「……何してんだヨ…。おい、聞こえてんのカ」
漆黒の闇がどこまでも続いていきそうな夜空。
…星、ひとつねぇな。
そんな事を考えながらぼんやりと空を見ていると、いつもの喧嘩相手が睨み付けてきた。
なんで、こんな時にテメェがいるんでィ。
はあ、と息をはいて声の主の方へと向き合う。
「よぉ、チャイナ」
「よぉ、じゃねーヨ!何してんのかって聞いているアル!!」
いつもより、声を張り上げている神楽。
怒りで体がふるえているようだ。
それも仕方ないのかも知れないが。
沖田の周りには血の海といっても過言ではないぐらい恐ろしい状況だった。
たくさんの死体が倒れている中心に沖田が無表情で突っ立っているのだ。
「…幕府の命令でさァ。何も悪いことしてねぇんだよ、コイツら。
でも、御上の命には逆らえねぇんでね」
血のついた刀を空に翳す。
月の光で、刀に淡く自分が映っている。
情けねぇ面してらァ。
いつもの自分らしくない表情から逃れるように、
沖田は刀を神楽の方へ向けた。
「全然、手応えねぇ奴らでつまんなかったんでィ。…相手しろよ、チャイナ」
「オマエ…、最低アル」
低く、冷えた声が響きわたる。
深い青色の双眼が歪んでいるのを見て、綺麗だねィと何となく思った。
こんな状況なのに、冷静すぎる自分に少し笑えてくる。
「私も…、人たくさん殺したネ。殺したくなんか、なかったのに。
その後、いつも苦しくなったアル。オマエは、苦しくないのカ…?」
苦しい?
「……さあな。もう分かんねぇや」
ただ、むなしくて。
むなしくて仕方ねぇ。
近藤さんたちの手を汚すのが嫌で、自ら名乗りでたのだけれど
どうも気持ちの整理が出来ないままだった。
勿論、幕府の犬である事ぐらい承知の上だったのだ。
それでも、信じていたかったんだ。
自分の信念は、力は、決して違えることはないんだと。
「バカだ…、オマエ、本当にバカアル」
「バカとは失礼でさァ。なんでィ、やるのかよ」
「仕方ないから戦ってやるヨ。…じゃないと」
オマエ、泣きそうな顔してるからナ。
神楽は、その言葉を口にはせず、ゆっくりと目の前で傘を構えた。
それを見て、沖田は目を細めた。
そしてニッと口角を引き上げる。
「本気できてくだせぇよ」
「バカにすんなアル。何があってもサドには負けねーヨ」
むせかえる血の匂い。
刀を真っ赤に染めて、夜空を眺めている時にふと思ったんだ。
もしー…、チャイナを殺さなくてはならない時が来たら俺はどうするんだろうと。
少しだけ…、しんどいと思った。
でもそんなの心配ねぇや。
俺は、チャイナを殺せはしねぇんだ。
だってこんなにも、コイツは強いんだから。
この俺が唯一認める、最悪で最強なライバル。
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