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リリカル東方恋姫 第十一話 『試合は何が起きるか最後までわからない』

やっほー! 
最近キャラが定まってないゴーレム参式だよ♪
今回は少し長いです
誤字・こんなキャラはいやだ! と思う人はすぐもどるを押してください
では、どうぞぉ♪

2014-05-15 21:29:43 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:1810   閲覧ユーザー数:1718

 

 

「ようやく、傷が塞がったか・・・・」

 

ビルの屋上でシグナムは壁に持たれる。

こまちにつけられた胸の傷をさわる。傷は血が固まって血を流れるのを止めていが、先ほど塞がったばかりなため、急な動きをすればまた傷が開くだろう。

 

「それにしても・・・・・・・」

 

先ほどから、声がする方向に視線を移すと・・・・・、

 

「ホラ、ホラ、ホラ~。オ前等ノバックニ誰カイルノカ、サッサト吐イチャエナ」

 

ビシ! ビシ!

 

「フフフッゴ!?」

 

皮製の拘束具と口にボールを付けられ身動きできない黒い少女が、ケタケタと笑う三頭身に鞭でしばかれ、

 

「中学生の体型で、谷間作りやがって~! なんなんだよこのグレープは! 人形だから、増強パットだろう、この贋乳! アタシにも付けさせろ~!!」

「いっだい! おっぱい引っ張らないで!」

 

日本の拷問?に出てくる、ギザギザに石の上で正座されて膝の上に石の板を三枚乗せられた白い少女は胸を、ハンマーを持った赤毛の幼女に弄られていた。

 

「なんでSMプレイをやっているんだ貴様らはぁぁぁああああああああああ!!?!??」

 

目の前で行われている、チビッ子たちによる拷問コーナーに、シグナムは大声でツッコンだ。絶叫だったので胸の傷がすこし開くが、衝撃的な光景が傷の痛みを感じさせなかった。

すぐさまかぐやに載っていた三枚の石の板を火事場の馬鹿力で退かし、チャチャゼロが持っていた鞭を取り上げた。

 

「あっ!? なにすんだよシグナム!! 

「黙れヴィーダ! 今、貴様がなにをしているのか分かってるのか!!」

 

怒鳴って指を刺す。

ヴィータは横にいる、涙目でギザギザ石に座っているかぐやに目を移し、

 

「なにって? 見りゃー分かるだろう。拷問だ。拷問」

 

そう言って、かぐやの発展途中の右胸を引っ張った。

 

「ヂッダイ!?」

「か、かわいい顔で、胸を引っ張るのではない!!(赤面)」

 

かぐやはかわいい声を悲鳴を上げ、シグナムは破廉恥きなまりないモノを見てしまい顔を真っ赤にしてヴィータに怒鳴った。

普通なら自分たちを襲撃し誘拐しようとしたかぐやとこまちたちを許す気は無いシグナムだが、オバーキルというべきチャチャゼロのエックスカリバーでピッチューされたあげくに、拷問具で羞恥心いっぱいで攻められる姿は、さすがに良心が痛い。むしろ、見た目が幼い子たちが破廉恥なプレーを見ているのが辛い。てか、子供の残酷な一面が怖い。

 

「オイ、悪イガソノ鞭返セ。ドS用デバイスハソレシカナイカラヨ。ソレトモナンダ? オ前モヤリタイノカ? ボンテージガ似合イソウナエロイ体シテケド」

「いやいや、シグナムって見た目強者だから、精神ちょっと崩せば、いがいとMの素質が現れるんじゃねーの?」 

「わ、私はそんな趣味や性癖はないわぁぁああああ!!(真っ赤)」

 

自分の体をエロい目で見られることに、シグナムは顔を赤くしてツッコミを入れた。

屈強な騎士である彼女でもしょせんは生娘。このての話には免疫のないので、赤面で反応するのはあたりまえである。

 

「って、これデバイスだったのか!?」

 

チャチャゼロが先ほど鞭をドS用デバイスといったことに気づいたシグナム。鞭をよく見ればデバイスの特徴の機械の部分があった。むりやり話を変えたな。

 

「昨日ノ夜、海辺デ散歩シテタラ、ソレ鞭ガ白浜二落チテイテナ。試シニ振ッテミルト、イイ音ガ出ルシ使イ心地ガイイカラ、俺ノコレクション二加エトイタ」

「どこのどいつなんだいなーデバイスを海に捨てるやつは…。デバイスはちゃんと家電ゴミの日に捨てなちゃーいけねーのに」

「鞭型のデバイスを海に捨てるやつもやつだが、ソレを拾って使うお前の神経はどうなっているだ!? あと、ヴィーダ! デバイスを家庭ゴミ扱いにするな!」

 

シグナムは的確にツッコミを入れるが、表情が辛い。ツッコミすぎて傷が開いたのだろうが、それ以上に仲間であるヴィータのボケに驚きを隠せなかった。

 

「いったいどうしんたんだヴィータ。おまえがこんな破廉恥な子ではなかったはずだ!」

「だってさー、こいつらズリーンだもん…! 背が低いのに胸が巨乳なんだぞ! ボイン♪なんだぞ! ロリ巨乳は反則だ!」

 

どうやら、かぐやたち武装神姫の揺れる胸を見て、自分の胸と比較してしまい、ショックを受けたなにかに覚醒したらしい。武装神姫なので、このボイン♪はパットと同様の作り物のだと頭では理解している。それでも、哀れにも、悲しくも、作り物のボイン♪に、魅力を感じてしまい、首の下にある膨らみない絶壁が虚しいく、風が空しく当たるだけ。だって、ただの面だもの。

 

「ヴ、ヴィーダ~? お前、いつからそんな性格になったんだ…;」とシグナムは仲間の急な変化に引いてしまうが、ヴィータは怒りの矛先をシグナム、の首の下にある、たわわな実に向けた。

 

「だいだい、シグナムだってその胸に実ってるスイカはなんだよ…反則じゃん。 アタシは見たぞ! シグナムがあそこにいる黒い女の爆発する武器で吹き飛ばされたとき、左右のスイカが上下にブルッン! って揺れるところこの目ではっきり見たぞ! そのときのアタシの心は絶望と嫉妬でマッハになった。この絶望と嫉妬は衰えるのはないだろう」

「知るか、そんなこと! 第一、私は好きでこんな胸になったわけじゃないわっ!」

 

顔を真っ赤にして、両腕で胸を隠すが、両側から抑えているためさらに強調されてしまう。

騎士である彼女も、いがいと乙女なところがあったようだ。その反応にヴィータはつばを吐く。

 

「けっ! あーあー。脂肪がある女は絶対それをいう…。どうせ、絶壁の胸をもつ者の気持ちなんてわかってくんねー。・・・爆乳剣士嫌い。これだから熱血爆乳剣士が嫌いになったんだ・・・・。しぼんじゃえ。ぺっ」

「ヴィータぁぁぁぁあああああああ! お願いだから元にもどってくれぇぇぇええええええええ!!!」

 

傷口から血がドバッと噴出しながら、心からのツッコミの叫び声が静かな夜空へと轟くのであった。

 

 

 

 

=======5分後==========

 

 

 

「ヴーヴーヴ! ヴー!? ヴヴーヴヴヴヴヴ!?!?」

「暴レルナッテ。暴レルト、マタ傷ガ開クゾ」

「まったく、このなかで一番の怪我人なんだから、安静しとけってーの」

 

傷口から大量の血を流したので、包帯でシグナムの体を縛って傷口を塞ぐが、また暴れて傷が開くのがかなわないため、かぐや同様、荒縄で縛りあげて強制的に黙らせた。

 

「そういうえば、名前いってなかったな。アタシは鉄槌の騎士のヴィーダだ」

「チャチャゼロダ。モットモ、ハヤテノ膝ノ上ニ居イタカラ、オ前ラ騎士ノ名前ハ知ッテルケドナ」

「はやて? あ~、アタシらの新しい主人か」

 

先ほどまで戦闘中だったため、自分の主であるはやてのことを忘れていたヴィーダ。

思い出してみれば、はやての膝の上にチャチャゼロがいた。それに、ちかくで大声で仲間と名前を呼び合っていたから、会話から名前を聞いていてもおかしくはない。

 

「とにかく助けてくれてサンキューな。おまえがいなかったら、あたいらがどうなっていたことか」

「ナラ、ハヤテニ感謝シトクンダナ。オ前等ノ主人ニオ願イサレタカラ、ワザワザ」

「うちのご主人がか・・・?」

「アァ、オ前等ガ連レ攫ワレタアトニ・・・・・・・」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

時間は数分前にさかのぼる。

シグナムたちを誘拐された後、残された守護騎士のシャマルとザフィーラは、ミミックたちの残骸の中心にいた。

 

「あ~ぁ、どうしよう~どうしましょう~!?」

 

シャマルはシグナムとヴィーダたちが攫われる事態にどうすればいいのかわからず、うろうろする。助けに行くのが普通だが、自分たちの主人であるはやてを一人にしてはいけなかった。一人だけ助けに行く手もあるが、相手は仲間で戦闘力の高い二人を倒すほどの実力者(人?)。倒せなくても助け出すなら出来なくも無いが、なにか切り札をもっている可能性があるため、うかつに助けに行くことが出来なかった。

 

「落ち着けシャマル」

 

ザフィーラがシャマルの肩を持つが、逆に怒鳴られてしまう。

 

「落ち着いていられないわよ! シグナムとヴィーダちゃんが誘拐されたのよ! きっと、連れ去れてひどい目に合わされるのにちがいないわ! エロ同人誌みたいに! 触手プレイとか! 凌辱とか! 集団乱交とか!」

「本当に落ち着け。指定語が○伏せされてないぞ…。 おまえがシグナムたちを心配するのも無理は無い。我とていますぐにでもあいつらを助けに行きたいのだ」

 

「なら・・・・」とシャマルが言いかけるが、「だが」とザフィーラが言い続ける。

 

「我等の使命は闇の書とその主の守護。主と闇の書はあの少女たちには奪われていないのが幸いだが、この後なにが起こるのか予測できん。我等はどんな事があっても闇の書と主の身を最優先にしなくてはいけないのだ」

「それじゃーシグナムたちを見捨てるっていうの!?」

「我がそんな奴だと思うか? 我等、守護騎士は闇の書と主を守るために存在するプログラム。だが、共に戦場を駆け上がり、何代もの主を共に守ってきた我等はもはや家族同然。守護騎士『ヴォルケンリッター』は一人でも欠けてはいけないのだ」

「ザフィーラ・・・・」

「そのためにも、参謀であるお前が冷静でいなくては、仲間を助け出すことが出来ぬ。一度深呼吸して落ち着いてみろ」

「・・・・・・ス~ハ~ス~ハ~、…すこし落ち着いたわ」

「フ、それは良かった…」

「ごめんさないねザフィーラ。私、頭に血が上っていたわ」

 

シャマルは深呼吸をして混乱した頭を落ち着かせた。言い訳がしないがシャマルは武装神姫に敗北ともいいべき結果を認められず、大切な仲間を奪われたこに冷静にいられなかった。そのことにシャマルは自分の非を認めてザフィーラに謝った。

「なに、気にするな」とザフィーラは許した。

 

「助けに行くにせよ、助けるのにいくつか作戦が必要だ。奴等の手にはシグナムとヴィーダいる以上、下手に手をだせない」

「それに、主の護衛と動けなくなった闇の書の問題が残っているわ」

 

ザフィーラが言うとシャマルは手に持っている闇の書を見る。先ほどから闇の書にコンタクトを取っているが反応が無い。原因は表紙に張られたお札だ。解析したら魔法とは違うものとわかり、どうやったら解除できるのかわからなかった。

 

「管制人格とまだ通話が出来無いのか?」

「だめね…。見たところ、この紙が、彼女と闇の書の機能を停止させてるわ。ほんと、なんなのかしらコレ…? この世界の技術?」

 

はじめてみる魔法(?)に地球の術なのかと推測するが、なんの解決にはならない。

 

「武装神姫ていう女の子に闇の書を停止させる技術、そして、シグナムたちの誘拐・・・こんなにわけがわからないことが連続で起こるなんて、生まれて初めてよ・・・・」

 

シャマルはため息を吐く。

さすがの連続テンプレに長年sy『ギロッ』…ゴッほん、もとい策士さえ、この状況は厳しかった。

そのとき、ザフィーラはある名案が浮かんだ。

 

「その、わからないこの状況で、シグナムとヴィーダを助け出せるわからないものな近くにいるのだが」

「えっ? それって、あの緑髪の子のこと?」

「あぁ」

 

二人の目の先で、車椅子に座るはやてに、チャチャゼロが彼女の膝に座って、いままでの経緯を簡単に説明した。

 

「ふぅ~ん。私が持っていた本が闇の書っていう魔法の本で、その本の主様が私で守ってくれたのが騎士っていう人たち。ほんで、さっきの子達の狙いが私と闇の書の力ってことなんやなぁ」

「ザックリ言エバソンナモンダ」

「一刀とチャチャゼロは私を守るために、私に近づいたん?」

「目的ガソウダガ半分不正解ダ。御主人ハオマエノ家ニ着クマデ、闇ノ書ノ主ダト気ヅイテイナカッタゾ。護衛対象デアロウガ無カロウガ、オ人好シノ御主人ハオマエガ誰デアロウガ手ヲ差し伸バスノハ確定的明ラカ。接スルノデハナイ、闇ノ書ノ主ダロウト魔王ダロウト、イツモ道理普通ニ接シテシマウノガ御主人ダ」

「あはははは、確かに、一刀ならそうするなぁ♪」

 

笑って納得するはやて。さきほどまでおびえていた少女とは思えない。チャチャゼロの前なのでいつまでもおびえるのもつらいので、はやては笑顔で大丈夫とアピールをする。なにより、笑顔になれるのはチャチャゼロと会話できるのと、一刀が目的のために自分を近づいたのではないことが、うれしいかったためでもあった。

 

「ところで、チャチャゼロが魔法の関係者(人?)なら、一刀は魔法使いなん?」

「ウ~ン。悪イガ、コレ以上ノ説明ハ御主人本人ニシテクレ。俺ハ難シイ説明ヲスルノガ苦手ナンダ。作者ガ俺ノ台詞ヲ書クノガ面倒ダト理由モアルガ」

 

失礼な。ただカタカナに変換するのがきついだけです(by作者)。

 

「とろこで、一刀はどうしてるんや? チャチャゼロが助けてくれて助かったけど、普通ぅ、ヒロインが襲われていたら、すぐさま主人公が駆けつけるのがセオリーやないん? 私のピンチに駆けつけないんやんて~一刀の薄情者や…!」

 

頬を膨らまして怒るはやて。どうやら、小説のように都合よくヒロインを助け出して、お姫様だっこされる場面を求めていたらしいが、結局はその展開は無く、それよりも一刀が来なかったことにはやてはご立腹であった。

 

「エラク文学少女的ナ妄想ダナ。言ットクガ、サッキカラ御主人ニ連絡シテルンダゾ。ダガ、応答ガ来ナインダヨ。コンナ風ニ…」

 

はやてのおでこに右手を当てて、チャチャゼロは一刀に念波を送る。意識を同調させることで、はやてでも念波を聞くことができるのだ。

はやての脳裏にある声が聞こえた。

 

 

『念波ありがとうございます。北郷一刀でございます。只今、外出中もしくは戦闘中のため念波に出られません。お急ぎのご用件でしたら発信音のピーの後にご用件とお名前とをご伝言下さい 』

 

 

「なんで留守電!? ファンタジーぽくないでぇー!」

「ファンタジーダロウト、SFダロウト、通信ニハ留守電ハ必要不可欠ナ物サ」

 

はやてはシリナスな雰囲気がないことに腹立ち、チャチャゼロはこれは当たり前だと説得させる。

脳裏にピーと発信音が鳴り、はやては八つ当たりで怒りをこめて一刀にメッセージを送った。

 

「こらー! 一刀~! 私がピンチのときになにやってるんやー! さっさと帰ってこんかぁい! 聞きたいことが山ほどあるんやでぇー! はやくこんと今夜のご飯抜きにするさかいに覚悟しときやー! ・・・・こんな感じで録音できるん?」

「OK、OK。今ノデ大丈夫ダ」

 

チャチャゼロは親指を立たせサインを出す。これにより留守電・・・ならぬ留守念にメッセージが入った。

すると、会話の区切りでシャマルが出てくる。

 

「あ、あの~、もういいかしら?」

「ア、イタノカ」

「いたわよ! シグナムたちが攫われた時から!」

「存在感ガ薄イカラ気付カナカッタ(トックニ、仲間ヲ助ケニ向カッタンダト)」

「悪かったわね~っ。リリカルキャラの定番の影薄キャラ組みで~っ」

 

シャマルはメタ発言を口にし背後にドス黒いオーラを放つ。

 

「シ、シャマル? その黒い威圧をやめてくれ。主が怖がる・・・。貴様も本音と建前を逆にするな(確信犯)」

 

ザフィーラはシャマルの黒いオーラに圧されるが、シャマルは言われたとおり威圧をやめた。

 

「アカンよチャチャゼロ。そんなこというて。この人たちは私を助けてくれたんやで。え~と…」

「ごっほん! あらためてはじめまして。あなた様を守る守護騎士ヴォルケンリッター、瑚の騎士のシャマルです」

「同じく守護獣のザフィーラ」

「うん。シャマルにザフィーラやな。私は八神はやて。私のことははやてでえぇよ」

「俺ハチャチャゼロダ」

 

自己紹介を済ますと、シャマルとザフィーラは膝を地面につけて頭を下げた

 

「さきほどは、見苦しい戦いを見せて申し訳ございません。あなた様を守る騎士である身でありながら危険な目に合わせてしまい」

「この失態、いかなる罰も受けいれます」

「イヤイヤ、私を守ってくれたんやから、罰なんてやらへん。そもそも、チャチャゼロが最初から動いて、シャマルたちを助けていればこんなことにはならへんかったし」

「ハ? …マーナー・・・・」

 

はやては手を振りながら笑って二人を許すが、笑顔のままチャチャゼロの見下ろした。

チャチャゼロは落ち込んだ顔をしているが、話を振る前の瞬間、一瞬だが両手に荒縄を取り出していた。

はやてがいなかったら、騎士の二人は処罰という名の拷問が待っていただろう。

 

「アノ時、闇ノ書ガハヤテヲ助ケタトキノ魔力ノ影響デ体ガ動ケナクナッチマッテナ。モウスコシ、早ク動ケルヨウニナレバ、オ前等ノ仲間ガ攫ワレル事ハナカッタハズナノニ、俺ノセイデー・・・・」

「チャチャゼロちゃん・・・・・」

 

顔を暗くして落ち込むチャチャゼロの姿に責任を感じているのだと、シャマルは心配する。

もっとも、はやての目は誤魔化されない。

 

「チャチャゼロ、それ、嘘やろ」

「正解。嘘ダ」

「「どってー!?」」

 

チャチャゼは落ち込んでいた顔を180度変えてケッロっとした顔で、シリアスをぶち壊した。

シャマルとザフィーラはズッコけた。

 

「実際、闇ノ書ノ影響デ体ガ動ケナクナッチマッタノハ本当ダゾ。動ケルヨウニナッタノハ、ハヤテガ気絶シタ時カラダ」

 

トラックに轢かれる寸前、闇の書がはやてを助け出すときに、強烈な魔力の波動をモロあびてしまい、体の機能が麻痺してしまい、モノ扱いで車椅子と一緒にはやての傍にいたのだ。

麻痺ははやてがヴォルケンリッターが現れたときには直っており、シャマルが触ろうとした時、驚かそうとしたが、武装神姫たちが現れて、タイミングを逃してしまった。

はやてがミミックに襲われたときに登場しようとしたが闇の書が助けてしまい、二度も登場を逃していまい、闇の書に青筋を立てたのは余談である。

 

「正体ヲ教エテモ、オ前等絶対警戒スルダロウガ。状況ヲ更ニ混乱スル危険ガアルシナ。ハヤテガ俺ヲ味方シテイタラ混乱ヲ下ゲテクレソウダガ、アイニク、気絶シテイタ。敵ガ何者カワカラネーカラ、お前等に任せてノンビリ観察シテタンダ」

「つまり、相手の情報を集めつつ、我らの実力を計っていたのか?」

「ソウイウコトダ。噛マセ犬ゴ苦労サンダ騎士殿(笑)」

 

上から目線で見下すチャチャゼロ。顔がまじでウザイ。

 

「ねぇ、ザフィーラ? もう一度、頭血を昇らせていい? この人形、口が悪すぎるわ。今すぐ縛って更生させたいんだけど?」

「やめておけ、返り討ちになるのがオチだ」

 

チャチャゼロの態度にシャマルは青筋を立てる。今すぐにでも口の悪い子にはバインドで強制更生を執行したかった。

だが、武道家であるザフィーラの眼力はチャチャゼロの実力を見抜いていた。

ドSを強制更生をしようとすれば、逆に食われてドMへと調教されただろう。

シャマル、命拾いしたな(by作者)

 

「(う~、シグナムとヴィータちゃんを助けるためにガマンようシャマル…)えぇ~と、実はチャチャゼロにおねがいがあるの」

「・・・・・・攫ワレタ騎士共カ」

「あぁ。我等の仲間を助けるために力を貸してほしい」

 

ミミックたちを蹴散らしたチャチャゼロの戦闘力なら、守護騎士を同等の力を持った武装神姫たちに相手できると確信したザフィーラ。

「せめて、仲間を助け出すまで、やつらの相手を引き付けてくれればいい」と頼み込む。

しかし、

 

「ヤダ。メンドクサイ」

 

耳の穴を指でほじくりながら、間単に切り捨てられてしまった。

 

「ソモソモ、攫ワレタ原因ハオ前等騎士ノ失態ダロウガ。俺ハソコマデ面倒ヲ見ル義理ハネェー。第一、ハヤテハ如何スルキダ? コッチトラ御主人ノ命令デハヤテノ傍ヲ離レルワケニハイカネーンダ」

 

そう言って指に付いた耳カスを吹き飛ばす。

それでも、ザフィーラとシャマルはさがらない。

 

「都合がよすぎるのも承知だ。だがどうしてもおぬしの力が必要なのだ」

「お願い! 私が命を賭けてはやてちゃんは守るから。その間にシグナムとヴィータちゃんの救助を・・・・」

「サッキマデ、ズタボロダッタクセニ自信ノアル言葉ダナ」

「!それはぁ…その・・・・・・」

 

シャマルは顔を伏せる。言い訳がしないが否定する言葉が出ない。

 

「知ッテイルダロウ、俺タチガ居ル世界デ命ナンテ、ローソクノ火ト同ジデ簡単ニ消エル。命ヲ賭ケルナラ最低デモ三〇ガ必要ダゾ。テメェーラジャーハヤテヲ守レネー。残念ダガ助ケルナラオマエラダケデ行ケ」

「ぐっ」

「うぅぅっ」

 

チャチャゼロの論破に悔しがるザフィーラとシャマル。

だが、チャチャゼロの論破に一人の少女が論破する。

 

「チャチャゼロ。シャマルたちの仲間、助けてあげて」

「はやてちゃん(主)!?」

「…良イノカ? ソレダト、オマエニ危険オヨブゾ」

 

チャチャゼロと一緒にいれば、自分の身の危険は無いのだが、はやては「いいんや」と断った。

 

「だって、私はこの子達の主様や。なら、私が面倒見んといかんし。それに、私はまだ、シグナムとヴィータっていう子達としっかり挨拶もしてへん…。私の家族になるんやから家族を見捨てたアカンやろう。危険があがるくらいで、家族を見捨てるなんてできひん。だから、チャチャゼロ…おねがいや」

 

はやては手を合わせて頼む。その瞳は母の瞳。菩薩であった。後ろに慈悲の光明が守護騎士たちには見えた。

対してチャチャゼロは目を丸くしてすこし考えると、一瞬だが微笑した。

 

「・・・・・・・・フッ。案外、似タ者同士ダナ。オマエト御主人ハ・・・・」

 

そう言って、はやての膝から降りて、はやてから離れると、背中の羽を広げた。ばっさ、ばっさと黒い羽を動かし空中に移動して、地上のはやてたちに顔を振り向く。

 

「家ニ結界ヲ張ッテル。俺トはやてニハ出入リ可能ニシテルガ、オ前ラハ入レン。結界ニ新シク設定シ直スニモ時間ガカカルシ、オマエラ、ハヤテヲ連レテ安全な場所で守ッテオケ」

「なっ!? 一人で行くつもり!?」

「せめて、我を連れて行けっ!」

 

シャマルとザフィーラが詰め掛けるが、一言で切り捨てた。

 

「イラン」

「即答っ!?」

「未来編ジャー活躍シテナイ影薄ガ連レッテイテモ必要性ガネーンダヨ。リリカルノセクシー側ニ入レナイ、マカオ(まるで影が薄い女)ハ此処デオトナシクシトクンダナ」

「そこまで言う必要ある~っ!(泣)」

 

ひどいことを言われ、シャマルは涙を流す。はやてはきにせずチャチャゼロを見送る。

 

「はよぉ帰ってきい~な」

「オウ、終ッタラ、飯大盛リデ頼ムナ」

 

そう言った瞬間、チャチャゼロは武装神姫が逃げた方角へ、飛び去っていった。

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「ットマァ、マッハデバックステッポウデコイツラノ背中ニヘバリツイタワケダ」

「へ~。それにしても、よくあたしらでも気づかなせなかったらな~。ステルスすげぇーよ。あこがれちゃうなー」

「ソレホドデモアル(ドッヤ)」

 

誇らしく胸を張って威張るチャチャゼロ。

ヴィータははやてのことを考える。

 

「家族っかぁ…。今回の主様はへんなやつだな~」

 

そう言うがこれはしかたなかった。、ヴィータたち守護騎士たちは、これまで永遠とさまざまな闇の書の主たちに仕えてきた。そのほとんどの主がヴィータたちを道具として扱ってきた。やさしい者もいたが、結局は戦い続けるだけ。

そんな人生の中で生きてきたヴィータにとって、はやての自分たちに対する認識におかしく思えたのだ。

と、そんな会話をしていると、ギザギザの石の板の上に座っていたかぐやが、ゆらりと立ち上がった。

 

「テメェ、まだやるきか・・・?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

顔を伏せてまま、不気味にギザギザの石台に立ち尽くすも、無言で一向に動こうとはしない。

ヴィータはアイゼンを構えてかぐやを警戒、チャチャゼロはなにかおもしろそうなことを期待しつつ見つめる。

すると、かぐやは伏せたまま口を開き呟く。

 

「・・・・・マスターの応答あり・・・・ヴァーチャルダイブシステム起動・・・開始・・対象者の接続を確認・・・CSCフル稼働…ライドシステム発動まで15秒前…14、13・・・・・」

「ば、ばーちゃんのダンプシステム? しーえすしー?? ライドしすてむ?? って、なにカウントはじめていんだーこいつ?」

 

なぞの単語を口にするかぐやに、ヴィータは困惑し、チャチャゼロはかぐやの様子に無表情であることを思い出した。

この外史に来る前に、チャチャゼロは目の前の武装神姫の元となる正史の武装神姫と対面したことがあった。

技術やサイズなどは違うが、武装や機能などの基本付属機能は似ている。ならば、本来あるシステムも付いていても可笑しくは無い。それは、武装神姫の力を何倍にも発揮するシステム。マスターと神姫が二心一体になり、共に戦うことができる絆の糸。

その名も・・・・、

 

「3,2,1・・・・・――ライドインっ!」

 

そう言って、顔を上げた瞬間、無機質の瞳が回転する歯車が映りだす。体からは桃色に近い紫のオーラがあふれ出し、空間に逆流が起きる。オーラの逆流が治まると、紫のオーラに包まれれ、瞳には闘志が篭った金色の瞳がヴィータとチャチャゼロを見つめる。

 

「ホォー…」

「な、なにが起きたんだ・・・・?」

 

かぐやの変化にチャチャゼロは興味深く観察し、ヴィータは目の前のモノの

その瞬間、かぐやの姿が消えたとたん、いつのまにか完全武装したかぐやが体を低くしてヴィータの懐に入り、両手で持った大剣を横に振って胴体を斬ろうとしていた。一瞬だったため、ヴィータは反応が出来なかった。

 

「!? サガッテロ!」

「へ?――ウッゲ!?」

「ヴッィダ!(ヴィータ!?)」

 

反応が出来たチャチャゼロは、ヴィータを蹴り飛ばして大剣を回避させたが、そのまま壁に激突してしまう。シグナムがヴィータを心配する中、かぐやはチャチャゼロを大剣で突き刺そうとする。

チャチャゼロは突きを空中で回避すると、かぐやは左手に機関銃を持ち替えて連射、すぐさま腰に仕舞った双剣を引き抜いて弾丸を弾くがそれは囮。一瞬にして、チャチャゼロにキックを放ち、右手のチャージされたレーザー砲で向こうのビルの壁へと貫通して吹き飛んだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 

かぐやは後ろで拘束されているシグナムの方へ振り向くと、屋上で縛られていたはずのシグナムの姿がなく、切れた荒縄と地面に謎の亀裂しかなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・っ!?」

 

かぐやは背後から殺気を感じて、振り返ると同時に大剣を振り上げた。

カッキン!と大剣は、なにかを弾いた。

そこには深手を負ったシグナムがレヴァンティンをかぐやに目掛けて振って、弾かれた姿だった。

かぐやは大剣から機関銃に持ち替えて撃とうするも、シグナムはすぐさま後ろへバックして、かぐやからはなれた。

シグナムは、レヴァンティンを構える。腹辺りからポッキリ折れていたはずのレヴァンティンだったはずだが、今はヒビが入ってるも根元から剣先まで刀身があった。

なぜ、ここまで修復されているのかシグナムは不思議がるも、見当はついていた。チャチャゼロがやったのだと。

実はシグナムを縛り上げたさい、持っていたレヴァンティンをチャチャゼロが没収して、身体に収納していたのだ。収納されたレヴァンティンはチャチャゼロの機能によって、通常のデバイスよりもはやく修復された。チャチャゼロはレーザー砲で吹き飛ぶ寸前、まだ完全に修復されていないが、レヴァンティンを発射して、シグナムを縛っていた縄を切って、シグナムに渡しておいたのだ。

 

「調子はどうだレヴァンティン?」

『人形の修復システムのおかげで、92パーセント修復完了。戦闘に支障なし』

 

シグナムの質問にレヴァンティンははっきりと答えた。

 

「そうかぁ。ならばもうすこし付き合ってもらうぞ」

 

シグナムはかぐやを睨む付け、柄を強く握る。

目の前の敵が豹変したのが、気迫を一目見てわかった。自分より、否、それ以上の強者だと。そうでなくては、先ほどまで無双の力を見せていたチャチャゼロを吹き飛ばすことなど出来ない。

 

「ケケケ、マサカ、ハズレくじダト思ッテタガ、アタリガ混ザッテイヤガッタカ」

「おー痛って~。助けるなら、もうすこし優しくしてくれよな~」

 

ズタボロでおでこにすこしヒビが入ったチャチャゼロが嬉しそうに笑い、蹴りと壁の激突のダメージで赤く腫れた頬を手で擦るヴィータの二人がシグナムの近くによる。

 

「おまえら、無事だったのか?」

「これが無事に見えっか…?。だったら、シグナムは視力はたわわの実ともども必要ねーな…(冷たい瞳)」

「胸ニ水分行キ過ギテ、眼ガドライアイニナルカモナ。水分俸給ヲコマメニトルノヲ、オ勧メスルガ、スイカガサラニ成長スルカラ注意シテオケヨ(診察)」

「…いいかげん、私の乳ネタをやめてくれないか。ヴィータも、親の仇の目で見る眼をやめろ。いじめられてるみたいで恥かしくて耐えられん。あっ、目から汗が・・・・(涙)」

 

小さい子に泣かされる大人の女性。歴戦の騎士であるシグナムでも心は羞恥心のある乙女なのであった。

一方でかぐやはチャチャゼロたちを無視して、ビルの屋上にほったらかしのこまちを助けていた。

拘束具を小剣で斬り、口のボールを取ってあげた。

 

「・・・隊長ですか…?」

 

こまちは座った状態で、かぐやを見上げて言う。

かぐや(?)は無言で頷くと手のひらに一本のドリンクを転送させた。

 

「隊長、それは?」

「エネルギードリンクだ。武装神姫のエネルギー消費対策に、さっき博士がかぐやの倉庫にいれておいた。これを飲めば活動エネルギーが六割補給できる」

 

隊長と言われたかぐや?はこまちに説明してドリンクを渡した。

 

「あ、ありがとうございます・・・・・」

 

顔を赤くしてドリンクを受け取るこまちだが、ドリンクを見た途端、顔色が悪くなった。容器にはでエネルギードリンクとかわいく書かれたラベルが貼り付けられて、透明の容器なので、青色の液体がよく見える。スカイソーダーならまだしも、濃い青絵の具並みの液体は、博士という方が作ったモノだから味に保障できないし、何が起きるかわからないというわけで飲みたくない。

しかし、状況は状況で、はやく回復しなくてはいけないし、目の前に、無言で自分を見つめる隊長(かぐや)がいるため、飲むしかなかった。

 

「い、いただきます…」

 

グイッと、一気飲みでドリンクを飲みこまち。味はやはり不味いが、無理して喉に液体を流し込む。飲み干したころには、エネルギーが回復していた。

 

「副作用は…無いか・・・・・」

 

こまちは自分の身体をチェックするが、どこも異常は無い。安心して新たな武装を一瞬で転送させて装着した。

 

「オットトトト、コンナコトシテル間ニ、奴サン、復活シタゾ」

「これも、シグナムの胸のせいだな」

「胸は関係ないだろうぉ!(怒)」

 

こまちが復帰したことに気づいたチャチャゼロに、敵に猶予を与えたのがシグナム(巨乳)が原因だというヴィータ。シグナムは再度の乳ネタにブチキレてしまい、武器を構えながらツッコミをいれた。

一方でビルの屋上にいる神姫二人は、上空にいるチャチャゼロたちを見上げるとすぐさま戦闘態勢をとる。

こまちは両手にナイフ、副腕に太刀と持ち、シグナムとヴィータに飛び掛るように飛ぶ構えを取り、かぐや(?)は右手にライフルと左手にレーザー砲を構えて、チャチャゼロを狙い定める。

 

「第三ラウンド開始ッテカ・・・・ケケケケ」

 

 

 

 

 

 

 

一方、シャマルとザフィーラははやての安全のため、とある森林にいた。

 

「いったいなにが起きているのだ?」

 

ザフィーラは先ほど目の前で起きた、仲間の結界破壊に、さらなる結界の存在、そのあとの尋常ではないほどの魔力を考える。その答えは、横で車椅子に座る少女が答えた。

 

「う~ん。たぶん結界張ったのは一刀やな」

「わかるのですか?」

「なんとなくや♪」

 

当たり前とばかりの笑顔にザフィーラは緊張した表情を緩めた・

 

「へーすごいんですねー」

 

声には生気がなく棒読みであり、はやての隣でつま先で座りで暗くどんより空気を背負っていた。

 

「・・・シャマル、何故、暗黒を背負って落ち込んでいるのだ?」

「う~ぅ、だって~。私の結界が簡単に壊されたあとに、こんな芸術的な結界をみせられて…シャマル自信がなくなっちゃう~」

 

補助と結界のエキスパートとして、自分の結界が簡単に破壊されてことにショックを受け、さらに、追撃に自分以上の結界の術式を見せられてしまい、プライドが傷ついてしまったらしい。彼女は意外にメンタル面がモロ。

そんな彼女に、はやてはシャマル近づき頭をなでて、励ます。

 

「よし、よし、元気だしや~」

「はやてちゃん・・・!」

 

ガッバとはやての腰に抱きつくシャマル。子供に抱きつく女性は恥ずかしいものだが、シャマルは気にせず涙目で甘え、はやては甘えるシャマルは子供をあやす。その光景をザフィーラはやれやれと見守っていた。

だが、それは長く続かず、どこからかブゥゥウウウウウウウという音が聞こえてきた。

 

「ん? なんやこのバイク音?」

「索的してけど、結界に生態反応はなかっわ」

「ならば、また、あの人形モドキか・・・!」

 

なぞのバイク音にシャマルはすぐさま気を取り直して索敵魔法で調べるがチャチャゼロたちがいる方角以外、魔力と生命反応が無く、ザフィーラはだが、敵がいないとは限らないと判断し拳を構える。

ザフィーラとシャマルははやてを守る形ではやてを真ん中に互いに背を預けて、周囲を経過するが、バイクの音がするだけで敵の姿がない。

 

「まだ、見えないわね」

 

ブゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!

 

「っ!? ちがう! 上だっ!」

 

上を見上げると、目では追いつけない『赤い物体』が落ちて――否、突撃してきた。物体は垂直に反応できなかったザフィーラとシャマルの間に入り、重力の法則を無視してL字型に横平行に曲がりそのまま通り過ぎていく。遠めでチラ見だが、輪郭から赤い物体は頑丈そうな真っ赤なバイクに乗った女性?だと視覚できた。

そして、その右腕には・・・・・、

 

「きゃぁあああああああああああ!!!」

 

いつのまにか攫われたはやてが闇の書を抱えて叫びだす。バイクの女性が横平行に曲がる刹那の間に、はやてを攫った。

ザフィーラとシャマルの間の空間には車椅子だけしかない。

 

「はっ! しまった! 主ーー!!」

「はやてちゃーん!!」

 

突然の事態に脳がフリーズしたが、すぐさま再起動させ攫われたことに気がつき、二人はすぐさまはやてを助けに動こうとしたそのとき、

 

パン!パン!ババババババンバンバン!

 

「きゃっぁ!?」

「なっ!狙撃だと!?」

 

突如、シャマルとザフィーラに向かって飛んできて弾丸が二人を阻む。

 

「ザフィーラーー!!シャマルーー!!」

 

助けを呼ぶが、二人は狙撃で完全に足止めされてしまう。

「おねがいだからバイクの人止まってーーっ!」とシャマルははやてに腕を伸ばすも、バイクの女性ははやてを連れ去ってその場から離脱した。

走っては追いつけないので上空飛行しようと飛ぶが、壁を思わせる弾丸の雨がどこから飛んでくる。

 

「わぁわわあわ!?」

 

飛行して避けるシャマルだが、隙が無く激しい弾幕に避けるの精一杯。ザフィーラとシャマルはいったん地上に下りて木の陰に隠れた。すると銃撃が止んだ。

 

「はぁはぁ、さっきのはバイクの人はいったい…」

「十中八九、あの武装神姫でろう。一瞬だが、人形の間接が見えた」

「…チャチャゼロちゃんにまた、いやみ言われるわね」

「汚名返上の機会はあとだ。…主の行方は…?」

「だいじょうぶ。私の索敵範囲内よ。まだ結界の中にいるわ。・・・このまま行くと、チャチャゼロちゃんたちが入る場所に行くわね。白の子と黒い子と合流するきでしょう」

「ならば、転移魔法で先回りするしかないな。空からでは敵に狙われやすい」

 

空中には障害物がないため、隠れることができない。障壁やサークル状の結界を張れば防げるがそれだと機動力が落ちてしまい、猛スピードで移動する赤い物体には追いつくことが出来ない。

近くの敵が潜んでいる可能性が大なため、隙を見て移転しようとする。

しかし、

 

――そう、いきませんわよ

 

「なっ!? 誰だっ!」

 

聞こえてきたなぞの声。声質では女性のもの。だが、周りには女性の姿は見えず、枝と茂みが風に揺れ動き、寒気を感じる風の吹く音と草木が揺れる音しかない。

 

「相手が何処にいるか分かるクラールヴィント?」

『NO。視覚、熱線、その他のセンサーには何も引っかかりません。…ですが、不規則な周囲の空気の流れと草木が踏む音を感知しました。敵は強力なステルス機能を搭載している可能性があります』

「なんと面妖なぁ…」

 

――面妖とは失礼ですね。透明化は人類の夢ですわよ。まぁ、私には興味ない安い価値ですけど

 

「人類の夢を安物扱いってひどいわね!?」

「いいかげん姿をあらわせ!」

 

――それは無理な注文ですわ。なんせ、あなたたちはここで処分されるのだから

 

「処分だと!」

「最初は私たちも連れて行こうとしたのに、今度は処分て、何様のつもりっ!」

 

――私が知ったことではないわ。ただ、マスターがあなたたち騎士を不要と判断して、私たちを出動させたまでのこと。

 

「マスターだと? 貴様たち武装神姫を操っている者かっ!」

 

――私を操る? 冗談ではありませんわ! 可憐でカリスマオーラが豊かなこの私をあんな鈍チンで冗談が聞かなくほどのまじめ人間の仕事人間で人間なのに人間やめちゃってすっていう化け物を私の主なんて心外ですわ! マスターはただの私の従事係り! それ以上とそれ以下の存在です!

 

「マスターで従事とは矛盾してはいないか・・・?」

「人間やめたって…。その人、改造人間とかなにかなの…?」

 

――ごっほん! 私情はこれくらいにして。どっちらにしろ、あなたたち騎士とついでに醜い三頭身はすぐに削除されるでしょう。なにせ、その化け物マスターが相手をしてるのだから♪

 

「なんだとっ!?」

「ザフィーラ今すぐシグナムたちのところに向かうわよ!」

 

――それは無理ですわね。

 

シャマルは転移魔法を使用するが、なにも起きない。

 

「ま、魔法が使えない…!?」

『周囲に特殊なフィールドが発生を確認。フィールドが魔法を無効化しています』

「AMFっか!?」

 

――うふふ、魔法対策もばっちりですわよ♪

 

AMF。正式名称はアンチ・マギリンク・フィールド。効果範囲内の魔力結合を解いて魔法を無効化するフィールド系の高位防御魔法。効果範囲内では攻撃魔法だけでなく移動魔法まで妨害されてしまう魔導師にとっての天敵である。

 

「ならば、正面突破だっ!」

 

魔力で肉体を強化して、森林を駆け抜けようとするザフィーラ。シャマルは警戒しつつザフィーラの後ろに隠れて走る。

しかし、

 

――それも無理ですわよ。

 

木と木の隙間から無数の鎖が飛び出して、二人の手足などを拘束する。

二人は鎖をはずそうとするが、手足を縛られているため、鎖を取ることができない。

すると、木の陰から、半透明な輪郭線が現れると、徐々に輪郭と色彩がはっきりしていくと、鎖を持ったミミックを現れた。

 

「う、ごけない…!?」

「なんというパワーだっ!?」

 

――私からのプレゼントですわ。あの世への旅にこの顔無しもお供させてあげますわよ。

 

そう言うと、ミミックたちの胸元が丸く赤く点滅する。

 

――すぐに、お仲間も送ってあげますから先に逝っててくださいませ。

 

なぞの声は小さくなっている内に点滅が早くなる。

 

「ぐっぉぉおおおおお・・・・っ」

 

ザフィーラは空に向かって無理やり腕を伸ばす。シャマルもミミックたちがやろうとしていることを阻止しようと、意地の抵抗をするが、無意味で、点滅がさらに早くなる。

その様子をなぞの声の主が、遠くから見ていた。

 

「ごきげんよう・・・・・・雲の騎士たち・・・・・」

 

そう言って、森林に背後を向けて飛び去っていく。

そして、ミミックの点滅が激しく赤く光だした瞬間・・・・・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドッカァアアアアアアアンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンンッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっわ!? 今度はなんだぁ!?」

「向こうで爆発だと・・・!?」

 

突然の轟音にヴィータは驚き、シグナムは地色に立つ煙に赤く燃えて火炎と火花を目にする。

 

「もしや・・・主になにか異変が・・・!」

「不吉なことをいうなよシグナムっ! シャマルたちが簡単にやられるわけないだろう! あれは…そう! どっかなの天然パーマがドーナツ作りに失敗したんだ!」

「ドーナツ作りであんな大火災が起きるっかぁ!?」

 

突如の爆発による火災に、不吉なことをよぎるシグナムにヴィータはポジティブに考えるが、内面焦っていた。だが、心配している余裕が二人にはなかった。

 

「貴様ら!私との戦いの最中になに余所見をしているんだ!」

 

こまちがシグナムとヴィータに特攻しハンマーを振り下ろす。

 

「っち! しつこんだよテメェー!」

「まって、ヴィータ!」

 

シグナムの静止を聞かず、ヴィータがこまちに突進し、アイゼンを振り上げる。

 

「ハァアアアアアア!」

「うぉぉりゃああああああ!」

 

ハンマーとハンマーの面と面がぶつかり合うが、鈍器であるハンマーは上から下へ振り下ろすことで重みと推進力を乗せることで威力を発揮する道具。そのため、下から上に振り上げたハンマーは腕力だけの力だけの威力しかないので、

 

「うぁわああああああああああああ!?!?」

 

力負けをしてしまい、ヴィータはこまちのハンマーの威力と衝撃で地面に激突した。

 

「ヴィータっ!?」

「つぎは貴様だーー!」

「調子に乗るなぁぁああああああ!!」

 

黒のハンマーと炎の剣が数回交差し、甲高い金属音が響くと同時に火花を散らかす。

騎士は全力で打ち合うが、悪魔はその以上の威圧と殺意で応戦し追い詰める。

 

「ハァアアアアアアア!」

 

悪魔は両副腕で緑輝の大刀を持ち、炎の剣を切り払い、その隙に騎士の腹に蹴りを入れた。

 

「ぐっはぁ!?」

 

体がくの字に曲がり、吹き飛ぶが、悪魔は後ろに回りこんで、騎士の背中にハンマーを振る。騎士は体を捻って両腕をクロスしてハンマーを防ぐがそのままビルの激突し瓦礫に埋もれる。

すると騎士は瓦礫をどかして満身創痍で立ち上がった。

 

「はぁはぁ・・・どういうことだ・・・・? 最初のときの力がまるで違う・・・・?」

 

出会ったときは自分たちの捕獲が目的であったため力を加減をしたのか、自分たちを削除するため全力をだしたかのかは定かではないが、今、明らかになったいることは、ただ一つ・・・。

 

「こいつは・・・強い…!」

 

夜空の背後にビルが立ち尽くす町の上に浮かび、まっすぐでたくましい眼光で自分を見下ろす黒い悪魔。その悪魔の強さに騎士は戦慄した。

強さを知った騎士の疑問に悪魔は答えた。

 

「我ら、武装神姫はさまざまな経験を一瞬にして積み重ねることでき、その経験で己の戦闘力に変換させ、能力を上げる能力がある。勝利ても敗北しても経験を得られるから、戦えば常に短期間で強くなれるのさ」

「な…ならば、おまえたちは私たちとの戦いで、数時間で強くなった・・・というのか…?」

「あぁ。貴様たち騎士との戦いはすばらしいものだ。なにせ、貴様たちと戦えば戦うほど、自分が強くなっていく実感はとてもいい~。なにより、あの人形が私たちを攻撃したおかげで、また、戦いを学び、強くなった。…もっとも、アレに入る勇気と力は無いがな・・・」

 

目を頭上の夜空にむけると、そこには目では追いつけないほどの速さで何度も交差し衝突する二つの閃光が夜空を切り裂いていた。

 

 

 

 

 

 

かたや、醜悪な笑い声をこぼして殺戮を楽しむ悪魔。

かたや、あふれる闘志を纏い悪魔に挑む白き鎧の天使。

白と黒の双剣が天使の翼を切り捨てようと振るも、青い光剣が双剣を防ぎ、白き筒より青い光線を放つ。悪魔を避けるが天使は悪魔の背中に回りこみ水色に輝く大剣で両断した。されど天使の手には手ごたえがなく、二つに分かれた悪魔は消えた。残像。そう気づくと、天使をまとった戦士に直感が叫び、体を前に折り曲げて空中に回転。天使の首があった空間に刃がボロボロの古びた槍が空を貫いていた。

 

「ホォ、コレモ避ケルカ」

 

獣の槍に持ち替えたチャチャゼロはカグヤとカグヤの体を借りている隊長とういう者に興味を持つ。カグヤの体を借りているとはいえ、反射神経や直感、戦闘技術が人間を超えている。生身はこれ以上だろう。そうチャチャゼロは思った。

対して、二心一体になっている天使ことカグヤと隊長はあせっていた。だが、チャチャゼロの戦闘力の高さに追い込まれているものではない。

 

《まだいけるか01?》

《ハイ。隊長がいるからへっちゃらです。私の身体、隊長の思うがままに使ってくださいね♪》

 

声をハキハキしてアピールするが無理をしてることはバレバレである。二心一体になっているため、かぐやのボディーが相当な負担がかかり、やせ我慢をしていることなど、体が繋がっている隊長はお見通しであった。

 

(やはり、調節途中のライドインは無理かっ。これ以上戦えばこの子が持たない・・・!)

 

ライドインシステムは、マスター(操縦者)の意識と精神を武装神姫に接続し、武装神姫の戦闘力の上昇と、マスターの動きを同調し繊細な動きをトレードして遠隔操作するシステムである。このシステムが発動されている間、武装神姫はマスターの関係が高ければ高いほど、活動エネルギーを限界以上まで高め、エネルギーの回復能力が発動、使用することができる。また、マスターの動きをトレードするので、マスターの能力または戦闘技術が高ければ、レベルの低い武装神姫でも、マスターの動きに合わせることで、マスターの戦闘技術を再現ができる。

しかし、今のライドインシステムは調節途中であるため不完全な状態。上昇した活動エネルギーはかぐやの容量から溢れエネルギーを放出、オーバー状態になりこれ以上容量限界を超えるとかぐやの身体はエネルギーに耐え切れず爆発してしまう。また、武装神姫の反応速度がマスターの動きに追いついておらず、その差は0,01秒。この差でもチャチャゼロと同様な猛者相手では遅すぎるの時間。

制限付きの活動時間に機体の反応速度。この二つに問題を抱えて長期戦は不可能であり、目の前の悪魔から逃げきれる確率がゼロに等しい。

ならば、できる事はひとつ、

 

「即効でカタを付ける!」

 

デット・オブ・特攻の短期戦しかない。

かぐや(隊長)は右手にライフル、左手に機関銃で乱射しながら、チャチャゼロに突っ込む。

 

「…勝負ニ出ルカ・・・。イイゼ。乗ッタ!」

 

弾幕を中を突っ切り、当るモノは獣の槍で払う。

かぐやの懐に入ると、獣の槍を振るうが、かぐやは両手の銃を捨て、両端が刃になっているダブルソードで獣の槍をはじき返す。されどチャチャゼロの猛攻は続き、突く、薙げる、叩きつけるなど連続でかぐやに攻撃する。この猛攻にかぐや(隊長)は打ち合うが、頬や腕、胴体などに獣の槍がかすれる。

チャチャゼロはかぐや(隊長)は押し負かす。この勝負はチャチャゼロが優勢であったが、勝利の女神はかぐや(隊長)に微笑んだ。

 

「オリャッァァアアアアアア――っ!?」

 

このままかぐやを押し切ろうとしたそのとき、一瞬だが動きを止めたチャチャゼロ。

いや、止めたのではない。止まってしまったのだ。

 

(コンナトキニ聖剣ノ反動ガ・・・!?)

 

数分前、こまちとかぐやに最強の宝具エクスかリバーでSランクオーバーの魔力攻撃した。真名の開放が可能とは言え、今のチャチャゼロのボディーでは強力な魔力攻撃は負担がかかるもので、そのときの反動が今起きてしまった。

身体が錆びたブリキカンのように間接が曲がらず、空中で停止。身体に魔力を流せば一分単位で動けつようになる。

だが、短い時間であれ、かぐやと隊長にとってはまさに好機であった。

 

《マスター!》

「あぁ、チャンスは逃さん!」

 

ダブルブレードで連続斬り。だが、チャチャゼロの体に切り跡を付けつが切断できていない。

 

50秒・・・

 

《レールアクション発動! 機関銃・ビット・ライフル・バズーカーの順にポイント切り替え!》

「撃ち切るまで、撃ち続ける!」

 

空中で固定されたチャチャゼロを軸に上下左右斜めに飛行、機関銃とライフル、ビットの順に必中でチャチャゼロに撃つ。撃たれるたびに、チャチャゼロの身体は亀裂が生じ、欠片が飛び散る。

 

30秒・・・

 

「まだだっ!」

 

ゼロ距離でビームバズーカーを発射。チャチャゼロを上空に打ち上げた。

 

《つづけて、小剣のレールアクションを発動! 発動後大剣での通常攻撃に接続!》

 

かぐやはチャチャゼロより先に高く上昇、先回りをして、小剣を振り回しチャチャゼロを下に押し返す。

 

「うぉぉおおおおおおおおおお!」

 

小剣の乱れ斬り。亀裂を大きくなり、右足と左手首が両断され、獣の槍が地面に突き刺さる。

小剣を大きく振りかざし、途中で右手で持った小剣が粒子になり、粒子が集まると大剣に変わる。振りかざしたときの遠心力と大剣の重みで威力が倍増、チャチャゼロを地面に叩きつけた。

地面が陥没し、中央にはまだ原型を留めているチャチャゼロが横たわる。

 

10秒・・・・

 

かぐや(隊長)は手を止めず、チャチャゼロ目掛けて垂直に突撃する。

 

9・・・8・・・・7・・・

 

「こいつで最後だぁぁあああーー!」

《一刀(いっとう)・・・・》

 

右手にパイルドバンカーを装備して・・・・。

 

5・・・4・・・3・・・

 

「両断・白(りょうだん・はく)っ!」

 

天使の叫びとともに、青輝の牙を放つ。

 

・・・1・・・0・・・

 

「ッチ!」

 

動けるようになった悪魔だが、回避が間に合わないため、残ってる右手で鉄塊な斬馬刀を持ち防御した。

 

そして・・・・・・、

 

ドッカァアアアアアン!!!

 

轟音が鳴り響き、衝撃の摩擦で蒸気に近い白い煙が舞い上がる。

天使と悪魔の戦いに目を奪われて観望していたこまちとシグナムに、地面に叩きつてらて起き上がって見ていたヴィータの三人が、息を飲んで、煙が晴れるの待つ。

そして、煙が晴れていき、煙の中で立つ影を見つける。

最後に立っていたのは・・・・・・・、

 

「戦闘終了・・・・ライドインをオフします」

 

天使が蒸気を纏って立っていた。

足元で斬馬刀が砕け、胴体に穴が開いたボロボロの悪魔が転がっていた。

この結果に騎士の二人は肩を落とし、こまちは歓喜に声を上げた。

 

「流石です隊長! あの悪魔を倒すとは! 隊長がいればどんな敵も相手ではありません!」

 

勝利を確信するこまちに、ライドインを解除した隊長から通信が入った。

 

《02! すぐに01を回収しろっ!》

「えっ?」

 

勝利したのに、焦った声を出す隊長の命令にこまちはなぜかと疑問すると、かぐやはこまちに向かって笑った。

 

「あはははは、やっぱ、この子相手に無傷は無理だったみたい・・・」

 

そういった途端、

 

バッキ!バッキ!ドッカンンン!

 

突如としてかぐやの身体に亀裂が生じ、右腕と腰、武装が爆発し、かぐやは地面に倒れた。

 

「か…かぐやぁぁあああああ!!??」

 

負傷のシグナムを無視して、コードネームのことを抜きでかぐやの名を叫び、倒れているかぐやに向かって飛び、駆け寄る。

 

「しっかりしろかぐや!」

「えへへへ、ちょっと張り切りすぎちゃった♪」

 

こまちは背中を持ち上げてかぐらを起こす。かぐや笑顔で答えるが、右腕は無くコードらしき部品が飛び出し、身体の各部分の亀裂から配線や精密機器が覗いており、身体の外から電流がバチバチと弾けいた。

かぐやの痛々しい姿とこまちの通信映像で見ていた隊長は歯を食いしばった。

 

《ぐぅっ、やはりライドンイン状態での連続レールアクションは無理だったかっ!》

「隊長。かぐやに一体なにが・・・!?」

《普通は連続でのレールアクションは不可能なのだが、ライドインの副作用でエネルギーオーバー状態であったため、連続でのレールアクションが可能になっていた。だが、がぐやの身体と武装には連続での使用に耐え切れず、最後の限定アクションで今までの負担が一揆に爆発、負担がダメージとなり、内部からかぐやの身体を破壊し、連動して腕のパーツと武装が爆発させてしまった! すまないっ! これは私の選択ミスだ!》

 

戦況を見誤ったことに隊長は深く後悔してかぐやに謝る。こまちはこの場合どうすればいいのかわからず困惑すると、かぐやはこまちが隊長と通信状態であると気づき、左手でこまちの頬を添える。

頬を添えられたこまちは一瞬驚くが、かぐやは微笑んで言う。

 

「大丈夫ですよ隊長、こまち。私は…私たち武装神姫は隊長と違って生物ではありません。兵器です。兵器は壊れても部品を変えたり修理すれば元に戻りますよ。隊長が心配する必要はありません」

《しかしっ!》

「それに、この場合は仕方の無いことです。なにせ悪魔の人形相手でしたし…。腕一本払って倒せるなら、これくらい安いものです」

《かぐや・・・》

「だからどうか謝らないでください…。謝るくらいなら、私をほめてください。それが私にとっての謝罪だから・・・・」

《・・・・・良くがんばったなかぐや》

「ハイ♪ マスター♪」

 

隊長にほめられ満悦な笑顔で喜ぶかぐや。この様子にこまちは安心するも、少し嫉妬してしまう。

 

《こまちも、かぐやを支えてくれて感謝するっ》

「あっ…ありがとうございます」

 

不意に隊長に褒められ、照れ隠しをするこまち。だが、その顔をかぐやがニヤニヤと笑っていることに気づき、任務モードに戻る。

 

「隊長。私たちはこれからどうすればいいでしょうか? 結界を発動させた人形を倒しましたが結界はまだ健在のまま。目的の闇の書とその所有者を入手できず、かぐやが任務遂行が不可能な状態。そちらから指示をお願いします」

《わかった。まず、結界だが、こちらもまだ解析中だ。その間にあの人形を操っていた人物と接触する恐れがある。あれだけの戦闘力を持った人形を所持していた者だ。まだ、隠している戦力か能力を持っているだろう。接触すれば生還する確率が低くなる。そのため、時間の猶予がないので、結界の解除ではなく、力技で破壊する。よって、例の兵器を使用して結界を無理やりこじ開ける方法を実行する》

「よろしいのですか? こんな街中でアレを使用して…? アレを起動すると、あとあと国際的な問題が起こりますよ」

《総帥からの命令だ。あの人もなにか考えがあって簡単に許可が下りた。数分で発動する。それと、闇の書の問題ならもう片付いている》

 

そう言うと、街中にバイクの重低音が急に響き渡り、同時になにかさわいでいる声が聞こえてきた。

こまちは音のするほうへ目を向けると、道路の真ん中を走る赤いバイクがこっちらに向かっていた。

 

 

 

 

「はなせ!はなせ! はっなっせ~!!」

「だぁ~!もう~! 暴れるなって! 落ちたらどうするきだよ!」

 

ライダースーツに身を包んだピンクの髪の女性が左手で真っ赤なバイクを操縦し、目的である闇の書を抱えて暴れている所有者の少女を右腕で脇に挟んで、少女を怒鳴っていた。

女性はバイクに乗ったままこまちとかぐやに近づき、バイクが分解し部品が女性の体に纏られ、二人の前に停車。女性はヘルメットのゴーグルを上げて顔を見せた。

 

「よっ! バックアップに来たぜお二人さん」

「「03(アンネさん)っ!?」」

 

アンネ(03)といわれた武装神姫の登場に驚くこまちとかぐや。

なぜ、彼女がここにいるのかは隊長から説明する。

 

《お前たちがもしも、任務を失敗し、帰還できなくなったときを考えて、保険として03と04を作戦エリア外で待機させておいた》

「04までも…」

「ローズさんも着てたんだ」

《そして、あの人形というイレギュラーが発生したため、03と04に人形と離れた闇の書と所有者の保護と騎士の消去を命令した。別にお前たちを信用してなかったわけではない。君たちが任務を失敗しても無事に帰ってこれるように総帥に頼んでおいた。なにせ、お前たちはこれからの戦いの最前線で戦う戦士であり、組織にとって、そして私にとって大事な仲間だ。見殺しにはできん》

 

大切な仲間と言われた赤くなるかぐやとこまち。

 

対して、アンネはこまちに抱かれているかぐらの姿に顔を青くした。

 

「うわぁ~、これまたずいぶん派手にやられたな~。いったいなにが起きたんだ?」

「アハハハ、説明すると長くなるので、簡単に説明すれば連続コンボの発動のためにボタン連射して突き指した・・・みたいな感じですかね?」

「突き指どころか腕一本吹き飛んでるだろうが! しかも全身骨折付! 笑っているけど、顔まで亀裂が入って、ホラーに出てきそうな人形みたいになってるから怖い! 無理して笑うのはやめてくれっ!」

「むぅ~失礼です、この傷は勝った戦果の証なんですよ。修理して消しますけど…。それにこのあと、マスターに傷を癒してもらうために、お姫様抱っこでベットに連れて行って、そして・・・デヘヘヘへ~♪」

「…こまち、こいつマジで大丈夫なのかっ? ぶっ壊れすぎて頭ヒットしてるんじゃぁねぇの・・・?」

「イヤ。こいつは元々、頭がヒットしてるから通常道理だ」

 

と言いつつ、タメなしでかぐやを地面に落とした。

「痛った!?」と声を上げると同時に、落下の衝撃で少し部品が飛び出したことは割合しておく。

武装神姫たちがコントしている傍ら、アンネに捕まったままのはやては、陥没している地面・・・。中央で倒れているチャチャゼロを見て信じられない顔になる。

 

「そんな・・・チャチャゼロが、チャチャゼロが・・・。・・・・っ! 起きて! チャチャゼロ起きて!嘘なんやろう! 私を困らそうと寝たふりなんやんやろ!」

「ちょっ!? またっか!」

「私のご飯、食べるって約束したやん! おねがいだから起きてよ・・・!チャチャゼローー!」

 

チャチャゼロに手を伸ばして、アンネの腕の中で暴れだすはやて。必死に泣き叫ぶがチャチャゼロはピクリとも動かない。

 

「うるさいっ」

 

バッシ!

 

「うっ!?」

 

泣き叫ぶはやてにこまちは首筋にチョップして気絶させた。ちなみに、なぜか隊長への通信を切って。

 

「オイッ! 子供相手に手を出してんだよテメェは!」

「仕方が無いだろう。こいつが騒ぎ出すから・・・」

「目の前で大切なモンを壊されていれば誰だってショックを起こして暴れだすわっ!」

「うぅ~ごめんなさい~」

「なんで、かぐやが謝る!?」

 

アンネの常識的なツッコミを入れると、チョップしたこまちでは無くかぐやが謝った。

なんせ、チャチャゼロを倒したのはかぐや(と隊長)であるため、責任を感じてしまい、はやてに申し訳ないと反省した。

そのことを知らないアンネが驚くと、

 

「貴様ら~っ。よくも、我が主に手を出したな~っ」

 

憤怒の炎を燃やし、レヴァンティンの柄を強く握るシグナムが殺意に満ちた瞳をして武装神姫の前に立ちふさがる。その後ろに同じように殺意に満ちた瞳を持つヴィータがアイゼンを構える。

満身創痍だが、怒りで痛みを忘れていた。

はやてに手を出して気絶させてたことに、完全にブチ切れてしまったらしい。

 

「うわ~!こまちのせいですよ~! こまちが所有者に手を出すから、この人たち完全に切れさせて…。見て、目がマジです。命捨てますよってくらいヤバイです~。私、戦えない状態なのに~。まっさきに狙われちゃうよ~」

「私のせいかっ!?」

「あたりまえだ! お前の不注意が原因なんだからよっ!」

 

こまちのうっかりにツッコムアンネ。シグナムとヴィータは捨て身の覚悟で、武装神姫を殺すと誓う。たとえ、自分の命を犠牲にしても。

 

「貴様たちの命・・・欠片ひとつ残さん!」

 

憤怒な騎士は同時に動きだし、武装神姫に飛び掛り武器を振るう。

こまちは迎え打とうと武器を構え、かぐらはダメージが残っているため体が動けず焦り、アンネははやてを抱いているので戦えない。だが、アンネはなぜか平常心の顔であった。

 

「オイっ。見てるんならささっと助けろ・・・04っ!」

 

――しょうがないですわね・・・

 

突然、水色に光る輪が現れシグナムとヴィータの体を拘束、二人は動けず、地面に落下した。

 

「バインドっ!?」

「くそぉ、うごけねぇーっ」

 

バインドを外そうと力を入れるが、バインドが強固なため外れず壊すことができない

こまちたちは上空から下りてくる、声をかけた姿が見えない者に目を移す。

徐々に輪郭が見えて、色彩も現れると、騎士にバインドをかけた張本人が姿を見せた。

薄紫色のロールを巻いた髪に水色の武装を見に包んだ女性。

ゆっくりと地面に着地すると笑顔でこまちたちに話しかけた。

 

「ごきげんよう、ズタボロのお二人さん」

「ごきげんようってほど、時間はたっていないぞ…04…」

「その名は好きではありません。いつも道理、ローズと呼んでくださいまし。うっかり悪魔ちゃん♪」

 

ローズ(04)と名乗る女性はこまちに皮肉を言って手の甲を顎に付けてポーズをとる。

その態度にイラつくこまちだが、かぐやが「まぁまぁ」とこまちを落ち着かせ、アンネが話しを変えた。

 

「のこりの騎士は片付けたのかローズ」

「えぇ、さっきの爆発で木っ端微塵ですわ」

 

ローズの台詞にシグナムとヴィータは耳を疑った。仲間がやられてことに信じられなかった。

アンネは話し続ける。

 

「まぁ、なんにしても、これで最初の目的は達成だな。あとは隊長たちが結界を破壊してくれれば、作戦エリアから逃げるだけだ」

「ですが、そのまえに残り物を片付けなくては…」

 

ローズは横目でバインドで拘束され、地面に横たわるシグナムとヴィータを見る。

 

「だ、だめですよぉローズさん! あともう少しでこのエリアから撤退するんですからっ。無駄な殺生はいけませんっ!」

「あら? そこの三頭身人形を壊した本人がいいますかかぐやさん…?」

「そ、それは・・・・」

「隊長から騎士を抹殺しろと命令を受けたいじょう、きっちりと果たすのが貴族の役目ですわ」

「いや、役目って以前に、おまえ貴族じゃないだろうが」

「おだまりアンネっ。・・・たとへ手負いの者でも、獅子は全力で狩るのが礼儀。騎士のお仲間を殺った私だからこそ、最後まで自分の手で送って差し上げなくてはいけないのです。大丈夫すぐ終わりますから」

 

そう言って、大剣を片手に口元を上げてシグナムとヴィータに近づく。

騎士たちは、ここまでか・・・、と望みが潰えたことを悟り、腹を決めて死ぬ覚悟した。

 

「・・・嫌・・・・やめて・・・・・」

 

気絶していたはやては一時的に目を覚めて、丸太のように太いアームが接続された水色の装甲のリアパーツの背中に向かって頼む。かぐやは見たくないので、興味が無いこまちに抱っこしてもらいビルの屋上へ連れて行ってもらい、アンネははやてを連れたまま、騎士の処刑を見せないようローズから逆の方角に向かい離れる。

 

「・・・おねがいや・・・・その子に手を出さないで・・・・私のことはどうなってもええからあ・・・・」

 

意識が朦朧し視界が暗く、また眠りそうになるが必死に眠気を押さえ、遠くなっていく騎士たとに手を伸ばし、涙をためて掠れた声で訴える。

しかし、少女の願いは神姫の耳には届かず、ローズは地面に伏す二人の騎士の前に止まり見下ろすと、片手に持った大剣を上に振りかざした。

 

「痛みは一瞬…。すぐに楽にしてあげますわ♪」

 

すてきな笑みで告げると、大剣の柄を強く握り、騎士二人は目をつぶらずローズを睨んだ。

 

「・・・・やめて・・・やめて・・・・・」

 

必死に声を上げるはやてだが・・・・、

 

「アーメン」

 

無慈悲に大剣を振り下ろした。

その瞬間、はやての脳裏に一人の少年が浮かんだ。

なぜ彼を浮かんだのか分からなかったが、家族になる子たちが両断されてしまうことに過去と重なり、心から助けを求めた声が、今、大切な人の名と共に、刹那の間に絶叫を響き渡らせた。

 

「助けてぇーーっ! 一刀ーーォッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――人の敷地(結界)で好き勝手やってくれたな玩具モドキ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッキン!

 

 

騎士を斬首するはずの大剣が金属の衝撃音と共に宙に舞い、地面に突き刺した。

武装神姫はなにが起きたのか唖然し、ローズは自分と騎士の間に浮く物体に驚いていた。

 

「これは、結界っ!」

 

大剣の軌道上に突如として現れた緑色の透明な正方形。この物体をローズは結界だと判断した。

 

「いったいどこから発動させたんだ!」

「レーダーには反応が無し! 私たちのステルス機能並のモノで隠れているかも!」

「っち! 術者はどこだぁ!」

 

こまちはかぐやを背負って、ビルの屋上から周囲を警戒。

アンネをはやてを体に寄せて、結界を発動させた術者を探す。だが、探していた術者が自分の足元に現れるとは彼女は想像できなかった。

自分の影が波のように揺れ動き、異変に気づくと影が平面から立体へと彼女の後ろで膨れ上がり、一人の少年が現れた。

 

「はやてを誘拐したお礼だ。受け取れっ!」

「なっ!?――ぐっへ!?」

 

驚く暇が無く、アンネは少年に蹴り飛ばされ勢い良く低飛行する。衝撃ではやてを離してしまい、はやては空中に放り投げられたが、少年がキャッチした。

ちなみに、アンネが飛ばれされた軌道上には・・・・・

 

「わっ!? ちゃっとぉまっ――ムッきゅ!?」

 

騎士の前に立っていたローズとぶつかり、赤と水色の物体は回転しながら烈火と鉄槌の上を通り過ぎ、ビルの壁に激突、瓦礫に埋もれた。

騎士は目を丸くして、自分たちを助けたを見た。白と黒の神姫も仲間を蹴り飛ばした少年を見た。

 

 

腰まであるだろう長い茶髪を赤い綱で結んだ光沢のあるポニーテール。

 

少年なのに少女のように輪郭が凛としたやさしい顔つき

 

袖が余り裾が地面すれすれでサイズの合わない真っ白なコート。

 

首にぶら下げたルビーを思わせるほど純粋で真っ赤な十字架。

 

少年にお姫様抱っこされたはやては、突然の事態に意識が覚醒、姫様抱っこされていることにきづく。抱かれていると、知っているの感触と匂いが感じ、おそるそる少年の顔を見ると驚いた顔になるも一瞬で顔が綻び、パァァァと明るく笑顔になった。

少年は口元を上げて笑った。

 

「呼ばれて飛び出て、俺参上!てね♪」

 

 

とウィンクする少年『北郷一刀』

遅れながらにして、主人公がピンチで修羅場な現場へようやく到着したのであった。

 

 

 

 

つづく

 

 


 
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