No.692379

英雄伝説~運命が改変された少年の行く道~

soranoさん

第65話(2章終了)

2014-06-08 00:24:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1949   閲覧ユーザー数:1822

5月31日―――

 

翌朝、リィン達はわざわざホテルに来たルーファスに別れの言葉をかけられ、ルーファスを見送った後、駅構内へと入って行き、その様子を金髪の青年が見守っていた。

 

~バリアハート市内~

 

「士官学院”Ⅶ組”……ずいぶん危なっかしかったが何とかケリは付けられたか。ま、お前が拘る理由もわかる気がするぜ―――サラ。」

リィン達を見送った青年は口元に笑みを浮かべた後ルーファスが乗せた高級車が去った方向に視線を向けた。

「しかし、公爵家のルーファス・アルバレアか。貴族派随一の切れ者と噂されてるみたいだが……」

そして青年が考え込み始めたその時

「―――何故こんな朝早くに峡谷方面に向かうのか……そういった疑問かね?」

青年の疑問を代わりに答えるかのように男性の声が聞こえてきた。

 

「あんたは……」

男性の声に気付いた青年が振り向くとそこにはブルブランがいた。

「フフ、しがない下級貴族さ。君と同じく、あの学院の子達を温かい目で見守らせてもらった。」

「へえ……気のせいかもしれないが、アンタ、知り合いから聞いたある人物に似ている気がするな。何やら気取った”芸名”を持ってたりするんじゃないか?」

口元に笑みを浮かべるブルブランを青年は警戒の表情で睨んで尋ねた。

 

「フフ、さてさて。……ちなみにその知り合い、外国から来た初々しいカップルとその娘とは言わないだろうね?」

青年の反応を面白がるかのようにブルブランは興味ありげな表情で尋ね

「……さてな。」

尋ねられた青年は静かな口調で答えを誤魔化した。

 

「帝都行きの飛行船が出るのでそろそろ失礼させてもらうよ。それでは遊撃士殿。機会があればまた会おう。それと――――”紫電(エクレール)”殿と”剣帝”によろしく。」

そしてブルブランは恭しい一礼をした後飛行場に向かって行った。

 

「ったく、この面倒な状況で厄介なヤツが現れたな……―――念のため、他の連中にも一通り連絡しておくかね。」

ブルブランを見送った青年は疲れた表情で溜息を吐いた後真剣な表情になった。

 

~列車内~

 

「ふわああっ……」

「……あふ……」

「やれやれ。若いのにだらしないわねぇ。一晩ちゃんと寝てるんだからもっとしゃきっとしなさい。」

あくびをして眠そうな様子のフィーとマキアスを見たサラ教官は呆れた表情で指摘した。

 

「無茶言わないでくださいよ……」

「……さすがに今回は色々とありすぎましたから……」

「脱出劇に加えて大規模戦闘も繰り広げましたから仕方ありませんよ。」

サラ教官の言葉を聞いたリィンとエマは冷や汗をかいてツーヤと共に反論した。

 

「まあ、そうみたいね。B班の方はメンフィル領だったお蔭か何事もなく、順調に終わらせたみたいよ。」

「そうですか………」

「何事もなくよかったですね。」

サラ教官の説明を聞いたリィンとエマはそれぞれ安堵の表情をした。

 

「――ねえ、サラ。今回の実習でオーロックス砦を見たけど、正直洒落になってなかったよ。」

その時フィーが真剣な表情でサラ教官に指摘した。

「ええ、そうみたいね。そして領邦軍だけじゃなくて、正規軍も軍備を拡張してるわ。言うまでもなく革新派……”鉄血宰相”が掌握している20もの機甲師団を中心にね。」

「それは…………」

「「……………………」」

「”来るべき時”―――”貴族派”との戦いに向けてですか。」

サラ教官の話を聞いたリィンは真剣な表情になり、マキアスとユーシスはそれぞれ黙り込み、ツーヤは真剣な表情で呟いた。

 

「士官学院は……私達はどう振舞えばいいんでしょう?たしか正規軍にも領邦軍にも卒業生は行っていますよね……?」

「ま、そこらへんは今は気にする必要ないわ。」

エマの質問に答えたサラ教官の話を聞いたリィン達は意外そうな表情をした。

 

「君達はまだ、学ぶ立場にある。今回みたいに厄介で面倒な”現実”を少しずつ知りながら……それでも”今”しか得られない”何か”を掴むことができるはずよ。掛け替えのない仲間と一緒ならね。」

「あ…………」

「………………」

サラ教官の話を聞いたマキアスは呆け、ユーシスは静かな表情で黙り込んでいた。

 

「それは、社会に出たら何の意味もない儚いものかもしれないけど……どこかできっと、君達の血肉となり、大切な財産となってくれると思う。―――少なくてもあたしはそう信じてる。」

「サラ教官……」

サラ教官の説明を聞いた一同は黙り込み

「ははははっ……」

やがて全員大声で笑い始めた!

 

「……くっ……ちょっとツボに来た……」

「……やれやれ。何を言い出すかと思えば。」

「ミントちゃん達にもさっきのサラ教官の言葉、是非教えてあげたいですよ。」

笑い終えたマキアスは口元に笑みを浮かべ、ユーシスは苦笑し、ツーヤは微笑んだ。

 

「ちょ、ちょっと……何でそのタイミングでみんなして爆笑するのよ!?」

「す、すみません……仰ってることはすごく感銘を受けたんですけど……」

「いつもの教官とのギャップがありすぎてどうにも……」

「……ちょっとクサすぎ。」

慌てているサラ教官の様子を見たエマとリィンは苦笑し、フィーはジト目で指摘し

「”今”しか得られない”何か”。そして……掛け替えのない仲間と一緒ならか。」

「ちょ……やめたまえ!僕を悶え苦しませるつもりか!?」

サラ教官の言葉を繰り返したユーシスの言葉を聞いたマキアスは笑いをこらえながらユーシスを睨み

「――ああもう!せっかく良い事言ったのに!アンタたち、思った以上に一筋縄じゃいかないわねぇっ!」

口々に自分をからかう様子のリィン達を見たサラ教官は呆れた表情で声を上げて指摘した。

 

~バリアハート地方~

 

一方その頃水色の髪の少女がリィン達が列車を見送っていた。

「ふぇ~、ブジ帰ったかぁ。まさか”ブレイサーロード”達が関わってくるなんてね~。しかし冗談抜きで”ブレイサーロード”達って”化物”じゃん……たったあれだけの人数で軍隊に勝ったり戦車を破壊するとか、あの人達って本当にボク達と同じ人間なのかなぁ?」

少女はエステル達の戦いを思い出して苦笑した。

「ニシシ……砦で見つかっちゃった時はどうしようかと思ったけど。」

ある出来事を思い出した少女が口元に笑みを浮かべたその時、オーブメントに通信が入り、少女は通信を開始した。

 

「もしもし、こちら”白兎(ホワイトラビット)”。うんうん……”ブレイサーロード”達やメンフィルが介入してきたけどいちおー何とかなったよ。まー、細かいことはイイじゃん♪ちゃんとお仕事は終わらせたんだし。あ、でも、色々面白いのはいたけど”連中”の気配はゼンゼンなかったよ?―――え、ダミー情報?キミとオジサンの裏をかいたの?あはは、すごいなぁ。結構やりがいのある相手だねっ!―――ボク?これからクレアと合流するけど。りょーかい。まったねー、”レクター”。」

通信を終えた少女は列車が去った方向を見つめ

「……そういえば『シカンガクイン』だっけ?んー……なんだか楽しそうでいいなぁ。」

興味ありげな表情で呟いた後片手を上げた。

「―――ガーちゃん。」

「―――――!」

するとリィン達が峡谷で見た謎の人形兵器が少女の背後に現れ

「そうそう。ここでの仕事は終わりだよ。行こっか―――”アガートラム”」

「―――――」

少女を片腕に乗せて空へと飛びあがり、その場から去って行った。

 

なお、今回の件によって領邦軍はバリアハート地方に所属していた兵士達のおよそ7割が重傷を負っている影響で数ヵ月~数年は戦えない状態となり、バリアハート地方に配備されていた”アハツェン”や装甲車のおよそ8割も破壊され、軍として人、物資共に甚大な被害を受けた。また、住民への口止め料や慰謝料、重傷を負った兵士達の治療費、破壊された戦車や装甲車の修理費や新たに購入した金額、エステル達との戦闘によってクレーターだらけになった街道の整備費を合わせると莫大な金額へと膨れ上がり、その全てを負担する事になっていた”アルバレア公爵家”は”アルバレア公爵家”の莫大な財産のおよそ4割を失う羽目になった。忌々しく思っている遊撃士……それも自分が一番嫌っている成り上がり貴族のエステル達によって自分の目論見を破壊されるどころか、領邦軍に甚大な被害を与え、更にはアルバレア公爵家の財産に大きな損害を与えた事にアルバレア公爵は怒りと悔しさで身体を震わせていたという………………

 

 


 
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