「ねー孝彦。アンタなんで今日はこんなに遅くなったのよー! 日直じゃなかったわよね?」
「あーうん、ちょっとね~。大したことじゃないよ」
孝彦がそう言うなら、きっと本当に大したことが無いんだと思う。とにかく素直で単純なヤツなのだ。
「それはいいんだけどね。せっかく携帯持ってるんだから、こういう時こそメールしてくれりゃいいのに。いつも通り待ってたんだよー、私」
「あ~……そうだね。ごめん、千香」
全く……。もう少し周りに目を向けられるヤツにならないもんかね。
――って、もしそうなら私の気持ちにも気づくよなー普通。
はぁー。とため息。
私は短くなった自分の髪をさわった。
昨日、腰近くまで伸ばしてた髪を肩くらいまでバッサリ切ったというのに、孝彦は結局私から言い出すまで気づかなかった。
しかも、好きな人ができたから切ったんだよ、って言ったのに、すぐに今日の数学の小テストの話題に変えちゃうしー! 孝彦は気にならないのー!?
この髪型だって、孝彦の好みに合わせたんだよ!
と、これが今朝の登校の時の話。
私なりには相当アピールしてるつもりなんだけどなー。
孝彦の方も私と一番話してるし、脈有りだとは思うんだけど……。
それに、今日の昼休みには親友の2人から――
「千香はもっともっと積極的にアピールしなきゃダメだって!!」
「そ~だよ~千香! あの孝彦君でしょ~!? あの鈍さは少しくらいじゃどうしようもできないわよ~」
「でも、孝彦が誰を好きなのかも分かんないし……」
「こらこら千香! アンタの普段の元気良さはどこへ消えた!! アンタ達の両思いは私たちが保証するって、ねぇ?」
「うんうん! 千香と孝彦君は誰がどう見ても両思いだよ~! 後は千香がもっと積極的にいくだけなのよ~」
という後押しもあったんだ! もっと、核心に迫る質問をしよう。うん、それだ!!
「孝彦! ほ、ほら、あのさ。私、好きな人ができたって朝言ったでしょ?」
「あ~うん、言ってたね~」
「それ、誰のことだかわかる?」
「ヒントは~?」
「えーいきなり!? 少しは考えてよー!」
って思ったけど、きっとヒント無しじゃ絶対にたどり着けないんだろうなー、この鈍すぎ孝彦は。
「……しかたないなー、私とよく話してる人っ」
「う~ん。今日色んな部活を見てきたんだけど、千香がよくしゃべる人なんていなかったし」
「ええっ!? 孝彦、部活見てきたの!? なんで?」
「だって千香が好きな人できたって言うからさ~。やっぱり気になるよ、幼なじみだし~」
なんだ、ちゃんと気にしてくれてるんじゃん!
だったら、もう答え言ってもいいかな。
「答え、言っちゃうよ! 私の好きな人はね……私の目の前の人っ!!」
「ええっ!?」
孝彦の驚きに満ちた顔。
アンタホントに気づかなかったの? 私がずっと孝彦を好きだった事。
まー、孝彦らしいっちゃらしいんだけど。
そして、孝彦が口を開く。
……なんて言ってくれるんだろう。
「……へー、びっくりしたよ~。千香は省吾くんが好きだったんだね~」
「…………は?」
全く意味が分からない。
……いや。あー、そういうことか。
全くこいつはぁ~、
「それ、私の前の席ってだけじゃん!?」
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ラブコメSS(?)
以前自分のブログに載せたものを修正してみました。
サクッと読めると思います。
気に入って頂けましたら幸いです。