はやての誕生日当日。今日の俺は朝から大忙しだった。
約15人分の料理の下準備をしているのだ。数が2人増えてないかだって?
実はこの2日ほど前、フェイトから後2人増えると言われたのだ。
確か名前はクロノとエイミィだったかな?なんでもこの2人、婚約が決まっているとか
レーゲン「こちらのお料理はここに並べて置けばいいんですね?」
士希「あぁ。ラップかけといてくれ」
今回はせっかくなので、レーゲンにも手伝ってもらっている。
わちゃわちゃとしているが、その姿がとても微笑ましい
士希「ふふ、なんかいいなぁ」
レーゲン「??どうかしたんですか?」
士希「いや、なんでもないさ。さぁ、さっさと準備するぞ!あいつらに最高の料理を届けてやる!」
レーゲン「はい!」
その後俺は様々な種類の料理を作った。和洋折衷、色とりどりだ
レーゲン「あ、しきさん、そろそろ時間です」
時刻は5時。集合は6時だったな。確かにそろそろだ
士希「よし、なら仕上げと行くか」
俺は今まで作った料理を温めたり、焼いたりしていく。
その必要のない物はどんどん机に並べて行く
士希「よっ!」
俺は魔力を消費して、転移魔法陣を展開させていく。これで一気に運べるだろう
ピンポーンピンポーン
士希「レーゲン、出て来てくれ」
レーゲン「はーい!………あ!ヴィータさん!いらっしゃい」
どうやらヴィータちゃんが来たらしい
ヴィータ「うお!凄いなこれ。全部士希が?」
ヴィータちゃんは部屋に上がるなり、机の上に並べなれていた料理を見て驚いていた
士希「レーゲンも手伝ってくれたさ。さて、頼んだ通りに机の配置は済んだかい?」
ヴィータ「あぁ、バッチリだぜ。この量もしっかり乗るだろう」
士希「よし。なら後はピザが焼き終わるのを待つだけだ」
ヴィータ「ピザ!士希は最高だな!」
ヴィータちゃんはどうやらピザが好物のようだ
士希・レーゲン「お邪魔しまーす」
俺とレーゲンは八神家に上がり込む。玄関には靴でいっぱいだった。どうやら皆もう来ているらしい
シャマル「あ、士希さん!今日はありがとうございます!あれ?お料理は?」
出迎えてくれたシャマルさんは、俺が手ぶらで来た事に疑問を持ったようだ
士希「大丈夫だ。あんな量、いちいち行ったり来たりして持って来るのだるいからな」
シャマル「ん?ん?」
わかっていないようだった
はやて「お!士希君いらっしゃい!今日はありがとうな!」
リビングに入ると、そこは人で溢れていた。そして入るなり、主賓であるはやてが出迎えてくれた。
士希「おう。知らない顔もいるが、とりあえず俺の仕事を済ませる」
俺はリビングに並べてある机を見やる。そして…
士希「転移」パチンッ
転移魔法を駆使し、俺の部屋に置いてきた料理を転移し始めた
シャマル「なるほど。確かにこれなら一度で済みますね」
士希「そういうこと。さぁ皆、待たせたな!腕によりを掛けて作った。堪能してくれ!」
はやて「うわぁ、凄いな。士希君、ホンマありがとうな」
はやてはポツリとお礼の言葉を言った。この言葉と、その幸せそうな笑顔だけで、俺としては十分だった
フェイト「じゃあみんな!」
なのは「せーの!」
『はやて(ちゃん)!誕生日おめでとう!!』
はやて「みんなありがとう!」
こうして、はやての誕生日会は開催された
士希「あなたがアルフ?」
皆が思い思いに飲食や雑談を楽しんでいる中、
俺はレーゲン、ザフィーラ、そしてもう一人女性の居るところにやってくる。
三人が三人とも、ローストビーフにかじりついていた
アルフ「お!あんたが雑賀士希だね?いやぁ、あんたの料理美味いよ!」
士希「そりゃどうも。フェイトの使い魔って聞いていたから、もっと動物チックだと思っていたが…」
実際は姉御的な感じで、頭に耳が生えているくらいだった
アルフ「いや、あたしも久々に人型になったよ。本来はこっち」
そう言ってアルフは犬型になった。ほー、小型犬になれるんだ。可愛いなぁ
レーゲン「あ、では僕も!」
レーゲンは何を思ったか、突然犬型になった。こっちもこっちで可愛い
アルフ「この流れで、一人だけ変身しないのは見過ごせないなぁザフィーラ」
ザフィーラ「くっ…」
え?ザフィーラ変身出来たの?確かに獣耳はついているが
ザフィーラ「チッ、雑賀士希には見られたくなかったが…」
そう言ってザフィーラも犬型に変身した。おー、この子もなかなか…
士希「よし、写真を撮ろう。三匹とも、並んで並んで!はい、チーズ!」
パシャッ
俺はワンコが三匹、並んで仲良く肉を咥えている写真を撮る。あぁ、これだけで満足かもしれない…
士希「あなた達が、フェイトが言っていた…」
クロノ「あぁ。クロノ・ハラオウンだ。それでこっちが…」
エイミィ「エイミィでーす!よろしくね士希君!」
ワンコ三匹の写真を撮り、ホクホクしていた俺は、
2人で仲良く焼きそばを食べていたクロノさんとエイミィさんに話掛けてみた
士希「ハラオウン?フェイトの関係者か?」
クロノ「あぁ。フェイトは俺の義理の妹なんだ」
士希「へぇ。俺も妹がいるんですが、妹って最高ですよね?」
クロノ「天使なんじゃないかと思うな」
俺とクロノさんは固い握手を交わした。クロノさんとは良い友達になれそうだ
エイミィ「そ、それにしても、士希君の料理本当に美味しいねー。
フェイトちゃん達が絶賛してたのも納得だなー」
エイミィさんが苦笑いしながら話題を変えてきた。妹好きがそんなに変な事なのだろうか
士希「うち、実家が飲食店やってるんですよ。その影響で、俺も料理が好きになりまして。
将来は俺も店を構えたいなぁなんて考えてます」
エイミィ「へー!じゃあもしお店始めたら、絶対呼んでね!絶対行くから!」
おー、早くもお客様ゲットだ
クロノ「…はやてから報告を受けているんだが、士希の持つ力、そしてレーゲンについてなんだが…」
クロノさんは突然真面目な顔で話し始めた。
はやての報告、ということはクロノさんがはやての上司に当たるのか
士希「俺の力は、魔力を使った身体能力の強化と、さっきやった転移、飛行、
後結界張るぐらいしか使えませんよ。なのはみたいに、ビーム出すなんて離れ業、俺には出来ません」
クロノ「となると、ベルカ寄りなのか。
以前、直撃すると爆発する蹴りを繰り出したという報告を受けているんだが?」
あーあれか
士希「あれは魔力でやったやつじゃないですよ。あれは氣です」
エイミィ「え?き?」
まぁ、この時代の人間には、縁遠い話だよな
士希「氣ってのは、誰もが有している生命力の流れみたいなもんです。ほら、漫画やゲームで見ません?」
エイミィ「え?マジで?」
士希「マジです。修業すれば誰だって使えますよ」
その修業内容は半端じゃないがな
クロノ「そ、そうか。それじゃあレーゲンの事についてなんだが…
僕はロストロギアの一種なんじゃないかと睨んでいる」
ん?聞きなれない単語が出たな
士希「そのロストロギアってのは?」
クロノ「ロストロギアは、簡単に言えば過去の遺産。
そのどれもが高度な技術によって作られ、中には世界を崩壊させるほどのものまである」
士希「…そんな危ない代物なんですか?」
クロノ「あぁ。本来なら、慎重に回収しなければならないのだが、
確証はないし、本人も来たがっていないみたいだからな」
士希「あー、そう言えばそうでしたね。でも、レーゲン普通に生きてますよ?作られたって事は物……」
ちょっと待て。だとするとタナトスはどうなる?あいつも本体は鎌だと言っていたよな。
その鎌が、人格や肉体を持つなんてあり得るのか?
クロノ「…例えばデバイスにしても、人格を持つ物や、普通に生命として活動するものもいる。
はやてのヴォルケンリッター、リインフォースもその一つだ」
マジでか。つまりはAI、もしくは人工生命体ってやつか
士希「じゃあレーゲンも、そのうちの一つ…」
クロノ「まぁ、確証はないがな。だから士希の方でも、なにかわかったら連絡をくれ。可能な限り力も貸す」
士希「わかった。いろいろありがとうございますクロノさん」
クロノ「いいさ。妹好きの同志として、プライベートでも仲良くしたいしな」
俺とクロノさんは再び固い握手を交わした
士希「よ!どうだ今回の料理は?」
俺はレズカップル二組の方へやって来た。こいつらは本当に、食べさせ合いが好きなんだな
フェイト「あ、士希、お兄ちゃんと会ってきた?」
士希「あぁ。君のお兄さんは話の分かる人だったよ」
フェイト「??」
アリサ「あんた、本当に凄いわね。これだけの料理、このクオリティでよく用意できたわね」
士希「ま、今回は一日時間があったからな」
すずか「一流ホテルでも、これだけの物は食べられないよ」
なのは「ふふーん!でも今回は私もケーキ持ってきたよ!士希君の料理に負けない出来のはずだよ!」
士希「へぇ、なのはも料理できたのか?」
なのは「え!?あ、う、うん!もちろん!だって私、喫茶翠屋の娘だよ?作れて当然です!」
あ、ウソか。でも、確か翠屋って喫茶店の娘ってのは本当らしいから、ケーキは期待してみるか
フェイト「そう言えば、今日ユーノ来れなくて残念だったね」
フェイトはサンドウィッチ片手に言う。ユーノ?確かはやてからも、そんな名前を聞いたな
士希「そのユーノって奴は誰なんだ?」
フェイト「ん?なのはのペット?」
え?ペット?
士希「そうなのか?アルフみたいな使い魔ってわけじゃなくて?」
アリサ「でもユーノって、本来は人間よね?」
士希「人をペット扱い!?」
おいおい、なのはお嬢様はとんでもなくドSな子なんじゃ…
すずか「もうみんな、ペットじゃなくて下僕でしょ?」
士希「下僕!?」
さらに酷くなりやがったぞ!?怖ぇ。やっぱ女子怖ぇよ!
なのは「もう皆!士希君、冗談だからね?ユーノ君は友達で、私が魔法と出会うきっかけをくれた人なんだ」
士希「あ、そうなのか?」
もう何が真実なんだ…
なのは「無限書庫の司書長になってからは、本当に忙しくなったよね」
あぁそうだ。確かはやても、無限書庫がどうのこうのの時に、ユーノって名前を言っていたな。
レーゲンの正体も、そのユーノって奴が調べてくれるだろうな
はやて「あ!士希君!これめっちゃ美味しいよ!でも大変やったんとちゃう?
こんだけ用意するて、並の事やないやろ?」
ヴィータちゃん、シグナム、シャマルさん、リインちゃんと一緒に食べていたはやてに声をかけられる。
どうやら堪能しているようだ
士希「あぁ、別に大した事でもないさ。それに、皆が俺の作った飯を美味そうに食ってくれるんだ。
それだけで頑張った甲斐があったさ」
はやて「ふーん、なんやえらいカッコいい事言うやん」
士希「そうか?はやてならわかるだろ?作った料理を、美味そうに食ってくれる喜び」
確かはやても、料理が趣味だって聞いたからな
はやて「せやな」
俺とはやてはお互い見やり、微笑み合う。するとヴィータちゃんがピザ片手にこっちに来た
ヴィータ「士希!お前のピザ美味い!また作ってくれ!」
士希「おう!なら今度は、ピザパーティーでも開くか?」
ヴィータ「なんだその最高に楽しそうなパーティー!絶対やるぞ!」
ヴィータちゃんは目を輝かせて言った。この子は本当に、嬉しい反応してくれるなぁ
はやて「…士希君てロリコン?」
士希「心外だなはやて。勘違いするな。レーゲンも含め、ちっちゃくて可愛いものが好きなだけだ」
はやて「ミニコンか。って事は、リインが危ない!」
リイン「わわ!どうかしたですか、はやてちゃん?」
はやては守るようにリインちゃんを抱きしめた。改めてリインちゃんって、ちっちぇーなぁ
士希「ふふ、いいよなぁ。リインちゃん、うちに来ないかい?」
リイン「え!?」
はやて「残念や士希君。私、士希君を逮捕しやなアカンようや…」
そう言ってはやては手錠をちらつかせた。
チッ、この女、あんなちっちゃい子と住めてなんて羨ま…
シャマル「お二人はとても仲が良いですね」
俺とはやての掛け合いを見ていたらしいシャマルさんが呟いた
士希「そう見えるか?」
シャマル「はい!はやてちゃん、とってもイキイキしてますし」
はやて「そ、そんなこと!」
士希「ほー」
俺ははやてを見てみる。彼女は微妙に顔を赤らめているようだった
はやて「クッ、なんやねん士希君!目ぇ潰すぞ!」
士希「怖ぇわバカ!」
急に目潰し宣言する女もどうよ
シグナム「む、モグモグ、主はやてを困らすものは、ゴクン、この私が斬り捨てる」
なんて物騒な事を、ステーキをモグモグ食べながら言うシグナム。
そして手にしていたナイフを…
士希「おいはやて。守護騎士殿の教育はどうなっている?」
俺の首元に突きつけた
はやて「シグナム、許可する」
シグナム「承知しました」
士希「許可するんじゃねぇよ!テメェも承知してんじゃねぇよ!」
シグナム「ふん、貴様とは一度やり合ってみたかったからな。良い機会だ。見せてみろ、貴様の力!」
士希「テメェバカだろ!?」
俺は小走りで逃げ、八神家のベランダに出た。シグナムは追ってこない。
どうやら本気ではなかったようだ。ちょうどいい、少し一息つくか
はやて「よ!変態」
士希「急に来るなりずいぶんな挨拶だな」
俺が一息つき、星を眺めていると、はやてがやってきた。何のようだ?
士希「いいのか?主賓がこんなとこにいて」
はやて「ええんよ。みんなそれぞれ楽しんでるみたいやし。
それより、こんなとこで一人黄昏てる士希君が寂しそうやったでなぁ。
わざわざ来てあげたんやで。感謝しぃ」
士希「はいはい、感謝感謝。謝謝」
はやて「もう、ホンマに感謝してくれとるん?」
士希「してるさ」
はやて「ふーん」
そして間ができる。お互い、何を話すわけでもなく、ただ空を眺めていた
士希「………あ」
すっかり忘れていた。あれ、渡さないとな
はやて「ん?どないしたん?」
士希「あぁ。喜ぶかはわかんないが、これ、プレゼントだ。改めて、誕生日おめでとう、はやて」
俺はポケットに入れていたプレゼントの包みをはやてに渡す。するとはやてはとても驚いていた
はやて「え…うそ…なんで?」
士希「なんでって、誕生日にプレゼント渡しちゃいけないのかよ?」
はやて「いや、だって、あんなに料理だって作ってもろてんのに…」
士希「あれは、パーティー用に作ったやつだ。お前の為でもあるが、どっちかって言うと皆の為だ。
だから料理はプレゼントじゃない」
はやて「そ、そうなんや。私てっきり………あの、これ、開けてもええ?」
士希「ん?構わんが、あまり期待するなよ?」
はやて「えへー!めっちゃ期待したる!」
そう言ってはやては包みをほどいていき、中身を取り出した
はやて「これ、ヘアピン?」
士希「あぁ。な?大したもんじゃねぇだろ?」
俺が贈ったのは、ゴールドのヘアピンだった。
たまたま目に入った小物だったが、デザインも悪くないし、
値段も高校生には相応だったし、いいと思ったんだが…
はやて「このヘアピン、なにかプリント、ってか彫られてるけど、花かなにか?」
士希「ん?あぁ。確かスミレだったはずだぞ。気に入らなかったか?」
花言葉は…まぁ言わなくていいか
はやて「んーん、めっちゃ嬉しい。なぁ、今つけてもええ?」
士希「ご自由に」
そうしてはやては、今まで付けていたヘアピンを外し、俺が贈った物をつけた。
どうやら気に入ってくれたようだ
はやて「どう?似合う?」
士希「ッ!?あ、あぁ、いいんじゃないか?」
俺ははやての笑顔にドキリとしてしまう。不覚にも、可愛いと思ってしまったのだ
はやて「ん?なに目背けとるん?まさか、私が可愛過ぎて直視できませんとか?」
士希「………」
俺ははやてを直視する事にした。するとはやては、みるみる顔を赤く染めた
はやて「いや、なんか言ってよ…自分で言ってて恥ずかしいやん…」
士希「ハッ!恥ずかしがるくらいなら、言うもんじゃねぇな!」
はやて「士希君、意地悪や」
むすっとするはやて。はは、こいつは本当に…
士希「可愛いな…」
はやて「え?」
士希「さぁはやて!高町さんとこのケーキ貰いに行くぞ!」
はやて「え?ちょ、待って!今なんて…」
士希「さぁ、なんだったかな。ほら、さっさと行かないと無くなるぞ?」
はやて「ちょ!待ってよ士希くーん!」
俺は自分の顔が熱くなるのを自覚しながらも、はやてと部屋に戻って行くのだった
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