No.690169

Midnight dancer

ツイッタお題の『RTされた分だけ虎徹さんに万札を挟む』というタグに7RT頂いて書いたものです。

こちらでの初投稿です。どうぞよろしく。

2014-05-29 21:28:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:539   閲覧ユーザー数:539

 

事の発端はオフ前日に観た、1本の映画だった。

バーナビーの家で、たまたま映画専門チャンネルで流れていたのを虎徹が見つけ、何となく最後まで観たのだが。

「な~んか、予告でイケメンてんこ盛りな映画だな、と思ったら」

「男性ストリッパーが主役だとは思いませんでしたね」

落としてあった間接照明を点け、映画が始まる前から既に飲む体勢だった2人は、空だったグラスにワインを満たした。

「ストーリーそのものは面白かったですね。訳あって男性ストリッパーをしている主人公と、1ファンにすぎなかった女性とのラブストーリー…ヒロインは人気女優のJだったし、若手俳優の演技も悪くない。彼らの出世作になった、と番組案内に書いてましたよ」

好物のロゼをゆっくりと含みながら、バーナビーは感想を述べる。すると虎徹が、つまみの皿から生ハムを取りながらこう言った。

「でもこれ、どっちかって言えば女のほうが喜ぶ内容だよな?男は別に男に脱がれたからって嬉しくねぇし。脱いでる男に女がいっぱいドル札突っ込んでたのは羨ましかったけどさ」

「それはそうですけど」

塩の効いた生ハムの上からごくごくとロゼを飲み干した虎徹は、もう1度2つのグラスを満たし、今度はゆっくりと美味そうに飲んだ。バーナビーは、注がれたロゼの色を見つめながら悪戯っぽい表情を浮かべる。

「僕は、なかなかセクシーだと思いましたよ」

虎徹もにやりと笑った。

「んだよ、浮気者」

「冗談でもその言い方やめてください」

「煽ったのお前だろ」

「…映画の感想に嫉妬を?」

ワイングラスの陰で蠱惑的に微笑むバーナビーを見て、虎徹はグラスを置いて立ち上がった。

「俺は嫉妬深いんだよ、バニーちゃん」

するり、と歩み寄ってきた彼の手が、バーナビーの頬に触れる。

「シュテルンビルトの全市民にも嫉妬しちゃうほう、虎徹です――ってな」

「そんな必要ないのに」

「それでもしちゃうの。…バニー」

虎徹の手の平に頬を寄せながら、バーナビーはくすくすと笑った。彼の座っている椅子の端に腰かけた虎徹は、その手で彼の顎を捕えた。

「煽った罰。キスして」

くすくす笑い続けながら、バーナビーは愛用の椅子の背から身を起こす。片手でグラスを持ったまま、残る片手を虎徹の首にまわした。自然に近付く翠の瞳と形のよい唇を見ながら、虎徹も微笑んだ。

唇が重なる。

絡み合った互いの舌に残るロゼの味を味わい、残り香に酔う。長く長く――その酔いに、軽い目眩と疼きを感じる頃になって、ようやく2人は離れた。

「くっくっ…エッチなキス」

満足気な口調とは裏腹に、虎徹はにやりと笑った。その笑みの獰猛さに息を飲む暇もなく、バーナビーの手からグラスがもぎ取られ、次の瞬間にはどさりと床の上に押し倒された。

「嫉妬をさせた清算はしたつもりですが?」

テーブルにグラスを置くのももどかしく、虎徹が自分のTシャツに手をかけるのを見て、バーナビーはまたくすくす笑い始めた。

「んー、足りなくなった」

「僕は別に、あの俳優をセクシーだと言った覚えはありませんよ」

のしかかってくる虎徹の体重を受け止めながら呟くと、虎徹の手が止まった。

「んじゃ、何がセクシーだったわけ?」

「置き換えてみたんです。あなたと、あの俳優を」

「…えっ」

ゆっくりと身を起こしたバーナビーの指が、虎徹のグリーンのシャツの胸に突き付けられた。

「あなたが、あんな風に…ライトを浴びて、扇情的に服を脱ぐところを想像したら、急にセクシーに感じたんです。ストリップのシーンがね」

それを聞いて毒気を抜かれたのか、虎徹は中腰のままで固まった。バーナビーはその間にするりと彼の下から抜け出して、椅子の上に戻ってしまった。

「おっ前…そんなこと考えてたの」

驚き混じりの呆れ声で言い、自分の顔を見た虎徹を見て、ふと思いついたことがあった。

「そう言えば、もうすぐホワイトデーですよね」

「ん?」

「見たいな」

再びワイングラスを手に取り、ロゼを1口飲む。

「虎徹さんが脱ぐところ」

「はい?」

「それでいいですよ、バレンタインデーのお返し」

「…」

少々目を座らせて絶句した虎徹に挑戦的な視線を向け、バーナビーは言った。

「あなたのストリップが見たい」

「…バニーちゃん、酔ってる?」

「ええ、そりゃ少々」

「ナマ着替えならほぼ毎日お見せしてますけど?」

床の上に胡坐をかいた虎徹は、何だか照れ臭くなってガリガリと頭を掻いた。

「ばさばさガサツに脱ぐあなたも好きですけどね。そんなのじゃなくて」

腕組みをして椅子の上から見下ろす翠の視線に、何故か胸が疼く。

「あくまでもストリップです。音楽つきで、扇情的に、官能的に。見てるだけで、僕が果ててしまいそうなほどに」

「成程ね。おじさんのフェロモンと視覚効果でウサちゃんのスイッチ入れろってか」

「勿論、小道具も用意しますよ」

バーナビーは立ち上がり、有線のスイッチを入れた。スローで甘いサクソフォンのメロディが、静かだった部屋に流れ始める。

「こんなのはどうです?」

振り向いたバーナビーが、手の中で何かをばらりと広げて見せた。

「お前…何でそんなの持ってんの?」

思わず、半ば笑いながら虎徹はそれを指差した。

バーナビーが持っているのは、数枚の1万円札だった。言うまでもない、シュテルンビルトではなく日本の紙幣。扇のように広げたそれで顔を仰ぎながら、彼はさらりと言ってのけた。

「外貨は、常に何種類か手元に用意しています。いろいろ役に立ちますから」

「はぁ。流石というか、何というか」

「あなたに心を動かされる度に、僕はこれであなたを飾ります。さっきの映画のように」

10枚近くある万札の扇で口元を隠すようにして、バーナビーはにやりと笑う。

「…いかがです?」

やれやれ、と虎徹は肩を竦めた。

「そこまですっか、お前も」

「たまにはこんな遊びもいいでしょう?」

「わかったよ」

くっくっと喉で笑いながら立ち上がり、虎徹はネクタイを締め直した。ついでにわざわざハンチングまで被って、自分のグラスに残っていたロゼを一気に飲み干した。

「確かに、バレンタインもチョコ用意しなかったし、その分ホワイトデーにはお返ししなきゃとは思ってたからな。お前がそれでいいってんなら…リクエストにお応えしましょ?『お客様』」

虎徹の指が、バーナビーのリラックスチェアを指差した。

「どうぞこちらで」

ちょうどBGMが変わった。先程よりはややアップテンポだが、ムードのあるメロディが流れ始める。

バーナビーが座ると、虎徹はゆったりとした動作でグラスを取り上げ、ロゼを満たした。

そのグラスを受け取り、軽く上げて見せたのを合図に、虎徹はくるりとバーナビーに背を向けた。そのまま、特に音楽に合わせるでもなく無造作に、だがゆっくりと窓際まで歩いて行き、『1000万Sドルの夜景』と評されるシュテルンビルトの夜景の前で立ち止まった。

虎徹の左手が上がる。その手には、照明のリモコンが握られていた。少し驚いて、バーナビーは眉を上げた。と思うと、虎徹の指が微かに動いて、室内の全ての照明が落ちた。

真っ暗になった窓に夜景の光が浮き上り、その光が窓際に立つ虎徹のシルエットを浮かび上がらせた。

思わず息を飲む。

虎徹のボディラインは、信じられないくらいに細い。だが、見た目とはかけ離れて、彼は華奢とは程遠い。がっちりと張った肩、厚い胸。筋肉の筋が浮き上るほどに締まった腰。バーナビーと比べれば尻はやや薄いし、脚も細いが、ナチュラルで力強い。

そんな彼のシルエットは、着衣のままでも美しく、色香に満ちていた。それだけでも欲を掻き立てるに充分だった。だが、折角思いついた趣向だ。もっと楽しまなければ。急に覚えた喉の渇きにロゼを1口飲み、虎徹の動きを見守った。

流れ続ける音楽と夜景の中で、ようやく虎徹が振り向く。彼は、まずハンチングを手に取った。立った場所から1歩も動かずに、それを部屋の隅に放り投げた。その手の指が今度はネクタイにかかる。

見慣れた動作。だが、いつもよりゆっくりとした動きで、ぐい、と大きく緩める姿は、明らかにそれと意識して強調されていた。うっすらと笑みを湛えて解いたネクタイを引き抜いた彼の眼は、その動作がバーナビーに影響を及ぼすことを確信して、微かに光っていた。

――彼は知っている。言ったことはないけれど、僕が、彼のネクタイを解くところを見るのが好きなのだ、ということを。

虎徹のネクタイは床に落ち、バーナビーは立ち上がった。虎徹に歩み寄ると、1枚目の札をシャツの胸ポケットに差し込んだ。虎徹がにやりと笑う。

「愉しんでる?バニーちゃん」

「まだまだ。これからですよ」

わざと素っ気なくそう言って、バーナビーは椅子に戻った。背もたれに寄り掛かって座り直すと、虎徹が呟いた。

「まずは1枚、ってか」

少し仰向き、溜息のような笑みを漏らして、彼の指がシャツのボタンを外し始めた。

途中まで外して、また彼の手は止まる。その姿でテーブルまで戻ってきた彼は、ロゼのボトルを取り上げると、グラスに注がずに直に飲んだ。喉仏が動き、口元から溢れたロゼが滴って光る。

大して残っていなかったロゼを飲み干して、虎徹は手の甲で口を拭った。野性味たっぷりの動作に見惚れていると、彼は更に空になったボトルを持ち上げ、瓶の首の部分をべろりと舐め上げた。舐め上げつつ、指でボトルの形を確かめるようになぞって下りる。そしてその目が、再び確信を持ってバーナビーの目を捕えた。

ふ、とバーナビーは微笑む。彼の動作は、セックスの時の動きそのものだった。見ると言うよりも、刻み込まれた身体がその動きを覚えている。搔き起される火種に抗う術はなく、バーナビーの膝の上で握った拳の内側は、いつの間にかじっとりと湿っていた。その手をこっそりとTシャツで拭い、2枚同時に札を彼の胸ポケットに入れる。入れながら囁いた。

「随分と直接的だな」

「いいじゃん。エロいの、お望みだろ?」

ボトルをテーブルに戻しながら、虎徹も囁く。

「2枚同時、か。俺が全部脱ぐまでもつのか?バニー」

「勿論。どうぞ続きを」

また椅子に納まったバーナビーに再び背を向けながら、虎徹は少しずつ沸き上がる欲を隠そうともせずに笑った。犬歯が剥き出された、肉食獣そのものの笑みで。

(こうなったら、俺も楽しみだわ。どのくらいであいつが音を上げるか…それとも、俺が先に我慢できなくなるか、だな)

開き直った。動きが大きくなる。相変わらず意識してないように見えるのに、流れる音楽と虎徹の動きがぴたりと同調した。

今までは多少照れもあって、虎徹の動きは控えめだった。だが、窓際の光の雨の中に戻った虎徹は、残りのボタンがちぎれる勢いで自分の身体からシャツを剥ぎ、一気に背中を晒した。

彫りの深い、広い背中の蜜色の肌が、夜景の光に縁取られて輝いた。その姿で両手を上げ、彼は目の前の壁に寄り掛かる。伸びをするような動きで腰と背中を大きくくねらせ、まるで愛撫するように壁を撫で下ろし、しなだれかかった。

バーナビーの喉が鳴った。彼の肌の上で踊る光が、その光で輝く肌が眩しかった。壁を撫で下ろした掌が、たった今自分の肌を這ったような錯覚さえ覚えた。身体は、既に欲を主張し始めている。

シャツを脱ぎ捨てた虎徹がベルトに手をかけながら近付いてくると、バーナビーの身体は震え始めた。すぐにも、彼を味わいたい。素肌に歯を立て、汗を舐め、互いに貪りつくしたい。

ベルトを引き抜きながら自分の前に立った虎徹を見て、バーナビーは無意識に唇を舐めた。

「凄げぇ、バニーちゃん。俺のこと取って喰いそうなツラしてるぜ、今」

どこか嬉しそうに、虎徹が言った。そんな彼に笑みを返しながら立ち上がり、4枚目の札を彼の胸の素肌に貼り付けた。その札を指でなぞりながら、バーナビーは言う。

「そうですね。取って喰いたい気分です」

すると、虎徹はその札を取って、くるりと器用に細く丸めて耳の上に刺した。バーナビーは吹き出した。

「お札をボールペン扱いするなんて」

「でも、鋏むとこなくなるぜ」

「勿体ない。せっかくの雰囲気が台無しですよ。とてもエロティックで素敵だったのに」

虎徹は、それを聞いて満足そうに目を細めた。ボトムが床に落ち、それを足で蹴飛ばした彼は、もうボクサー1枚だ。

「俺ってそんなに色っぽい?」

そう言った虎徹は、立ったままのバーナビーに手を伸ばした。そして、ポールダンサーがポールに絡みつくような動きで、バーナビーの身体に片手と片足を絡みつかせてきた。

「…あ」

「どうなの?バニー」

ずるい、と心の中で呟きながら、バーナビーは再び息を飲んだ。

「ええ」

応えた途端、我慢ができなくなった。虎徹の胸に手を這わせ、掠れた声で呼ぶ。

「虎徹さん」

だが、虎徹はするりと離れてしまった。

「まぁだ、だよ」

またゆっくりと窓際に戻った彼は、床に置いてあった長方形のクッションを手に取った。どうするのか、と訝しげな表情になったバーナビーの前、眩い夜景の光の中で、虎徹はそれをいかにも愛しげに抱き締めたのだ。

(また、この人は何を――)

訝りながらも、バーナビーは今度こそ、彼から目が離せなくなった。

彼の手がクッションの表面を這い、愛撫する。抱え込むようにして床に寝そべる。そっと口付け、額を擦り付けて…

同じだった。これは、いつも自分が彼にされている愛撫と同じだ。それを見せられて、バーナビーの理性は今にも吹き飛ばされそうだった。

 

虎徹が顔を上げた。爛々と光る金茶色の瞳が、バーナビーに問いかけた。

 

『俺にこうされたい?バーナビー』

 

Tシャツを脱ぎ捨てながら、バーナビーは大股に部屋を横切った。

慌てて虎徹が手放したクッションを蹴り飛ばし、彼の上にのしかかる。そして、手の中でくしゃくしゃになった残りの3枚の札を、彼の身体に唯一残ったボクサーの中にねじ込んだ。同時にそのボクサーを彼から引き剥がしながら、欲望でざらついた声で訴えた。

 

「抱いて。すぐに」

 

虎徹の腕がバーナビーを捕えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お客様、ご満足頂けましたか?」

「はい…」

「次はバニーちゃんがやってね」

「…僕は高いですよ……」

「な、何枚くらい?」

「10枚で」

「何だ、楽勝じゃん」

「100Sドル札です」

「無理」

 

 

 

 

 

※7RT、ありがとうございました!!

 

 
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