面に捻じ伏せる

 

接近アラートが警告表示をする前に後ろに物理シールドを投げつける

 

 「なっ!?」

 

篠ノ乃さんがシールドを弾いた瞬間に、同時展開していたライフルを私は至近距離で発砲

 

 ドォン!!

 

対装甲用AMライフル・・・これを私は”相手を弾き飛ばす”為に使っている

 

元々、このライフル自体は”補助武装”であって”主武装”ではない

 

 「ぐっ!?このッ!!」

 

双振りの日本刀で空気を切り裂くようにしながら私に剣戟を向ける

 

・・・確かに、今までの私ならこの攻撃を回避していたし回避できていた

 

でも、それはこの機体ではできない

 

だからーーー

 

 ガキィン!!

 

近接ブレードを傾け、二本同時防御

 

更に、私はスラスターを逆噴射

 

 「ッ!?」

 

一瞬だけ、篠ノ乃さんの姿勢が崩れる

 

その篠ノ乃さんの腹部にスラスターによって回転加速させた蹴りを入れる

 

 ガンッ

 

互いに距離を取り、そしてハンドグレネードを投擲する

 

 バシュッ

 

と、煙幕が視界を一時的に奪う

 

更にPICで機体を空間固定してスラスターを吹かして煙幕を拡散させる

 

丁度位置的にアリーナ中央で、私は立っていた

 

オープンチャネルで、私は宣言した

 

 「”かくごはできてる?”」

 

 

 

 

 

     That's 蒼姫★無双中

 

 

 

 

 「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!?こっちに来ないでフィリアあぁぁぁぁぁ!!」

 

 「量産型がここまで動けるとは・・・くっ!!」

 

 「ラウラさんこちらに来ないで下さらーーーきゃあっ!?」

 

 「お、おいセシリア!!乱射はやめろーーーぐわっ!?」

 

 「なっ!?一夏!!回避しろと言ったはずーーーぐうっ!!」

 

 

 

 「「(こいつら終ったな)」」

 

この時、ラリーと千冬を除く一組全員が

 

フィリア・フェイリールドというクラスメイトに対して畏怖を覚えたのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 「戦闘終了・・・生存者、無し」

 

ナムナムとポートマスが手を合わせて哀れみの合掌を行う

 

アリーナには文字通り完膚なきまでに蹂躙された専用機持ちが地面に沈んでおり

 

 「私を甘く見た皆が悪いんだよ?」

 

何故か異様に怖い笑顔をしているフェイリールドが、中央で織斑を踏み倒していた

 

 「・・・さて、これで量産機の可能性が見えただろう?

 

  各個人、フェイリールドの動きを参考にしながら訓練に励め」

 

 「「「む、無理です!!」」」

 

口を揃えて生徒達が言った

 

 「・・・だろうな」

 

千冬は頭を抱えて溜息を付いた

 

 ”参考にならない程、機体の限界性能を引き出し過ぎている”

 

というのが先程のフィリアが行った戦闘なのだ

 

まず重要なのが”打鉄という機体のコンセプト”

 

元より、打鉄量産型の開発目的が”防御型”という事

 

これを知ってか、フィリアは”基本的に相手に肉薄する”超近接戦闘を行った

 

打鉄の持つ堅牢な装甲を生かした、突撃的な攻撃

 

ブレードを多用した相手との近接戦闘

 

ここまでなら他の生徒にでき無い事はない。が・・・

 

そこにコイツ自身の”感覚的に全方向が見えている”ような空間把握能力

 

高速近接戦闘中に最優先目標を識別できるその瞬時判断力とそれに対応できるだけの反射速度

 

自身の搭乗する機体の特性を瞬時に理解し、それを生かす戦術を思考する処理速度が加わる

 

これだけの条件が揃えば、”機体に乗った瞬間からその機体に順応する事”ができる

 

時間をかけて身に付けられるものではない

 

これはーーー間違いなく彼女自身が持つ天性の才能なのだ

 

 「だがこれが打鉄の特徴、長所を生かした戦闘だ。ここまでやれとは言わないが

 

  打鉄が本来持つ性能を引き出す事ができれば

 

  この程度の専用機持ちに張り合う事はお前達にも十分可能という事だ」

 

それから少しして、他のクラスメイト達が戦闘訓練を始める

 

 

 

 

 

 「何故だ!!何故お前はそんなに強いんだ!?」

 

デスマッチを終えて、私は打鉄の特性と戦闘方法を説明してから皆の戦闘を見ていると

 

篠ノ乃さんが詰め寄ってきた

 

 「私が強い?何を言ってるのか解らないよ」

 

 「だったら、何故勝てるんだ!?」

 

 「単純だよ。私はやれる事をやっただけ。

 

  貴女が負けたと思っているのは貴女自身が”弱い”ってだけだよ」

 

 「っ!!私のどこが弱いのだ!!」

 

あー一番面倒くさいかもしれない

 

 「言っても認めないし改善もしないから言わない。自分で考えなよ」

 

 「ぐっ・・・だったら一対一で勝負しろ!!」

 

あー悪い癖まで出だしたよ

 

 「その辺を含めて貴女は弱いんだよね。”力で捻じ伏せればいい”・・・そんな事でどうするの?」

 

 「勝負から逃げるのか!?」

 

 「逃げて何が悪いの?私は面倒な事はしたくないし、無意味な事もしたくない」

 

言ってもどうせ判ってくれないだろうから

 

そのまま背を向けて私は移動しようとしたーーー瞬間

 

後ろからIS展開音が聞こえ、振り向いた瞬間・・・私の体を衝撃波が貫いた

 

 「がっ!?・・・・はっ・・・!!」

 

私は吹き飛ばされ、壁に激突してそのまま倒れこんだ

 

・・・口の中から血の味がしたのだけは、しっかり覚えていた

 

 

 

 

 

 「先生!!フェイリールドさんが!!」

 

そんな生徒の一報を受けて、私はフェイリールドが篠ノ乃と話していた場所に向かった

 

その場所で数人の生徒が、倒れたフェイリールドに駆け寄っていた

 

 「どうしたんだ・・・ッ!?」

 

そこに居たのは、壁に背中を預けているフェイリールドだった

 

その唇から真紅の血を滴らせ、ぐったり意識を失っていた

 

 「フェイリールド!!しっかりしろッ!!」

 

いくら呼びかけても返事が無い

 

携帯端末で医務員の木里先生を呼び出す

 

 「”はい、木里です”」

 

 「第一戦闘アリーナにて生徒一人が意識不明の重体状態

 

  至急緊急医療班の派遣を!!」

 

 「”ッ!!わかりました。至急向かいます”」

 

通話を終え、携帯端末を仕舞って状況を聞いていた

 

 「何?篠ノ乃がフェイリールドを?」

 

 「はい、何か篠ノ乃さんが怒ってて・・・話が終ったと思ったら・・・」

 

・・・・こいつが間違った事を言う事は無い

 

だがーーー時にそれが相手を不愉快にさせる事もある

 

相手が篠ノ乃だったからだろう・・・でも

 

 「流石に許容しきれる事態では無いな」

 

IS本来の役割を逸脱させた篠ノ乃の行動は

 

私の怒りを買うには十分なほどの価値を持っていた・・・だが

 

 「落ち着けチフユ・・・お前が頭にキてるのは判っている

 

  だが、今はそんな事よりこいつの治療が最優先だ」

 

 「っ・・・判っている」

 

横から、ポートマスに言われてハッと我に還る

 

確かに今すべき事は、負傷した生徒の命を繋ぐ事だ

 

目的を見失いかけていた事を見抜かれた私もまだまだ未熟者だが

 

落ち着け・・・今はフェイリールドを助ける事だけを考えるんだ

 

 

 

 

 

 

 

結局そのまま知らない一組生徒達は訓練は続行していたが

 

その状況を見ていた生徒達は、戦意を失ってすぐに訓練から離脱してしまった

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・・」

 

目の前のベットで静かに眠っている相棒を見て、不思議と穏やかな心になっていた

 

 「・・・こんな事されても、お前は彼女を許す事ができるんだよな」

 

何故・・・それができるんだ?

 

何故・・・そこまで優しくできるんだ?

 

俺には、その優しさがどこから来るものなのか理解できない

 

三十年前のあの空も・・・あの時点で、俺を殺す事ができたはずだ

 

キャノピーを正確に打ち抜く事くらい、お前にとっては朝飯前だったはずだ

 

だが、それをお前はしなかった

 

まさかお前は・・・あの時既に俺を許してくれていたのか?

 

 「ポートマス・・・」

 

 「ブリュンヒルデ・・・一つ”頼み”がある」

 

 「ーーーー・・・何だ?」

 

だが・・・駄目だ。俺には無理だ

 

ここであのガキを許したら、俺は自分自身を許せなくなる・・・前に進めなくなってしまう

 

だからーーー

 

 「俺にーーー打鉄を貸してくれ」

 

やってやる・・・こいつの意思を証明する為に

 

 

 

 

 

 

 

 「篠ノ乃、今日午後六時より特殊訓練を行う。定刻までに第二戦闘アリーナに集合せよ」

 

そんな電話による通達と同時に、私はベットに顔を埋めた

 

ーーー私は悪くない

 

そう、私は強い

 

姉さんからこの紅椿をもらった時から、私は専用機持ち同士の演習でも一番勝率が高いんだ

 

 「演習に参加していないフィリアに言われる筋合いは無い」

 

恐らく特殊訓練も戦闘だろうが、相手が誰であろうと倒せばいいだけだ

 

 「六時か・・・まだ時間はある。シャワーを浴びるくらいしておこう」

 

そうして、私は髪を纏めている髪結を外す

 

 「・・・・」

 

その髪結を見て・・・私は思い出した

 

あの時・・・あの福音との戦いの時、一夏は密漁船を守ろうとした

 

 ”犯罪者であろうと、武装を持たない彼らは守るべき存在だ”

 

フィリアも、似たような事を言っていた

 

あの時・・・フィリアはISを展開していない生身だった

 

そんな無防備な状態を、私は感情に流されるままに力で薙ぎ倒した

 

ーーーーそれを一夏が知ったら・・・私は嫌われるんじゃないだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 「何だって!?箒がフィリアを!?」

 

 「クラスメイトが見てたらしいんだけど、何か言い合って・・・

 

  篠ノ乃さんがISを解除したフィリアを殴り飛ばしたんだって・・・」

 

 「フィリアはどうなったんだ!?」

 

 「意識不明の重体・・・吐血してたって事だから命の危険もあるんじゃ・・・」

 

箒が・・・そこまで怒るって事はフィリアが何かを言ったんだろうが

 

ああくそっ!!あいつ、また力に振り回され始めてるんじゃ・・・

 

 「嫁よ、篠ノ乃の所に行く事は許さんぞ」

 

ラウラが、扉の前で仁王立ちをしていた

 

 「ラウラ、どいてくれ」

 

 「引かないぞ。これは織斑教官の指示だ」

 

何でだ・・・千冬姉が一番怒っているはずなのに・・・

 

この時、俺は理解できなかった

 

千冬姉よりも、遥かに怒りを煮え滾らせている”騎士”が居るという事に

 

 

 

 

 

 

  IS学園の機密試験稼動場に佇む四角い箱の一つが

 

  とある人物の意識に反応して、その内に潜む機体を解放した

 

 

 

 

 

 

 

時刻、午後五時ジャスト・・・俺は第二戦闘アリーナにて打鉄の受け取りを行おうとしていた

 

 「ポートマス。お前にISが扱えるのかどうか私には判らない

 

  だが、試してみる価値はある・・・そんな気がするんだ」

 

織斑千冬が、何故か少し悔しそうに俺を見ていた

 

 「そんな曖昧な感性で、国の所有物である打鉄を貸し出していいもんかね・・・」

 

 「どうだかな・・・少なくとも、私よりお前の方が”頭にきてる”事は確かだからな」

 

チッ・・・やっぱりお見通しって事か・・・最近の女ってのは本当に読心術をマスターしてやがる

 

だが・・・

 

 「お前がここに来た理由も大方想像が付く・・・

 

  なら必然的に彼女の傍にいられるだけの力を用意してやりたいんだ」

 

・・・あの”世界最強”がサイファーと同じ”優しい笑み”を零したんだ

 

応えなきゃいけねーな・・・俺はあいつを守る騎士であろうとするんだ

 

 「さあ、始めるぞーーー」

 

と、言った瞬間に目の前の床が割れた

 

 「なっ!?何だ!?」

 

元々ただの床だった場所がーーーいきなり開いて何かがせり上がってきた

 

そこに出現したものはーーー

 

 「っ!?このコンテナは・・・」

 

四角い箱・・・コンテナだった

 

零式と、日本の漢字で書かれた青みがかかったコンテナだった

 

そのコンテナに、俺は無意識に手を触れた

 

それに応えるように、コンテナはその形を粒子に変えて

 

そして再度、別の形に収束していく

 

そこに現れたのはーーー

 

 「そうか・・・」

 

感覚的に、俺はその機体の情報を理解した

 

 「打鉄零式二号機・・・”リバース・ストラティア”」

 

相棒の機体を・・・鏡写しにしたような機体だった

 

 

 

 

 

 

  どうも作者です

 

  世にも奇妙な珍しい一週間投稿ができてしまった・・・明日は嵐かな

 

  そんな訳で次回 ガルム隊二番機のお話です

 

  意見感想募集中

 

  よろしくお願いします

 

 

 

 PS、一応原作に追いついた場合でもオリジナルで執筆続行しようと思います

 

    コメントくださった方、ありがとうございます~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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