翌日、正式に権限の譲渡を伝えられた一刀は報告のため一度洛陽へと旅立つ・・・はずだった。
しかし、成都を出る直前に一刀は突然意識を失い、倒れた。
医者には原因不明とされ、城に運び込まれた一刀は半日経ってようやく意識を取り戻したのだった。
・・・・・・
部屋には寝台に横になっている一刀と、椅子に腰掛けている干吉の姿があった。
「ん~~・・・・・・疲れてたんかなあ?」
「はて?気づいていると思っていたのですが、とぼけてるんですか?」
「・・・・・・最悪の想像はしたけど、やっぱアレか?」
「おそらく」
「一応聞いとくが、お前と左慈は何か対処法を・・・・・・」
「残念ながら」
首を振る干吉。
「そうか・・・・・・となると、華陀が頼りだな」
「これからどうします?正直、その状態で長旅をするのは危険だと思いますが・・・・・・」
「だな。とりあえず、麗羽の所と洛陽に使者を送ってくれ。麗羽には現状をそのまま伝えて、洛陽には蜀は俺が受け継ぐ事を了承したと伝えとけばいいだろ」
「分かりました。すぐ使者を送りましょう」
「頼む」
干吉は部屋を出て行き、一人になった一刀は呟いた。
「このまま終わってたまるかよ・・・・・・」
一刀からの使者から文を受け取った麗羽たちは、流石に動揺していた。
ちなみに、思春は一羽を寝かしつけているのでこの場にはいない。
「・・・・・・」
麗羽は爪を噛んで、必死に激情を抑え込んでいた。
「風がここに残って代行を務めますから、行って来てもいいのですよ?」
「・・・・・・お願いします、と言いたいところですけれど、一刀さんに猪々子さん、斗詩さんに加えて私まで抜けてはここの施政が滞ってしまいますわ」
「ねえ、呉から誰か来てもらおうか?」
「それもどうかのう?こっちにおる二人を除いて記憶が戻っているのは明命だけじゃからのう・・・・・・」
「華陀ちゃん、早く帰ってきてくれないかしらん」
そう貂蝉が呟いた時だった。
扉を開け、兵士が部屋に飛び込んできた。
「か、華陀様が戻られました!!」
「「「「「!!」」」」」
それを聞くや否や、その場にいた者達は部屋を飛び出していった。
・・・・・・
華陀を迎えに行った面々が目にしたのは、兵士に肩を貸してもらいながら満身創痍の状態で歩いてくる華陀の姿だった。
「も、戻ったぞ・・・・・・」
「華陀ちゃん!その姿はいったいどうしたの!?」
「お、俺の事より、一刀はどこに?」
「お兄さんは・・・・・・蜀です」
「いいところに帰ってきてくれましたわ!一刀さんに発作が起きましたの!帰ってきたという事は何か対処法を見つけたのでしょう!?」
抑えていたものが決壊してしまったのか、麗羽は悲鳴にも近い叫びを上げて華陀に詰め寄ったが、卑弥呼に阻止された。
「そ、そのとおりだ。ある物を取ってきた。それを定期的に一刀に食べさせれば、存在の消失という事態は免れるだろう・・・・・・ぐっ!」
そう言うと、華陀はガクリと崩れ落ちた。
「華陀ちゃん!」
「だぁりん!」
即座に華陀を支える貂蝉と卑弥呼。
「はやくだぁりんを看病せねば!貂蝉!」
「合点!」
二人は華陀を抱えて猛スピードでその場から走り去った。
「「「・・・・・・」」」
しばし唖然としてしまう麗羽、小蓮、風。
「あ、あの・・・・・・華陀殿から預かっているものが・・・・・・」
そう言った兵士の手には、大きな袋があった。
そして、その袋の中ではうぞうぞと何かが蠢いていたのであった・・・・・・
一週間後
貂蝉は例の袋を背負い、全速力で一刀のいる成都へとやってきた。
「と、いう訳で華陀ちゃんが取ってきたものはアタシが持ってきたわん」
「・・・・・・ご苦労さん。で、華陀は大丈夫なのか?」
「疲労困憊だったけど大きな怪我はなかったみたい。今は卑弥呼が看病してるはずよん・・・・・・アタシもご主人様を看病してあげようかしらん?」
「早い所そのブツを見せてくれや」
「んもう!つれないんだから!!」
ぶつぶつ言いながら、貂蝉は大きな袋に手を入れ、中身を取り出した。
「アンギャーーーーーーーー!!」
その中身を見て、一刀は大きな悲鳴を上げた。
「ギチギチ・・・・・・」
「パ・・・・・・パ・・・・・・パンデモニウムじゃねえかーーーーーーーー!!」
そう。その物体は、まるでベヘリットのような顔に、粘液でヌルヌルの昆虫の身体を併せ持った妖精の幼生パンデモニウムだったのだ!!
「あら?知ってるのん?華陀ちゃんの話では式神にとってポピュラーなスナック菓子みたいなものだって言ってたけど、式神がこの世に存在するための力、それを補給するのに最適な食べ物だそうよん♪前の外史でご主人様が消えちゃったのは存在する力がどんどん失われていった結果だから、それを定期的に補充できればオッケーってこ・と♡あ、心配しなくても生息地は分かってるから数は問題ないはずよん♪」
「ふ、ふざけんじゃねえ!嫌だ!俺は絶対に食べんぞ!!」
「ご主人様。また消えてしまってもいいの?」
「よくない!しかしパンデモニウムだけは食わん!」
「ギチギチ・・・・・・」
「だって見てるじゃねえか!こっちガン見じゃねえか!?」
そう言った直後、ガシ!っと、一刀はいつのまにかやってきていた左慈と干吉に両腕をつかまれ拘束されていた。
「て、てめえら!何のまねだ!?」
「好き嫌いはいけませんよ?北郷一刀」
「そのとおりだ。これも貴様のためだ・・・・・・くくく」
「笑いが漏れてんぞ左慈!!」
「ナイスよ二人とも。それじゃご主人様。生で食べにくいとは思うけど、口を開けて~~~」
「んがぁ~~~~~!!」
ぶちゅ~~~~~~~~・・・・・・
それから
半年に一度、定期的にパンデモニウムを食べさせられた一刀は
食べるたびに最低五日は廃人同様になってしまったのだとか・・・・・・
合掌
どうも、アキナスです。
一刀君の大きな問題が片付いたようです。
もっとも、代償は小さなものでは無かったようですが(笑)
というか、あの生き物を出すとか我ながら何考えてたんだろうか・・・・・・
それでは次回に・・・・・・
「スペシャルデラックスゴールデンデリシャスハイパワーマグナムボロットパーンチッ!!」
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凄く重要な設定だったはずだったんだが・・・・・・