No.692125

とある傭兵と戦闘機  (IS編第5話)妹の想い

すっかり定着したいつも通りの日常を過ごす主人公は、なんら違和感なく日常に馴染み始めていたーーー

2014-06-07 01:55:05 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3949   閲覧ユーザー数:3860

 

 

 「・・・・・・」

 

IS用個別整備室にて、ディスプレイを注視しながらタイピングを続ける少女が一人

 

そのディスプレイの向こうに鎮座している機体の名は、打鉄弐式

 

彼女は、システムが不完全な状態のこの機体を手にし一人でこの機体を調整していた

 

 「どうして・・・私の作ったスタビライズシステムとの相性が悪いの?」

 

独り言。もちろん、それに答えが返ってくる事はありえない

 

この機体は、まだシステムが起動できていない

 

まだーーー目覚めてすらいない

 

 「参考になるデータがあれば・・・」

 

ふと、先日この整備室にて見かけた機体を思い出す

 

 「あの打鉄・・・形式を見たら最初期の試作機だったけど・・・」

 

その時、機体の情報を少し覗いた

 

驚いた、あの打鉄に搭載されているスラスターは全て打鉄の上位互換試作モデルだった

 

安定性を全て捨てて、ハイパフォーマンスを求めて機体には高出力のエネルギーラインが構成されていた

 

しかも、その全てが完璧なセッティングで

 

この機体のデータがあれば・・・と、思った瞬間だった

 

システムが勝手に起動して、スラスターのセッティングが全て初期化された

 

更に、PICや各部駆動系に関する調整データが全て削除されてしまった

 

待って・・・って、思ったけど・・・

 

機体は完全に初期化されて、データのモニタリングを拒否した

 

あたたかも、機体自体が私を拒んだのかのように

 

 「嫌われたのかな・・・」

 

そう思うと、少し心が沈む

 

それから少しして回復した後、私は作業に戻った

 

 ピー、パシュッ

 

と、整備室の扉が開く音が聞こえた

 

 コツッ コツッ コツッ

 

私しか居ない整備室の床を靴が軽く叩く音がこだまする

 

 「んーーっ・・・さて、始めようかな。”打鉄零式改”コンバットオープン」

 

その声と共に、隣の整備室から光が漏れた

 

 「さて、各部スラスターシステム解放。出力を35%でホールド」

 

キュィィィィィィィン

 

と、スラスターがエネルギーを放出する音が聞こえ始めた

 

 「(打鉄零式の搭乗者・・・どんな人なんだろう)」

 

ふと、隣の整備ルームを覗いてみた

 

そこには、先日のあの機体と蒼い髪を腰まで下ろした人が居た

 

 「(雰囲気でわかる・・・この人、物凄く美人)」

 

後姿を見ただけで、少しうしろめたく感じる

 

 「でも一体誰がこんな事したんだろう?システムの初期化なんて、自然に起こり得ないわけだし

 

  ま、もう一度調整しなおさなくちゃいけないのは一緒だったしついでにやっちゃおう」

 

その人はモニターを六面展開して調整を始めた

 

 「スラストセンサー良好。出力を57%に固定、PIC干渉領域誤差修正マイナス0.6

 

  フレキシブルスラスターのエネルギーバイパスのモニタリング・・・うん、良好

 

  バイパスコントロールをPIC連動に設定後、更に出力上昇。

 

  高機動アクティブウイングシステムの舵角調整プラス1.25」

 

キィィィィィィィィン・・・

 

その速さに、私は口を開けたまま見入っていた

 

的確に、更に精密に一度の補正で済ませている

 

 「よしよし、システムセッティング完了。スラストシステム”零式”設定完了

 

  これなら私の戦い方に合った戦闘ができるね。」

 

ウインドウを閉じ、そしてその人は背を向けたままこんな事を言った

 

 「ねぇ、私の後ろで様子を伺っているのは誰?」

 

私の背筋が、感覚的に凍りついた

 

振り向いた彼女は、私を一直線に見つめてきた

 

 「こんにちわ。更識 簪さん」

 

 「っ!?・・・こっ・・・こんにちわ・・・」

 

顔を見て、私はこの人の事を思い出した

 

第一学年一組、フィリア・フェイリールドさん

 

春のトーナメントで、量産型でありながらも三機中二機を戦闘不能にし

 

第三世代型の試作機を戦術的に圧倒していた

 

更に、そんな彼女の学業における成績は学年一位、全科目全問正解の離れ業を見せ付け

 

夏の合宿に起きたISの暴走事件に関しても、彼女が解決に大きく貢献していたらしい

 

・・・・完璧だ

 

あらゆる面で隙が無い・・・

 

でも・・・こんな噂が立っている

 

 ”一組の蒼のお嬢様は、織斑千冬先生の妹になっている”

 

最初聞いた時は馬鹿みたいな話だと思っていたけど

 

前に、織斑先生とフェイリールドさんが食堂で共に夕食を食べていたのを見かけた事がある

 

その時の先生の態度は、普通の生徒に見せる少し厳しい感じではなく

 

明らかに、家族を思いやるような優しさがあった

 

私にはーーーそれがただ羨ましかった

 

 「所でどうしたの?さっきからこっち見てたみたいだけど」

 

 「えっ・・・あっ・・・何でもありません」

 

と、すぐに背中を向けて個室に戻ろうとする

 

 「”本当に、何でもないの?”」

  

その一言で、私は足を止めた

 

その言葉は、何かが変化する前触れのような響きがあった

 

 「・・・・」

 

 「何かあるんだね。それと一言・・・」

 

 「?」

 

 「私の機体は、貴女の機体とは違う

 

  でも、似てはいるから”引用”はできなくても”参考”にはなるかもね」

 

と、システムカートリッジを出される

 

 「受け取って所有するも捨てるも、利用するもしないもあなた次第だよ」

 

私はそれをマジマジと見つめた

 

そこには、私が求めているものが詰まっている

 

だけど・・・それを受け取ってしまったら・・・

 

 「ごめんなさい・・・私は受け取れないです」

 

私は、追いつく事ができなくなってしまう

 

私が目指す、その背中に

 

 「そう・・・」

 

と、それを仕舞ってその人は整備室を出て行った

 

颯爽と現れて、颯爽と居なくなった

 

それはまるで、一瞬だけ感じる通り抜けただけの風のように

 

 

 

 

 

 「さて、今日もやる事無くしちゃった訳だし

 

  暇つぶしに探索にでも行って来ようかな」

 

と、私は一日をこの広い学園の探検に使う事にした

 

 「ちょっとそこの生徒、いいかしら?」

 

正面で、扇子を口元に当ててにっこり笑って道を塞いでいる人影があった

 

 「私に何か用ですか?」

 

 「いえ、あなたに演習を申し立てたかっただけよ。他意はないわ」

 

演習か・・・でも

 

 「別に構いませんが、そういう事を言うのはこの人形を使わないと駄目なんですか?」

 

 「あら、ばれちゃった♪」

 

と、目の前の人影が霧散して消え去った

 

それと同時にその後ろからもう一人の影が現れた

 

 「始めまして本体さん・・・じゃないや、同じ手使わないでください」

 

今度は後ろを振り向いて呼びかける

 

そこにもまた、同じように人影があった

 

今度こそ本体だ。さっきの人形のように不気味じゃない

 

 「あははっ!!またバレちゃった♪ここまで見抜かれるとおねーさんへこむなぁ」

 

パンッと扇子が開かれる。そこには日本語で”お見事”と書かれていた

 

 「そうは思えませんけどね。所で私に何の用ですか?」

 

 「さっき言ったように私の演習相手になって頂戴ーーー」

 

 「”嘘”を言わないで下さい」

 

私はその言葉をはっきりと切捨て、目の前の女性の瞳を見つめた

 

 「そんな事じゃ無いでしょう。もう一度問います・・・”何の用ですか?”」

 

この人の目は・・・明らかに何かを隠している

 

表には出さない、人に判らせない為に

 

 「確かに、私は嘘を付いているわ。なら、簡潔に言いましょう

 

  ”妹を虐めるのを止めなさい”」

 

・・・・・・・・・・・・

 

 「えっと・・・何の事かさっぱり・・・」

 

 「ふふ~ん?おねーさん嘘は感心しないなあ

 

  貴女、簪ちゃんを虐めているグループのリーダーでしょ?」

 

・・・・・・・・・・・・はい?

 

 「はい?」

 

まずいね。早速面倒で厄介な人違いをされたね

 

それに・・・簪ちゃんって事は

 

 「もしかして、更識 簪さんのお姉さんですか?」

 

 「それがどうかしたのかしら?」

 

う~ん・・・どうにかして誤解を解かないと・・・

 

流石にここではい戦闘って訳には行かないだろうし

 

 「う~ん・・・所でどこで演習をするつもりなんですか?」

 

 「第二アリーナよ。あそこなら私の権限で貸切にできるから。気兼ねなく戦えるわよ?」

 

どうやら、私に拒否権と会話の余地は与えてくれないみたいだ

 

 

 

 

 

 

 「さて、試合を始めましょうか」

 

と、戦闘アリーナの中央にて正面から向き合っているんだけどね

 

 「ていうか、専用機持ちだったんですね」

 

 「当たり前よ。おねーさんはこの学園”最強”なんだから。一応専用機は持っているわ」

 

う~ん・・・この人やっぱり人を見下ろしてるね。見下してるんじゃなく、上から見てるだけだけど

 

でも、少なくとも専用機持ちという事は

 

それなりの戦闘能力を保持していると言う事の証明だ

 

 「あら、貴女は生身のままでいいの?訓練機使用の許可は取ってあるのよ」

 

 「生身っていうか・・・じゃあーーー」

 

深呼吸して、呼び出す

 

 「いくよ。”サイファー”」

 

私のヘアピンが光を放ち始める

 

それから約一秒程の間に、私はストラティアを完全展開した状態になっていた

 

 「ちょっ・・・!?」

 

 「ああ、そういえば名前を言ってませんでしたね。

 

  私の名前は、第一学年一組所属。フィリア・フェイリールドです

 

  一応、専用機を預からせてもらっておりますので、よろしくお願いします」

 

 「・・・・・・」

 

何で無言なのかな?

 

まあいいや。誤解を解くためにはやる事は一つだし

 

 「戦闘を開始します。開始の合図はご自由に」

 

 「え、ええ・・・それなら、行くわよ!!」

 

先制攻撃としてその手に握るスピアで思いっきり突いてきた

 

 「よっと」

 

 ギィンッ

 

と、音斬の刃先を軽く当てて軌道を逸らす

 

そのまま押し切ろうとする先の動きが読めたので、リーチの範囲外まで距離を取った

 

 「へえ、打鉄にしては動きが軽いと思ったら

 

  高機動スラスター搭載の上位互換ハイマニューバモデルなのね。貴女の専用機って」

 

軽く返されて、その態度を見て私は気が付いた

 

この人は、私を試しているみたいだ

 

 「それがどうしたんですか?」

 

 「その機体のデータ、妹の機体にも使えるかなって」

 

・・・・う~ん・・・

 

 「でも彼女はそれを拒みましたよ?」

 

 「確かにあの子は拒むでしょうね・・・あら?あなたもしかしてその機体のデータを渡そうとした?」

 

 「どうでしょうね。少なくともあなたに言って得する事ではありませんね」

 

 「あらそう。それなら貴女に用は無くなっちゃったわね」

 

彼女が手に握る槍を空高く掲げたーーーすると周囲の空気が変わった

 

何かーーー強力な攻撃が来る!!

 

 「ミストルティンの槍ーーーー発動!!」

 

周囲の空気が渦を巻き始める

 

そして、彼女の装甲を形成していた水の装甲が全てその槍の周りに集約される

 

それを見て、、私が直感的に感じた”身の危険”

 

思考が切り替わるーーーブルーゾーンから、レッドゾーンへと

 

私の本能がーーー相手を殺す為の本能が

 

私を、あの時と同じように・・・”赤黒く”染め上げていくーーーー

 

制御された”殺意”を、私はその身に纏わせていく

 

 

 

 

 

 ドゴォォォォン!!

 

 

 

 

 

私のIS・・・ミステリアス・レイディの最大威力を誇る攻撃 ”ミストルティンの槍”

 

その技はISの装甲部に使用されているナノマシン配合特殊水の全てと引き換えに

 

ありとあらゆるものを破壊するだけの威力を引き出す大技である

 

 「あら、意外にあっけなかったわね。言う程でもなかったわね”見えない蒼姫”」

 

私の最大火力の大技を直撃させたんだもの、無傷なんてありえないわ

 

 「私の大切な妹に嫌がらせをしてたんだもの、報いとしては当然よ」

 

と、相手が居た場所に目を向ける

 

そこには影が一つ、周りに装甲が砕け落ちているあたり

 

もう戦闘は不可能なダメージを負っているわね

 

そう思って近くに歩み寄ろうとした時、空気が鉛のように重くなった

 

そして、その中央にある影の姿が視認できる程視界が回復した時

 

 「ーーーーー」

 

私の背中が、一瞬にして凍りついた

 

中央で、何もせずにただ立っているだけのその相手は

 

私をただ見据えていた。

 

その視線は、試合云々で必要な視線ではなかった

 

その視線はーーーーただ純粋で冷酷な”殺意”のみを含んでいた

 

先程の麗しい蒼色の瞳ではなく、異常な程に紅に浸されたその目の色

 

髪の毛も、薄暗く赤を混ぜた不気味な色をしていた

 

私は、逆に動けなくなってしまった

 

ただその視線を受けて、私は感じたーーー人の持つ目の色じゃない

 

 「ーーーエンゲージ」

 

その言葉と共に、視界から消え去る敵機

 

鳴り響く接近アラート

 

ハイパーセンサーの警告に私の反応が間に合わない

 

 バキィィィン!!

 

 「っ!?」

 

槍を持っていた右腕部ユニットが、一瞬で砕け散った

 

ダメージ警告音が荒々しく鳴り、警告表示が次々と表示される

 

ーーーああ、そういう事か

 

私はーーー相手を見誤った

 

第一に、専用機持ちと知っているにも関わらず闘いを挑んだ事

 

私は、学園最強という名前に酔っていたのかもしれない

 

槍を破壊され、既に先程の攻撃のせいで全ての特殊装甲を失った私の機体に防御力は無い

 

あの技は、その一撃のみで勝負を決めるという絶対条件の下で使用しなくてはならない

 

その攻撃で相手が戦闘不能にならなかったのなら、その時点で私の負けよ

 

装甲を破壊され、回避しようと思ってもスラスターを撃ち抜かれ

 

逃げることも叶わず、私は空から蹴り落とされた

 

 ズドォォン・・・

 

地面に仰向けに倒れた私はそのまま目を開いた

 

太陽を背にしていたのは・・・人の形をしてISを装備した”殺意”そのものだった

 

 「ばけ・・・もの・・・」

 

そう呟いた瞬間、レーザーが私の額のセンサーを砕き、警告がオーバーダメージを表示する

 

私は専用機を強制解除させられてしまった

 

開始約五分の戦闘時間

 

その五分間が、私にとってはもう二度と味わう事をしたくない”地獄”の五分間だった

 

 

 

 

 「ーーー目標の無力化を確認・・・さて、演習も何もなくなってしまいましたね」

 

 「・・・・・・」

 

無言だ・・・まあ、そりゃそうだろうね

 

私は、あの時”本気”でこの人に怒ったんだからね

 

 「何を思おうがあなたの勝手です。私を破壊者と呼ぼうと、私を人殺しと呼ぼうと

 

  私は一向に構いません。ただ、一つ間違いを訂正させて下さい」

 

 「・・・・?」

 

 「私は、今日始めて簪さんと会いました。いじめや嫌がらせの件については知らないです」

 

私は、その倒れた人に手を差し伸べた

 

 「何故私がそう思われたのかは窺い知れないですけど、人違いには変わりありません

 

  以後、他の人に対してこんな勘違いを起こさないようにしてください

 

  あ、そのいじめの当事者はこってり絞って捨て去ってもらった方が気分はいいですけどね」

 

ま~た一方的に話終らせて帰るしかないかもしれないね

 

質問攻めにあうから面倒くさい

 

 「・・・あなたは」

 

 「?」

 

 「あなたは、本当に人間?」

 

 「人間以外に何に見えるって言うんですか?」

 

 「私には・・・”鬼神”に見えたわ」

 

う~ん・・・

 

 「当たらずとも遠からず?ですかね」

 

結局の所逃げられないのかもしれない

 

私が背負ってしまった、”鬼神”というもう一つの自分から

 

 「・・・いえ、なんでもないわ。忘れて頂戴」

 

その人は立ち上がり、そして再び正面に立たれる

 

 「今度は・・・またの機会に」

 

 「そうですね・・・今度は、お茶会のテーブルの上でゆっくりと」

 

・・・したくないなぁ

 

こんなユラユラした人とは二度とやりあいたくないや

 

 

 

 

 

    ~翌日~

 

 

 

 「・・・と、言う訳だから。物品その他諸々を買出しに行く」

 

はい、織斑先生からのディナーのお誘いです

 

・・・・なんて事はない。ただ買い物の手伝いをする程度のご指名だ

 

 「でもこのリスト・・・あっ」

 

 「察したな。これ以上の言葉は要らんだろう・・・」

 

駄目だこの人。軽く認めたくないって感じの雰囲気出してる

 

この紙にリストアップされていたのは主にーーーというか、整理用具だ

 

この超カリスマ度高い先生、意外な事に整理整頓は苦手なご様子・・・言ったら殺られるね

 

 「行くのはいいんですけど・・・フィアはどうしましょうか?」

 

 「一緒に連れて行く。あの子にもたまには外の空気を吸わせてやらんとな」

 

 「ありがとうございます」

 

 「それと、明後日よりお前の待遇を変更する。通達通りの待遇になる」

 

織斑先生の言う私の待遇の変更とは、単純に私の居住区が変更になるってだけの話

 

第一学年寮から変更されてーーーー第一教員生活区域の家一軒になる事が判っている

 

 「それにしても、家ひとつ丸ごとくれるって太っ腹ですね」

 

 「何を言ってるんだ?。お前があそこの家を買い取ったのだろう」

 

あれ?そうだっけ?

 

ああ、そういえばそうだった

 

事の発端は、先日の昼食時の会話にあった

 

 

 

 

 「フェイリールド、お前はこれからどうやって生活するんだ?」

 

自室、丁度朝のゴタゴタが片付いてからの織斑先生の家庭訪問?である

 

丁度お昼時だった為、織斑先生の分の昼食も用意・・・っていうか

 

パスタだったから適当に茹でて適当にソース作って終りっていうね

 

 「と、言われましても・・・」

 

 「フィアの事もある。二学期に入るしここでこのままの生活を送るのはほぼ不可能に近いだろう」

 

そうなんだよね

 

二学期が始まれば、実家に帰っている生徒がこの学園に戻ってくる事となる

 

フィアの存在が知られれば、私がここに居づらくなるのは目に見えてるし

 

織斑先生にとって、それだけは絶対に避けたい事態らしい

 

 「そこでだ。本学園にある一般教員住宅の一つを借りようと思う」

 

か・・・借りるって・・・

 

 「それって・・・織斑先生名義でですか?」

 

 「それしか無いだろう。お前の懐にはどのくらいあるんだ?」

 

 「えっと・・・確か・・・・」

 

ラリーから預かった私の通帳にあった記載って確か・・・」

 

 「確か・・・5億くらい?」

 

 「・・・・それは日本円でか?それとも・・・」

 

 「もちろん米ドルです」

 

傭兵活動時の報酬とか確認する暇がなかったからなぁ・・・あまり執着もなかったし

 

 「それなら問題ないな・・・(桁が大富豪並みなのは気にしたら負けだ負け)」

 

 「書類関係は?」

 

 「私が済ませておくから心配するな」

 

・・・・・

 

 「織斑先生、一つ聞いていいですか?」

 

私は、前から気になっていた事を聞いてみる事にした

 

 「何だ?」

 

 「何で・・・そんなに”親切”なんですか?」

 

そう、やけに親切すぎる

 

普通なら、ここまで入れ込む必要なんて無いはずだ

 

それなのに、織斑先生は私の処遇の手配や諸事情の揉み消し

 

更にはフィアの世話まで手伝ってくれる

 

私は、そこに疑念を抱かざるをえなかった

 

 「・・・そうだな・・・正直な話、私にも解らないんだ」

 

 「・・・・・?」

 

 「いうならば・・・お前が”真直ぐ”だからだろうな」

 

どういう意味なのだろうか?

 

 「とにかく、私はお前の面倒を見ると決めたんだ」

 

 「あっハイ・・・有難うございます」

 

なんか引っかかったままだね・・・

 

まあ、だから私は織斑先生に付いていくし、なるべくなら手伝おうと思う

 

 「さて、できましたよ~。と、言ってもそんなに豪華なものじゃありませんけど」

 

 「ごはん~」

 

 「はいはい。いい子は先生のお膝の上で待ってね」

 

 「!?」

 

 「せんせ~♪」

 

フィアが織斑先生の膝の上に座る

 

そして相変わらず困った顔をする先生を見るのは飽きないね

 

普段の刺々しい感じじゃなくて、こっちの方が絶対先生の本質だから

 

 

 

 

 「(・・・実は妹のように思っているとは口が裂けても言えんな)」

 

 

 

 

 「と、言う訳で織斑先生のお部屋掃討作戦を開始します」

 

 「お、おう・・・よろしく」

 

買い物を終え、そして私は織斑先生の寮監室に突入していた

 

この荒れ果てた足の踏み場の無い場所を更地にしてスッキリさせてあげないと

 

 

 ~それから約三時間後~

 

 

 「よし、完璧ですね」

 

見違える程スッキリした部屋を眺めながら、その際に発生したゴミ、洗濯物、書類その他諸々を

 

紙袋に畳んで詰め込んだ

 

 「これだけの量の服が余っていたのか・・・丁度いい、家に持って帰ろう」

 

 「家って言うと・・・織斑先生のですか?」

 

 「それ以外にどこがあると言うんだ?」

 

 「・・・・・」

 

ちらっと、私は織斑先生の持つ紙袋に目を向ける

 

 「・・・大丈夫だ。家の方は一夏が管理しているからな」

 

 「つまり織斑君に整理整頓を一任していると?」

 

 「・・・・・」

 

しっかりしましょうよクラスメイトのお姉さん

 

 「先生、何か言う事はありますか?」

 

 「私は悪くない・・・」

 

 「いや反省して下さいよ!?」

 

なんか・・・織斑君が妙に生活的な理由が解った気がする

 

こうして、荷物運び兼織斑宅視察に行く事になった

 

 

 

 

 「ここだ」

 

連日と同じように、IS学園を離れて住宅地に入って

 

そして歩く事数十分、到着した場所に建っていたのは普通の家だった

 

 「ここですか・・・住みやすそうな家ですね」

 

 「そうか?」

 

 「私が住んでいた家は航空基地の寮でしたからね」

 

そこと比べたら、こういう家は少し憧れてしまうんだよね

 

正直、私が過ごしていた場所は家とは言えないかもしれないけど

 

 「これからお前が住む家も同じようなものだ。それにしても騒がしいな」

 

今家の入り口の扉の前に居るんだけど、中から何やら人が話し合ってる声が聞こえる

 

 ガチャ

 

おぅっ!?この人普通に入っていったよ!!

 

まあ、織斑先生の家だから当たり前か・・・

 

とりあえず後ろから付いて行こう。

 

 「おじゃまします・・・っと」

 

確か日本の家って土足厳禁なんだよね

 

そこの段にあがる前に靴を脱いで上がらなきゃいけないって聞いた事ある

 

そうして靴を脱いで廊下を進んでいくと・・・

 

 「騒がしいと思ったら、何だお前達か」

 

織斑先生が部屋の前で立ち止まっていた

 

その部屋を覗いてみると

 

 「あれ、皆お揃いでどうしたの?」

 

何時もの面子が居た・・・フルメンバーで

 

 「お、フィリア久しぶりだな。元気にしてたか?」

 

 「あ、久しぶり織斑君」

 

なんか・・・織斑先生の家のはずなのに、そこには学園と同じような

 

少し違うような・・・でも、そこにある和やかな空気は

 

確実に、ここにしかない空気なんだなと私は思った

 

 「荷物をすまんなフェイリールド。なんだったらここで一息付いて行くといい」

 

 「そうさせてもらいますが。一応、(先生の)部屋を確認させてくださいね(ニッコリ★」

 

 「・・・・・・・・・・勘弁してくれ(何だこの笑顔の圧迫感は・・・?」

 

ハイ怪しい、ちゃんと確認させてもらいますね★

 

 「それじゃあ、いってらっしゃい。先生」

 

 「あ、ああ・・・行って来る・・・(何故私は教え子に怯えているんだ!?」

 

そうして、先生を送り出す。

 

玄関の扉が閉まる音と共に、私は踵を翻して織斑君に質問する

 

 「織斑君。先生の部屋は?」

 

 「階段あがってすぐ右の部屋だ。でも入るなよ、千冬姉に殺される」

 

 「ああ、大丈夫。荷物置いてくるだけだから」

 

と、階段を駆け足で上っていく

 

そして・・・その部屋の扉を開けた

 

・・・織斑先生

 

 「・・・・・・今度御礼にセシリアに渾身の創作料理を作ってもらおう」

 

トイレ直行待ったなしのプレゼントをしてあげよう

 

それからすぐに階段を下りて、そしてリビングにてお茶を嗜んでいた

 

 「あ、もうこんな時間だ・・・」

 

たかだか三十分居ただけだけど。流石にフィアを一人置いておく訳にはいかないよね

 

 「それじゃあ私は学校に帰るね。ちょっと待たせてる人が居るから」

 

 「おお、そうか。また暇な時でも来いよ」

 

 「そうさせてもらうね」

 

玄関で、靴を履いて振り向く

 

 「お邪魔しました。お茶ありがとう」

 

 「いえいえ」

 

そうして、私は織斑宅を出た

 

気が付いた時、玄関で私は何故か涙を流していた

 

理由は解らないけど・・・私は泣いていた

 

 

 

 

 

 「早いな~あいつ・・・」

 

見送りをしようと玄関からすぐに出たが、そこにフィリアの姿は無かった

 

 「ん?雨でも降ったのか?」

 

足元に、雫が落ちた痕があった

 

しかし、その痕はその一点しか無かったので雨ではないだろう

 

それを見て俺はよく判らない切なさを感じて家に戻った

 

 

 

 

 

   同時刻ーーー決して世間には知られる事のない見えない”戦争”が

 

 

       静かに、彼女達の頭上に暗雲を運びつつあった                    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    どーも、作者です    

 

    こんな設定でいいものか考え物ですね・・・物凄く

 

    という訳で、夏休み編終了になります

 

    次回、二学期始動!!・・・・所で、原作はいつ発売なんですかねぇ・・・IS

 

    ストーリーが原作を追い抜いた場合、執筆続行か執筆停止か未だ決めきれておりません

 

    その辺の意見感想も募集しております    

 

    よろしくお願いします

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 


 
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