???「ねえ、本当なのかな?天の御遣いがここに居るのって」
???「分からないわ、私達はそれを確かめに来たんだから」
玉座の間で二人のポニーテールの女の子が太守を待っていた
???「でも、この幽州に入ってから山賊に襲われることは一切なかったし、街の中も治安が良かったし、噂は本当なのかも知れないわね」
???「うんうん♪蒼もここに住んでみたいかも♪鶸ちゃんだって、ここでゆっくり暮らしてみたいと思わない?」
鶸「それは正直思う、異民族の鳥丸とも貿易を成立させているみたいだし・・・・・ここだったら、蒼や蒲公英様の面倒事に巻き込まれずに済むかもね♪」
蒼「あ~~~~、鶸ちゃんひど~~い!そんなこと言うんだ~~~!」
鶸「あんた達や翠姉さんにいちいち仕事増やされる私の立場も考えなさいよ!」
蒼「あは♪そんなこと言って、しっかりやってくれる鶸ちゃん、大好き♪」
鶸「もう・・・・・本当にここだったら静かに暮らせそうね・・・・・あ、来たわ」
お互いにこの幽州の批評をし合っていると、幽州の太守が入ってきて玉座へと登る
白蓮「待たせたな、はるばる涼州から来てくれるとは、大変だったろうに」
その隣に、星、菖蒲、一刀が寄り添う
鶸「いいえ、お会いできて光栄です」
鶸と蒼は拳包の礼を取り挨拶をする
白蓮「私がこの幽州の太守、公孫賛だ」
鶸「私は、涼州連合が頭首、馬騰が次女、馬休と申します」
蒼「こんにちは~、蒼は三女の馬鉄だよ~」
鶸「コラ蒼!馴れ馴れしくしないの!」
蒼「え~~~いいじゃん、蒼堅苦しいの苦手なんだもん~~」
一刀「(この子達が、馬騰の・・・・・ということは、馬騰も女性なのか?)」
白蓮「ああ構わない、私達もそういった堅苦しいのは苦手だからな」
蒼「あは♪話が分かる人で良かった♪」
鶸「はあ・・・・・」
白蓮「それじゃあ、私の家臣を紹介する・・・・・右から趙雲、徐晃、北郷だ」
星「私は趙雲、字が子龍だ」
菖蒲「徐晃公明です」
一刀「北郷一刀です」
鶸「・・・・・・・・・・」
蒼「・・・・・・・・・・」
一刀が名乗った時、二人の目は其々違う色を見せていた
白蓮「それで、どうしてわざわざ馬騰殿の娘さん・・・・・涼州の姫君達が幽州を訪ねてこられたんだ?」
鶸「はい、それはそちらの天の御遣いについてです」
白蓮「は?一刀だって?」
どうして来てそうそうの話が一刀なのか
ある意味納得はしてしまうが、ある意味では違和感を覚える
鶸「単刀直入に聞きます・・・・・どうして、洛陽の天子様を差し置いてあなたが天を名乗っているのですか!!?」
白蓮「ああ・・・・・そういう事か・・・・・」
涼州の馬騰といえば漢王朝に忠誠を誓っている人物ベスト3に入るほどの忠臣である
そんな人物からすれば面白くないのだろう、帝以外が天を名乗る事が
星「まぁ、いずれこういった事が起こるのは予想していましたがな・・・・・」
菖蒲「・・・・・・・・・・」
一刀「なるほど、馬休さんと馬鉄さんは、馬騰さんに天の御遣いが何を考えているのかを聞きに行くように、そしてどんな人物かを見極めるように言われてきたんだな」
鶸「その通りです!!さあ答えてください!!」
蒼「鶸ちゃん、そんな高圧的にならなくても・・・・・ごめんなさい公孫賛様、御遣い様、鶸ちゃんは昔から疑り深くて・・・・・」
一刀「いいや、細かい事は良い事だし仕事が出来る人間というのは、そういう人間の事を言うんだからな」
鶸「(ふ~~ん、人を見る目はあるようですね)」
一刀「それはそうと、馬鉄さんは俺のことを天の御遣いと認めているのかい?」
蒼「う~~~~ん・・・・・何とも言えないけど、北郷さんが本物の御遣い様だったら後で困るかな~~て・・・・・」
一刀「(・・・・・この子は、かなりいい加減な性格みたいだな)」
次女はしっかり者で、末っ子はそのしっかり者についつい甘えてしまう
ある意味典型的な兄弟姉妹構成である
鶸「そんな事より、答えてください!!なぜ天の御遣いなんてものを名乗っているんですか!!?」
一刀「・・・・・確かに俺は、天の御遣いなんて御大層なものを名乗っている、だからといってこの虚名を利用して王朝に反旗を翻そうとか転覆させようとか、そういった事は考えていない」
鶸「その事を証明することは出来ますか!!?」
一刀「そうだな・・・・・君達は、黄巾党の事を知っているかい?」
鶸「もちろんです!」
蒼「民が決起しちゃったんだよね・・・・・」
一刀「俺は、かつてその黄巾党の人達と約束したんだ、今の王朝を内側から変えていくと」
鶸「変える!?変えるとはどういう意味ですか!!?」
一刀「君達も涼州の姫なら知っているだろう、今の漢王朝の現状を」
鶸「・・・・・・・・・・」
蒼「・・・・・・・・・・」
一刀「宦官による賄賂が賄賂を呼び、汚職が汚職を呼び、権力は金で買いたい放題・・・・・これが今の王朝の現状だ・・・・・暴政による重税で民達は限界に達し、黄巾党なんていう暴徒が現れてしまった・・・・・今のままいけば、漢王朝はそう遠くない将来必ず崩壊するだろう、俺はそれをなんとしてでも止める」
鶸「・・・・・・・・・・」
蒼「・・・・・・・・・・」
一刀「そして、その先に来るであろう乱世、群雄割拠の時代を未然に防ぐ・・・・・それが出来た時、王朝に敵意が無いという事を証明できるんじゃないかと思う・・・・・」
鶸「・・・・・その為には、あなたはどうすればいいと思っているんですか?」
一刀「漢王朝内部に働きかける必要があるが、今の俺の地位じゃどうしたって禁中に入る事すらできない、だから今こうして自分の地位を上げることに専念している、そしていつか禁中に入ることができ帝と謁見することが許される所まで行ければ、きっと今の腐りきった中央を変えることが出来ると思っている」
蒼「・・・・・本当に、それが出来ると思っているんですか?」
一刀「出来る!!周りがやろうとしていないだけで、出来ることに気が付いていないだけだ!!俺はそんな奴らを目覚めさせたい!!金や権力なんていう一時的で下らない欲望に捕らわれても、なんの意味もないという事を教えてやるんだ!!」
鶸「・・・・・・・・・・」
蒼「・・・・・・・・・・」
一刀の熱弁は、涼州で常に五胡という異民族と戦ってきたこの二人の心にも突き刺さった
白蓮「(一刀・・・・・私は今、猛烈に感動しているぞ!)」
星「(なるほど、一刀殿にはそういった思惑があったのですな)」
菖蒲「(素晴らしいです一刀様♪私は一生、貴方様について行きます♪)」
そして、その言葉はこの三人にも深い感慨を与えていた
鶸「・・・・・お話は、分かりました・・・・・しかし、だからと言って、あなたの言葉をそのまま鵜呑みにする訳にもいきません!」
一刀「それじゃあ、どうするんだ?」
蒼「うん、馬騰・・・・・蒼達のお母さんなんだけど、お母さんから二つの指示を貰っているんです」
鶸「もし、天の御遣いが王朝にとって危険な存在であると判断したなら、即刻殺してしまえ」
星「なんだと!!!?」
菖蒲「そのような事、させません!!」
その言葉に、星と菖蒲は反射的に自身の武器を構える
鶸「そしてもう一つ、そうでなかったなら、暫くお前達が御遣いを監視しろ」
星「何?」
菖蒲「それは、どういう事なのでしょうか?」
蒼「つ・ま・り~~~♪北郷さんが信用に足る人物かどうか分かるまで、蒼達が一緒にいるってことだよ♪」
白蓮「それはつまり、一刀の見張り役ということか?」
蒼「当ったり~~~~♪だからこれから宜しくね~~~♪」
鶸「だからそんな馴れ馴れしくしないの!私達は天の御遣いの監視役なんだから!」
蒼「え~~~~、そんないつも緊張していたら、蒼肩凝っちゃうよ~~~」
鶸「それは何!?嫌味か!?嫌味かーーー!!?」
自身の胸が妹よりも小さい事を気にしている鶸は蒼に掴みかかる
白蓮「おいおい!お前達はここに痴話喧嘩をしに来たのか!?」
星「くくくく♪仲がよろしいことで何よりだ♪」
菖蒲「ご姉妹同士、仲が良くて羨ましいです♪」
一刀「俺は構わないよ、好きなようにしてくれて」
蒼「流石御遣い様♪話が分かる~~~♪」
一刀「馬休さんも好きなように俺を監視してくれていい・・・・・それに仕事に忠実な人間は、信用できる」
鶸「・・・・・・・・・・」
蒼「それじゃあ、蒼は蒼だよ♪そう呼んでね、皆さん♪」
鶸「・・・・・私は、鶸です、よろしくお願いします」
そしてその後、改めて自己紹介と真名の交換を済ませた
すると
公孫兵「申し上げます!黄巾党の大部隊が幽州に迫ってきました!」
白蓮「なに!!?」
星「数はどれくらいだ!!?」
公孫兵「おそらく五万はいます!」
菖蒲「五万・・・・・多いですね・・・・・」
一刀「よし、すぐに行こう!」
そして、幽州の関所に到着する一刀達だったが
白蓮「?・・・・・どういうことだ?」
菖蒲「戦闘には入っていないようですね」
星「ああ、報告によればもう戦闘は始まっていてもおかしくないのだが」
そう、別に関所からは慌ただしい雰囲気は感じられない
蒼「誤報だったのかな?」
鶸「それは無いんじゃないの?あの兵士の慌て様は本物だったわよ」
一刀「とりあえず入ってみよう」
何が起こっているのかを確かめるべく一刀達は関所へ入る
一刀「ご苦労さん」
北郷隊兵士「え?あ、北郷様!!このような所へわざわざ!!」
一刀「そんな事はいい、それより状況を説明しろ」
北郷隊兵士「はっ!黄巾党は、ここから一里(5百メートル)ほど離れた所から一歩もこちらに近づいてきません!」
星「一体どういうことだ?」
菖蒲「長期戦でしょうか?それともこちらを誘い出す作戦でしょうか?」
北郷隊兵士「いいえ、奴らは挑発もしてきませんし、少なくとも誘い出す作戦ではないと思われます」
蒼「相手の出方なんてどうでもいいじゃん、そんな難しいこと考えてないで、騎馬隊で蹴散らしてしまえばあっという間だよ♪」
鶸「蒼、また私の仕事増やすつもり?」ゴゴゴゴゴゴゴゴ
蒼「うっ!!?冗談だよ鶸ちゃん、あははぁ・・・・・」
黄巾党の意図が読めなく、これからどんなアクションを起こせばいいのか分からない一同
その時
???「幽州に次ぐ!!!」
「!!??」
いきなり黄巾党からバカ五月蝿い声が聞こえてきて一同は振り返る
???「私は黄巾党幹部が一人、張曼成!!!」
一人の男が黄巾党の中から戦斧を片手に名乗り出てきた
張曼成「幽州の最高責任者を今すぐ呼んで来い!!!そして我と語れい!!!」
白蓮「私が幽州太守、公孫賛だ!!!張曼成とやら話を聞こう!!!」
張曼成「はあ!!?公孫賛!!?誰だそれは!!?」
白蓮「へえ!!?誰ってお前・・・・・」
張曼成「何処の馬の骨とも分からない奴に用はない!!!天の御遣いを出せ!!!」
白蓮「シクシクシクシク・・・・・」
この言葉に深く傷ついた白蓮は、関所の奥で膝を抱え込んでしまった
菖蒲「白蓮様!そんなに落ち込まないでください!」
白蓮「ぐすっ、私を慰めてくれるのはお前だけだ、菖蒲ぇ・・・・・」
一刀「おいおい、この幽州の太守は白蓮なのに、なんで俺なんだ?」
星「それだけ一刀殿の名が大陸に響き渡っているのでしょうな♪白蓮殿には悪いですが、白蓮殿の知名度は一刀殿の足元にも及びませぬ♪」
白蓮「が~~~~~~~~ん!!!」
菖蒲「星さん、これ以上白蓮様を傷付けないでください!」
星「おや、これは失敬♪」
一刀「星、全然悪いと思ってないだろう・・・・・」
星「さて、それはどうでしょうな♪」
蒼「あは♪星お姉さんって面白いね♪」
鶸「性格悪いわね・・・・・」
張曼成「どうした!!!?怖気づいたのか!!!?この張曼成が怖いか御遣い!!!」
一刀「・・・・・それじゃあ、俺が行くか」
菖蒲「一刀様、舌戦が出来るのですか?」
一刀「初めてだけど、何事も最初はあるだろう」
そして、関所から身を乗り出す一刀
一刀「俺が天の御遣い、北郷一刀だ!!!用件を聞こう!!!」
張曼成「貴様が噂の御遣いか!!!偽物じゃあるまいな!!!?」
一刀「本物か偽物かは、そっちで判断してくれ!!!少なくとも、俺は北郷一刀本人だ!!!」
張曼成「そんな所から話されては判断できん!!!ここに降りて来い!!!」
菖蒲「一刀様!!なりません!!」
星「さよう!!いちいち相手に付き合ってやる必要はありませぬ!!」
一刀「そうだろうけど、このままじゃ埒があかないのも事実だ、行ってくる」
鶸「ちょ、ちょっと!!何考えてるんですか!!?」
蒼「そうだよ!!もし囲まれちゃったらおしまいだよ!!」
白蓮「それは許さないぞ!!一刀!!」
一刀「心配するな、危ないと判断したら直ぐに戻ってくるさ・・・・・よっと」
「!!!!???」
いきなり関所から飛び降りる一刀に一同は度肝を抜く
この関所の高さは10メートル強、頭から落ちれば軽く飛び降り自殺できる
しかし、一刀は普通に着地し、そのまま悠然と歩いて行った
白蓮「・・・・・あいつなら、どんな状況でも打破出来る気がしてきたよ」
星「ええ・・・・・流石一刀殿です」
菖蒲「どうかお気をつけて、一刀様・・・・・」
蒼「・・・・・鶸ちゃん、ここから飛び降りれる?」
鶸「無茶言わないでよ!!足が折れちゃうわよ!!」
そして、一刀は張曼成の所へとやって来た
張曼成「・・・・・どうやら、本物のようだな」
一刀「それはどうも・・・・・で、何を話すんだ?」
張曼成「北郷一刀よ!!貴様は今の漢王朝を内側から変えていくらしいな!!?」
一刀「それは誰から聞いたんだ?」
張曼成「我々の仲間が天の御遣いの言葉を伝えに来たわ!!!」
一刀「あの人達は無事なんだな?よかった」
張曼成「何を言っている!!?そのような虚言に惑わされる輩など、切って捨ててやったわ!!!」
一刀「なに!!!!??」
この張曼成の言葉に一刀は切れかかる
一刀「何をしているんだお前は!!!仲間を切り捨ててそれでどうやってやっていくつもりだ!!!?」
張曼成「我らが天は、張角様、張宝様、張梁様の三人のみ!!!それ以外が天を名乗るなどあってはならないのだ!!!」
一刀「だからって自分の仲間を無駄に切り捨てるのかお前は!!!?」
張曼成「我々の理念に背く輩は、粛清して当然!!!しかし、貴様の幽州での評判はしかと来ている!!!それだけの風評があるならば我らの仲間になる資格は十分あるだろう!!!天の御遣いを名乗りたければ、我々の仲間となり共に王朝を打ち砕くのだ!!!」
一刀「断る!!!味方を平気で切り捨てる奴の仲間になど死んでもなるか!!!おまけにこんな大規模な闘争を起こして人様に大迷惑をかける奴らなんぞ認めるか!!!」
張曼成「笑止千万!!!犠牲を恐れて何の大義があろうか!!!貴様は漢王朝を内側から正すらしいが、そのような事ができればこの世に不幸せなど存在するものか!!!」
一刀「そんな自分達に都合の良い事ばかり考える奴らが偉そうなことを言うな!!!」
張曼成「我々は純粋にこの国の体制を嘆いているのだ!!!これを是正する為には、もはや今の王朝を打ち壊すしかないのだ!!!」
一刀「ほう、ならばお前達は実際に漢王朝を倒した後はどうするんだ!!!??」
張曼成「もちろん、民達に善政を敷き、より良い国を築いていくのだ!!!」
一刀「お前達にそれが出来るというのか!!!?それこそ笑止千万な話だ!!!」
張曼成「なんだと!!!??」
一刀「お前達が政のイロハを知っているとはとても思えない!!!民の為民の為と言葉でどれだけ取り繕うが、具体的な方策も示せないようでは無能も同じ!!!どれだけ理想を語ろうが、先の先を見据えない輩に未来はない!!!おまけに自らの仲間を粛清するような徳の欠片もない輩は自滅するのみだ!!!」
張曼成「・・・・・・・・・・」
一刀「俺が前いた国でもお前達のような組織があった!!!その組織が最終的にどうなったか分かるか!!!?・・・・・滅んだよ!!!無様に、地べたに這いつくばり、みっともなく!!!」
張曼成「・・・・・・・・・・」
一刀「そんな下らない玩具を振り回して満足しているような小さい輩が、世の為人の為だ!!!?寝言は寝て言えカス野郎!!!!」
張曼成「ぐぬぬぬぬぬ、言わせておけば!!」
一刀「やる気か!!?だったらお前のその玩具で俺を殺してみろ!!できるもんならな!!?」
張曼成「やってやるぞ!!!うおおおおおおおおおおお!!!!」
怒り任せに身の丈を超える大斧を一刀に振り下ろす張曼成
一刀「・・・・・やっぱり、玩具だったな」
その大斧は、柄の部分からポッキリと折れていた
本来は木を切り倒す為の刃は、一刀の掌の中にあった
張曼成「・・・・・・・・・・」
そこには、自身の獲物を壊され呆然としている張曼成の姿があった
一刀「どうだ、頭が冷えたか?ならその冷えた頭で考えろ、こんな玩具で王朝を倒せると思えるのか?」
張曼成「・・・・・・・・・・」
一刀「あんたも今まで王朝の重税に苦しんできたんだろう、それは俺も今まで旅をしてきてあんたと同じ人達を大勢見てきたから分かる・・・・・だから俺に任せてくれ、かつてあんたが切って捨てた仲間に言った通り、俺が王朝を変えてみせる」
張曼成「・・・・・本当に、信用してもいいのか?」
一刀「信用してくれなんて言わない、あんた達の気持ちには結果で答えてみせる、だからそれまで、俺に時間をくれ・・・・・頼む」
張曼成「・・・・・・・・・・」
自分は敗者で彼は勝者なのに、勝者が敗者に頭を下げて頼んでいる
本来なら逆、勝者は敗者をいいように出来るのがこの大陸の習わし
しかし、この人物は何かが違う、この人物なら何かを変えてくれる、そんな気がしてきた
張曼成「・・・・・分かり・・・・・ました・・・・・御遣い様のお言葉に従います・・・・・」
一刀「分かってくれたならいい、あんたはあの仲間達を郷里に帰してくれ、そしてあんたも自分の郷里に帰るんだ・・・・・家族が心配しているだろ?顔を見せてやれ」
張曼成「うううう・・・・・はい・・・・・はい・・・・・」
そして、泣きながら張曼成は自軍に戻って行き、五万人いた黄巾党も全員自分達の故郷に帰っていったのだった
一刀「(俺は絶対に、今の王朝を変えてみせる)」
そして、一刀もこの出来事を期に決意を新たにするのだった
白蓮「一刀・・・・・やっぱりお前は凄いやつだよ」
星「私、趙子龍は、一刀殿に永遠の忠誠を誓いましょうぞ」
菖蒲「一刀様、私は一刀様にずっと、ずっとついて行きます」
鶸「凄い・・・・・あんな人がこの世にいるなんて」
蒼「蒼、感動しちゃったよ~~~♪」
そして、黄巾党の説得が終わり幽州の本拠地に帰ってきた一刀達は一夜をすごしていた
しかし
一刀「・・・・・う~~~~ん・・・・・」
一刀だけは、何とも寝付けず何度も寝返りを打ち、寝やすい体勢を見つけ出そうとしていた
一刀「くぅ~~~~~・・・・・疲れ過ぎているのかな・・・・・ここのところ仕事のしっぱなしだからな・・・・・」
人間は、睡眠を取る間でも体力を使うのである
過度な疲れや緊張は睡眠を妨げるというが、まさにその通りといえよう
前の世界で体力大魔王なんて呼ばれていた一刀でも、ここ最近のハードスケジュールの前に知らず知らずのうちに体力を削られていたのかもしれない
一刀「・・・・・仕方ない・・・・・前に華佗から貰った疲れに効く薬でも飲んでみるか・・・・・」
寝台から降り、タンスの中の薬を取り出す
一刀「・・・・・っ!」
その時、なにやら嫌な空気を感じた
一刀「・・・・・なんなんだ?」
今までの実戦で鍛えてきた勘というものであろうか、自身の中の何かが警戒信号を発していた
寝巻きから戦闘装束に着替え腰に兼元を差し、一刀は部屋を出て行った
ここは、城の城壁
「よう、ご苦労さん」
「お疲れ様っす」
今日も決められた時間に見回りの兵が巡回をしていた
「眠くないか?」
「大丈夫です、昼間しっかりと睡眠はとっていますから・・・・・しかし、今日も何事もありませんね、この巡回って意味があるんでしょうか?」
「おいおい、最近賊がかなり減ったからといって、城に侵入する不貞の輩がいないとは限らないんだぞ」
「それはそうですけど、そんな事今まで一切なかったじゃないですか」
「確かに鳥丸との貿易が始まってからは、あいつらもこの国に攻め込んでくることは無くなったし、幽州の景気はうなぎ登りだからな」
「はい、それもこれもみんな天の御遣い様が公孫賛様に天の知識を授けてくださっているからですよね」
「そうだ、俺達の給料も格段に上がっているからな、本当に北郷様には感謝のしようもない・・・・・もし俺達が怠けて、暗殺者の侵入を許し北郷様を殺されたりしてみろ」
「うっ!!・・・・・それは一大事です」
「一大事どころの話なもんか・・・・・だからこんな事に意味があるのかなんて言うんじゃない、お前もこの城の兵士として責任を持って仕事に当たれ」
「はっ!」
そうして、見回りの二人は再び巡回にあたる
しかし
「うっ!」
「っ!・・・・・何が・・・・・」
首筋からの一瞬の痛みと共に強烈な睡魔が襲ってきて、二人はその場で爆睡してしまった
???「っ」
???「っ」
???「っ」
その時、城壁の外から外套をかぶった三人組が侵入してきた
どうやら鉤爪付きロープで登ってきたようである
そして、見回り二人に向けて放った物を回収し、お互いに手で合図を送り物音を極力たてず、行動していく
その華麗で合理的な身のこなしは、まるで忍のようだ
しかし
「野良猫か」
???「「「っ!!??」」」
気配を極力殺して侵入したはずなのにどうしてバレたのか
声がした方向に一斉に三人は振り返る
建物の影から月明かりに照らされながら一刀が出て来た
一刀「それとも泥棒猫かな・・・・・で、君達は誰だ?どうしてこの城に侵入してきたんだ?」
三人の顔は外套に包まれ、顔を確認することはできない
目の前に現れた一刀に三人は、ただ身構えるのみだった
一刀「・・・・・答えるはずもないか」
???「・・・・・っ!」
シュビッ!
一刀「っと!・・・・・いきなりご挨拶だな」
自身から見て奥にいる人物が懐から突然物を投擲してきたが、これを紙一重で躱す
???「っ!」
シュビビビ!!
さらに投擲してくるが、一刀は躱すと同時に数本指にはさむ
一刀「問答無用かよ・・・・・って何!?」
投げられた投擲物に一刀は驚く
それは紛れもなく、苦無である
苦無は、日本の忍者が使っていた現代でいうサバイバルナイフのようなものだが、この時代にはまだ存在しないはずである
一刀「(一体どうなってるんだ!?こいつら何者だよ!?)」
一瞬物思いに耽ってしまうが、その一瞬を見逃す三人ではなかった
手前の二人が一刀との間合いを一気に詰め、後ろの一人は更に苦無を投擲してきた
一刀「ちっ!(これはくらう訳にはいかないな、さっきのあいつらを見ていると、強力な眠り薬が塗ってある!)」
見回りの兵が首筋に苦無をもらった瞬間に眠りこけてしまったところを見たので、一刀は苦無を投げてくる人物に注意を払う
???「っ!!」
???「しっ!!」
接近戦を仕掛けてきた二人が分厚い曲刀と鞘に収めたままの刀で斬りかかってくる
一刀「ふっ!しっ!」
その攻撃を躱し、反撃を試みる一刀だったが
一刀「うおっ!」
そうはさせまいと、奥の外套をかぶった者が苦無で援護をする
???「しっ!」
???「ふっ!」
苦無を躱し、体勢が崩れた所に曲刀と鞘が迫る
一刀「ふっ!」
ドンッ!ドカッ!
???「くっ!」
???「ぐはっ!!」
それでもなんとか二人の攻撃を捌き当身を決め、曲刀を持った人物を吹っ飛ばし鞘で斬りかかって来る人物を背中から城壁に叩きつけ距離を取る
???「ふっ!!」
それでも曲刀を逆手で装備した人物は、一人で一刀に向かっていく
シュババババババ!!
斬撃だけでなく当身や蹴りも織り交ぜ、一刀に襲いかかるが
一刀「ふっ!!」
バシバシッ!!ドカッ!!
???「ぐうっ!!」
全ての攻撃を捌かれ、左脇腹に回し蹴りを決められ怯んでしまう
曲刀を持っているとはいえ、こういったインファイトで北郷流無刀術に勝とうというのがお笑い種な話である
仮にこの三人が本物の忍だったとしても、北郷流も忍の技術にかけては四百年から五百年の歴史を持っている
おまけに時代を先取りしている分、その思想や精神についてもこの三人が敵うはずもない
一刀「くっ!」
がしかし、外からの援護がこれだけ的確では一刀とてまともに戦えるはずもない
更に多くの苦無が足元やら頭やらに飛来し、こちらを躱すのもかなり骨が折れる
これだけの苦無を一体どこにしまっているんだろうかと思う
???「・・・・・ふっ!」
城壁に叩きつけられた人物が刀を背中に差し直し、物を投げてきた
一刀「くっ!!」
二人から投擲される苦無を一瞬うつ伏せになり躱す
どうやらこの人物も苦無を持ってるようだ
???「しっ!!」
その隙を突き、曲刀を装備した人物が突貫してくる
曲刀を横薙ぎで振り抜き一刀の腹をかっさばきに来た
ガシィッ!
???「なっ!!?」
襲い掛かってくる曲刀を両腕の肘と手の中間で白刃取る
その隙を突き援護をする者が苦無を投擲しようとするも
一刀「ちっ!」
???「っ!!?」
曲刀の人物を引き寄せ盾にし苦無の軌道線上から身を隠し投擲出来ないようにする
チャキ
そして、二人目の苦無を投げてきた者が背中に装備している刀を腰に差し直し後ろから襲いかかる
一刀「っ!!?」
後ろからの殺気と鍔を押し出す音、それに振り向き様に右蹴りを叩き込む
ガチン!!
???「えっ!!?」
柄が長かったため、一刀の足の裏が一瞬早くその柄頭を捉え抜けなくした
一刀「(おいおい!こいつ今剣を抜き放とうとしなかったか!?)」
居合が発祥したのは日本、しかもその概念が確立されるのは今から千年以上も後の話のはずである
今の時代には決してあるはずがない技に戸惑うが、今はそうも言っていられない
一刀「ふっ!!」
シュバッドカッ!!
???「うっ!!?」
???「うあっ!!?」
曲刀を持った人物を投げ飛ばし刀を持った人物にぶつけ体勢を立て直し、二人に向けて追撃を仕掛けるも
シュババッ!!
一刀「うっ!!?」
そうはさせぬと言わんばかりに苦無が飛来する
???「っ!!」
???「ふっ!」
???「ていやあ!!」
形振り構わなくなってきたのか、三人は他の見張りがやって来る事も考えず一刀に襲いかかる
一刀「くっ!!」
三人の連携がより一層鋭くなり一刀も躱しきれなくなってきた
遠くから苦無を投げ接近戦をする二人を援護している者が鬱陶しく厄介である
一刀「しっ!!」
???「っ!!??」
縮地で接近戦を仕掛けてくる二人を振り払い、苦無を投げてくる者に的を絞り一気に間合いを詰め胸の辺りに掌底を叩き込む
すると
ムニュウ
???「きゃあっ!!」
一刀「・・・・・きゃあ・・・・・って」
掌に伝わって来たのは、なんとも柔らかく気持ちのいい感触
その拍子に聞こえてきた可愛らしい叫び声と共に顔を隠している外套が下ろされる
???「~~~~~っ!!//////////////////」
そこには、後ろ髪をツインテールで縛り、マフラーを前にかけた少女が恥ずかしそうに自身の胸を隠していた
一刀「(マジかよ、また女性かよ)」
想像はしていたが、こう立て続けに来られると勘弁して欲しくなる
???「鴎さん!大丈夫ですか!?」
???「おい!顔を見られたぞ、鴎!」
はっきり聞こえた、後ろの二人も女性である
???「この・・・・・変態!!!////////////」
その女の子は、一刀の左頬にビンタをかまそうとするが、一刀はそれを手で受け止めた
律儀に叩かれてやるほど、一刀もお人好しではない
一刀「おいおい、不法侵入者に犯罪者呼ばわりされるか?俺も落ちたもんだな」
???「黙れこの痴漢!!/////////////」
痴漢という言葉がこの時代にあったのかと聞きたいが、三人はその後も容赦なく一刀に襲いかかってくる
その勢いはさっきよりも苛烈だった
一刀「ったくしょうがないな・・・・・ちょっと痛いかもしれないけど、我慢しろよ」
このまま付き合っていたら世が明けてしまいそうだ
拳に力を込め、氣を腹に集中させようとする
しかし次の瞬間
グゥ~~~~~~~~
一刀「・・・・・は?」
いきなり聞こえてきたお腹の虫の音にせっかく込めた氣が霧散する
???「はううう・・・・・お腹減ったです~~~」
???「おい明命!後にしろ!こいつを捕まえてから・・・・・」
グリュルルルルルルル
???「ぐぅぅぅ/////////」
鴎「思春も人のこと言えないでしょう」
ギュルルルルルルル
思春「・・・・・お前こそ」
鴎「//////////////」
空腹の余り、三人はその場で蹲ってしまった
グギュルルルルルルルル
一刀「・・・・・・・・・・」
このお腹の虫の大合唱具合、どうやらここ数日まともに食べ物にありついていない様だ
一刀も旅を始めた当初は似たようなことがあったので気持ちはよく分かる
一刀「・・・・・分かった、とりあえず何か食わせてやるから、ついてきてくれ」
明命「本当ですか!?ありがとうございます♪」
鴎「こら明命!流されてるんじゃないわよ!」
明命「はうあ!?」
思春「そうだ!毒でも仕込まれたらどうするんだ!?」
一刀「意地を張るのは別に構わないが、これから霞や霧でも食べていくつもりか?・・・・・言っておくが、この幽州での食い逃げや窃盗なんて、俺が許さないぞ」
「・・・・・・・・・・」
そして、城内厨房
ここで一刀はこの三人に手料理をご馳走してあげた
メニューは、牛丼特盛三人分
最初は躊躇っていた三人だったが、牛丼が醸し出す香ばしい香りに抗いきれず、あっと言う間に腹の中にかき込んでいった
鴎「ふ~~~~、こんな美味しいもの食べた事ないわ///////////」
思春「うむ、美味だった/////////」
明命「はううう、お腹いっぱい幸せです~~~♫♪//////////」♦♫♦・*:.❁.。♦♫♦❀*゚¨゚゚・*✿:..。♦✾
どうやらご満足いただけたようだ
額に鉢金を巻いた子なんて、頭の上に花弁を浮かべている
一刀「で、君達はどこの勢力の子達だい?」
「・・・・・・・・・・」
一刀「・・・・・まただんまりか・・・・・それじゃあ、せめて君達の名前だけでも教えてもらえないか?」
思春「・・・・・甘寧だ」
明命「周泰と申します・・・・・」
鴎「・・・・・凌統よ」
一刀「なるほど、江東の孫堅の部下か」
思春「っ!!??なぜ知っている!!?」
自分達の名は、まだそれほど知名度があるとは思えないが、一刀は更に畳み掛ける
一刀「知っているのはそれだけじゃない、君達の字は・・・・・甘寧興覇、周泰幼平、凌統公績だろ」
鴎「そんな事まで・・・・・どうして・・・・・」
一刀「理由は、俺が天の御遣いだから・・・・・とでも言えばいいのかな」
「・・・・・・・・・・」
一刀「それにしても、どうして間諜なのに飯を買う金も持っていないんだ?」
思春「・・・・・長沙での劉表との戦は知っているか?」
一刀「ああ、俺と華佗が偶然孫堅を助けたからな」
明命「そのことに関しては感謝の使用もありません・・・・・しかし、問題はその後なのです・・・・・」
鴎「ええ、あの戦で大殿が打ち取られそうになり、内の陣営は離反者が続出して勢力がそれまでの半分以下にまで落ち込んでしまったわ・・・・・」
思春「おかげで我々の陣営は、明日の食料にまで事欠く有様になってしまったのだ・・・・・」
明命「今は袁術の客将となることによって、これ以上の衰退を抑えていますが・・・・・そのせいで私達の勢力は散り散りになってしまいました・・・・・」
鴎「江東のかつての勢いを取り戻す為にも、幽州を短期間で目覚しい発展を遂げさせた天の御遣いを攫うようにと大殿様から言われてきたの・・・・・」
一刀「ふ~~ん、なるほどね・・・・・ってちょっと待て!さっき甘寧は俺に本気で斬りかかって来なかったか!?」
誘拐するのが任務だったら殺していては何の意味もないだろうに
思春「それは・・・・・大殿が御遣いに見つかったら本気で仕掛けてみろと言っていたからであって・・・・・」
鴎「多分、大殿はこう考えていたんでしょう・・・・・私達三人と渡り合えないならそれまでと」
一刀「おいおい、使えなければポイかよ」
明命「しかし、本当にお強いのですね♪私達三人をいっぺんに相手にしてかすり傷一つ負わなかったのは、大殿様依頼です♪」
思春「素手の相手に三人掛りでこの様か・・・・・情けないな・・・・・」
鴎「ええ、帰ったら修行のし直しね・・・・・」
一刀「なるほどな、事情はわかった・・・・・だがだからと言って、俺もはいそうですかと攫われてやるわけにもいかない」
「・・・・・・・・・・」
一刀「代わりと言ってはなんだが・・・・・孫堅に伝言を頼まれてくれないか?」
明命「伝言ですか?」
一刀「ああ、君達はそのうち袁術から独立するつもりなんだろう?」
思春「当たり前だ!いつまでも袁術のような小者に使われてたまるか!」
一刀「俺は、その独立に協力してやってもいい」
鴎「本当に!?」
一刀「ただし、武力による介入は絶対にしない、あくまで話し合いで袁術を説き伏せてみせる」
明命「そんなことができるんですか?」
一刀「その為にも、一度そちらに出向かなければならないけど・・・・・よし、こうしよう、これを持って行ってくれ」
そう言いながら、腰に差してある兼元を明命に差し出す
明命「これは、何ですか?」
一刀「俺の家に古くから伝わる業物だ、これを渡せば孫堅さんも理解してくれるはずだ」
あの時、炎蓮が一刀の特徴として捉えていたのは、この兼元だけのはずである
明命「そのような大切なものを私に・・・・・分かりました!大切に預からせていただきます!」
一刀「ただし、次に会った時に必ず返すようにと伝えてくれよ、じゃないと・・・・・俺がじいちゃんに殺されそうだからな・・・・・」
最後の方は泣きそうな声だった
北郷家に伝わる家宝の一つを無くしたことがバレたら、その場で真っ二つにされそうである
思春「おい、なぜ明命に預けるんだ?」
一刀「だって甘寧は、本気で俺を殺す気で掛かってきたじゃないか」
思春「うっ・・・・・それは・・・・・」
一刀「それに対して周泰は偉いもんだ、主の命令を遂行しようと最後まで努力していたんだからな」
ナデナデナデナデ
明命「はふぅ~~~~♪気持ちいいです~~~♪//////////」
まるで秋田犬のようにその優しい手の感触を楽しむ明命
思春「最後、明命は魂切を抜こうとしていたような・・・・・」
明命「はうあ!?あれはこのままだと失敗すると思ったからで!」
鴎「そうよ、思春は不忠罪で縛り首になればいいのよ♪」
思春「なんだと鴎!!」
鴎「わぁ~~~お、こわぁ~~~い♪」
一刀「おいこら、こんな所で暴れだしたら撮み出すぞ」
思春「ぐぅ・・・・・」
鴎「はぁ~~い・・・・・」
そして、城壁に戻ってきた四人
明命「北郷様、大殿様には北郷様がよろしく言っていたと伝えます、私の真名は明命です、呼んで下さい♪」
一刀「俺は、一刀が真名にあたるから、そう呼んでくれ、明命」
明命「はい、一刀様♪」
思春「・・・・・私の真名は思春だ、呼びたければ呼べ、私は北郷と呼ぶ」
鴎「鴎よ、よろしく、一刀」
一刀「ああ、思春、鴎・・・・・あそうだ、鴎の武器なんだけど、一本もらっておくぞ」
鴎「いいけど、なんで?」
一刀「最近疲れが溜まっているせいか全然寝付けなくてな、この睡眠薬なら寝付けると思って」
鴎「それくらいなら別にいいけど、薬の原粉を渡しておくわ、これを水で薄めて飲めば問題ないわ、いちいち体に刺していたら傷が残るでしょうから」
一刀「ありがとう・・・・・それと、帰るのに無一文じゃお話にならないだろ、これを持っていってくれ」
懐からお金がタンマリ入った袋を一刀は差し出した
鴎「・・・・・本当に何から何まで世話になるわね」
明命「はい、城に侵入しただけでも普通なら極刑ですのに・・・・・」
一刀「気にするなよ、俺だって伝言を頼んでいるんだからな・・・・・そろそろ行かないと見回りの奴らが起きてしまうぞ」
そして、三人は城に侵入した時と同じように鉤爪付き縄で城壁を降りていく
明命「お世話になりました!一刀様!」
思春「また会おう」
鴎「待っているわよ!」
一刀「ああ、またな・・・・・褌三人組さん♪」
思春「っ!!////////////」
鴎「なっ!!////////////」
明命「はうあ!!?/////////////」
その言葉を最後に城壁から鉤爪を外し、一刀は城内へと去っていった
思春「まったくあの男め!/////////」
明命「褌三人組・・・・・//////////」
鴎「男なんて皆そうなのよ、女と見れば胸や股間ばかり見てきて!//////////」
明命「でも、いいお人でしたね♪」
鴎「・・・・・まぁ、器量だけは認めてやらなくもないわ」
思春「なんだ?胸を揉まれて鞍替えする気にでもなったか?」
鴎「なあ!!?ふざけんな思春!!////////////」
荊州南陽への帰り道を三人は馬を走らせ急いでいた
すると
思春「・・・・・明命」
明命「あはい、なんでしょう?」
思春「北郷から預けられた剣を見せてくれないか」
いきなり馬を止め、兼元を見せるように促す思春
明命「え、なぜですか?これは、大殿様に届けなければならないんですよ」
思春「少し見るだけだ」
明命「・・・・・分かりました」
そして、兼元を明命から受け取った思春は刀身を露にする
鴎「っ!!??これは・・・・・」
明命「はうあ~~~、綺麗です~~~~」
その鏡のように洗練された刀身は三人を魅入らせる
鴎「この形、まるで明命の魂切みたいね」
明命「そんな、私の魂切はここまで見事に磨き上げられてはいません」
思春「・・・・・試してみるか」
そして馬を降り、近しい木を見つけその中で一番太い枝に兼元を軽く振り下ろした
ザクンッ
明命「えっ!!?」
鴎「うそっ!!?」
その太い枝は、一振りで真っ二つになった
鴎「恐ろしい切れ味ね・・・・・」
明命「私の魂切では、こうはいきません・・・・・」
思春「私の鈴音でも同じ事は出来ないだろうな・・・・・」
枝の切り口は、まるで一流の職人が磨き上げたかのような綺麗な切り口だった
思春「(まったく、返すのが惜しくなってくるな)」
鴎「何?自分の物にしたくなった?」
思春「・・・・・正直、な」
そして、三人は再び南陽へ急ぐのだった
Seigouです
今回は英雄譚の新キャラ、鶸(ルオ)と蒼(ソウ)が出てきました
まだ公式にイメージしか出てきていませんが、鶸のしっかりさと蒼のお気楽極楽な性格は表現できたのではないかと思います
彼女達の使う武器の名前がわかりませんので、後から加筆するかもしれません、そこらへんはご了承ください
あと、今回登場した凌統なんですが、真名の読みは鴎(カモメ)ではなく鴎(オウ)です
このキャラは、郁さんのクリエイタープロフィールから入るブログの仮ラフ状態の凌統を使わせてもらっています
郁さんから聞いていますので彼女の真名についても問題はありません
さて、黄巾党の乱は始まったばかり、これからどうするどうなる?・・・・・待て!!!次回!!!
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決意の修羅