No.681059

恋姫OROCHI(仮) 一章・弐ノ陸 ~判決~

DTKさん

DTKです。
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、13本目です。

ようやく剣丞たち登場します。
書いててすごい楽しかった悪役の末期にも注目して下さいw

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2014-04-24 00:29:34 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4894   閲覧ユーザー数:4186

 

 

 

 

 

「いた!多分あそこだっ!」

 

先頭を走る蒲公英が指を差す。

鬼の集団が何かを取り囲んでいるようだ。

 

「うわっ!ヤバイぞ、あれは」

 

その中心には、周りの鬼と比べ、数倍大きい鬼が見える。

間違いなく、中級かそれ以上の力の持ち主だろう。

 

「翠姉ちゃんが危ない!急ごう!!」

 

剣丞の号令で三人は速度を一段階上げた。

誰も気付かなかったが、剣丞の刀が、ぼんやりと輝きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人は満身創痍だった。

化け物自体は、そこまで強くはない。

霞や翠と同じか、やや向こうの方が上、という程度だろう。

しかも、一応正々堂々と称して、他の化け物には直接手出しはさせていない。

ただぐるりと周りを囲み、肉の闘技場の形をとっている。

二人にとっては好都合。

卑怯の謗りを気にせず、二人でかかれば負ける相手ではない。

はずなのだが……

 

「はぁ……はぁ……ちぃっ、ポンポンポンポン仲間を投げくさってからに……」

 

そう、先ほど翠に対してとったように、味方の、自分より小さな化け物を投げつけては、死角から攻撃を仕掛けてくる。

それに対し翠と霞も、左右から波状攻撃などを試みるも、片方に二匹投げ、もう片方を自ら対応する、など器用に戦い分ける。

 

戦い始めて一刻強。

致命傷は負わないまでも、翠と霞の身体には、確実に傷と疲労が蓄積していった。

 

「ハッハッハッ!この程度ですか!?音に聞こえし錦馬超と驍将・張文遠とは、この程度なのですか!!?」

「はぁ……うっせ!…はぁ……卑怯な手ばっか使ってきやがって……」

「卑怯?あぁ、これのことですか?」

 

ひょいと、間近の化け物を掴みあげる。

 

「こんな雑兵など、ただの道具でしょう?あなた方も雑兵を手足のように扱い、時には死ねと下知をするではありませんか?それと同じことです。優れたものが劣るものを遣い、優れたものが勝利や栄誉、富や権力を手にする。そうして世界は成り立っているではありませんか?」

 

ぐしゃりと、演説終わりの手遊びで手中の化け物を握り潰すと、ニヤリと口の端を上げる。

 

「アカンわ…このボケ、一度ぶちのめしたらんと気ぃが済まんわ」

「奇遇だな。あたしも同じことを考えてたぜ」

 

気力を振り絞り、膝に力を込め、勇み立つ。

が、傍から見ても分かるくらい膝は笑い、立っているのがやっとなのは明白だった。

 

「やれやれ、このように劣った存在に統治されていたとは…嘆かわしい。もうこのような事態は終わりにしましょう。

 ここであなた方を討ち、曹操、劉備、孫権を討ち、三国同盟の象徴をも討ち、私が大陸の統治者となる!」

 

化け物が止めを刺すため、地を蹴ろうと身を屈めた。

その時――――

 

 

 

「「「ギヤァアァァァアァアッァアアァ!!!」」」

 

 

 

二人と一匹を囲む化け物の輪の後方から、汚い喚声が鳴り響いた。

 

「な、何事ですかっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく剣丞たちは鬼の輪を射程に捕らえた。

都合の良いことに、全員背を向けており、こちらには全く気付いていないようだ。

剣丞たちは駆ける勢いのまま、鬼の群れに強襲をかけることにした。

 

「鞠っ!」

「分かったのっ」

 

剣丞の声に応えて、鞠が左文字を抜き放つ。

 

「いくのっ!随波斎流、疾風烈風砕雷矢!!」

「「「ギヤァアァァァアァアッァアアァ!!!」」」

 

鞠の刀から放たれた氣の塊が最後列の鬼を十数匹消し去る。

 

「はあぁっ!!」

 

次いで、剣丞の斬撃。

熱した包丁で脂を切るが如く、刀が滑らかに鬼の身体を切り裂く。

 

「…すごい」

 

蒲公英自身も鬼を退治しながら、剣丞の斬撃に見惚れる。

鬼相手なら戦力になる、というのは間違いではなかったようだ。

 

「蒲公英姉ちゃん!」

「は、はいっ!?」

「行こう!翠姉ちゃんを助けるんだ!」

「う……うんっ!」

「私も行きます!」

 

活躍が目立たなかった明命も続く。

 

「まだまだいくのー!!疾風烈風砕雷矢ぁーー!!」

 

四方八方に飛び交う鞠のお家流。

四位一体の戦いで鬼の群れを掻き分けながら、ついに四人は鬼の輪を突破した。

 

「お姉様ーーー!!!」

「お、お前っ……」

 

ざっ、と地面を踏み鳴らし、翠の前に滑り込む蒲公英。

 

「お姉様、無事っ!?」

「バカ!お前蒲公英っ!何で戻ってきたんだよっ!」

「うわ…お姉様にバカって言われた…お姉様を助けに来たに決まってるでしょ!とびっきりの援軍を連れてねっ!」

「援軍って…」

 

洛陽にいる将は霞だけのはず。いったい誰が――

 

「大丈夫っ!?」

 

蒲公英から遅れること数拍。

刀を携えて、白く光り輝く服を身に纏った男が、翠と霞を庇うように飛び込んできた。

そんな、何故『彼』がここに――

 

「ご主人様っ!?」「一刀!?」

「大丈夫!?翠姉ちゃん!霞姉ちゃん!」

 

その彼が振り返る。

 

「……じゃない?」「……誰や?」

 

着ている服は同じで、顔もどこか面影があるものの、二人が思い描いていた人物、北郷一刀ではなかった。

 

「その話は後!明命姉ちゃん、二人をお願いできる?」

「はいっ、お任せください!」

 

傷だらけの二人を、護衛の専門家に任せると、剣丞、蒲公英、そして鬼の群れを半壊させ合流した鞠は、巨大な鬼に立ち向かう。

 

「ふぅむ……何者かと思えば。……馬岱、以外は見覚えのない顔ですね」

 

ふぅ、と一つ、わざとらしく息を吐く。

 

「馬岱は馬超に比べれば一枚も二枚も劣るとの評判。いくら塵芥(ちりあくた)が集まったところで、私には勝てませんよ?」

 

にんまりと余裕の笑みを見せる巨大鬼。

 

「はぁ……どうして人間が鬼になると、こんなに増長するかね?」

 

こちらの力量を確認してもいないのに。

剣丞は二条館で会った鬼を思い出す。

 

「ま、塵芥が集まるとどうなるか、見せてやるよ。二人とも、行くよ!」

「「応っ!」なのっ!」

 

三人は三方から突撃をかける。

 

「馬鹿はやることが同じですね」

 

傍らの鬼を両手で掴むと、今までと同じように、蒲公英と剣丞に投げつける。

一番小さな輩なら、どうとでもなると踏んだのだ。

それが大いなる誤謬だと気付かずに…

 

「随波斎流、疾風烈風砕雷矢っ!!」

 

鞠の刀から氣弾が飛び出す。

 

「なっ!?」

 

面を食らったのは大型の鬼。

氣弾のいくつかは蒲公英と剣丞に投げつけられた鬼を打ち抜き、残りが大型の鬼目掛けて飛来する。

 

「ちぃ!」

 

不意を突かれたが、すんでのところで避ける。

が、

 

「「はぁぁぁぁぁっ!!!」」

 

鬼が消えるときに発生した粒子の向こうから、蒲公英と剣丞が飛び出してくる。

 

「な゛っ……」

 

体制を崩された上での、完全な死角からの攻撃。

二人が繰り出した槍と刀が鬼の身体を切り裂く。

 

「ぐがぁあぁあぁあぁっぁぁっ!!」

 

蒲公英の槍が右膝を、剣丞の刀が左腕を深く傷つける。

なんとか左脚と右腕で身体を支え転倒は免れたが、戦闘行為を続けるのが困難なのは明白だった。

 

「はぁっ…グゾぉっ!!こうナッたら正々堂々なんテ言ってられルカ!!総員、コいつらを喰い殺してじまえ!!」

 

 

…………

 

 

「ドうシタっ!?聞こえンのかゴミども!早くこイヅらを……」

 

苦々しげに鬼は振り返る。が……

 

「……ぅが」

 

自分の直後で大軍が控えていると思っていた鬼は愕然とした。

その数は想像より遥かに少なく、その距離は遥かに遠かった。

 

「まだ分からねぇのかよ」

 

はっ、と正面を向くとそこには、それぞれ蒲公英と明命に支えられているが、翠と霞が立っていた。

 

「獣だって、群れの長が無体すれば、その長を見限るさ」

「それにアンタが景気よくポンポン投げるもんやから、そりゃ数も減るわな」

 

半分はこの嬢ちゃんのおかげやけどな、と空いている手で、鞠の頭を撫でる霞。

えへへ~と笑う鞠。

その脇には剣丞もおり、六人で鬼を半円状に囲っていた。

 

「ま、まま、待ってくれっ!話せば分かる!」

 

それまでの態度は何処へやら。

痛みのせいか危機が迫っているせいか、顔いっぱいに脂汗をかきながら、みすぼらしく弁解を始める鬼。

人であった時の生い立ちから始まり、官吏となってからの待遇の不満、果ては鬼になったのは自らの意思ではないのだから、酌量の余地はあるだろうという主張にまで至った。

舌はよく回るらしい。

 

「そ、そうだ!私が仲間になって差し上げましょう!今や私は、かの呂奉先を遥かに凌駕する武を持っています!

 どうでしょう?あなた方にも損はないと思いますが?私が仲間になれば、天下など思いのまま!悪くない交渉でしょう!?」

 

圧倒的不利な状況下においても、どこか傲慢さが捨てきれない鬼。

いっそ、憐れな命乞いだった。

 

「さて……鬼さんはこう言ってるけど、二人とも、どうする?」

 

キリの良いところで剣丞がまとめに入る。

彼?を裁く裁判員は、翠と霞だ。

 

「「決まってるだろ?」とるやろ?」

 

二人は肩を借りていた蒲公英と明命を下がらせる。

 

「ですよねー」

 

ははは、と笑いながら剣丞も二、三歩下がる。

『執行人』も二人に任せたのだ。

 

「消えろ」「去ねや」

「ひ」

 

翠の銀閃は鬼の胸を貫き、霞の飛龍偃月刀は首を跳ね飛ばした。

恐怖に凍りついた表情のまま、鬼の首と身体は消えていった。

 

 

 

 


 
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