No.689951

〜なんとなく 壊れている自分 Vol.6〜

夢で見た事を書いている詩集…と言うより散文集です。前の詩集に10編書いたので次の巻に移動してみました。
新しい詩をトップに、以下、下に行くにつれて古い詩になるように並べ替えてます。

◇超短編集のみ、ブログにて展開しています→ http://blog.livedoor.jp/gaeni/archives/cat_1213008.html
◆Vol.8はこちら→ http://www.tinami.com/view/757600

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2014-05-28 20:11:25 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:1042   閲覧ユーザー数:1042

2014.8.18

「幽霊が住む街」

 

この街は迷路のように入り組んだ通路の中を

包帯を全身ぐるぐる巻きにして 歩いている人が沢山いる

 

沢山 と言うより

見かけた人全てが

包帯人間じゃなかったかなって感じがする

 

目も口も性別も分からず

ただ 迷路の街を徘徊している包帯人間

 

事のあらましは知っているわ

ほんの少し転びました 包丁で指先を切りました

そうした粗雑な怪我なのに

患者は簡単な処置に不満を持ち

頭に来た医者が全身をぐるぐる巻にした

 

だから今では 街の人の殆どが

包帯でぐるぐる巻きにされているの

 

よその街から来た私は知っている

その怪我は治っている

以前に 怪我と呼べる怪我を負ってすらいないと言う事を

 

だから すれ違った人から

片っ端に

包帯を剥がし 切り刻み

中にいた人を救ってあげた

 

救ってあげた つもりだった

 

包帯の下から出て来たのは

ミイラのようにやせ細った身体

 

辛うじて目鼻は分かるが

性別も分からないミイラ達が

何も考えずに 徘徊するように

迷路の街を歩いている

 

包帯で包まれた状態では

何も食べれず 何も見えず

そして 何も考えられなかった

自分が 生きているのか 死んでいるのかすら

彼らはもう 分からない

 

こうして包帯人間が徘徊する迷路の街は

ミイラが徘徊する迷路の街に生まれ変わったのだ

 

 

2014.8.12

「神社の鯉」

 

神社にお参りに行ったの

 

信心深い人は階段を使って上るらしいけれど

私はそうじゃないから

エスカレーターでスイスイ楽々上の階へ

 

神社独特の赤と白の通路を抜けると

青い空の下 壮大な芝生と沢山のミニチュアがあった

 

ここは 別の神社の模型

これは 別のお寺の模型

これにお参りすると そこに行ったのと同じ効果があるんですって

随分都合のいい話だなぁと思いつつ周囲を見ると

小学生達がお池のお水で

写生会をやっているみたいだった

 

まん丸な 井戸みたいな深い池

透明と言うより深い緑色の水

そこに住む数匹の鯉

 

私はミニチュアの模型の神社達より

その鯉の方が ずっと神聖に見えた

 

 

2014.7.26

「亡くした言葉」

あなたは泣いた事がありますか?

どんな理由で?

どんな意味で?

どうして?

何故?

 

理由なんか必要ない

溢れ出るのだから仕方がない

頭なんか殴られなくても

心が痛む事だってある

 

理解してくれなんて言う気は無い

自分の感情は

本当の所は 自分にも分からない

 

大声で泣き叫んでやろうか?

理由なんか知るか

強いて言えば 今はそんな気分だから

誰かをなぶり殺すより

ずっと健全な方法だろ?

 

何かが胸から溢れ出す

それだけは確かなんだ

 

だが その正体は俺にも分からねぇ

ただ もやもやし 渦を巻き 俺を支配している

苦しいのか そうじゃないのかも もはや分からない

ただ 全てをぶち壊すより

ずっと健全な方法だろ?

 

それで 俺が 溶けて 消えて しまったとしても ……

 

 

2014.7.24

「世界異変と進級試験」

 

外は夜

酷い洪水に見舞われていた

地上一階付近は水に埋まり

トタン屋根の上を車が往来していた

 

2階の窓から帰って来て

特にする事も無く

広い体育館のような居間で

数十人が隙間無く詰め込まれた部屋で

彼らと同じように私も眠った

 

でも 地面がずっと揺れている

震度3か4くらいの

気持ちの悪い縦揺れがずっと続いている

でも みんなは横になって眠ったまま

消灯された部屋で この状況を異常に思っているのは

どうやら私だけらしい

 

部屋の外では

優秀な人達が試験を受ける為に

あの長い廊下を ずっと並んで待っている筈だ

 

その間にも地震は続く

誰も疑問を抱かずに眠る人達と

試験を受ける為に並ぶ者達

 

これを異変だと思う

私の方が

おかしいと言う事なのかしら?

 

 

2014.7.16

「帰宅風景」

 

私は家に帰る為

長い行列に並んでいる

 

無機質なコンクリートの壁と天井

その地下街を

沢山の人々が

規則正しく

帰宅する為に並んでいる

 

列の進展は物凄く遅く

のそりのそりと

皆黙ったまま歩いていく

 

脇に目をやれば

水を抜いて清掃中の水族館や

改装工事中で路上で商売をしている

一杯飲み屋の様子が伺える

 

変なロボットのマスコットも売っていて

待っている間に買わせる作戦なんだろうなと

商人の強かさを感じながら

私も列に並んで帰路につくの

 

相当長い間

無機質な地下街を歩いてたような気がする

すると突然

目の前に広がる吹き抜け

三階建てのビルくらいの高さの

あのロボットのモチーフの滑り台がある

 

ああ そうか

みんなこれに乗る為に並んでいたのね

一度に一人しか滑れないから

進展がノソノソしてたのね

 

そうやって妙に納得した後の記憶は

何故か変に途切れていて

その後は特に進展に悩まされる事も無く

家に着いたような気がする

 

そう 家に着いたような気がする

 

実際 私の親戚が遊んで走り回ってる

でも まるで牢獄のような味気ない生活空間

ここって私の家かしら?

ここって私の家だったかしら?

引っ越しした覚えも無いし それにまるで落ち着かない

 

ここって私の家かしら?

 

 

2014.6.27

「空虚」

 

君は泣いている

君は静かに涙を流す

どうしたの?

そう問いかける存在も無く

君は静かに泣いている

ただ 静かに涙を流す

 

恐らく 理由なんか無く

ただ 涙が 溢れているだけなのだろう

嬉しくも 悲しくもなく

彼はただ 静かに泣いているだけだ

 

どうしてだろう?

何故だろう?と

問う事も無く

理由を探るような事もせず

彼はただ静かに泣いている

理由は必要とせず

思考も必要とせず

ただ溢れる涙を 止めようとしないだけだ

 

そうして彼は 空を見上げる

溢れた涙は空の色をかき消し

もはや何色なのかも分からない

 

そうか 今の僕には 空すら無いのか

 

どうしてだろう?

何故だろう?と

問う事も無く

理由を探るような事もせず

彼はただ静かに泣いている

 

 

2014.6.13

「動物永久晩餐会」

 

薄暗いホテルの一角で

動物達が晩餐会をやっていたの

 

動物と言うより獣の皮を被った人間ね

みんな虎のマスクをして

口も聞かず

表情も変えず

多分スープなんかをすすっている

 

私は ここに来る前に

虎のマスクと尻尾が2セット落ちているのを見ているの

 

だから

みんな背広を着た虎に見えるケド

中身は多分人間なのよ

 

それより私

ここのホテルに泊まっているの

何度 自分の部屋に帰ろうとしても

この会食風景と

あのマスクが落ちている廊下に出てしまうの

 

私はいつまでたっても

自分の部屋に帰れない

 

そして虎のマスクを被った人達も

延々とスープらしきものを飲み続けているだけなの

 

 

2014.6.10

「ヤハウェ様」

 

世界は滅ぶ

美しく滅ぶ

燃えるような情熱で

全てを薙ぎ払いながら

そうして 世界は滅んで行く

 

流れる涙は悲しみでも怒りでもなく

滅びゆく世界が ただ 美しい事への感動

世界は滅ぶ

七色の炎に焼かれながら

束縛していた全ての概念を解放し

遠く離れた月さえも 真っ赤に染まり落ちて行く

 

美しい炎

七色の光

私の瞳も七色に輝きながら

世界が 崩壊するのを

 

ただ 見ていた

ずっと 見ていた

ただ 何もせず

ずっと 立ち尽くしたまま

 

世界は滅ぶ

美しく滅ぶ

誰も抵抗せず ただ 静かに滅んで行く

真っ赤な稲妻

砕け落ちる空

相殺される世界の空気

もう二度と鳴らされる事の無い教会の鐘

 

私は知らない

これ以上美しい光景を

私は 知らない

 

そうだ

もし 神がいるとしたら

きっとこんな姿をしているのだろう

 

世界は滅ぶ

美しく滅ぶ

世界は滅ぶ

美しく滅ぶ

 

 

2014.6.5

「スパイの証」

 

今 話題の高層商業地

その中で接客している あのおじさん

私は彼を知っているの

 

オススメのお洋服なんかをお客さんに差し示し

お似合いですよ と言っている

あのおじさんを 私は知っているの

 

カッターシャツに 黒い蝶ネクタイの代わりに

似合わない 金のリボンを巻いている

ハートマークを結び目につけているあれは

いわゆる スパイのサインなの

おじさんは接客をしつつ

何かを探り当てようとしているの

 

私はおじさんの仕事の邪魔にならないように

高層ビルをエスカレーターを使って

ゆっくりと下りていく

 

目に入る人は皆

スパイの目印の金色のリボンとハートマークを付けている

老若男女 一切関係無く

みんな そのリボンをつけている

 

やっとビルの外に出た時も

表の道路は歩行者天国で

ビアガーデンとかボールすくいとかやっている

 

そして

お客さんも 店員さんも

みんな あの スパイのマークをつけている

 

多分

そのマークをつけていないのは

私くらいなものじゃないかなぁ?

 

だから 今日 私は

そのマークを貰いに来たの

金色のリボンにピンクのハートのモチーフなんて素敵じゃない

 

けれど 

ビアガーデンと ボールすくいが邪魔をするの

そのスパイ達のアジトが入っているビルの前に

立ちふさがるようにして営業しているの

 

あなた達に用は無いの

ビールなんかいらないし ボールなんて興味無い

私が興味があるのは 皆が首につけているスパイの証だけ

あなた達は邪魔なだけ

道をあけて

その目の前にビルに 私を通してよ

通しなさいよ!!

 

頭に来た私は ビアガーデンの一角を蹴り倒し

混乱と騒動のどさくさに紛れて そのビルの前に来た

そう ここが スパイ達のアジト

ここに来れば あの金色の印が貰えるって

そう私は友達から聞いたの

 

ビルの中は真っ暗だった

電気が消えてるとか そう言ったLvではなく

全くもっての暗闇だった

 

構う事は無い

私は特に疑問を持たず アジトのあるビルに入って行き

 

 

以後 私の姿を見かけたものは 誰もいなかった

 

 

2014.5.28

「奇妙奇天烈キセル行為」

 

黄色い 四角いドットが目の前に大量に現れ

拡大と縮小を繰り返しながら

渦を巻いて消える 変な夢から目覚めた時

私は何故か歩道の草むらの中にいた

 

目の前に走る太い車道

それをまたぐように作られた歩道橋

その歩道橋の上を必死に上ろうとしている物がある

 

者ではない 物である

 

具体的に言うと軽自動車だ

黄色い軽自動車が 何度も何度も階段を上ろうと 助走をつけて

必死に階段を登る練習をしていた

 

何度も何度もチャレンジし

1時間もしないうちに

階段を登る事も 下る事も出来るようになっていた

嬉しいのか 楽しいのか

軽自動車は何度も何度もグルグルと 歩道橋の上を回っていた

 

そのうち 通路の脇に外れ

歩道橋の隣にある 更に急な斜面の階段を上り始めた

 

その階段の先は高速道路

 

やっと分かったわ

この車が階段を上り下りしていた理由

ここから入って ここから出れば

無料で高速道路走り放題だもんね

 

そう自己解決した後になって

私は初めて ある異変に気付いた

 

私はここに来た事は今まで無く 初めて見る景色である事と

既に初夏の陽気なのに 周囲は雪景色だった事

 

そして今まで 私はその事に気付かなかった事に


 
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