リイン「ということで、翠屋です!」
士希「誰に向かって言ってるの?」
私らは早速翠屋にやって来た。
今日はなのはちゃんもフェイトちゃんも仕事やで、おらんやろうなぁ
士郎「おや、はやてちゃんとリインちゃん、いらっしゃい。
ん?君は確か、士希君とレーゲン君だったかな?いらっしゃい」
中に入ると、士郎さんが迎えてくれた
桃子「いらっしゃい、はやてちゃん。あら、今日はデートかしら?」
喫茶翠屋のパティシエ、桃子さんも挨拶してきた。デートて、そう見えるんかな
士希「子連れでデートとはこれいかに」
はやて「まったくやな」
ちなみにリインとレーゲンは既にテーブルに座って、メニュー見てた
士希「はやても、好きなの頼めよ。奢るからさ」
はやて「おおきに。流石金持ちやなぁ」
私らは遠慮なく、ケーキとお茶を注文することにした
はやて「ところで、今日はここに何の用事があったん?」
私は士希に気になってることを聞いてみた。
すると士希は真剣な面持ちで、それでいて笑顔を絶やさず話し始めた
士希「はやて、お前、東零士についてどこまで調べた?」
東零士?士希のお父さんか
はやて「それが全然、どこ調べても資料の一つも見つからんのよなぁ。
あのミゼットお婆ちゃんとも知り合いやで、何かしら見つかるとは思ったけど」
そう、私は暇を見つけては、管理局のデータを調べていた。
単なる知的好奇心やったけど、ここまで収穫ゼロやと、
ホンマにただの友人やったんかなって思い始めていた
はやて「東零士ねぇ、只者ではないのは確かやと思うんやけど…」
がしゃんっ
ふと、店の奥から物置が聞こえた。何かを落としたような音。
音のする方を見ると、士郎さんが驚いた表情でこっちを見ていた
士希「ビンゴだ…」
ビンゴ?何がや?そう思ってると、士郎さんが小走りでこっちに来た
士郎「は、はやてちゃん!今確かに、東零士って言ったね?どこでその名を!?」
士郎さんが私に詰め寄って来た。え?一体どういうこと?なんで士郎さんが?
はやて「と、とりあえず、落ち着いて下さい士郎さん!東零士については、私より彼の方が…」
私が士希の方へ促すと、士郎さんは士希の方へ関心を移した。
対する士希は、依然落ち着いた様子で観察してた
士郎「君は一体何者だ?」
士希「俺は雑賀…いや、東士希。東零士の息子ですよ。御神真刀流小太刀二刀術、師範代、高町士郎さん」
士郎「息子だと!?彼は生きているのか?」
士郎さんは士希パパを知っている?
士希「えぇ。今もなお、健在ですよ」
士郎「そうか…そうなのか…いや、よかった…」
士郎さんは安堵したかのように落ち着きを取り戻し、椅子に座った
士郎「すまないな、取り乱して。久しぶりに聞く名前だったから、驚いてしまった」
はやて「あの、士郎さんは士希のお父さん、東零士をご存知なんですよね?一体どういう人なんですか?」
士郎「…士希君、どこまで話していいんだい?正直、高校生が聞いていい内容ではない」
士希「俺もあなたの話を聞きたい。あなたの主観でいいので、全てを話して下さい。
はやて、聞く覚悟はあるか?」
はやて「う、うん…」
士希と士郎さんは真剣な表情やった。私もそれにつられ、気を引き締めてしまう。
リインとレーゲンが仲良くケーキ食べさせ合ってんのが場違いなくらいや
士郎「場所を移そう。着いて来てくれ」
やって来たのは、高町家の道場やった。ここには私と士希と士郎さんの三人だけ。
リインとレーゲンは桃子さんにお願いした
士郎「俺が彼と出会ったのは、もう20年以上も前のことだ。
俺がまだボディガード業をしている頃、彼と何度か仕事をしてね」
そういや、ミゼットお婆ちゃんもボディガードの仕事依頼したって言ってたな
士郎「彼とは同い年だったし、気もあって仲良くなったよ。
彼とならどんな仕事もこなせる、そう思える程にね。だが、世界は彼を裏切った」
はやて「裏切った?」
士郎「彼は、やり過ぎてしまったんだよ。
世界大戦以降、たった個人で、彼以上に人を殺めた者はいないだろう」
な!?殺人?あの優しそうな人が?
士郎「ただ、彼にも信念があってね。悪は絶対殺すを信条としている彼は、殺すのは決まって悪人。
市民を虐げる汚い政治家やマフィアなどだ。悪人を殺し、善人を助ける。正義の味方みたいな人だった」
士郎さんは昔を思い出しているのか、遠いところをみているような感じで話す。
犯罪者…と言えば犯罪者やけど、少し微妙なとこやな。
私ら管理局、ひいては警察組織や軍も似たようなことはしとる
士郎「彼は仕事を重ね続け、世界の裏を知りすぎ、いつしか彼自身が危険視されていた。
そんなある日、とある小国が彼の討伐作戦を決行しようとしていた。
零士はその国に対して不利な情報を握っていたからね。
そして、たった一人に対し国が一つ動き、そして滅んだ」
はやて「滅んだ?たった一人で、国が負けた?」
士希「ッ!」
士希は苦虫を噛み潰したような表情やった。士希はこのこと、知ってたんやろか
士郎「あぁ。それからだ。彼が『世界最悪の敵』と呼ばれ、一昔前の裏世界で知らない者はいない程有名になった。彼を利用していたのは、その世界だったのにな」
はやて「その世界ってのは?」
士郎「大国と呼ばれる国はもちろん、日本もだ。
誰もが彼を使い、人を殺させ、そして誰もが彼を恐れた。次は自分の番じゃないのかって。
世界は自身の保身の為に、彼一人を犯罪者に祭り上げ、そして追い込んだ」
はやて「そんなん、身勝手や。そいつらの身可愛さに、一人に全部押し付けて…」
士郎「あぁ、俺もそう思い、その討伐作戦の際に彼の救援に行きたかったが、叶わなかった…」
士希「!?少し、席を外します。すぐ戻ります!」
突然士希が立ち上がり、出て行ってしまった。どうしたんやろ
士郎「やはり、彼の息子には、酷な話だったか」
はやて「…士郎さんは、何故零士さんを助けようと?」
士郎「さすがに理不尽と思ったからな。それに、俺は彼の友人だ。
例え彼が『世界最悪の敵』と呼ばれようと、俺は彼を『英雄』と称したい。
彼のおかげで、いくつもの戦争が未然に防がれ、いく万もの人間が救われたのだから。
叶うのなら、もう一度彼に…」
「士郎!高町士郎!」
士郎「!?東、零士か?」
後ろを振り返ると、そこには士希と士希パパこと東零士さんがおった
零士「久しぶりだ、士郎。何年振りだろうか?」
士郎「零士!」
士郎さんは零士さんに抱きついた。零士さんも、士郎さんを抱き返した
士郎「本当に済まない、零士!あの日、お前を助けてあげられなくて…」
零士「…いいんだ。君が来ようとしていたことは、噂で聞いていたからな。
その気持ちだけで、僕は救われるよ」
士郎「本当に、生きて会えて嬉しいよ…」
士郎さんも零士さんも、涙を流して抱き合っていた。私はその光景を眺めていた士希のそばへ寄る
はやて「大丈夫?」
何故か士希は微妙にへばってた
士希「あー、だる…さすがに、間を置かず転移はこたえる…レーゲンと、ユニゾンするべきだった…」
あー、魔力使い過ぎて疲れてんのか
士希「でも、本当によかった…」
士希は目の前の光景を見て満足しているようやった
士希「……俺がこの世界に来たのは、料理を学ぶ為と、父さんが生まれたこの世界を見る為なんだ。父さんがやって来た事の代償、救ってきた人々、父さんがやって来た事は、無駄なんかじゃないって信じてな」
零士さんはこの世界で全てを失い、また行って来た数々の善行も身を結ばなかったと思っていたらしいが、実際はそんな事はなく、彼のおかげで救われた国、人々はごまんとおるらしい。零士さんの努力は、決して無駄なんかやなかった
はやて「ふふ、士希ってお父さん大好きやろ?」
士希「当たり前だろ。父さんは俺の憧れだ」
めっちゃ素直やった。シスコンでミニコンでファザコンやった
零士「美味い!このケーキ美味いよ!」
士郎「当然だ!俺の妻が作ったのだからな」
桃子「ふふ、士郎さんったら、照れますよ」
翠屋に戻った私らは、士郎さんの好意でケーキをいただいていた。
零士さんも士郎さんも、積もる話があるようや
はやて「ところで、なんで零士さんバーテンダーの格好してんの?」
士希「あれはうちの店の制服だ。父さん、仕事中だったけど、無理矢理引っ張って来たからな」
はやて「てことは、士希も持ってたり?」
士希「あぁ、自前のが何着かあるぞ」
それは、見てみたいかも…
リイン「あの人が、士希さんのお父さんなんですね」
レーゲン「とっても優しい人ですよ!」
私の目から見ても、零士さんが過去にそんな事しとったようには見えへん。
多分本人も、やりたくてやってたわけやないと思う
はやて「士希があの時、零士さんは犯罪者やない、って言った意味、なんかわかった気がするわ」
士希「どうだろうな。あれは俺の主観だし。見方を変えれば、超ブラックだぜ」
はやて「でも、見方を変えたら英雄なんやろ?私もそう信じたい」
士希「はやて…この事、お前に話すか迷ってたんだが、はやてを信じて良かった」
はやて「まぁ確かに、高校生が聞いていいような内容ちゃうでな。
なんでまた話そうと思ったん?」
士希「お前なら、大丈夫だと思ったから。それに、お前には隠し事したくなかった。
だから、聞いてくれてありがとうな」
士希は真っ直ぐ見つめて言った。それに対し少しドキッとしてしまった私は、慌てて目を逸らした
また少し、士希をわかった気がする一日やった
士希視点
零士「士希、今日はありがとうね」
夕方頃。解散した俺達はそれぞれ家に帰った。俺は父さんとレーゲンの三人でリビングでお茶を飲んでいた
士希「いいんだ父さん。俺もこの世界で、ようやく父さんを理解してくれていた人を見つけたんだ。
それで満足だ」
零士「ふふ、親思いの息子を持てて、僕は幸せだなぁ」
そう言って俺の頭を撫でる父さん。恥ずかしいが、嫌じゃなかった
零士「君がこの世界で暮らしたいと言った時、僕は不安だったんだ。
援助もない、知り合いもいない、右も左も分からない世界。
そして何より、僕からすれば敵の多い世界。僕は最後まで反対したんだけど、士希は折れなかったね」
士希「あぁ。この世界は、父さんが言うほど腐っちゃいない。
まぁもちろん、腐敗しているところもあるが、それでも俺はこの世界が好きだよ。
父さんの生まれたこの世界が。優しい人間がいっぱいいるこの世界が。
だから俺は、ここに住みたいと思った。それに俺は、あの世界にいるべきじゃないしな」
俺が生まれた世界は、俺の存在が邪魔なようだった。
それは俺が、俺のもう一つの名前が、司馬昭・子上故なのだろう
零士「僕らには、国をどうこうするなんて思い、ないんだけどね」
士希「仕方ないさ。管理者からしたら脅威なんだよ。そういう意味では、俺も父さんと同じだな」
父さんはこの世界に裏切られ、俺はあの世界に邪見にされた。本当に、妙なところばかり似るな
零士「あまり笑えない冗談だな。だが、僕や家族は、いつだって君の帰りを待っている。
あそこは君の実家なんだ。いつでも、どれだけでも居ていいんだからね」
士希「わかってるよ父さん。近いうちに、レーゲン連れて何泊かしていくよ」
レーゲン「あ、よかった!僕、忘れられてなかった!」
レーゲンは空気を読んで空気になっていたが、今の俺の生活はレーゲンと一緒なんだ。
忘れるわけがない
零士「ふふ、レーゲン君も、いつも士希君といてくれてありがとうね。
君も、いつでもうちに来たらいいよ」
レーゲン「はい!絶対に行きます!」
零士「さて、そろそろ帰ろうかな。勝手に店を出たんだ。咲ちゃんに怒られるだろうな」
士希「あ、悪い。俺も一緒に謝るよ。レーゲン、ユニゾンだ。父さんを送るぞ」
レーゲン「はい!」
俺はユニゾンし、転移魔法を発動させた。すると…
零士「本当にありがとう士希。おかげで救われたよ…」
父さんが俺を抱きしめ、そう呟いた。そして俺は転移を実行した。
よかった。俺は、父さんの力になれたんだな
あとがき……というか補足
こんにちは!桐生キラでっす!
という事で今回のお話、お気づきの方もいらっしゃいますが、
前作「真・恋姫†無双 裏√」という作品の設定を引き継いでおります。
もともと前作のアフターを考えている時に、リリカルなのはを見てて再熱したのがきっかけで今作は成り立っています(笑)
雑賀士希改め東士希は、前作の主人公東零士っていう、過去にめちゃくちゃやってた人の息子に当たります
ひょんなことから転移魔法を会得した士希は、父親の世界を見る為に単身はやて達のいる世界にやってきました。父がただの人殺しではないと信じて。そして士希は日本に来る以前にいろんな国へ行き、零士がしてきた事を見て、そして最後に日本にやって来てレーゲンと出会うって感じです。零士は伝説的な人物ですけど、理解者は少ないので、士郎と出会って慌てて零士を連れてきたって感じです。士希君はお父さん大好きっ子です(笑)
そして、士希には司馬昭というもう一つの名前があります。彼はとある事情から、彼のいた世界には危険視されています。その辺の話は、もしかしたら書くかもしれませんが、あまり期待はしないでください
前作見てない人は「はぁ?」というような内容で申し訳ないと思いつつも、士希を描く上で必要な話ではあったので、書かせていただきました
もしよろしければ、前作も読んでくださると幸いです←宣伝乙(笑)
次回は今回のことなんて全く無視したようなリリカルな日常になります(笑)
ニヤニヤ話を書くのに苦戦していますが、今後もお付き合いしてくださると嬉しいです
それでは、また次回!
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今回のお話は私が書いていた前作のお話とリンクした内容になっています。なので今回はあとがきに補足を書かせてもらいました。