・・と・・・・・ずと!・・・・・
遠くから誰かの声が聞こえる・・・それは徐々に大きくなっていき、次の瞬間、それははっきりと聞こえた。
詠&桂花「「起きろこのばかち○こーーーーーーーー!!!!」」
一刀 「なんだ!?敵しゅuぶげらっ!?」
三国を代表するツンデレ軍師による早朝股間かかと落としは・・・まさに天にも昇るほどの効果だったとか。
その後、いきなりの寝起き訪問股間かかと落としについて言及すると・・・
一刀「・・・目覚まし当番?」
冥琳「うむ、やはり一緒に住むにあたって、ここの家の当主はお前だ。ならば我々はそれを支えねばなるまい。」
その声に頷いているのは凛、雪蓮、恋の3人・・・冥琳を含めれば4人の将が我が家に集結している。
一刀「あれ?詠といっしょに強しゅ・・・起こしにきてくた桂花は?」
凛「あぁ、桂花殿なら妙にすっきりした顔で直ぐに魏に戻りましたよ?」
あれをやるためだけに魏から来たのか・・・・すごい微妙な心境だけど。
一刀「んー、今日は休みだから遅かったけど、普段だと今日よりもだいぶ早いから負担にならないといいけど。」
そう、今日は日曜ということもあり結構ぐっすり眠っていたのだが、明日からは普段通りの生活になる。そうなれば、彼女たちよりも自分の方が早く起きることもあるかもしれないのだ。
凛「一刀殿はいつもどれぐらいの時間に起きていられるのですか?」
一刀「んー、こっちに戻ってからは、朝は鍛錬と畑仕事に朝ごはん作って、仕事の準備してだから日が昇るのよりは早いと思うよ。」
雪蓮「へー、ずいぶん早いのね。」
その声に感心する元呉王様だが・・・本人が気付いていないようなので確認しておく。
一刀「あと、こっちに長期的に住む人には畑仕事もしてもらうし、鍛錬を一緒にやる人には俺と一緒に起きることも覚悟しといてね?」
そう確認をすると、項垂れてしまう雪蓮。顎に手を当てて考え込むのは軍師たち・・・恋はポテチを食べている・・・あ、3袋目突入した。
一刀「そういえば、恋って霞のあとじゃなかったけ?」
あの日、霞が必死に頼み込んでいるのを見て嬉しく思っていたんだけど・・・いや、恋がきたのも嬉しいよ!だから、そんなシュンとしないで!
恋「・・・ご飯・・・先払い。」
一刀「・・・・え?」
恋の言葉に耳を疑ってしまう・・・まさか恋からそういう単語が出るとは思わなかった。
恋「ねねが言ってた・・・・こういうのは、先にしてもらったほうがいいって・・・・」
言い終えると、ポテチが気に入ったのかモキュモキュと口を動かし始める・・・・霞は今頃お金をかき集めているところだろう。
詠「まぁ、恋のこともそうだけど、ボクたちってこっちで何をすればいいのよ?」
当然といえば当然の意見なのだが・・・
一刀「それなんだけどさ、詠や凛ってずっとこっちに居るわけにもいかないだろ?」
冥琳はまだ穏や亞莎という次代を担う軍師がいるが、詠たち「和」にはねねしかいない。さらに、月を置いてこちらにいるのも忍びないだろう・・・・と思ったのだが。
詠「あぁ、それなら問題ないわ。洛陽は魏に任せることにしたから。」
さらっっと言い切る詠に唖然とするしかない一刀・・・その視線は自然と魏の軍師に向かう。
凛「・・・昨日、会議の場でいきなり決めたんですよ・・・公には朝廷を牽制するためとか適当な流言を流しておきましたが・・・余程、一刀殿といたいと思われる。」
その言葉に、詠は赤くなるが否定するようなことはしない・・・成長したなぁ。
一刀「そういうことなら、詠には家の財布を握ってもらおうかな。」
詠「・・・・本気で言ってる?」
その声と顔には嬉しさやら困惑やらが混ざったような色がにじみ出ていた。
一刀「もちろん。極端な例で言えば桂花。桂花だと華琳が・・・・そういう無駄使いはしないと思うけど止めることができなそうだろ?朱里や雛里、穏や亞莎、風も国を離れることは出来ないし、冥琳や凛には他の仕事を任せたいしね・・・無理にとはお願いしないけど、ダメかな?」
詠「・・・ここの当主はあんたなんだから命令すればいいじゃない・・・」
その声色は明るく、照れ隠しだということが一刀ではなくとも分かる。
一刀「ここは、あっちの世界と違って主従じゃない。みんな家族であり、俺の大切な人だ。家族に命令なんてよっぽどじゃなければしないよ。」
その言葉に、耳まで赤くする詠だったが、ひと呼吸置いて一つ頷く。
冥琳「・・・さて、我らが大黒柱は私めらに何をお願いするのでしょうな?」
凛「・・・そうですね・・・天の国とは未知ばかりなので予想できませんね。」
詠が耳を赤くする光景をニヤニヤしながら見ている二人がこちに問いかけてくる・・・こっち見んなという詠の叫びを心に深く受け止めながら、二人との話を進める。
一刀「・・・大変情けないことなんだけど、二人には働きに出て欲しいと思ってる。」
その言葉に流石に驚いたのか目を見開く二人。
冥琳「・・・確かに、これだけの人数を養うは一人の働きではなぁ。」
凛「・・・そうですね。むしろ、我々に相談もせず一人で抱え込むようでは愛想を尽かしてました。」
軍師二人が喉を鳴らすようにくっくっと笑う・・・あと凛さん、それ洒落にならないですよ?
一刀「桂花はあの男嫌いであんまり外出せないし、王に働かせたら周りからの批判がひどそうだしな。流琉や季衣、風、鈴々に働かせるのは・・・なぁ?」
その人物らの共通点に気付いたのか、苦笑する二人。
冥琳「それも分からなくないが、本人たちの前で言わないことだな。」
凛「風に何されるか分かりませんよ?」
二人は笑っているが、こちらとして笑えない・・・まじで命が関わりかねないのだ。
一刀「・・・そういいうわけで二人には、申し訳ないけどお願いしたい。あ、服も買わなきゃいけないよなー・・・それにみんな来るなら茶碗とか箸もブツブツブツ」
冥琳「やれやれ、我らが大黒柱は頼りになるのかならないのか・・・」
凛「そうですね・・・まぁ、惚れた弱みというものでしょう。」
冥琳「それもそうだな・・・さて、そろそろ助け舟をだしてやるか。」
凛「ふふっ、そうですね。」
二人は傍に寄る・・・一度は別れ、再会した愛しき人の元へ
。
さて、今将達はある種、戦場よりも緊張した面持ちである場所に立っていた・・・・・そこは、玄関である。
一刀「では、これから外に出るけど約束は覚えてるね?」
雪蓮「もう、20回以上確認したじゃない!頭の中枢にまでこびり付いてるわよ!」
あなたが一番心配なんですよ雪蓮さん・・・・・
冥琳「まぁ、北郷の心配も分からんでもないが・・・ソワソワソワ」
いつもの冷静沈着ぶりはどうなさったのですか、冥琳さん・・・・・・
詠「は、離れたらいけないから手、手繋いであげてもいいわよ・・・?」
不安そうな詠さんの顔・・・・ご馳走様です!
恋「・・・・・?」
恋は可愛いなぁ・・・食べ物関係では一番不安要素だけど。
一刀「まぁ、車で行くから道中逸れることはないと思うけど・・・冥琳!頼むから雪蓮から目を離さないでくれよ!」
雪蓮「ちょっとそれどういうことよ!?」
冥琳「あぁ、任せろ!」
雪蓮「冥琳!?」
ぶーぶーと抗議をする雪蓮をいなしつつ、玄関の扉を開ける。その先からは太陽の眩しい光が・・・・・
ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
一刀「・・・・・・物凄い雨だな。」
冥琳「・・・・・・ああ。」
雪蓮「・・・・・・雨ね。」
凛「・・・・・ですね。」
詠「・・・・凄いわね。」
恋「・・・・・あ、蛙。」
雨のお陰か一気に熱気が冷め、落ち着いた雰囲気になる一刀一行であった。そのあとは、車の構造やら理論やらでひと悶着あったが無事に乗って移動することができた。
雪蓮「それにしても車って便利ねー・・・あっちでも作れないかしら?」
冥琳「厳しいだろうし・・・なによりも文化を壊してしまう。」
一刀「だろうね・・・だから俺もなるべくはあっちに情報は持ち込まないよう規制するつもりだよ。」
配置としてはドライバー・一刀、助手席・雪蓮、後部座席・冥琳・詠・凛・恋のような感じである。
雪蓮「それにしても、運転してる一刀の顔って結構かっこいいわねー。」
一刀「嬉しいけど、イタズラは勘弁してくれよ?みんなの命に関わるからね。」
雪蓮「はーい。」
隣で手を上げて返事をする雪蓮をみて笑っていると、後ろから・・・
詠「・・・帰りは前に乗ろうかしら・・・」
恋「・・・・・・・恋も。」
凛「・・・皆、考えることは同じですか。」
冥琳「ふむ、ではじゃんけんで決めようではないか。」
そのあっちの世界では見られない微笑ましい光景に頬を緩めつつ、車の速度を少し上げる・・・ジャンケンの結果は恋の圧勝であった。心理戦もなんのその、本能と直感で行動する恋には意味を成さなかった。
恋「・・・・・・・ぶい。」
決めポーズでピースをする恋をみて悶絶する三人もいたらしい・・・・
さて、四人で和気藹々と移動すること30分・・・雑貨店や沢山の店が立ち並ぶ若者向けの街にやってきた・・・雨は止んでいたが、比較的歩いてる人は少ないが、それでも皆は各々感じたことがあったようだ。
雪蓮「・・・・」
恋「・・・・」
ビルがそびえ立ち、多くの人が行き交う光景に雪蓮・恋は目を見開いて固まってしまい・・・
冥琳「これは・・・」
詠「・・・予想以上ね。」
凛「ここまでとは・・・」
軍師たちはここまでとは思わっていなかったのか、感嘆の声を上げる。
駐車場で黙って固まっているのは、流石に周囲の目線を集めてしまうので、固まっている雪蓮と恋の手を引いて歩き出す。
雪蓮「あ・・・うん、行こっか!」
恋「・・・・手、あったかい。」
左手に雪蓮、右手を恋と繋いで歩き出す。手を引かれる二人は周りの人達が見惚れるような笑顔を浮かべ、軍師たちは周りの人達が悲鳴を上げるような笑顔をしていた・・・正直冷や汗止まりません!
詠「・・・ボクが最初に言ったのに。」
凛「・・・くっ、先手をとられましたか。」
冥琳「酒の隠し場所を考えなくてはな・・・」
最後の冥琳の言葉に雪蓮の肩がビクッと震えるが、それを見せつけるように擦り寄ってくる・・・・あ、殺気増した。
一刀「そ、そろそろ行こうか!人目も集まってきたし!」
雪蓮「そ、そうね!」
恋「ん・・・行く。」
その言葉に踏ん切りが着いたのか嘆息して後ろを付いてくる軍師一同。
詠「・・・・今のうち次の人決めといたほうがいいと思うんだけど。」
凛「・・・・全面的に同意ですね。」
一刀「・・・・では、じゃんけんしようじゃないか。」
信号で止まるたびにジャンケンする軍師一同を微笑ましく眺めていると、右手を握っていた恋が首を傾げて聞いてくる。
恋「・・・・どこ?」
これはどこに行くのかをきいてるみたいだ・・・・アホ毛がピコピコと揺れて可愛らしいなぁもう!
一刀「・・・まずは服を買いに行こうかと思ってるよ・・・みんなの格好はあっちの世界では普通だけど、こっちの世界じゃちょっと変わってるからね。」
声は控えて、みんなにだけ聞こえるような声音で話す。流石に往来であっちの世界とかこっちの世界なんて言ったら、中二病だと思われるか、いい病院の地図を渡されるかのどちらかだろう。
雪蓮「・・・確かにジロジロ見られるのには慣れてるけど・・・いい気分にはならないわよね。」
冥琳「北郷の意見ももっともだが・・・私たちはこっちでの服装には疎いぞ?」
詠「天の服・・・月にも買ってこうかな。」
凛「・・・確かに、私たちの服装は目立つようですね。」
目立つのは服装よりも、その顔たちだったりスタイルだったりするのだが言わないでおこう・・・・世の男たちの嫉妬が体中に突き刺さる!
一刀「みんなの好きな服を選べばいいと思うよ・・・みんな可愛いから何着ても似合うだろうし。」
その言葉に詠や凛は顔を赤くし、雪蓮や冥琳はふんわりと笑う・・・・恋はマクドナル○を見ていた・・・そこに目を付けるとは、さすが呂布だな!
一行は女性に大人気のファッションショップ1○9に入ると、その光景に目を輝かせ、色々なところに目移りしている・・・恋だけは飲食店がないのかキョロキョロしていた。
作者「急ですが作者から緊急連絡です!作者にはファッションセンスがミジンコ一匹分もないので格好は各自脳内補完でお願いしまげぶらっ!」
いきなり何もないところを全力でグーパンした一刀を怪訝な目で見る一行・・・やめて!そんな目で見ないで!
冥琳「ん?どうした一刀?」
一刀「いや、羽虫が飛んでたから・・・」
その言葉に更に頭の上に?が浮かぶが直ぐに服の方に思考が移る。
さてさて、1○9に入ってから約3時間前後ようやく一行は買い物を終えて、次の場所へ移動していた。左手には凛、右手は詠が握っていた・・・詠さん、右手痛いっす!嬉しいけど力強いっす!・・・そして、心なしか沈んでいる冥琳が可愛らしい!
一刀「次は日用品を買いに行くわけだけど・・・必要なものが多すぎて把握しきれません!」」
まずは食器類・・・今まで一人暮らしだっただけに全く足りない。それに伴ってコップや箸なども足りないだろう。
次に寝具・・・・・こちらはあるといえばあるが、どうせなら新しいものがいいだろう。歯ブラシなどもやはり一人一本は欲しいだろうし・・・何故だろう、華琳の歯ブラシに興奮している桂花が想像できる。
冥琳「それは、足りない時に買うということでいいのではないか?今ここで纏めて買ったら周りがずるいと言いかねないしな。」
一刀「・・・・・・あー。」
ない・・・とは言い切れなかった。
雪蓮「ふたりともー!置いてくわよー?」
行く場所分かってるのか?という言葉を冥琳と被ってしまい苦笑する二人・・・前で手を振っているのは元呉王ではなく、街を楽しむ一人の女性だった。
一行が来ているのは、これまた若者~年長者まで大人気のドンキホー○。通称ドンキ。
一刀「ここなら、比較的なんでも揃うと思うから・・・って雪蓮!勝手に行かないで!」
元呉王の肩書きを放り投げた彼女は自由の塊そのものであった・・・手をつかもうと右手を見ると寂しそうな顔をする詠さん!
一刀「・・・・・冥琳頼む。」
一刀の発言に、詠の顔は寂しさから一転喜色に彩られる・・・・くそっ俺のツンデレ軍師がこんなに可愛いわけが・・・ある!
その頃雪蓮はというと、冥琳に耳を引っ張られこちらに連行されていた。
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一通りの日用品を買うと、本屋の前で立ち止まる一行。
一刀「・・・?どうしたの?」
一刀が目を向けるとソワソワとする軍師一行。
冥琳「いや、やはり軍師としてはこちらの世界の書物が気になるというか・・・」
冥琳があそこまでソワソワするのって珍しい・・・あ、笑ってた雪蓮が耳引っ張られてる。
凛「そうですね、こちらの世界での艶ぼ・・・本がどういったものなのか非常に興味が湧きます。」
凛さん、その前にその荒い息を整えてください!・・・・あとエロ本は却下で。
詠「・・・・ボクも気になるかな。」
あら素直・・・いたっ!ちょっ、俺の弁慶蹴らないで!
一刀「うぅ、俺の弁慶・・・まぁ、そういうことなら持ってきてくれれば俺が買うよ。」
冥琳「本当か!」
凛「本当ですか!」
詠「嘘じゃないわでしょうね!」
一刀の言葉に即座に判断した軍師一行であったが、すぐに冷静になったのか顔が赤くなっている。
一刀「もちろん、本当だよ。俺からのプレ・・・贈り物ってことで。」
今の彼女たちならプレゼントでも伝わるだろうけど、癖だろうか言い直してしまう。
冥琳「恩に着るぞ北郷!ではっ!」
凛「感謝します一刀殿!ではっ!」
詠「あ、ありがとう!じゃっ!」
一言感謝の言葉を言うと本屋に駆け出して行く軍師たち・・・詠だけは恥ずかしがってかもしれないが。
一刀「・・・みんな元気だなぁ。」
雪蓮「そりゃあ、一刀とのこっちの世界での初めてのデートだもん、舞い上がらない方が不思議よ。」
独り言に返事があるとは思わず、驚くが・・・それが雪蓮だと思えば納得である。
恋「ごしゅ・・・一刀といるの楽しい。」
恋も本にはあまり興味がないのかベンチに座っている一刀の隣に座る。ちなみに出る前に恋のご主人様は徹底して矯正した。最初は渋っていたが、警察・・・あっちの世界でいう警備隊に捕まると言ったら全力で頭を縦に振っていた。
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1時間後、それぞれが興味の持った本を持ってくる。
冥琳「私はこれだな。」
見せてきたのは政治経済の理論書・・・・さすが周瑜というべきなのか。
凛「私も似たようなものですね。」
そうして見せてきたのは、教師に関する本だった・・・・性的な意味で。凛の頭を本の角で叩くと戻してこいと顎で促す。
凛「・・・・グスン」
泣いても許しませんよ?・・・・・・くっ揺らぐな俺の意思!
最後は詠なのだが、なかなか見せてくれない。
詠「え、えっっと・・・・か、勘違いしないでよね!」
そういって、ずいっと押し出すように見せてきたのは・・・「超絶!誰でも簡単レシピ!」
詠「こ、これからあそこで暮らすわけだし、料理覚えたほうがゴニョゴニョゴニョ」
後半聞こえなかったがそんなことは些細な問題だ!
一刀「詠!」
詠「ひゃっ、ひゃい!」
一刀「結婚してくれ!」
次の瞬間、野次馬に冷やかされながら雪蓮と恋にフルボッコにされる一刀くんであった・・・・。
一刀「・・・大変申し訳ありませんでした。」
熱が冷めると、落ち着いたのか深々と頭を下げる一刀。
詠「全く、いきなり何を言い出すかと思ったわよ・・・・・嬉しかったけどボソッ」
一刀「そうか!相思相愛だな!」
詠「聞こえたのっ!?」
いつから俺が難聴だと錯覚していた?・・・と興奮しそうなところを恋がチョップしてくる・・・・ズバァアン!
一刀「ぐおおおおお!これはチョップじゃねええ、手刀かなんかだろおお!」
恋「・・・・・・?」
しかし、恋の純粋無垢なその表情に黙るしかない一刀・・・その後は、顔を赤くする詠がいるだけで至って平和であった。
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その後、駐車場に向けて歩いている途中・・・それは起こった。
詠「・・・あれ・・・恋は?」
一刀の右手を握っていた詠が声を上げて辺りを見渡す・・・その言葉に全員が周りを見渡すが辺りは人でいっぱいで上手く探せない。
冥琳「・・・抜かったな。少々舞い上がりすぎていた。」
凛「冥琳殿だけの責任ではありません・・・・それに・・」
雪蓮「えぇ、一番責任を感じているのは・・・」
詠「・・・・・一刀。」
一刀の表情は優れない・・・この知らない場所で一人きりになってしまった恋は今の自分の何倍も不安なはずだから。
一刀「・・・・みんなはここで待っていてくれ。何があっても絶対に動かないでくれ。」
その表情は自分を追い詰めているようには見えないが、軍師たちはその表情に何も言えず、ただ一つ頷いた。
雪蓮「・・・・・あっちにいるような気がする・・・・勘、だけどね。」
あっちの世界では、異常なまでの的中率であったがこっちでは分からない・・・だから、いつもより不安げに「勘」と口にする雪蓮。
一刀「・・・あぁ、ありがとう。」
雪蓮の言葉に軽く微笑むと、雪蓮の指差した方にまっすぐ走っていく・・・そして、彼が走って行ったあとこう呟いたそうな。
雪蓮「・・・・あの笑顔は反則じゃない?」
それを聞いた軍師たちは顔を赤くして、ただ静かに一つ頷いた。
・
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人をかき分け、ただひたすら走る・・・息が切れようが、肩がぶつかろうが関係ない。
一刀「はぁはぁ、恋・・・どこだ、どこにいる!。」
雪蓮の指差したほうは、賑わった街から外れ妙な静けさがある路地裏・・・・そして曲がり角を過ぎ去ろうとした瞬間、その視界にあの特徴的な髪の毛が見えた・・・彼女はどうしたのか、路地裏に座り込んでいた。
一刀「恋!」
そして、駆け寄りそのまま彼女を抱きしめる。
一刀「よかった!本当に・・・・無事で・・・」
涙が出ようが、声が震えようが構わない・・・ただ力一杯彼女を抱きしめる。
恋「・・・・・ごめんなさい。」
そして彼女も、叩かれたり罵倒されるより、愛した人の泣いている、それも自分の行いのせいで泣いているのが一番彼女を苦しめた。
一刀「もう・・・嫌なんだ。愛した人と別れるのは・・・・恋と離れるのは嫌なんだ・・・」
その言葉を聞いて恋もまた確信する・・・彼も、かつてご主人様と呼んだ人も寂しかったのだと、悲しかったのだと。
恋「・・・・・一刀・・・・・ごめんなさい。」
背中に手をまわし、自分も彼を力一杯抱きしめる。
恋「ごめんなさい・・・・だから・・・・泣かないで。」
彼の頬を流れる雫を舐める・・・まるで、子犬が主人を慰めるように・・・・
一刀「・・・・くすぐったいよ、恋。」
彼の声は震えていたが、涙はとまっていた・・・しかし、彼女たちは離れようとはしなかった・・・お互いの体温を確かめるように。
・
・
・
その後、どうしてここに来たのか尋ねると一匹の子犬が親犬の元に擦り寄っていた・・・しかし、親犬のほうは・・・
一刀「・・・可愛そうだけど、親犬のほうはもう・・・」
恋「ん・・・分かってる・・・でも・・・」
一刀「・・・あぁ、そうだな。こんな冷たい場所で寝てちゃ寒そうだよな。」
そう言って、寝ている・・・もう起きないであろう犬を抱き上げる。そして、恋も子犬を抱き上げ賑わっている路地に出て行く。
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・
一刀「お待たせ、行こうか。」
彼の声に待ち人は、その腕に抱いている犬と後ろで子犬を抱える恋を見て大体の検討がついたようだ。そして、彼の頬に涙の跡がついていることも、彼の目が赤いことを問うような人たちはいない。
待っていた人たちと合流し、駐車場に向かって歩いていると・・・彼の抱き上げている犬を、すれ違う人々は蔑んだような、哀れんだような目を向ける。
一刀「これが日本の実態さ・・・繁栄するのに比例して命の尊さを忘れていった・・・いや、俺自身そちら側の人間だったのかもしれないな。ここに至るまで多くの人たちの犠牲や尽力があったことは皆知識として知っている人たちは多いと思う・・・けど、ここにいる人の殆どは戦争を知らない・・・日本では戦争がなくなったから知るというのも難しいけどね。」
後ろを歩く彼女たちにその顔は伺えないが、その顔は寂しいような、怒っているような顔をしていることは見なくともわかっていた・・・車に乗り、家に帰るまで来る時のような騒がしさはなく、助手席に座っている恋は子犬を抱きしめ、その顔を撫でる。後部座席に座る彼女たちも、毛布に包まれた犬を微笑んだ目で見ていた。
雪蓮(あなたは幸せね・・・一刀に拾ってもらったんですもの・・・)
冥琳(国の発展と命の尊さか・・・どうにもやりきれんな・・・)
凛(もし、赤壁のあとに今日を迎えていたのなら、私は・・・・)
詠(天も根本的なところはあっちと同じか・・・)
それぞれが、それぞれの考えを頭に抱え、車は家に向けて走る・・・何かを吹っ切るかのように速度を上げて。
家についてからの行動は早かった・・・毛布に包まれた犬をシャワーで洗って綺麗にしてから、裏の山に埋めた。ちゃんと埋めたと分かるように恋が犬の墓と書かれた木を立てる。
そのあとは、子犬をシャワーで綺麗にしたところで、恋が提案する。
恋「・・・・名前。」
詠「そうね、いつまでも犬じゃ可愛そうだし。」
凛「ふむ、なにかないものでしょうか・・・」
シャワーで綺麗になり、白に落ちきれなかった灰色が混ざった毛色をした犬は一刀の腕の中に収まり、一刀の顔を舐める。
恋「・・・・・ご飯。」
その呟きは、犬の名前の提案だったのか恋がお腹が空いたのか・・・しかし、そのつぶやきにいち早く反応したのは犬だった。大きな、愛嬌のある声でワン!と鳴くと、周りの人たちは目を丸くして・・・・笑った。
一刀「ははっ、ゴハンも気に入ったらしい。」
冥琳「くっくっく、ゴハンか・・・いかにも恋が拾ってきそうな名前だな。」
雪蓮「えぇ、この体の色も米みたいじゃない。」
凛「ゴハンですか、妙にしっくりくる名前ですね。」
詠「そういえば、お昼まだだったわね・・・早速本の出番のようね。」
笑顔に溢れた居間には確かに家族のような・・・絆がそこにあった。この日、北郷家に一匹の家族が加わった。
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続きです!恋姫たちの私服姿って思い浮かばないんだよなぁ・・・