時は過ぎ夜、零児と水月は零児の部屋に集まっていた。
「……で?何の用だ黒峰。……態々北郷に気付かれないように俺の部屋にまで来て」
「そう邪険にしないでよ……昼間の奴についてだよ、彼奴結構不味いこと言ってたからさ。僕だけで何とか出来そうならなんとかしたんだけどね……」
訝し気な表情を浮かべる零児に対して、申し訳なさそうな顔をする水月。
「……不味いこと?何言ってたんだそいつ」
「え~と確か『邪魔が入ったがまぁいい、夜にでも忍び込んで盗めばいい。……北郷一刀を始末するのはその後でも遅くはない』……だって」
「…………行くぞ、((水月|・・))。…嫌な予感がする、下手すると((一刀|・・))がそいつと鉢合わせしてるかも知れない。………こういう時のアイツは変なとこで勘がいいからな。多分資料館に行ってるぞ」
「……!!分かった、僕の方はもう準備出来てるから零児の準備が済み次第いつでも行けるよ!!」
零児の言葉に水月は驚く。零児は基本的にどれだけ親しくなったとしても名前で呼ぶことはない。……その彼が今、自分達のことを名前で呼んだ。それがどれだけ事が重大かを示している、そう理解した水月は直ぐにでも行けることを伝える。
「よし、行くぞ水月!!」
そう言いつつ、零児は傍に立て掛けてあった木刀を取り、黒のコートを羽織りつつ部屋を出る。そして、その後を水月が追いかける。
(クソ…!面倒なことになってないといいが……!!)
零児は心の中でそんなことを考えながらただ走る。
零児と水月が資料館の前に辿り着くと、そこには昼間の少年と木刀を構えている一刀がいた。
「一刀?!」
「チッ!!案の定面倒事になってるな……水月行くぞ!!」
「あ、うん!!」
時は少し遡り、水月が零児の部屋を訪れた頃。一刀は木刀を持ち、資料館への道を歩いていた。
「うう~~っ、さみぃ……」
なぜ、こんなことをしているか。一刀自身ハッキリとした理由が有るわけではないが、ただ何となく昼間に出会った学生の事が気になったからだ。彼とすれ違った時、水月には何か聞こえたのだろう。だが彼はそれを自分には教えてくれなかった、おそらく危険な内容だったからだろう。
「………だからって、黙っているわけにはいかないよな……」
一刀自身、水月の判断は間違ってないと思ってはいる。自分は少々実践的な剣術を習ったことがある学生でしかないのだ。………それでもなおこうして資料館に向かっているのは生まれつきの正義感ゆえか。
そう思考を巡らせながら資料へ向かっていた一刀だが、突如足を止める。
(……なんだ?誰かがこっちに近づいている…?)
足を止めた理由は微かに聞こえる足音、それに気づいた一刀は持っていた木刀をいつでも振れるように持ち直す。
(どうせ俺一人の力なんてたかが知れてる。……でも、何もしないなんて真っ平御免だ!!)
段々と足音が近づく。一刀は震えそうになる手に力をいれ、平静を保とうとする。
そして、姿が見えてくる。……やはり、昼間出会った少年のようだ。小走りだった少年は此方に気付くと、速度を落とし一刀の五メートルほど手前で制止する。……その手には資料館に展示されていた鏡のようなものを持っていた。
「貴様。態々こんなところに突っ立って……俺に何か用か?」
少年は一刀に対し、訝し気な表情を浮かべるも一刀を威圧するように睨み付ける。
「何の用も何も。お前、その手に持ってるやつ、どうしたんだ?」
「…………」
「…少なくとも、お前のじゃ無いだろ?……答えろよ」
「それがどうした?………貴様には関係ないことだ」
「大有りだよ。………目の前の泥棒を見過ごすわけには―――――おわっ!」
一刀は咄嗟に後ろへ飛び去る。先ほどまで一刀がいた場所を少年の蹴りが通り過ぎる。
「チッ……」
「あぶなっ!!……((木刀|これ))持ってきといてよかったな」
少年の蹴りを何とか避けた一刀は手に持っていた木刀を正眼に構える。
「………邪魔だよ、おまえ。…死ね」
少年は一刀が構えを取ったことなど関係なしに無造作に蹴りを放つ。その一つ一つが脅威的な鋭さで一刀の急所を狙っている。
「うおっ!くっ!おわっ!!」
一刀は何とかして少年の蹴りを捌き、先ほどより大きく距離を取る。
「チッ……しつこいぞ、貴様!!」
「知るかよ!!なんでわざわざそんなもん盗むんだよ!!」
「……盗み?ああ、こいつのことか」
一刀が問い掛けると、少年は持っていた鏡を一刀に見せるようにし、
「これは貴様らには必要のない物だし、貴様には関わる資格も無い。……死にたくなければ大人しく尻尾を巻いて失せろ。そして今日のことを全て忘れることだな」
と言い放つ。
「…ふざけんな!!泥棒が偉そうにしてんじゃねぇよ!!」
「あくまで邪魔をするのか?なら貴様を殺す。……突端を開かせる鍵が無くなれば外史も生まれることがないからな」
「…外史?なんだそれ」
「もう語る言葉は持たん。死……?!!チィィ!」
少年が一刀へ飛び掛かろうとした瞬間、突如銃声のような乾いた音がなり、少年は舌打ちをしつつ後ろへ飛び退く。
「一刀!!無事?!」
「大丈夫か?!北郷!!」
「水月?!それに零児まで?!」
聞き覚えのある声に一刀が振り向くと、そこには一刀が最も信頼する親友たちの姿があった。
「ふ、二人とも。どうしてここに……」
そう一刀が呟く。現在一刀を庇うように零児と水月が少年と相対している。零児は木刀を肩に担ぎ少年へと不敵な笑みを浮かべており、水月は左手の銃を少年へと向けている。
「あ?そりゃこっちのセリフだぞ?北郷。お前がこうなりそうだから黙ってたのによ」
「う……御免、迷惑掛けて」
少年の方を向いたまま一刀に答える零児。容赦無い言葉に一刀は俯く……が一刀のそんな様子に零児と水月は薄く微笑む。
「((時間稼ぎご苦労様|・・・・・・・・))、一刀。おかげでこいつを逃がさないで済んだよ」
「は……?いやいや!!水月何言って……」
「何も言うな((一刀|・・))。……あとは任せな」
そう言って零児は少年の方へと近づいていく。それを唖然とした顔で一刀は見つめていた。
「………迷惑なんかじゃないよ、一刀。確かに僕はアイツが言ったことを一刀には隠してた……でもそれは確証が無かったからだよ。決して一刀を蔑ろにしてた訳じゃあない」
一刀は優しいから無闇に人を疑わせたくなかったからね、と水月は苦笑する。
「……アリガトな水月、慰めてくれて」
「別にそんなつもりはないけどね……さて、始まるよ」
水月の呟きに一刀が少年の方を向くと零児と少年が向かい合っていた。
一方零児は少年と相対している。
「よう、数時間ぶりだな。やっぱりなんか企んでたんだなお前」
「チッ……どうしてこう邪魔ばかり入るんだ…!!」
零児の言葉には反応せず、苛立ちを露わにする少年。
「……まぁいい。貴様から殺すだけだ!!」
「やってみろよ、優男」
「減らず口を……!!」
少年は零児に対して蹴りを放つが零児はそれを身体をほんの少しずらすだけで回避する。
「おいおい、その程度かよ!!……オラッ!!」
零児は少年を挑発しつつ、木刀を振るう。
「チィイイ!!鬱陶しいぞ!!貴様!!」
「ハッ!!知らねぇよそんな事!!」
互いに相手の攻撃を躱し、その隙に反撃する。それを幾度も繰り返す。
少年は苛立ちにより、さらに蹴りの速度が上がっていくが、零児は笑ってそれを受け流していく。
「………すげぇ、零児あんなに強かったのか…?」
一刀は二人の戦いから目を離せなかった。少年の蹴りは自分が攻撃されていた時とは比べ物にならないほど鋭いものだったが、零児はいとも簡単にそれを受け流し、躱す。
零児の戦い方はお世辞にも綺麗とは言えない乱暴なものであったが、少年の猛攻を前にして笑えるほどの余裕が見える。
「……これが零児に相談した理由だね。彼、戦闘狂なところあるけど強いから……っとそろそろ手伝わないと」
唖然としていた一刀に水月は声を掛け、手に持っていた銃を構え直した。
「……なぁ、水月。……それ本物?」
「気にすることないよ。ゴム弾だから」
「そういう問題じゃねぇだろ!!銃刀法違反だろ?!」
「だから気にしないでよ……《パンッ!!》っと」
「おいおい!!!そんな気軽に撃っていいもんじゃねぇだろ?!!」
「五月蠅いよ、一刀。……狙いがずれるじゃないか」
一刀の叫びを気にも留めずに銃を撃つ水月。
その狙いは正確で、零児の動きの合間を狙いつつ、確実に少年の動きを阻害していた。
「流石だな黒峰!!………おら、これで仕舞いだ!!」
零児の振り下ろした木刀は確実に少年の胴体を捉える軌道だった。
「チッ!!舐めるなよ!!この程度……!!」
だが少年も態勢が崩れかけていた身体を強引に動かし、木刀を回避しようとする。……が、完全に避けきれず銅鏡をもっている方の腕に当たり、少年は銅鏡を落としてしまう。
「しまった!!銅鏡が……!!」
「ヤバッ……!!偶然とはいえ壊しちまった。……謝れば許してもらえるか?」
下はコンクリート、そんな所に鏡を落としたら鏡が壊れるのは必然。
零児はこの後のことを考えているが、少年の方は俯いてしまっている。
「あ~あ、壊れちゃったか。………接着剤使えばばれないよね?」
「そういう問題?!」
そこに水月と一刀も寄ってくる。………一刀はこの三人の中では物凄い苦労人のようだ。
「……ククッ、ハハハハハハハハハッ!!もう貴様らは戻れんぞ。………外史の扉は開かれてしまったからな!!」
俯いていた少年は突如笑い出し、三人に向かって話しだす。顔を上げたその眼には狂気の感情が映っているように見える。
「あ?お前急に何言って……?!」
零児が豹変した少年に訝し気な視線を向けると、少年の足元にある割れた銅鏡から、眩い光が放たれ、三人の視界を潰す。
「な、なんだよこれ?!」
一刀が思わず声を上げる。声こそ出さないが、他の二人も同じように戸惑っているようだ。
そんな中、銅鏡から放たれる光はどんどん輝きを増すごとに零児達の意識は薄れていく。
「貴様らにはもう平穏な生活など訪れん!!精々努力することだな!!」
零児達が気を失う前に聞いたのはそんな少年の叫びだった。
後書き
どうも皆さんここまで読んでいただいてありがとうございます。なんか左慈のキャラ可笑しかったけどご了承ください。
さて、そういえば前回主人公たちの詳しい説明抜けてたんで説明しますね。
まず全体メイン且つ魏ルート担当、((緋霧零児|あかきりれいじ))。
身長178㎝、体重70㎏。血が酸化したような赤黒い髪の色、切れ長の目。
モデルはTOX2のルドガーみたいな感じですかね。
性格はパッと見は粗暴だけど心優しい人物です。
続いては呉担当、((黒峰水月|くろみねみつき))。
身長162㎝、体重54㎏。髪の色はブロンド、容姿は一言でいうと男の娘ですね。モデルはISのシャルル・デュノア。
性格は狡猾、利用できるものは利用する。けど一度信頼したらどんな手を使っても信頼した相手に尽くす。何となくヤンデレ気質の子です。軍師向きですね。
次、蜀担当、北郷一刀。原作通り、種馬っぷりを発揮してもらいます。……描写?出来るか!!まぁ相違点としては仮面ライダーの力と、原作より強いですかね。大体馬岱より上かな。零児はもっと強いですよ?左慈とサシでやれますし。
オリキャラ二人の三国志についての知識は一刀は原作と同じ、零児、水月は年月、使われた策まで覚えてる感じですかね。
それではこのあたりで、次もなるべく早く上げれるようにしたいと思います。
次の話は外史に降り立った零児から始めます。
それでわ~
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オリキャラや原作キャラの性格改変がありますが、ご了承ください。