No.686617

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第029話

今回は関羽さん覚醒回。

戦闘メインで書きましたが、イマイチしっくりきてません。
だって、戦闘書くの難しいのだもの(^_^;)
頑張って書いたので読んでね。

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2014-05-14 09:22:14 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1372   閲覧ユーザー数:1253

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第029話「高き信念を持つ者と前に進む者」

「蓮華ちゃん。雅ちゃんとあの関羽、どちらが実力上だと思う?」

雅が獲物を取りに行っている間に、恋歌は蓮華に話しかける。

蓮華は始め恋歌の問いに「いや、あの」などと少し吃りを見せていた。

長安を旅立つ前に一刀が言っていた「恋歌さんが一番強い」と言ったことを思い出していたのだ。

その昔、母親である孫堅・炎蓮が手刀で槍を折ったり岩を砕いたりと人間離れした技を見せつけていたのを思い出した。

皮膚という物体は石ほど丈夫ではないのは判っている。

だが硬さはないにしろ”弾力”というものがある。

恋歌はその弾力の法則を無視して、豚の皮膚を掻ききったのだ。

さらに驚くことは、しっかりと肉の部分は残し、”皮”だけを切り落とした。

彼女や重昌が着ている着物なるものは、自分達の着ている服より厚着だが、何かを隠し持っている様にも見えないのだ。

そんな妖術の様なことを平気な顔で行う恋歌は、確かに影村軍の将と比べるまでもなく、最高の人物であることは間違いない。

っということを考えている際に恋歌に話しかけられたので彼女は吃ったのだ。

「そうですね。雅がお屋形様に鍛えられ、成長しているのはわかりますが、まだ実力が関羽に追いついているとは……とても――」

「だったら、どちらが勝つと思う?」

「……恋歌様、実力が判っているのに、どちらが勝つなどとの判断など必要なのですか?」

「重要よ。戦いとは何が起こるかわからない物。例えば雅ちゃんと関羽が打ち合っている際に、急に関羽の槍が折れたら?」

「そ、それは流石に詭弁なのでは?」

「確かに詭弁なのかもしれない。でも(いくさ)や一騎打ちだって同じよ。天候により戦況が逆転することもあり、乗っていた馬が躓いて落馬し、そのまま討ち取られることも少なく無いわよ」

「た、確かに……まぁ――」

「他にも聞きたいことがあるわ。重昌は……どう?」

どうと聞くのは、先程恋歌が蓮華に対して”王としての”重昌を見ろと言った問いの回答を求めている。

「……人ではありません。あの方は……人間を喰らうなど、本当に人を捨てています。鬼です」

そう話した後に「しかし」と続き、沈黙を置いたあとにまた話しだした。

「……辛いですね。鬼になりきれないのは――」

蓮華は思った。

人の道を外しても、心は人間であり、鬼に完全になりきれない重昌を哀れんだ。

「そうね。いっそ人を喰らう狂人になればまだ楽なのに、重昌は人間臭すぎるのよ。全くあいつは」

恋歌の口調が変わっていることに蓮華は気づくと、その顔はいつも自分達のことを子供の様に慈しむ母親の顔ではなく。

ただ重昌を案じる女の顔が映し出されていた。

劉備側では、諸葛亮が気絶した劉備を介抱していると、劉備の意識は蘇り、気絶してから今までの状況を説明された。

「朱里ちゃん……愛紗ちゃん、勝つよね?」

城に作られた仮設の闘技場にて、青龍偃月刀を振りながら準備運動をしている関羽を見て劉備は呟いた。

「勝てますよ。愛紗さんは陶謙さんの死をきっかけに、その武力を急激に伸ばし、私に軍学を学ぶ時も元々才能があったんでしょうか。水を吸う土の様に私や雛里ちゃんから知識を吸収しています。今では鈴々ちゃんや星さんでも勝つことが出来ません。きっと大丈夫ですよ」

劉備は関羽が姉妹であることに誇りを感じていた。

諸葛亮も言っているように、影村に対する仕打ち、陶謙の死の影響により、彼女の武力は拡大。

諸葛亮と龐統に学んで知も身に付け、誰もが認める劉備軍筆頭の武将として成長。

だが、以前より自他共に厳しくもなった。

劉備も影村の影響で頻りに自分の出来ることに取り組むようになったが、関羽はまだ足りないと言い、劉備に厳しく当たった。

しかし、ただ厳しく当たるだけではなく、「仕事をする時は仕事をし、休む時は休む」と言われた。

要するに何事も全力でやれ、中途半端はするなと常に言われるようになったのだ。

それ故以前は堅物の塊であった関羽の抑え役である趙雲も、正論過ぎて何も言えない状況である。

また劉備は関羽を見た。

彼女の勝利を願って。

関羽は準備運動をしながら雅を待つが、未だに来ず、痺れを切らしかけた頃に彼女はやって来た。

だがその格好はいつもと違っていた。

いつもの首にまわす形の紫の胸当てとスリットの入った長いロングスカート。

肩周りが剥き出しの長袖では無く、スカートは色違いの赤を履き、上半身は肩の出ている黒のピチッと肌に張り付いたアンダーシャツの様な衣服で、その上から赤の大きめの羽織を着こなし、その羽織も黒の帯でしっかり止められている。

それに加え右肩には大きく『忠』と書かれた肩当てを付けていた。

金剛爆斧(こんごうばくふ)の石突を地面に刺すと、地面は少しひび割れを起こして、獲物を持ち仁王立ちの彼女は言った。

「待たせたな」っと。

この服装は恋歌が雅に作ったお手製である。

雅は共に長椅子に座っている重昌と恋歌に近付き、一つ頭を下げた。

ついでに言うと、二人の後ろに蓮華もいた。

「雅ちゃん、似合っているわ」

「ありがとうございます」

微笑み褒める恋歌に対し、雅もまたその笑顔に釣られて笑みを浮かべた。

「……雅、両手を出せ」

彼女は重昌の言われるがままに両手を出すと、彼は懐より包帯の様に巻かれている白い布を取り出して、彼女の手に片手ずつ巻き、最後に片手ずつでしっかりと結び、水をかけて布をしっかり濡らし、手を握らせ開かせをさせた。

「滑り止めだ。万が一、があってはならないからな」

その気遣いに雅は素直に礼を言うと、また重昌は彼女に助言を加えた。

「いいか雅、戦いに綺麗も汚いもない。最後にそれを言えることが出来るのは、”勝者”だ。敗者となれば『卑怯者』など言おうともそれは負け犬の遠吠えと同じになる。戦いの勝者は最後に立っていたものだ。それをよく覚えておけ」

「はい!!」

彼女の力強い返事に重昌は「行ってこい」と背中を叩いて送り出した。

今回の審査は一刀で、闘技場の中央にて一刀が立っており、その彼と一定の間隔を開けて、雅と関羽は向きあった。

関羽は偃月刀を雅に向ける様に構え、続いて雅も羽織を半分だけ脱ぎ、左肩の素肌がむき出しになり、腰を落として下段で斧を構えた。

静かな風の音がしばらく流れ、一刀の「始め」の合図で二人の獲物である偃月刀と斧はぶつかりあった。

二人の武の性質は剣戟の重さにある、

つまり敵を一刀のもとに斬り伏せる必殺の一撃が彼女らの武の性質。

力比べから一度距離をとって、関羽は大きく獲物を振り上げて雅を一刀両断するが如く獲物を叩きつける。

雅は咄嗟に避け切るが、あまりの剣戟の重さで地面に偃月刀の刀身の形が出来るように穴が空き、近距離にて獲物を振るえない雅は関羽の顔面に強烈な肘打ちを食らわせ、彼女がよろけた隙に獲物攻撃範囲の距離が確保出来たので、彼女はその斧を振り下ろした。

しかし関羽は地面に突き刺さった偃月刀を土から掘るように抜き取って、掘った勢いで土を雅の顔面に浴びせる。

雅は少し怯み、その一瞬の間で関羽は体勢を立て直して彼女に一撃を浴びせようと再び脇を狙ってくる。

雅は自身のバランスをわざと崩して、左足のヒールの様な靴の足下でそれを防いで、偃月刀の上に乗るようにして左足を置き、そのまま飛び上がり上空から垂直に落ちるように石突を向けて関羽に落ちてくる。

あまりにも速すぎたため、関羽は受け身を取りながら転がり、直ぐに体勢を立て直す為に立ち上がり。

雅は突き刺さった斧を地面から抜き取って関羽に向き直り、再び両者にらみ合いが続き、その間、関羽は先程の雅の肘打ちの影響で口の中が切れたのか、口の中に溜まった血をベッと吐き出した。

二人の壮絶な打ち合いに周りは息や唾を飲み込み、また二人は一合、また一合と打ち合いを続けた。

打ち合いが続いて、日が傾き出した頃、二人の手には互いの豪激を受け続けた証である血豆が出来、それの痛みにも割れ始めていた。

これだけ打ち合おうとも二人は軽い息切れしか起こしておらず、互いの牽制も全く緩むことは無かった。

【……くっ、流石に強い。愛紗ほどではないにしろ、以前の世界の関雲長は、自らの鍛えた武術と武将としての本能で獲物を振るっていた感じがしたが、この世界の関羽はそれだけではなく、こちらの動きを分析するように行動を探ってくる】

雅がそんなことを考えていると、関羽の方もまた考えていた。

【何なんだこの者は。ホントに汜水関の猪武者なのか?なんにしてもこのままでは拉致があかない………ならば!!】

関羽は自分の肉体の疲れも忘れ攻勢に転じ、雅は防戦一方に陥り、関羽はまた自分の獲物と雅の獲物を軋めあわせた。

続いて彼女は何かを狙うかの様に刀身をぶつけ合わせて、雅の金剛爆斧の風圧の影響を抑えるために空いている穴に獲物を突っ込み、力技で右に獲物を倒していくと、雅も当然それに負けじと反発しようとするが、今度はその反発を利用し一気に左に倒すと、力を制御しきれずに雅は獲物と共にバランスを崩され、関羽は好機とばかりに雅の手から金剛爆斧を払い上げた。

空中にて回っている金剛爆斧を見ながら、雅の頭に様々な考えが巡った。

「自分は負けたのだな」っと。

このまま関羽の青龍偃月刀で寸止めされれば、雅の敗北は確定する。

そんな中で、雅の頭にもう一つの考えが浮かんだ。

先程重昌に言われた言葉であった。

「どんなことをしても、最後に立っていた者が勝者」その台詞を思い出すと、不意に重昌によって巻かれた手の包帯が見えた。

雅が重昌に鍛えられていたのは、決して槍さばきだけではないことも思い出し、雅は突いてきた関羽の攻撃をまわりながら受け流すように避けて、その勢いのまま関羽の溝に入り顎に掌底を打ち込んだ後、肘打ちで強烈な一打を溝にお見舞いした。

関羽は顎が砕け割れない感覚と、「カハッ」っと自らの胃から空気が抜かれる様に空気を吐き、追討ちとばかりに雅は左手で関羽の襟元を掴んでそのまま一本背負いをした。

関羽は痛みと疲労ですっかり身動きが出来ないのか、痛みを堪えながらそのまま大の字になって倒れてしまい、雅が手刀を関羽の喉に突き付け、遅れて雅の金剛爆斧が地面に突き刺さり一刀の「そこまで」っと言う声が響き渡った。

関羽は雅の手元から武器を弾いた。

しかし最終的に関羽の上をとった人物は雅であった。

勝者は誰の目から見ても明らかであり、一刀は高らかに雅の勝利を宣言した。

雅は肩で息をしながら「勝ったのか?」と呟く。

関羽の拘束を解き、心ここにあらずな状態になっていると重昌が近づいて彼女の頭を撫でた。

「そうだよ雅。君の勝利だ」

あまりの嬉しさに彼女は重昌に抱きついたが、咄嗟に我に返り、慌てて重昌から離れて片膝を付いた。

「も、ももも、申し訳ございません。わた、ワタクシの様な、い、一将が、お館様になんと恐れおおいことを――」

畏まっている雅を見ながら重昌は改めて抱きしめ返した。

「お、お館様!?」

「いいんだよ、雅。君はよくやった。こんな私の胸の中で良ければ、いくらでも飛び込んでいいんだよ」

「し、しかし、私、今汗臭く……汚い」

「とんでもない。一人の武将が私の為に流してくれた汗だ。臭くもないし汚くもない。もしそれを気にしていても、私はその匂いと汚れを誇りに思う。君は私の……いや、私達の誇りだ」

彼女が周りを見ると、恋歌や一刀、蓮華や胡花も頷いており、雅は少し目に涙を浮かべながら、笑顔で重昌の名前を呼び、また改めて彼に抱きついた。

その一方で倒れている関羽は、劉備や仲間たちの彼女を心配する制止も聞かずにそのまま何処かに行ってしまった。

「見事だ。影村殿、貴方の様な所にはこの様な将が他にもいるのですか?」

劉表は両腕を広げながら近付き、雅の包容を解いて答えた。

「そうです。こんな若輩者の私に忠を尽くしてくれる”家族”が、私の宝です」

「なるほど……出来れば、その家族の一人に、私も加えてくださらぬか?」

重昌は「喜んで」と答えながら、力強い握手を交わして、二人は真名を交換した。

こうして長安、漢中、江陵の三国同盟が結ばれたのであった。

その頃、戦いに敗れた関羽は自室にて荒れに荒れていた。

「何故だ!?何故!?何故私が負けたのだ!!しかも相手はその昔、自分が猪と蔑んだ相手だ。何故!!」

どうしようもない怒りを、彼女の部屋の家具にぶつけながら彼女は喚いた。

勿論こんなことを行うこと自体が無意味であることは、彼女も重々承知している。

また、あの日隼人の墓前で言った「強くなる」という誓いが、こんなにも早く砕かれてしまったのだから。

自分の不甲斐なさに対する怒りのぶつけ場所がないのだ。

やがてまた部屋の家具を投げようとした際に、急に彼女の動きが止まってしまった。

投げようとした放物線の先に、重昌にもらった隼人の茶碗が置いていたのだ。

徐州から荊州へ逃亡の際、殆どの私財は投げ売ったのだが、目の前の茶碗だけは彼女は手放さなかった。

関羽はフラフラと近付き、茶碗を抱きしめると、涙を流し隼人の名を呼んだ。

その時隼人の声が聞こえた気がした。

「敗れたのならまた強くなればいい。俺は今でもお前を見守っている」っと。

それは幻聴だったのかはたまた隼人の霊が現世(うつしょ)に来てホントにそう言ったのかは判らなかったが、関羽は今までの何かを我慢していたかの様に、あの時の隼人の墓前の様に泣き散らした。

やがて彼女が完全に落ち着いた頃、彼女の部屋の割れた鏡に映る自分を見て、先程の涙と鼻水でグショグショになっていた顔は消えて、一つの決心を固めた将の顔となった。

【隼人様、私はもう泣きません。隼人様が認めて下さったこの才。これからどんなことが起ころうとも、私は決して諦めない。この命燃え尽きるその時まで、私は将として有り続けましょう】

この出来事が関羽の中の何かを目覚めさせ、今、劉玄徳の絶対なる守護神、『軍神』関羽が目覚めた。

 


 
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