No.678553

ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY17 アスナを救うために

やぎすけさん

本文の最後に板状建造物の情報を掲載しておきました。

2014-04-13 17:23:51 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1329   閲覧ユーザー数:1269

STORYⅩⅦ アスナを救うために

 

 

 

 

? サイド

暗殺者の男は、施設内の一室で資料を読み漁り、教団の発明品と目的を調べていた。

片っ端からファイルやら書物やらを取り出し目を通しては、読み終えた資料は投げ捨ていく。

すでに相当な数の資料が散乱しており、棚に残っているものの方が少ない。

パタンと、男は読み終えたばかりの資料を閉じ、それを後ろに投げ捨てながらぼやく。

 

?「しっかしねぇな。あの板切れの設計書、大概こういうとこにあるんだが・・・」

 

再び読んでいない資料を漁り始めるが、なかなか目当ての物は見つからない。

結局、男が目的のものを見つけたのは、棚に置かれていた資料全てが床に散らばった後だった。

 

?「やっと、見つかった。え~と、何々・・・」

 

男はふざけた態度で、見つけた資料を読み込み、重要な部分を暗記していく。

 

?「なるほど、あのセンスの無い板切れは、【恐怖の記憶(テラーメモリー)】っていうのか。機能は、あの嬢ちゃんが“死を覚悟した瞬間に対峙していた怪物を、相手の強さに合わせて出現させる”か。他には・・・」

 

全容を理解し、男はパタンと、資料を閉じた。

閉じた資料を投げ捨て、男は出入り口へ向かう。

 

?「だいたいのことはわかった。ただそうなると、このままじゃ、あの嬢ちゃん“死ぬ”かもな」

 

扉を蹴り開けて部屋から出ると、事務所と思われる場所から2つの鍵を拝借して、施設から出ていった。

 

?「簡単に負けてくれるなよ、坊やたち」

 

キリト&デュオ サイド

キリト視点

どれくらいの時間そうしていたのだろう。

不意に、俺は目が覚めた。

周囲に鎧騎士やヴォイドの姿はなく、少し離れた所に未だ気を失ったままのデュオが横たわっている。

 

キリト「どうなったんだ・・・?」

 

おぼろげな記憶を探って、自分たちに起こったことを思い出した。

そして視線を落とし自分が握っているものを確認した後、再び顔を上げて周囲を見渡す。

自分の手には妙に手に馴染む黒い剣があり、周囲には最初に砕いたガラス壁の破片と、強力な力で破壊されたらしい鎧の残骸が散らばっている。

その光景が、おぼろげなこの記憶が俺の頭の中で起こったことではなく、実際にここで起こったことだと物語っていた。

とりあえずは相棒を起こし、ここを離れた方が良さそうだ。

滲み出してきそうな疲労感に耐え、俺は脚に力を込めて立ち上がる。

体を起こして十数歩歩き、横たわる相棒の隣で膝を付くと、その体を揺すった。

 

キリト「デュオ、デュオ!」

 

切り開かれた服の隙間から覗く肌に傷口はなく、見ればHPも全快している。

それを見て、反射的に貫かれた場所を触ってみると、俺の傷もふさがっていた。

 

デュオ「う、ううん・・・」

 

ゆっくりと瞼が開き、デュオが目を覚ます。

 

デュオ「キリト・・・」

 

キリト「大丈夫か?」

 

デュオ「あぁ、なんとか・・・」

 

そう言ってデュオは上体を起こすと、1度周囲を見渡してから再びこちらを見る。

 

デュオ「どうなったんだ?」

 

キリト「俺も所々曖昧なんだが・・・」

 

と伝え、俺はこうなった経緯をデュオに話した。

話終えると、デュオは難しい顔をして唸った。

 

デュオ「夢の中で出会った2人の騎士が、俺たちを助けた・・・にわかに信じられないが、こうして生きてるわけだしな・・・」

 

キリト「それが不思議な2人だったんだよな」

 

デュオ「と、言うと?」

 

キリト「なんか妙に安心するっていうか、懐かしい気がするっていうか・・・」

 

今度は俺が難しい顔で唸ると、デュオは腕を組んでから口を開く。

 

デュオ「つまりはよくわからないけど、どこかで会った気がすると?」

 

キリト「そうそんな感じだ」

 

肯定した瞬間、散乱する残骸の中からクリスタルが現れ、俺の前に飛んできた。

クリスタルは俺の目の前までくると、空中に浮いたまま静止した。

 

キリト「なんだこれ」

 

デュオ「ドロップアイテム・・・じゃないな」

 

大きさは10cm程のシンプルな六角柱状の結晶。

中には、青いバラと黄金色の金木犀の花が埋め込まれている。

透明にも関わらずなぜが黒い印象を与えるこのクリスタルを、俺は見たことがあった。

あの白い空間で、謎の騎士が俺に渡してきたものだ。

クリスタルをタッチすると、ネームウインドウが音も無く開き名前を表示する。

 

キリト「秘石・アリス&ユージオ・・・?」

 

デュオ「どういうアイテムだ?」

 

俺はクリスタルをタップし、その説明を見る。

そこには[所持しているとSPを3消耗【召喚獣】を呼び出せる(キリト専用)]と書いてあった。

ウインドウ画面を見せると、デュオが言った。

 

デュオ「簡単に言うと、お前の言う騎士を呼び出せるようになったってことか?」

 

キリト「らしいな」

 

デュオ「剣と召喚獣を一緒に入手するとは、羨ましい奴だな」

 

キリト「日ごろの行いが良いってことさ」

 

デュオ「どこが・・・」

 

俺の言葉に、脱力するデュオ。

そんな緊張感の無いやり取りに、俺たちは顔を見合わせて笑った。

考えてみれば、アスナを助けようと必死になっていて、しばらくまともに会話をしていなかった。

そのため今笑ったのも、かなり久しぶりな気がする。

 

キリト〈余裕が無さ過ぎたのかもしれないな〉

 

俺は表情には出さなかったが、心の中で反省する。

だが、あまり長くそうしているわけにもいかない。

少しするとお互いの顔から笑みが消え、真剣な表情になる。

 

デュオ「まぁいい。それよりヴォイドの話が本当なら、教皇を倒せばアスナの記憶の結晶を取り返せるかもしれない」

 

キリト「そうだな。でも、(ヴォイド)は“天使降誕”とか言うのにアスナが必要だって言ってた。大抵、天使とか悪魔が関わることには儀式が付き物だ」

 

デュオ「それも生け贄だとか言って、罪のない人を殺したりするタイプのな」

 

吐き捨てるように言うデュオの口調は、次第に荒々しさを増していく。

 

デュオ「面倒なことになる前にアスナを取り戻そう。居場所に心当たりとか無いか?」

 

キリト「おそらく教団の本部だ。シュヴァルが市民は本部に避難させるって言ってたし」

 

デュオ「なるほど。なら、アスナのお迎えついでに、シュヴァルに教団のことを問い詰めて、その後であのイカレ頭を斬る(kill)とするか」

 

表情は怪しげな笑みといった感じだが、その眼からは一瞬だが間違いなく光が消えていた。

しかしすぐに瞳の光は戻り、不気味な威圧感も消えた

 

デュオ「そうと決まればすぐに出発・・・っと、その前に」

 

俺が立ち上がると、デュオは俺の持つ黒い剣の入っていた巨大試験管に近寄る。

デュオが割れた試験管の近くを探ると、研究資料や鎧の残骸の下から黒い鞘を拾い上げた。

 

デュオ「ほら」

 

抛ってきた鞘をキャッチすると、立て続けにベルトが飛んできた。

 

デュオ「それで剣を背中に固定しておけ」

 

キリト「OK」

 

鞘の留め金にベルトを通し、次いで剣をゆっくり鞘に滑らせると、まるで引き寄せられるように、剣は鞘にピッタリ収まった。

今まで使っていた剣を左側に背負い直し、右手側に黒い剣を吊るした。

隣では、デュオが残骸の中から剣を引っ張り出して背中に吊るす。

 

デュオ「二刀流で行くのか?」

 

少し似合わない聖騎士風の剣を背負った相棒は、久しぶりに見せた俺の二刀流姿に若干心配そうな声で問い掛けてくる。

 

キリト「あぁ、今は迷ってる時じゃない!」

 

デュオ「そうか・・・」

 

強い意思を込めて力強い答えると、デュオは安心した声でそれだけ呟いた。

 

デュオ「よし!なら速くこのかび臭い部屋から出ようぜ!」

 

キリト「おう!」

 

俺たちは近くにあった扉から部屋を出てそのまま廊下を走り抜け、地上に向かって伸びる階段を駆け上がった。

恐怖の記憶(テラーメモリー)

教団の命令を受けて、ヴォイドが開発した巨大な板状のモンスター召喚装置。

意図的に起動させるか、プレイヤーが近付くことで反応し、モンスターを生み出す。

記憶の結晶を内部にセットすることで、その記憶に眠っている“死を覚悟した時の恐怖”をモンスターとして呼び出す。

そのため、記憶に“死を覚悟した時の恐怖”が無い場合、またその恐怖の原因となったものがものではなく現象だった場合は起動しない。

また、1度倒したモンスターは恐怖を打ち破ったとみなされ、以降は出現しなくなる。

呼び出されるモンスターの強さ(ステータスやAIの学習能力など)には段階があり、テラーメモリーに近づいた者の強さで出現するモンスターのレベルが変化する。

ノーマルモンスターより多少強い程度の“幼体”、SAOのボスと同レベルの“成体”、推定不能の“変異体”の3段階に分けられる。

※キリトたちが遭遇した、イルファング・ザ・コボルドロードとアステリオス・ザ・トーラスキングは幼体。

 

“幼体”

ノーマルモンスターのステータスを若干強化しただけの最弱種。

生成可能なモンスターの中で最弱なものを呼び出し、それでも勝率が低いと判断されると出現する。

学習能力が低く、HPが減ると発狂状態になる。

 

“成体”

SAOのフロアボスまたはALOの邪神に相当するレベルの普通種。

接近したプレイヤーと出現するモンスターの強さが拮抗した場合に出現する。

HPバーが必ず3本以上なので、長期戦になる場合が多い。

 

“変異体”

記憶の結晶から生成可能な最強のモンスターが、接近してきたプレイヤーの能力に遠く及ばない場合のみ出現する。

記憶から生成可能なモンスターを、プレイヤーの能力と拮抗するまで引き上げて生成される。

その性質上、強さは接近したプレイヤーに依存する。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
4
3

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択