No.683749

九番目の熾天使・外伝 運命の獅子

第十二話 獅子とまほら武道会・予選

2014-05-04 09:00:02 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:2253   閲覧ユーザー数:2140

第十二話 獅子とまほら武道会・予選

 

『まほら武道会の予選は二十名一(グループ)のバトルロイヤル形式!!』

 

レースクイーンに扮した和美がマイクを握り叫ぶ

その声に反応したのかは定かではないが、上空を飛んでいた飛行船のライトが点灯

予選の舞台と、篩にかけられる選手達を照らし出す

 

『AからHまでの各組より二名ずつが選出!!合計十六名が明日の本選に出場となります!!』

「ってことは、今日はネギさんと戦わないってことですね…」

「ざ、残念そうだね、ウル君」

 

E、と書かれたくじを恨めしげに見つめながらウルは嘆息する

同じくEと書かれたくじを手にしたネギは弟分に若干引き気味だ

どうやら余程ネギと戦いたかったらしい

 

『優勝賞金一千万円!また二位と三位にもそれぞれ賞金が!くじにより二十名そろった組から順次試合開始!定員百六十名に達するギリギリまで参加受付中!麻帆良の強者の皆さん奮ってご参加を!!』

 

まず試合が始まったのはA組

ここには楓がくじ引きで振り分けられており、その結果―

 

『おおっと!?昨年のまほら武道会本選まで勝ち上がった長瀬選手、今年も分身の術を使用ー!!はたして破れる猛者はいるのかぁ~!?』

「その言い方だと無敵に聞こえるでござるが、割と小手先の技術でござるよ?」

 

そう、幾人にも分身して他の参加者を圧倒していたのだ

ある分身はレスリング部の巨漢を舞台から投げ飛ばし、またある分身は空手部の主将を蹴りで昏倒させている

そんな分身たちの本体は、舞台の中央で余裕そうに腕を組んでいた

 

「くっ、貰ったぜ!烈空掌(れっくうしょう)!」

 

そんな中、一人の選手が放った気弾が楓本体に飛ぶ

しかし楓は気弾をいともたやすく跳躍して回避、スタッと着地して糸目をほんの僅かに開いた

 

「おろ、お主は去年拙者に敗れた…何選手でござったか?」

「覚えてなかったのかよ!」

 

気弾を放った選手が滝のような涙を目じりから噴出す

ちなみにこの漫才の間も楓の分身は他の選手を駆逐している

 

「冗談でござるよ、中村選手でござろう?」

「ああ、そうだ!去年あんたに負けちまってから、格闘術を学んだ!もう去年までの俺じゃあねえぜ!」

 

言いながら中村は習った格闘術の構えを取る

それは足を前後に開き後ろに引いた足に体重をかけ、前に出した足で蹴りを放ちやすくなる構え

また膝を少し曲げ、上半身は先ほどまでの(てのひら)ではなく(こぶし)を握っている

 

「なるほどなるほど、空手でござるか」

 

中村が取った構えは、空手の『猫足立ちの構え』と呼ばれるものだった

 

「さあ―行くぜ!」

 

気合は充分、舞台に緊張が走る

 

 

 

楓は自然体、されど隙はまったく無い

中村は構えを解かず、あくまで楓だけに集中している

 

 

 

 

 

 

 

 

何者かが舞台から落ちたズズゥ…ン…と言う音と同時に、楓が飛び出した

そして中村の顎を打ち抜き、昏倒させようとして―

 

 

 

 

 

『―そこまで!A組の本選出場者は長瀬楓選手と、中村達也選手でーす!』

「おろ?」

 

どうやら先ほど舞台から落とされた何者かで予選は終わってしまったらしい

楓は顎を狙った掌底を寸前で止め、中村はそれを手刀で打ち払おうとしていた

 

「なんと、見えていたでござるか?」

「いいや、見えなかったぜ?流石に速いな」

 

ではなぜ?と問いかける楓に、中村は答えない

 

「本選で戦うかもしれない相手に情報は渡さねーよ。高校生に大人気ないとは思うが、あんたは俺より間違いなく格上だからな」

 

じゃあな、と手を振りながら中村は予選の舞台を降りた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いてはB組の試合、ここには小太郎と真名が振り分けられていた

獣のような動きで縦横無尽に舞台を動き回り、参加者を翻弄する

 

「はっはっは、これは楽で良いな」

「たつみー姉ちゃんも少しは戦ってや…流石に俺もこの数は面倒なんやで?」

「断る。本来私はスナイパーだからな、近接戦の手札は限られている。予選で切りたくは無いさ」

「まあその考えは分からんでもないわ」

 

着々と参加者達を倒して行く小太郎

そして最後の相手の足を払い、その腹部に強烈な拳を入れて気絶させた

 

『はいそこまで!B組の本選出場者は村上小太郎選手と龍宮真名選手でーす!』

 

 

そしてC組、D組の試合と続き今はE組、ウルとネギが出場する組の試合である

なおC組の予選突破者は明日菜とタカミチ、D組は愛衣と古菲だった

それぞれ抜群のコンビネーションで他者を圧倒、開始後一分経たないで終了したスピード勝負だった

…まあ愛衣はほぼ逃げているだけでは有ったが

 

『さてお次はE組の予選が開始しました!この組での注目選手はなんと言ってもネギ選手とウルティムス選手でしょう!ネギ選手は昨年のまほら武道会の準優勝者、そしてウルティムス選手はウルティマホラの準優勝者!この小さき猛者二人を倒せる更なる猛者はいないのか~!?』

「和美さんも煽らなくって良いのにー…」

「あはは、朝倉さんも相変わらずだなぁ…」

 

言いながら二人は背中合わせになり構えを取る

二人ともに八極拳の構えだ

 

「さあ、行きましょうネギさん!」

「そうだね、ウル君!」

 

二人の少年拳士の無双が、始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リアスの目の前には、クラスメイトであり同じ部活のメンバーである少年が大の男たちを軽々と吹き飛ばしている光景があった

今また、ウルは身長差が三倍はあろうかという巨漢を八極拳の技のひとつ、『大浙江(だいせつこう)』でリングアウトにした所だ

 

嘘…ウルってあんなに強かったの…?

 

それがリアスの頭に浮かぶ、嘘偽りない考えだった

リアスも同じようなことは出来るだろう、しかしそれは相手を殺してしまう

悪魔である膂力もそうだが、自分の持つ『滅びの力』では殺さずに済ませる自信はない

 

「リアス嬢、ウル君の強さはあんなものではありませんよ」

「…どなたですか?」

 

リアスの背後にローブを纏いフードで顔を隠した胡散臭い人物が現れる

突然現れた不審者に、リアスは警戒心を隠そうともしない

 

「おや、そういえば自己紹介をしていませんでしたね。私は紅き翼(アラルブラ)の一員、アルビレオ・イマと申します。それにしても流石兄妹ですねえ、真紅の髪がサーゼクスそっくりです」

「紅き翼の…お兄様とお知り合いなのですか!?」

「ええ、私はエヴァンジェリンとも旧き友なので、その伝手ですね」

「それより、ウル君の強さがあんなものではないとは、どういう事なのでしょうか?」

 

アルビレオとリアスの会話に朱乃が割り込む

 

「そうですね、彼は今魔力も気も使ってはいません。それは彼と一緒に戦っているネギ君も同様です。このことは彼らを観察すれば分かることですよ」

「…本当だわ、ウルもネギ君も一切魔力を使ってない。ということは、アレは純粋な身体能力…」

「ええ、彼らが魔力や気を使ってしまうと、一般人は少々無事では済まなくなってしまうのですよ。具体的にはストレートパンチで頭がトマト的にクシャッと潰れてしまいます」

 

瞬間、リアスも朱乃も、横で聞いていた響も戦慄した

何せそんな事が出来る存在が普通に学校に通っている事実に

 

「大丈夫ですよ。彼らはむやみやたらと力を振るう愚か者ではありません。むしろ力を正しく扱える子達です。それはウル君の人となりを知っている君達なら理解できるはずですよ」

 

その言葉にはっとする三人

ウルは初対面で、あってから一時間もしていない響に自身の秘密―魔法のことを話し、彼女の心を救った

スタンドという異能を生まれ持ってしまった響、その彼女に秘匿を義務付けられている魔法を披露してまで彼女の居場所を作った

そのお人よし加減を思い出して三人は落ち着く

 

「とはいえ彼らは精神的にはまだ幼い。ネギ君は聡明ですが人生経験がまだまだ浅い。ウル君もそうです。彼らは危うすぎる。いつ闇に落ちるか、分からないのです」

 

アルビレオの言葉にまた三人は黙り込んでしまう

 

「幸いにもネギ君はいい仲間に恵まれました。彼はもう大丈夫でしょう。問題はウル君です」

 

アルビレオは珍しく思いつめたような表情で言葉を紡ぐ

 

「―彼は自身の心を閉ざしている。彼自身の、特異な出自によって」

「どういう事かしら?詳しく聞かせてもらいたいのだけれど」

「それはできません。彼が貴女たちに話していないのであれば、私は貴女たちに伝えることは出来ません」

 

だからこそ―とアルビレオは続ける

 

「貴女達にはウル君から話を聞き、本当の意味でウル君の仲間になってもらいたいのです。彼の心の闇を晴らすために。そして彼が闇に落ちそうになったときに、支えてあげてほしいのです」

 

リアスたちはその言葉を聞き、それぞれ答える

 

「当然よ、貴方は知らないかもしれないけど、グレモリーは眷属を大事にすることで有名なの。もちろん眷属以外の友人もね!」

「うふふ、今は私以外にリアスの眷族はいませんけどね。だからこそ、ウル君にも早く眷属入りして貰ってほしいですね」

「ウルは自分を救ってくれたさ!ウルが大変なときは自分が助ける!だって自分は、スタンド使いだからな!」

 

答えを聞き、アルビレオは満足そうに目を細めて薄く笑う

 

「ふふ、その答えを聞けただけでも満足です。では私はこれで、失礼」

「あ、ちょっと!」

「き、消えちゃったぞ…不思議な人だったなぁ」

 

アルビレオは転移魔法を発動し、姿を消す

リアスは引きとめようとするが間に合わず、響はぽかーんとアルビレオがいた場所を眺めている

 

『―そこまで!予定調和というべきか!?E組の本選出場者はウルティムス・F・L・マクダウェル選手とネギ・スプリングフィールド選手でーす!』

 

そしてそこで、和美のアナウンスが会場に響いた

 

 

 

 

 

その後F組は高音と豪徳寺薫と言う改造学ランにリーゼントの青年が予選を突破

G組は山下慶一と言う3D(スリーディメンション)柔術なる格闘技を使う青年とイシュト・カリン・オーテと言うハンマーを扱う少女だった

 

そして最後のH組である問題が発生した

その問題と言うのが―

 

「―なぜ…何故貴様がここにいる!月詠(つくよみ)!!」

「いややわぁ、折角(せぇっかく)センパイと死合いにきたのに~相変わらずセンパイはいけずどすなぁ」

「黙れ!神鳴流奥義・斬岩剣!」

にとーれんげきざーんがーんけーん(二刀連撃斬岩剣)!」

 

かつて『完全なる世界(コズモ・エンテレケイア)』に雇われ、ネギたちの相手に回った神鳴流剣士―月詠のことだった

この月詠と言う少女、格好こそ普通の少女ではあるがその実かなりの戦闘狂である

完全なる世界に雇われた理由も金ではなく『気兼ねなく死合いができて斬れるから』と公言するあたり筋金入りである

 

「神鳴流奥義・百烈桜華斬(ひゃくれつおうかざん)!」

「神鳴流奥義・にとーさみだれぎりー(二刀五月雨斬り)!」

 

刹那はモップを、月詠は二本の木刀で奥義を放つ

しかし、その余波の結果…

 

『はーいお二人ともそこまでー!H組は桜咲刹那選手と青山(・・)月詠選手でーす!』

「なっ、貴様が青山…神鳴流宗家の者だと!?」

「はい~一応血縁的にはそうなっとりますー」

 

驚愕する刹那、たいして間延びした口調で肯定する月詠からは確証は得られそうにはない

 

『さて、これで本選出場者が出揃いました!本選は明朝八時より、龍宮神社特別会場にて!なお今回のトーナメント表は本選開始直前に発表させていただきますので、あしからず!』

 

 

 

 

 

『それでは皆様、また明日の本選でお会いいたしましょう!今夜も残り少ないですが麻帆良祭をお楽しみください!』

 

 

 

 

さて、ここに月詠ともう一人、爆弾をぶっこんでみました

正直言って能力がぜんぜん分からんです誰かおせーて

 

5/5 楓が二人いたので本文一部修正


 
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