別離 ~それは突然に訪れた~
うん。今日もいい天気だ。
桃香をはじめ、皆の善政の甲斐もあって街は富み、民に笑顔は絶えない。
ずっとこれが続けばいいのに...
「どうして...? だってついこの間まで一緒にご飯食べたりお話したりしてたんだよ?」
---桃香が目に涙を浮かべ、聞こえるか聞こえないか位の声で自分に問いかけている。
「.....ッ」
---自分まで取り乱してはいけないと愛紗は唇をかみ締めている。
「なぜ我らより若き者が先に逝かねばならぬのか...」「本当に...」
---桔梗と紫苑は天を仰いで誰ともなく呟いた。
「今日は静かに送ろうではないか。」「分かった。」
---焔耶と蒲公英は確認し合うかのように向き合っている。
「なぜこの私を置いて逝かれたか!!」
---星がこんなに泣きながら怒る姿は想像出来ないな。
元気印が売りの鈴々と翠は己の自室に篭っている。
その他の蜀将や宮仕えの者達も皆一同にある一点を見つめ、泣いていた。
そう、一刀と書かれた位牌を...
ここは死者を見送る葬儀の場なのだ...
ことの顛末は数日前に遡る。
朝の朝食を皆で取っていた時、星が食堂に飛び込んできた。
だがそれは食事の時間に遅れた為の行動ではない事はその場にいた全員が悟った。
「どうしたの、星ちゃん? そんなに慌てて?」
桃香が口内のものを飲み下しながら星に尋ねた。
その問い掛けに答えた星の一言は誰も予想だにしないものであった。
「一刀が斬られた.....」
「なぁにぃぃぃぃぃ!? どういうことだ? 詳しく話せ!!」
愛紗が青龍偃月刀を携えて星に詰め寄った。
「どうもこうもない...我が眼前で斬られたのだ...」
「貴様! それをおめおめと許したのか!?」
「どうすることも出来なかったのだ!!」
「星...お前...」
愛紗は次の言葉を口にすることは出来なかった。
こちらを見据える星の顔はこれまでに見たことがない位辛そうで、そして泣いていたからだ。
愛紗と双肩を並べるほどの剛の者である星が何も出来なかった。
その事実に一同驚愕した。
「相手は誰だ? この私が仇を討つ!」
星は焔耶が息巻くのを静かに押しとどめた。
「まずは一刀を見送ってからだ...」
そして今日に至った訳だ。
---それにしてもすごい葬式だな。
---盛大すぎて身の置き所が難しいな。
---いや身の置き所を気にするのはおかしいか。
---何故なら俺の居場所は既に決まっているのだから...
「ほら、ご主人様。真面目にやらないと星ちゃんにお仕置きされちゃうよ?」
喪服に身を包んだ桃香が俺を突っついた。
「それにしても...あはは、その格好...おっかしいの~」
神妙な顔をしたと思ったらケラケラと笑い出してる。
「俺だって似合わない事位百も承知デスヨ...」
何故か袈裟姿の俺は今も読経を続けている。
「全く、あやつときたら...こんな大事にしおって!」
黒のワンピースに身を包んだ愛紗がプリプリと怒っている。
「だけどホントびっくりしたよねぇ」
ほんわか喋る桃香を見るとどれ程驚いていたのか疑問だが、麗羽達が粛々としているところを見ると
星の一言がどれ程のものであったかは用意に計り知れるだろう。
真相は朱里と雛里が纏めて皆に教えてくれた。
その内容はこうだった。
1.朝飯前の運動と鈴々と翠は庭で手合わせをしていた。
2.そこに星が通りがかり暫く二人を眺めていた。
3.だがお子様気質の二人はだんだんふざけ始めて、あちらこちらで獲物の火花を散らし始めた。
4.一つ間違えば己どころか相手も傷つける為、星は窘めたが一向に聞き入れられなかった。
5.そして鈴々の一撃を受け流しきれなかった翠の銀閃が宙に舞い、一刀を斬ってしまった。
『一刀とは南蛮より取り寄せた星秘蔵の竹の子』である。
その後は頭に某ミッ○ーマ○スのようなたんこぶを付けた鈴々と、
どこぞの大仏のような凸凹頭の翠(逃げようとしたが星に捕まった)が自室で謹慎しているとのことだった。
結局この葬儀は『北郷一刀』のものではなく、『竹の子の一刀』のものなのだ。
竹の子の為に国事といって差し支えない位の葬儀を執り行ってしまう星に誰しもが恐怖を覚えた。
---この人には中途半端な冗談や悪戯は通用しないのだ。
当事者である鈴々と翠はこの後さらに驚愕する事になる。
この日から一週間後、伝令さんが慌てふためきながら報告した。
曹孟徳・孫仲謀がそれぞれ己の子飼いの将達を全員引き連れて弔辞を述べるべく
城下に訪れていると...
---おいおい、一体どこまで広めたんだYO?
ある意味被害者であるはずの一刀であるが静かに自室へ向かった。
そう袈裟を纏いに...
<了>
うぅ、またおバカなものを書いてしまいました。
反省はしている。 (・∀・) だが、後悔はしていない。
ということで長々と駄文にお付き合い下さり、ありがとうございました。
深謝 m(_ _)m
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またまた真・恋姫†無双のお話です。
蜀がステージになります。