No.677651

驚!恋姫無双~第零幕~

イロハスさん

シリアス(笑)にならないよう頑張ります!

2014-04-10 00:22:51 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5460   閲覧ユーザー数:4619

 早朝・・・まだ、日が昇りきらないようなそんな時間に、一人黙々と道場で木刀を振る男が一人。

名を北郷一刀・・・高校卒業後、家から30分ほどの一般企業に就職。恋人はなく、祖父の残した屋敷に一人暮らしである。そんな彼にはある謎がある。それは、彼が高校1年生の頃のこと、学校に行ったまま家に戻らないと警察に連絡があり、そのまま1年間行方不明になっていたのである・・・そして、彼が行方不明になってから1年後、彼は教室の自分の机で寝ているところを巡回中の警備員に発見される。

 発見当初、彼の服装はフランチェスカ学園の制服であったが、制服はボロボロで、泥や血のあとから警察は山などを移動して帰ってきたのではないかとの予想だった。彼が、見つかってから三日後、警察は彼に事情聴取をしてみたが彼は一言も喋らず、彼はただ空を見上げていたそうだ。警察は彼に精神科やカウンセリングを受けるよう促してみたが、彼は一度として行くことはなく、警察もそれを最後に捜査を取りやめた。

 彼は、高校生活に戻ってもあまり楽しそうに喋ることはなかったそうだが、部活には熱心に取り組んでいたそうだ。しかし、1年前の彼を知っている友人たちはそんな彼を避けていった。当然といえば、当然なのかもしれないが彼はますます喋らなくなったそうだ。そんな彼を、卒業までずっと友人として接していたのは及川という青年だった。青年は彼が喋らなくても話しかけ、笑っていなくてもとなりで笑っていた。

 

「・・・・もういい。」

 

「あら、やっと喋ってくれる気になったのかしらん?」

 

 彼・・・北郷一刀は小さく呟くと木刀をしまい、縁側に腰掛ける。彼の目の前にいるのは、ビキニパンツ一丁の筋肉の塊・・・正直に見るに耐えないのだが、そこは顔に出さない。

 

「今更何の用だ・・・貂蝉。」

 

 彼の声に以前のような優しさはない。その口調に貂蝉と呼ばれた男?は悲しそうな顔を浮かべる。

 

「外史への道が繋がったわ。」

 

「っ・・・・それも、今更だな。」

 

彼は一瞬、ほんの一瞬だけ期待をするような顔を浮かべるが・・・直ぐにいつもの無表情に戻ってしまう。

 

「・・・ええ、私たちの力不足よ、ごめんなさいね。」

 

「・・・話だけなら・・・・聞いてもいい・・・。」

 

貂蝉の真撃な態度に、なにか思うところがあったのか・・・彼は、縁側に座るよう隣を手で叩き、自身も足を外に投げ出す。

 

「・・・・ありがとう。」

 

貂蝉は、一刀の隣に腰掛け、新たな外史を説明し始める。

 

説明を聴き終えた一刀が溜め息をしながら説明の概要をまとめる。

 

「その外史は、三国同盟後の外史で三国の将は全員俺のことを覚えている・・・そして、俺のことを全員知っているということが発覚し三国は同盟を組む。いや、董卓たちがいきているといことは四国か?」

 

「いえ、董卓ちゃんたちは皆魏にいるわ。朝廷の元に置いとくわけにもいかないしね。」

 

「・・・そうか。」

 

その言葉に安堵したのか僅かな笑顔が一刀の顔に浮かぶ。しかし、次話す時に、その顔はいつもの無表情に戻っている。

 

「それで?・・・・不足の事態って?」

 

「ええ、まず一つに孫堅・・・孫策の母が生きているということ。これにより孫呉は袁術に九州されず、袁術とも友好的な関係を結んでいるわ。二つ目は、本来あるべき反董卓連合がなくなったことにより、朝廷の張譲や十常侍は死なず未だに生きているということ。そして、本来三国志では死ぬはずである、夏侯淵・関羽・呂蒙・黄蓋・孫策・周瑜・孫堅は外史の修正力によって、何らかの形で死ぬことになる可能性が高い。長い目で見れば、曹操もありえるわね。」

 

それを聞いた一刀の顔はいつもの無表情・・・だが、その手は真っ白くなるほど強く握られていた。

 

「俺に・・・・どうしろっていうんだ。」

 

その言葉は、怒りか悲しみか・・・震えていた。

 

「・・・私の個人的な意見では外史に介入して彼女たちを守ってあげて欲しい。でも、外史の管理者の連中はそうは望まない。これ以上外史を歪めてしまっては正史が壊れかねないと言っているわ。」

 

「彼女たちの命より・・・・大事か?」

 

その問いに、貂蝉は答える術を持っていない。

 

ふぅっと何かを吐き出すように息をつくと、彼は縁側に裸足で歩いていく。

 

「・・・・また、彼女たちを悲しませることになるかな?」

 

彼が思い浮かべるのは、彼を慕ってくれた彼女たちの悲しげな顔。

 

「・・・分からない、今回はイレギュラーが多すぎる・・・でも、最善は尽くすわん。。」

 

「不思議だよなぁ・・・自分たちを引き剥がした人達に期待しなきゃいけないなんてさ。」

 

そう言って、彼は少しだけ笑う。

 

「・・・・・・それは。」

 

言葉につまる貂蝉を見て、彼は以前のように笑い・・・・そして、泣いた。

 

「いい・・だろ?このくらいの・・・皮肉くらい。」

 

彼は涙を流しながら、貂蝉に笑いかける。

 

「・・・ええ、そうねん。それじゃあ、覚悟はきまったのかしらん?」

 

そう言って、貂蝉もその顔に笑みを浮かべる。

 

「あぁ、救ってみせるさ。秋蘭も愛紗も亞莎も祭も雪蓮も冥琳も孫堅さんも華琳も全員な!」

 

その瞳に映るはかつて愛し、愛された彼女たちの笑顔・・・そして、まだ見ぬ孫堅さん。そこに、ついさっきまでの憂鬱とした顔はない。

 

「ふふっ、ご主人様ったら欲張りだわん!」

 

貂蝉も立ち上がり、腰をくねらせる・・・正直、見たくなかったので空を見上げる。

 

「あぁ、欲張りさ。魏の種馬から三国の種馬になるんだからな。」

 

「あらん?愛想をつかされてるとは思わないのかしらん?」

 

貂蝉の言葉に、空を見上げたまま固まってしまう。

 

「ハハハ、チョウセンサン、ジョウダンキツイヨ」

 

「さぁ、どうかしらねん?それは、行ってみてからのお楽しみねん。」

 

「・・・・それもそうだな。」

 

そして、もう一度空を見上げれば、流れ星が夜空を滑っていった。


 
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