中庭の端のほうで鼻歌が響いている。
一刀「季衣。こんな所で何をしている?」
季衣「あ、兄ちゃん。へへー、手紙書いてるんだー」
一刀「・・・・・そうか、郵便が出来るようになったか」
黄巾党が暴れている時期は、危険すぎて引き受けが無かった。
相手のいる地方に行く商人に預けるだけでも、いつ届くか分からない。
季衣「ねぇ、兄ちゃん」
一刀「ん、なんだ」
季衣「たのしみにしてる、ってどう書くんだっけ?」
一刀「楽しみにしてる?こうだ」
そういって、季衣の書いている手紙に書いていく。
季衣「ありがとー」
一刀「季衣はもう少し、学問も学んだほうがいいな」
季衣「えー。ボク、お勉強って苦手だな・・・・・・体動かすじゃあ駄目」
華琳「あら、どうしたの」
一刀「いや、なに季衣に文字少々」
華琳「そう」
一刀「しかし、少し平和すぎぬか」
華琳「そうでもないわよ・・・・・・・市井が平和になると、途端に殺伐としてくる所が一つだけあってね・・・・・」
一刀「・・・・・何かあったのか?」
華琳「ええ・・・・何進が殺されたそうよ」
一刀「・・・・・っ!?・・・・・詳細は?」
華琳「・・・・・宮廷で死んだのよ」
一刀「・・・・・権力争い」
華琳「ええ」
一刀「で、今の有力者は」
華琳「何でも、董卓と言うらしいわ」
一刀「・・・・・(また歴史が動き出すな)」
華琳「一刀?」
一刀「なんでもない」
華琳「そう・・・・この間、都から戻った間諜も、董卓の正体は不明と言っていたし・・・・・恐らく、誰かの傀儡なのでしょうね」
一刀「傀儡、ねぇ・・・・・余程、顔を見られたくわないんだな」
季衣「できた!華琳さま、兄ちゃん!ボクちょっと手紙を出しにいってくるよ!」
華琳「ええ、いってらしゃい」
一刀「気をつけてな」
華琳との話から、暫くの時間が過ぎた頃。
一刀たちが順調に兵を調練し、力を蓄える間にも都に居座る董卓は直実に勢力を強めてきている。
華琳の領内は平和だった。たまに黄巾の残党が領内に現れた、と言う報告が入るが、訓練をつまれた兵たちによりすぐさま鎮圧される。
???「あの・・・・・すみません」
一刀「ん?どうかしたか」
???「すみません。ちょっと教えて欲しいことがあるんですけど・・・・」
一刀「何処かに行きたいのか?」
???「えっと、お城」
???「その前に、美味しい料理食べさせてくれるところ、教えてくれよ」
???「ちょっと!文ちゃん」
???「いいじゃんか。お城なんて逃げやしないって、それよりも斗詩ぃ。あたい、おなかすいたー」
一刀「で、どっちを案内する」
???「料理を食べさせてくれるところで・・・・・」
一刀「料理街ね」
料理街を案内しようと思った所に季衣と出会い美味しい料理店を案内してもらうことにした。
文ちゃん「美味いっ!」
一刀「確かに美味しい」
斗詩「本当に美味しい」
四人で、料理を食べていくが約二名は食べるスピードが尋常ではなかった。
一刀「季衣が二人いる様だな」
斗詩「・・・・・私も、文ちゃんが二人いるみたいに見えます」
一刀「・・・・・・・」
斗詩「・・・・・・・」
一刀「・・・・お互い苦労してそうだね」
斗詩「・・・・そうですね」
「「はぁ・・・・・」」
一刀「それで、あんた達はこの街に何しに来たんだ?見たところ、武を持っているようだが・・・・」
斗詩「分かるんですか?」
一刀「分かるさ、そういった雰囲気を出ている」
斗詩「はい。ええっと・・・・・」
秋蘭「失礼する」
一刀「ん?華琳、秋蘭」
華琳「あら。一刀たちも来ていたの。・・・・・そちらは?」
一刀「美味しい料理店を案内してくれと言われてな」
華琳「そう。ちゃんと仕事をしているようね」
一刀「失礼な奴め」
華琳「冗談よ」
給仕「あ、いらっしゃいませ!曹操さま、夏侯淵さま、いつものでよろしいですか?」
斗詩「っ!」
華琳「ええ、お願いするわ」
秋蘭「私も同じので」
給仕「はいっ。すぐにお持ちしますね!」
一刀「なんだ、行きつけか」
華琳「まだ若いのに、大した腕の料理人よ。お抱えで欲しいくらいなのだけれど」
一刀「・・・・・断られたか」
華琳「ええ。親友に呼ばれてこの街に来たのだけれど、結局合流できなかったらしいのよ。それで手がかりが見つかるまでここで働いてるそうよ」
一刀「親友か・・・・・最近は人も増えてきたし、名前だけではなかなか見つからん」
華琳「あら。見つけられないのかしら」
一刀「いや。なかなかっと言ったろう、もう少し詳しい特徴が聞ければ見つけられる」
給仕「はいっ。お待たせしましたー!」
一刀「なあ、給仕さん」
給仕「はい?ご注文ですか?」
華琳「彼があなたの親友を捜してくれるそうよ。良かったら、特徴を言ってみたらどうかしら」
給仕「本当ですか?」
一刀「あぁ。そういった仕事も担っている。で、親友も料理人か?」
給仕「いえ、食べる方は大好きなんですけど・・・・・料理はさっぱりなんです」
一刀「手紙には何と?」
給仕「住み込みの良い仕事が見つかったから、来いとだけ・・・・・。ただ、私が呼ばれるくらいですから、彼女も食堂の給仕か、力仕事の裏方をしているのかと。チカラには自信がある子なので」
一刀「ふむ。食べるの好きで、力がある・・・・・情報が少ないな。名は何と言う?真名じゃなくていいぞ」
給仕「名前は・・・・・許緒」
一刀「・・・・・」
華琳「・・・・・」
秋蘭「・・・・・」
季衣「・・・・・にゃ?」
給仕「あーーーーーーー」
季衣「あー。流琉ー♪どうしたの?遅いよ」
流琉「遅いよじゃないわよーっ!あんな手紙よこして私を呼んだと思ったら、何でこんな所にいるのよーーっ!」
季衣「ずーーっと待ってたんだよ。城に来いって書いてあったでしょ」
流琉「季衣がお城に勤めてるなんて、冗談としか思わないわよ!」
文ちゃん「うわぁ・・・・・。なんか修羅場・・・・・。あ、これも美味いわ」
斗詩「はぁ・・・・」
流琉「季衣のばかーーーー」
季衣「流琉に言われたくないよーーー」
華琳「秋蘭は止められそう?」
秋蘭「季衣が二人分では、少々荷が重いかと」
華琳「一刀は?」
一刀「止めろというなら止めるが」
華琳「やりなさい。このまま、店が壊されるのは見ていられないわ」
一刀「了解した。・・・・・・・・ふぅーーはぁーーーー・・・・・・・・・・」
ゆっくりと、一刀は殺気を出していく。
周りの空気が徐々に下がっていく。
華琳「・・・・・・・(一刀、あなたは一体)」
秋蘭「・・・・・・・」
斗詩「・・・・・・」
文ちゃん「・・・・・・・」
一刀「・・・・・・季衣・・・・給仕さん、そこまでにしてもらおう」
季衣「う、うん」
流琉「す、すいません」
一刀も殺気を消したとたん、辺りの空気も徐々に戻っていく。
一刀「華琳、止まったぞ」
華琳「え、ええ・・・・」
顔良「お初にお目にかかります、曹孟徳殿。私は顔良と申します」
文醜「あたいは文醜!我が主、袁本初より言伝を預かり、南皮の地よりやって参りました!」
顔良「・・・・・こんな場面で恐縮ですが、ご面会いただけますか?」
華琳「・・・・あまり聞きたくない名を聞いたわね。まあいいわ、城に戻りましょうか」
華琳「袁紹に袁術、公孫賛、西方の馬騰まで・・・・・よくもまあ、有名どころの名前を並べたものね」
顔良「董卓の暴政に、都の民は嘆き、恨みの声は天高くまで届いていると聞いております」
文醜「それをなげいた我が主は、よをただすため、とうたくをたおすちからをもったえいゆうのかたがたに・・・・・」
一刀「見事なほどに棒読みだな」
華琳「持って回った言い方はやめなさい。あの麗羽の事だから・・・・どうせ、董卓が権力の中枢を握ったことへの腹いせなのでしょう?」
顔良「うっ・・・・・」
華琳「・・・・どう思う、桂花」
桂花「は。顔良殿、先ほどあげた諸侯の中で、既に参加が決まっている方々は?」
顔良「先ほど挙げた皆様は既に。今も、流れを見ていた小勢力や、袁家に縁のある諸侯を中心に続々と参戦の表明をしております」
春蘭「おい。その中に、孫策という奴はいるか?」
顔良「孫策・・・・・文ちゃん、知ってる?」
文醜「んー。袁術さまの所にいる怖い姉ちゃんかな?」
春蘭「おお、それだ!」
顔良「その方なら、おそらくは袁術様と一緒に参戦されると思います」
春蘭「華琳様!」
一刀「春蘭、私情は控えろ」
春蘭「くっ」
華琳「桂花。私はどうするべき?」
桂花「ここは、参戦されるべきかと・・・・・これだけの英雄が一挙に揃う機会など、この先あるとも思えません。ここで大きな手柄を立てれば、華琳様の名は諸侯の間に一気に広がります」
沙和「でも、董卓って悪いことしてるの?」
一刀「董卓自身が悪くなくとも、制御出来てないなら同じだ。・・・・・・こちらが動かずとも、周りが既に動き始めている。流れに乗るのもまた一興だな」
華琳「そうね。顔良、文醜。麗羽に伝えなさい。曹操はこの同盟に参加する」
顔良「はっ」
一刀「確か、ここだったはず」
森の奥に進んでいくと、轟音が聞こえてくる。
流琉「はぁ・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・」
季衣「ふぅ・・・・・ふぅ・・・・・ふぅ・・・」
華琳「どう?調子は」
真桜「あ、華琳様、一刀はんも。見ての通りですわ」
一刀「やるなら徹底的に・・・・・お陰で森がボロボロ・・・・・森林破壊だな」
季衣「・・・・・・流琉、おなかすいた」
流琉「・・・・・・作ってあげるから、降伏しなさい」
季衣「・・・・・やだ。流琉をぶっ飛ばして、作らせるんだから!」
流琉「言ったわね!なら、季衣を泣かして、ごめんなさいって言わせるんだから!」
軽い口論の後、再び互いの武器がぶつかり合う。
真桜「さっきから、ずーっとあのノリやで」
華琳「あれでいいのよ。下手にしこりが残るよりは、余程ましだわ」
一刀「冗談じゃないぞ。どっちか一人しか残っていなかったとか」
真桜「で、一刀はん。その面会とやらはどうなったん」
一刀「あぁ。都への遠征が決定したよ。凪と沙和には準備してもらってる」
真桜「都か・・・・・」
華琳「恐らくはこの戦で、都の権力は完全に失われる。大陸ももっと混乱することになるはずよ」
真桜「なにやて・・・・・!?じゃあなんで華琳様は、そんな戦いに行くん?守るための力を溜めた方が、ええんとちゃうん?」
華琳「変化の波にむざむざ呑まれるよりも、波の頂に居たいと思ったからよ」
真桜「・・・・・ごめん。ウチ、海って見たことないねん」
一刀「真桜、華琳の言葉は難しすぎるからな、仕方がない。要は・・・・・混乱が起こるのを外から見るより、内から見届け、確実に収めるということだ」
真桜「・・・あぁ。そういう言い方やったら、わかる気がする」
流琉「・・・・・きゅう・・・・」
季衣「・・・・・うみゅう・・・・」
一刀「やっと止まったか」
華琳「ようやく決着が着いたようね。二人とも」
季衣「華琳さま・・・・・」
流琉「曹操さま・・・・・」
華琳「立ちなさい、典韋」
流琉「はい」
華琳「もう一度誘わせてもらうわ。季衣と共に、私に力を貸してくれるかしら?料理人としてではなく、一人の武人として」
流琉「わかりました。季衣にも会えたし・・・・・季衣はこんなに元気に働いている所なら、私も頑張れます」
華琳「ならば私を華琳と呼ぶことを許しましょう。季衣、この間の約束・・・・確かに果たしたわよ?」
季衣「はい、ありがとうございます!」
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