No.672427 福岡港改造生物密輸事件 7リューガさん 2014-03-20 23:29:54 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:417 閲覧ユーザー数:417 |
その時、マップ上のエアマフラーを示すアイコンが、明らかにここを目指して集まり始めた。
たちまち、HMDに赤いサインと共に警告音が響く。
だがその後ろから、味方を示す2つのアイコンが、一際すばやく近づいてきた。
この人たちは…。
「エアマフラー隊が来る!」
オレは橋の中州側を指差した。
「2秒足止めしろ!」
そう言い終わらないうちに、すぐそばで激しい閃光と熱さを感じた。
イーグルロード。
すでに地上から10メートルのところで大きく羽を伸ばし、静止しながらレーザー砲を構えている。
オレもシリコンアームを橋げたに飛ばし、後に続く。
オレ達の行動を察した人々から悲鳴が上がる。
足早だった人々の流れが、全速力に変わり、橋や付近のビルへと駆けてゆく!
なじみのプロペラ音と共に、キリンだの象だののマスクをかぶった巨体が、猛スピードで突進してきた。
バン!
先頭のエアマフラーが全身を現したそのとき、胸が赤く溶けた鉄を残して穴が開いた。
次も、その次も。
それでもエアマフラーは前に倒れ込み、多くの人を下敷きにしようとする。
だが、2秒たった。
「365の必殺技のひとつ!コスチェーンパンチ!」
エアマフラーの後ろから、青い金属の拳がどこまでも伸びるチェーンを引き連れて飛んできた。
拳は吹き飛ばされたエアマフラーの周りをぐるぐる回り、チェーンが縛り上げる。
後ろのビルの屋上に、青いロボットが立っていた。
サイズは人間大。胸には半透明の黄色い装甲でXと記され、中には無数のメカが見える。
その右腕にチェーンが続いている。
地球から1114万8千光年にある惑星コスモスで作られたロボット、銀河ロイド・コスモX。
拘束されたエアマフラーに、さらに赤と黄色の影が襲い掛かる。
その黄色い影がエアマフラーに重なるたびに、敵は切り裂かれていく。
目で見ることはできないが、赤は小柄な装甲服。黄色は伸び縮みするマフラーだと知っている。
超音速で地上を走るノッカーズ、アクセル・レックス。
最後に、レイズマンがやってきた。
「ゼロスマッシュ!」
その左拳に触れたもの、その周辺にあるものはすべて分解される能力。
それがエアマフラーの体を分解していく。
だが撃破される直前、エアマフラーから小さな影が飛び出す。エアバグだ。
逃げる人々に目もくれず、屋台の残骸に殺到する。
そんなエアバグに、漬物石のような拳が振り下ろされた。
サイズは普通の人間と変わらないが、太い刃物が取り付けられた腕も。
サイボーグたちだ。
千田隊長のオーバオックスがロボットモードに変形した。
させるか!とばかりに、巨大な張り手を叩きつける!
そこに、奇跡的に生き延びたエアマフラーが飛び込んできた。
その進行方向には、足がすくんで動かないのか、呆然として事態を見詰める人たちがいる!
オレは、天に向かってショットガンを撃った。
ダーン!
大口径ならではの巨大な銃声が響き渡る。
「ガーオ!どけどけ!」
そのまま連射しながら、エアマフラーが向かう屋台へ走る!
オレの行動にインパクトがあったのか、立ちすくんでいた人々が逃げ始めた。
千田隊長はエアマフラーを追おうとしたが、一瞬対応が遅れた。
それでも、体を勢いよく回転させ、右拳を突き出した。
その腕には、ワイヤーキャノンが仕込まれていた。
パンチ力とモーターが飛ばすワイヤーの力が合わさり、鉄のワイヤーが一直線にエアマフラーの背中に喰らいついた!
このワイヤーキャノンの先端には、ヤモリの足を模した粘着面がある。
接着面は、張り付けばオーバオックスの重量11.5tを確実に支える。
それは袋になっていて、砂鉄が入っている。
これにより、デコボコした場所にも形を変えて入り込み、しかも袋の中の空気を抜くことで確実に喰らい付くのだ。
しかも、接着面は一定の方向に引っ張れば跡を残さずはがせる。
ワイヤーキャノンは接着面に空気を入れ、内部のワイヤーを操作することで簡単にはがせる。
つまり、この接着面を高速で発射すると、その勢いははじき返されること無く対象にすべてぶつけられる!
だから貫いたでもなく、張り付いたでもなく、喰らいついたんだ!
それでも、オーバオックスとエアマフラーの体格差は歴然だ。
千田隊長は左手からもワイヤーを飛ばし、道路に固定した。
そして、右腕のワイヤーを引き戻し始めた。
空中で体勢を崩されたエアマフラーは、プロペラを前後反対に向けられた。
千田隊長のほうに。
千田隊長は、左腕を地面に付け、両足を勢い良く敵に向けた!
グッシャァ!
勢いよく叩きつけられたキックは、足の裏の機体固定用アンカーと合わさったものだった。
その貫通力と相手の勢いとが合わさって、両者の体を激しく揺さぶった!
それでもエアマフラーは前進を試みる。
オレは屋台についた。
そして残りの弾を、往生際の悪いポンコツにお見舞いしてやった。
その間にも誰かが近くで銃を撃っている。
ありがたい!
無事に地面に立っていたのは、千田隊長のオーバオックスだった。
エアマフラーは体をくの字に折り曲げて誰もいない路上に哀れな残骸をさらす。
千田隊長の機体が、オレにサイムズアップして見せた。
オレもサイムズアップで返す。
ああ、あのときの、手足を失った時の雪辱を果たしたんだ。
あの時は、オレも見ていた。
ヘルメス450のラジコンで。
オレは何とかしなきゃと思い、ヘルメスを体当たりさせることにした。
それが切っ掛けで偽者だと見破られ、打ち落とされたけど、体当たり自体は成功した。
オレの心に、誇らしさが浮かんできた。
普段から生き延びることだけしか考えないオレに、そんなものが残っていたとは。
だが振り向いた時、オレは自分が凍りつくのを感じた。
実際に凍ったわけではない。
見たくないものを見て、後悔に凍りついたんだ。
クオーレがいた。
その手には短いカービンタイプの89式小銃が握られていた。
彼女は背中に、自衛用の銃を背負っていたのは知っている。
だが、それを使うところを、これまで想像さえしなかった。
だって彼女に似合うのは学校カバンか料理を作るためのもの、ハイキングのバスケットなどだ。
「私だって、青の七です!」
オレ達の様子を察したのか、クオーレが自分からそう宣言した。
だが足はふらふら。
すぐに須藤君が支えに来る。
やがて、避難が再開された。
だが気分は晴れない。
須藤君は純一君をお父さんに任せた。
クオーレは、須藤君に肩を借りながら歩いている。
あの平和にこそ似合うクオーレに銃を持たせたこの世界について、考えずにいられなかった。
オレは平行世界を垣間見たノッカーズの話を思い出した。
ノッカーズとは違うかもしれないが、多くの異能力者が生まれる世界。
そこでは、異能力者は危険人物として、ひとつの島に集められる。
そこは監獄だ。
そして看守は、異能力者をルールを違反せざるを得ない状況に追い詰め、罰として殺す。
一方、ヴォイドこと結城 涼介というテロリストを送り込んだ未来の世界もある。
その未来では異能力者が無能力者を支配し、一切の人権もなく奴隷化しているという。
ヴォイドのノッカーズ能力は、ノッカーズの能力を残らず吸い尽くし、自分のものにすること。
手の平から対象をV字に焼くビームを放つこと。
さらに、未来の技術で作られた飛行能力を持つブースター・ネバーモアをまとっている。
それらの能力で、クソッタレな未来を作ったとされるノッカーズから能力を奪い、未来を変えようとしているんだ。
その試みが成功するかは分からない。
ノッカーズ能力が無くても犯罪者は犯罪を犯すし、そもそもヴォイドが過去に飛んだ時点で未来は変わったはずだからだ。
それに女の子に対して「ヴォイド!お前を倒すのは、この私!」フラグを立てすぎる。
女の子をワンパターンな生き物だと言うつもりは無いが、これだってかなりの歴史の変革じゃないか?
そもそも、オルタレーション・バースト以前だって平和な時代だったといえたか?
オレや広美、他のヒーローにしたって、そんなに銃が似合う奴なんていたか?
オレは、不可視の偵察者・アウグルが久 広美を管理する世界も、極超音速ノッカーズ・イーグルロードが吉野 健太郎を支配する世界もイヤで、この世界を守っている。
あのクオーレにしたって、自分で選んだ道じゃないか。
そうだ。
オレは間違っちゃいない…。
そのとき、再び新たな危機が迫ってきた。
場所は、最初にオレが偵察していた香椎埠頭から、こっち側の箱崎埠頭。
相手の熱を探知する、パッシブ赤外線カメラの映像。
それによると、海の中から高い体温を持った生き物がたくさん這い上がっている。
1頭や2頭ではない。
地面を埋め尽くしながら一直線に走り出した!
アステリオスの改造家畜だ。
オレの懸念していたバイオハザードか?!
沖には、2隻のアメリカ海軍の駆逐艦がいる。
群れから艦隊にレーダー波が照射された。
たちまち艦が対空機関砲を発射する!
人間業じゃない早業だ。
たぶん、艦の自動迎撃システムだろう。
その攻撃で群れの一部が宙を舞った。
だが、走りは止まらない。
群れの先頭で、アスファルトが飛び散り、続いて土煙が待った。
地下にもぐる気か?!
ピピピ ピピピ ピピピ ピピピ
アルクベインから通信だ。
『アルクベインよりアウグルへ。
港の状況は確認しましたか?』
ハイ。今しました。
『それなら話が早い。
先ほど、そのアステリオスから通信が届きました。
どうしても貴方と話したいことがあるそうなので、来て欲しいそうです。
場所は、香椎埠頭から箱崎埠頭までの間。
そこのどこかで地上に出るそうです』
…オレ、通信係と偵察係として便利だから出世したと思ってたけど、交渉係なんてできませんよ。
『それは、私も考えましたが、彼は貴方に何か特別な共感を抱いているようです。
貴方にしか話したくない。といっています』
同じ声。だが、機械にサンプリングされたと分かる声が響いた。
量子コンピュータのスパーク。
中の人の相棒だ。
「こちらアウグル、了解。
ただし、港のほうに展開しているチームの援護をください」
『……こういう場合、話し合いは1対1でやろう、と向こうは望んでいるのではないでしょうか?』
まさかアルクベインから空気読めと言われる日が来るとは思わなかった。
敵の申請を信じる馬鹿がどこにいますか。
ヤダー!死にたくない!!
「どっちにしろ、私は付いていきますから。
1対1なんて無理です」
広美!やっぱり君は女神だ!
『あっ、今アステリオスから追申が来ました。
護衛については、いくらでもつれてきて良いそうです。
許可します』
今、港湾部に展開しているのは、カマちゃんズ・・・なんだ?これ、規模がやけにデカイぞ?
カマちゃんズとは、中学3年生の鎌倉 ひろゆき君、あだ名はカマちゃんが率いる少年野球チームだ。
チーム内で未来からやってきたブースター・BEEの装着者が3人もいる。
4番バッターでBEEⅠ装着者、吉田 翔人君と、エースでBEEⅡ装着者、スバルちゃん。
そして異世界からやってきた家族戦隊ノック5の子供メンバーが有名だ。
他にも陰陽師の、がしゃん坊ってのもいる。
そのせいで、いわゆる機密レベルの高い子供たちが、息抜きのために助っ人を買って出るんだけど…。
全部集まると、こうなるんだ。
援護はこいつらに任せようか。
・・・よし、OKが出た。
「イーグルロード、行くよ」
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次々に現れるヒーローたち! その時、アステリオスから謎の要請が…。 果たして、彼の真意は!?