「やっとついたか。早く用件すませて帰ろう」
一刀は単身、蜀の成都へとやってきていた。
使者として文を届けるよう帝の勅命を受けたのである。
「帝の勅命って言ってもなあ・・・何を企んでんだか」
うさんくささを感じる一刀ではあったが、今はまだ逆らうわけにもいかなかった。
そうこう言っている間に、一刀は城門までやってきた。
「帝の使者としてやってきた者だ。お取次ぎ願えるか?」
「・・・・・・しばし待たれよ」
門番の一人が城内に走って行った。
しばらくして、門番は息を切らせて戻ってきた。
「お、お待たせした・・・ぜえ、ぜえ・・・・・・」
「で?入れてもらっても?」
「ど、どうぞこちらへ・・・・・・」
門番に先導され、一刀は城内へと足を踏み入れた・・・・・・
「・・・・・・」
謁見の間に入った一刀は、一瞬言葉を失った。
参列者の中に、見覚えのある顔があったのだ。
と言っても、紫苑たち三人の事ではない。
彼女達だけなら懐かしいくらいで、そこまで過剰反応する必要はないだろう。
「・・・・・・ふふ」
微笑を浮かべるその人物は、しばらく姿を消していた干吉だった。
(こんな所で何やってんだあいつ!)
心の中で叫びつつ、一刀は使者として文を渡した。
蜀の主である劉璋はそれを受け取り目を通したが、文の内容はその場で公開される事はなく、謁見は短時間で終了した。
一刀はすぐ帰るつもりだったが、歓迎の宴を開くので残るように言われ、貴賓用の部屋に通された。
「あ~あ、早く帰りてえなあ・・・・・・しかし、何で干吉がここに?」
寝台に寝転がり、頭を捻る一刀。
それから十分ほど経った頃、一刀の部屋に侍女?がやってきた。
何で?がついてるかって?
それは・・・・・・
「おい」
「・・・・・・」
一刀の呼びかけを無視し、ズンズンと歩いていく侍女?
その正体は、メイド服に身を包んだ左慈であった。
「何でここにいんだ?」
「・・・・・・」
左慈は黙ったままだった。
一刀の部屋にやってきた時も、喋ったのは「ついてこい」の一言だけで、それ以降は全く喋っていなかった。
ところで、二人は何度か人とすれ違ったのだが、誰も左慈に奇異の視線を向けなかった。
これはつまり、左慈は日常的にこの服装であり、皆が既に慣れきってしまっているという事なのだろう。
「その服はお前の趣味か?妙に似合ってて恐いんだが・・・」
「黙れ。それ以上言ったら、お前を殺す」
「その格好で決め台詞言われても説得力ゼロだぞ」
「くっ!好きでやっている訳じゃない!!」
「じゃあ、あいつの趣味か。すっかり調教されて・・・・・・」
「うるさい!!」
・・・・・・
左慈に連れられてやってきた部屋では干吉が待っていた。
「お久しぶりですね。まあかけてください」
干吉にすすめられ椅子に座る一刀。
「しばらくみないと思ったら、ここで何やってたんだ?」
「そうですね、一言で言うなら蜀の影の支配者になっていた・・・と言うところでしょうか?」
「・・・・・・お前、まさか」
「ああ、心配はご無用です。別に貴方と戦おうと言う気はさらさらありませんから。お世話になったお礼に蜀をプレゼントしようと思って」
「そ、そうか・・・・・・ありがとよ。ところで、影の支配者って事は劉璋を傀儡にしたってことか。何をしたんだ?」
「私の特殊能力の一つ、眼力で虜にしただけです。ああ、肉体関係はありませんよ?ずっと放置プレイです」
「眼力って、バンコランかお前は・・・・・・」
「さて、ここからが本題です。先程の文なのですが・・・・・・」
「ああ、そういえば何て書いてあったんだ?」
「蜀を北郷一刀に明け渡すようにという命令書でした」
「・・・・・・は?」
一刀は目が点になった。
「いや、おかしいだろ?これ以上俺達の力を強めてどうするんだよ」
「そのとおりです。この文の本当の目的は別にあります」
「本当の目的?」
「ええ、ちょっとここを見てください」
干吉は文を取り出すと、その一点を指差した。
それは、印の部分だった。
「んん?何かあるのか?」
「分かりませんか?印が微妙に違うんですよ」
「なぬ!?」
一刀はじっくりと印の部分を見た。
「本当だ!印の文字が微妙に違う!」
「おそらく貴方が偽手紙で蜀を乗っ取ろうとしているとでっちあげて、貴方を嵌めようと言う魂胆だったんでしょう。この件に関わった官僚たちは、渡した文と内容が違うとでも言い繕うつもりだったんでしょうね」
「そういうことか・・・・・・」
一刀はフンと鼻を鳴らした。
「で、どうします?」
「・・・・・・干吉。この手紙どおりにできるか?」
「蜀を譲り渡せと?できますよ。ただ、その場合はここの主を交代させなければいけませんが、貴方がなりますか?」
「そうだな。桃香を呼ぶまでは暫定で俺がやろう。ただ、その前に洛陽に戻って今回の事を画策したやつらに感謝の言葉を述べてこようか」
「どんな顔をするか楽しみですね・・・・・・ふっふっふ」
「まったくだ・・・・・・はっはっは!」
一刀と干吉は心底愉快だといわんばかりに笑うのだった・・・・・・
おまけ
「そういえば、南蛮とは友好関係になっていますので、あしからず」
「へえ、それもやってくれたのか?」
「いえ、南蛮に関しては私ではなくて・・・・・・」
話は蓮華たちが南陽に着任したころに遡る。
南蛮の森の中に、一軒の見世物小屋が建っていた。
「面白そうだにゃ!入って見るにゃ!」
「「「「にゃ~にゃ~~!!」」」」
美以を先頭に南蛮娘たちは次々と小屋に入って行く。
「暗いにゃ~~」
「よく眠れそうだにゃん・・・ZZZ」
「大王しゃま!椅子が沢山にょ!」
「ここに座ってればいいのかにゃ?」
続々と席に着く南蛮娘達。
皆が席について数分後、どこからともなく音楽が流れてきた。
舞台の幕に光が当てられ、筋骨隆々な人間のシルエットが浮かぶ。
シルエット越しに、音楽に合わせてポージングをしていく人影。
そして、幕が上がり・・・・・・現れたのはなんと貂蝉であった!
「みんなお待たせ♪いくわよ~~ん♪」
HEART触らせてあ~げ~る~
私で~確かめなよ~
あなたのHEARTも見~せ~て~
勇気の力~
輝けば・・・わかる
全てが今・・・Take a chance!
「「「「凄いにゃ~~~!!」」」」
貂蝉のライブショーに湧く南蛮娘達。
こうして貂蝉は南蛮で人気ナンバー1の踊り娘となり、蜀の様子を探りに行った際に干吉と接触。
干吉と貂蝉の仲介で、美以たち南蛮と蜀は友好関係と相成ったのであった・・・・・・
どうも、アキナスです。
何と言うか、終章の主役は男性陣じゃないかと思い始めてきました。
というか、左慈も干吉も初代だけで終わらすには惜しいキャラだったと思うんですよね。
漢ルートとかで出てたら倍以上面白くなってたと思うんです。
真やったときには新キャラ出るのはいいけど何であの二人が出ないんだ!と叫びたく・・・・・・すみません、ヒートアップしてしまいました。
それでは次回に・・・・・・
「シルバーチャリオッツプラスアヌビス神二刀流ッ!!」
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忘れられていた者・・・・・・