No.672409

福岡港改造生物密輸事件 2

リューガさん

心に傷を持った農耕怪人・アステリオスの猛攻! そして…。

2014-03-20 22:14:05 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:492   閲覧ユーザー数:492

 やばい!

 「ロケット噴射!フルパワー!」

 音声入力により、背中の飛行ユニットの固形燃料ロケットに火が入る。

 装備が熱を持つが、このときばかりは仕方が無い。

 眩しさから守るために一瞬目を閉じる。

 ショックでスーツに体が食い込む。

 

 普通の相手なら、そのショックで足を止め、光を目で追うと思うのだが、アステリオスはさらに勢いを増して突っ込んでくる!

 まずい!あいつの電磁波で光学迷彩にノイズが……!

 スーツのメタマテリアルは、有機素材を使っているため、結構やわらかい。

 以前は硬い素材を使っていたのだが、それは強いショックを受けると簡単に砕け散った。

 だからショックを受けても受け流せる素材に変えた。

 裏からは、何本ものアクチュエータが、曲がった部分を補償光学に基づいて直してくれる。

 補償光学とは、元は天体望遠鏡の鏡を補償し、大気の揺らぎで瞬く星の光を1点に集めるような技術だ。

 そのアクチュエータが、電磁波の影響でひっぱられる。

 曲がったメタマテリアルの中で、光の軌道が曲がり、像がゆがむ! 

 

 バチイィ!

 

 眩い電光をまとった戦斧が、一直線に天を刺した!

 避けたけど、さらにスーツにノイズが……!

 「そのだらしの無いドラム缶体型!アウグルか!」

 「桐生室長だったら、どうすんだよ!」

 桐生室長とは、警視庁のBOOTS室長。

 東大法学部を主席で卒業後、ドイツの名門特殊部隊・GSG-9で4年間研修したという若きエリートだ。

 しかも率先して現場の指揮も取り、専用のブースターまで使いこなす。

 そのブースターの能力は、何の因果かオレと同じ透明化だ。

 クールでかっこいい、警官の鑑のような方だ。

 彼なら両腕のブレードでアステリオスに立ち向かっていただろう。

 弱点。いまどき珍しいくらい、見たことも聞いたことも無い事態に出くわすと、パニックを起こす。

 そういえばあの人、透明化してたのに練馬区で負けたことがあったな。

 電撃使うロボットに!電撃怖い!

 

 ロケットの噴射は長く続かない。

 オレは飛行ユニットを使うことにした。

 ゴム製の輪・ダクトに守られた2枚のプロペラを出し、小型ヘリコプターとなって、オレを空へ。

 楓の種は、ヘリコプターのようにくるくる回転しながら遠くまで飛んでいく特長を持つ。

 それをモデルにした1枚ばねは、消音性に優れているのだ。

 その能力を生かして逃げる。

 どんな敵を前にしても逃げ切ることが、オレの勝率の根源なんだ。

 

 「待て!待ってくれ!」

 アステリオスは、戦斧を背中に回し、俺を呼び止めた。

 「お前になら話しても良いかもしれん!」

 俺達ヒーローは、殺しはご法度だ。

 マジン団も、悪の組織だがそれは同じだったりする。

 だから、時々こういうことがある。

 「何?どういう事だ?」

 オレはコンテナの上に降り立ち、話を聞くことにした。

 もしかしたら、よい時間稼ぎになるかも。

 「自分達に不利な情報でも残さず流し、戦いよりも逃げることを優先するお前ならな!」

 そうその通り・・・なんか引っかかるな。

 アステリオスは話を続ける。

 「これから我々が行うことは、別に地球に害を及ぼしたり、またほかの惑星を侵略するための物ではないんだ。

 正式な商業契約によるものだからな」

 俺は呆れて言ってやった。

 「お前、知らないのか?

 人為的にノッカーズやノッカーズもどきを作る行為は、すべて犯罪なんだぞ。

 あの牛だって、改造動物だろ。

 電流生成菌などによるバイオハザード。まずいんじゃないの?」

 「心配ない。

 何しろ、あれの輸出先には、生物がいないのだからな」

 その発想は無かった!

 「輸出先は、地球から100万光年かなたにある。

 スイッチアというロボットが支配する惑星王国だ。

 現在、ロボット文明は環境破壊のため、行き詰っている。

 だから、我々マジン団に助けを求めてきたんだ」

 話を聞いている間も、こっちはジッとしているわけじゃない。

 司令官である千田隊長からの無線だ。

 『こちら千田。アウグル。長谷川。ドルチェ。状況報告を!』

 『こちらドルチェ。香椎ポートパークに異常なし』

 オレのいるアイランドシティの隣の埠頭だ。

 今、青の七が探索している。

 『こちら長谷川。箱山埠頭と須崎埠頭に異常なし』

 BOOTSが二手に分かれて探索している埠頭だ。

 箱山埠頭は最大の埠頭で、どちらも穀物用荷役機械がある。

 急いでメールを打ち、報告する。

 HMDに映し出されるキーボードとタッチパネルを呼び出す。

 当然実体は無い。

 目の前20センチのところにあるようにタッチすれば、操作できる。

 【発見。アステリオスと遭遇。映像と音声送る】

 「?おかしいな。

 どうしてロボットの王様なんているんだ?」

 オレの質問にアステリオスは、いかにも重い事実を話すように、ゆっくり話し始めた。

 「スイッチアにはかつて、古代スイッチア人というべき有機生命体による文明があった。

 だが、彼らは自ら起こした戦争によって、滅んでしまった。そのほかの生物も道連れにして。

 現在のスイッチアに住むロボットの祖先は、古代スイッチア人の文明を維持、発展させるためのロボットなのだ。

 元は、プログラムを機械的に実行していただけだった。

 やがて、人間がいなくても同じようにストレスを感じ、改良するべき点をあぶりだすロボットが作られた。

 それが現在の貴族達だ。

 貴族ロボットは、民衆の願いを受けて、すべてを支配する権利を与えられた存在なのだ。

 今ではスイッチアは、人間に勝るとも劣らない文明を持っている。

 だが、それは行き過ぎた。

 今やスイッチアは度重なる工業化で重い環境破壊が進んでいる。

 しかもロボットは地球人よりも強靭な体を持っているため、異常気象や資源の枯渇などが、地球よりも悪化するまでほっておかれたんだ」

 そんな環境破壊からスイッチアを救う切り札が、あんたの改造家畜なのか。

 「そうだ。

 あの世界には地に足をつけ、世界に満ちて、最後は土に帰る安価な労働力が必要なんだ。

 有害物質を分解する改造植物も。

 それに、あの世界は実験場として都合が良い」

 どうやら、こいつの目的はそこにあるようだな。

 嬉しそうに声のトーンが上がっている。

 「汚染しきった惑星で新たな生態系による環境浄化!

 地球で使うには、まだまだ研究が必要だが、それができるんだ!

 だから頼む!このまま旅立たせてくれ!」

 ワシ型ランナフォンは、システムオールグリーン。

 腹が立ってきたオレは、それを解き放った。

 放り投げられたワシ君は、すばやく変形すると、コンテナの隙間を縫って飛び去った。

 まったく賢い子だよ。

 お前たちには光学迷彩を仕込んでないから、急ぐんだよ。

 一方でマジン団は……。

 「キ、貴様。今のは改造家畜のサンプルだな!」  

 さすが犬怪人君。大当たり。

 アステリオスの顔も、怒りに満ちる。

 「お前、話を聞いてなかったのか!地球とスイッチア、二つの世界の未来を破壊する気かぁ!」

 俺はすっかりあきれて言ってやった。

 「お前らルルディ騎士団の悲劇を知らないのか?

 オルタレーション・バースト直後に、魔法による進化が発達した異世界から偵察に来た騎士団の話!ミィンの世界じゃないぞ!」

 ミィンとは、ルルディ騎士団と同じころオルタレーション・ワールドにやってきて、アイドルをしながらヒーローをやっていた女性だ。

 その後、ゾバ大戦という激しい戦いの中で姿を消している。

 だが、彼女の歌は今も歌い継がれている。

 今でも多くの人に希望を与えているのだ。

 「こっちの世界に来たばかりの騎士団は、この世界の様子を探るため、経済を探ることから始めた。

 だが、相手が悪かった。

 てっとり早く金を稼ぐ輩を選んだら、それが人身売買まで行う犯罪組織TPC(Trans Plant Connection)だったからだ!」

 しゃべりながら、次の手を打つ。

 駐車場に待機させたオレの車に指示を出す。

 「その潤沢な資金で重武装したTPCと、義憤に駆られた騎士団は戦った。

 騎士団の進化は、状況に合わせて自分の体まで作り変えるものだ。

 技の破壊力、防御力、機動力。どれをとってもTPCを凌いでいただろう。

 だが、思いもよらない事態が起こった。

 騎士団が居た世界とこっちの世界では、物理法則が微妙に違っていたんだ。

 具体的には、時間軸がこっちの世界は早かった。

 そのため、ある氷魔法の力の制御ができず、大爆発が起こった。

 そして結果は、騎士団は大損害、撤退するしかなかった。

 生き残った騎士たちは、実験動物としてTPCに捕らえられた。

 その一人が、俺の上司だ」

 その一人が、さっきの会議にいなかった墨島 桜洗さん・アンテロースだ。

 マジン団に動揺が走る。

 説得力を持って受け入れられたようだ。

 「新聞で読んだけど、今の日本と同じ文化レベルで世界中の人が生活すると、地球2個半の資源が必要になるそうだ。 

 お前らは、それ分の資源をすべての人間をノッカーズ化させることで賄おうというんだろ?

 そうはいかない。

 異世界の法則が必ずこの世界に都合がいいとは限らない!  

 お前たちは進化を便利に考えすぎなんだよ!」

 そう言った直後、辺りのコンテナに特製樹脂で包まれた頑丈な観測機器が突き刺さる音が次々に響いた。

 これで、偵察任務は完了。

 

 ここから1キロほど離れたアイランドシティ中央公園。

 その西側の駐車場に、1台の青いホンダ N BOX+がリアを港に向けて止めてある。

 このトールワゴン型軽自動車の荷室が、俺の遠隔操作で開くと、スロープが伸びる。

 スロープを滑り降りてきたのは、何本もの銃身が正方形に並び、その一本一本に3つの弾を込めたメタルストームと呼ばれる機関銃だ。

 込められた3つの弾は、インクジェットの要領で火薬を起爆され、オレのまわりのコンテナへ飛んでいく。

 「弾は、オレがペネトレータと呼んでいる検査機だ。

 刺さった物体の中と外の映像、音、匂いから化学物質まで調べる優れものだ。

 降伏した方が身のためだぞ!!」

 

 マジン団の不安そうな視線がアステリオスに集まる。

 あいつの肩が震える。

 「…だとしても」

 その震えが止まった。

 そんな事ができるのは、目の前の恐怖を乗り越えられる者。

 そうしなければならない覚悟を背負った者だけだ。

 「だとしても、わが研究はあきらめられぬ!

 アステリオス!フォームチェンジ!」

 アステリオスが変形していく。

 左肩の鎧を胸に着けなおすと、両腕の盾だったタイヤをその左右に付けた。

 その間に下半身は正座する。タイヤを地面に付けるように変化させたのだ。

 「トラクターフォーム!」

 そこには、トラクターの下半身に牛人の上半身を持つ怪人がいた!

 けたたましいエンジン音が響く!

 「我々の計画を知ったからには、帰すわけにはいかん!行くぞ!」

 そう、豪勢一発、戦斧で地面をたたきつけると、その巨体は浮き上がった!

 まずい!向かって来るぞ!

 予想道理なら、あいつはタイヤをコンテナに貼り付けると登ってくるはずだ。

 いかなる理由でタイヤが垂直の壁に張り付くのかは分からないが、上ってくるのは仕方が無い。

 ここは逃げるべきか?

 今のオレを追うことなど簡単だ。

 ヘリで飛んでいるのだから、風の吹くほうへいけばいい。

 光学迷彩も、用を成さない。

 

 ゴッ!

 

 オレが飛び立つと同時に、アステリオスがコンテナの上に降り立った。

 「みんな!アウグルの風を感じろ!!」

 アステリオスはそう叫ぶと、オレめがけて突進を開始した。

 後輪を支える足をバッタの様に伸ばし、前輪の有るエンジン部を持ち上げ、器用にコンテナの隙間を乗り越えてくる!

 そして戦斧からは、さらに強力な電撃が迸る。

 「我が戦斧の斬撃は一秒で千放たれる!避けられるか!?」

 ただ振り回しているだけだが、その柄がどこまでも伸びる!

 その上、走り回っている分効果が広い!

 あれを食らったら、お陀仏だ!

 俺は高度が出せず、おのずとコンテナの陰に隠れるようにして進むしかない。

 

 幸いなことに、ここ香椎埠頭は埋立地だ。

 福岡アイランドシティまで行けば住宅地やサイバー大学、変電所などがあるが、それより広い空き地がある。

 そこなら、あいつらが暴れても周囲に被害は出ないだろう。

 

 プロペラをフル回転させると、オレは空き地を目指して飛び上がった!

 

 だが、アステリオスの攻撃はしつこい。

 「隊長!」

 コンテナの山の上、怪人たちが飛び乗った!

 さすが改造人間。

 等間隔に間をあげて、コンテナの端に並んでいる。

 戦闘員が銃撃を仕掛けてきた。

 「さっきのロケットの匂いが、まだわかる!あっちです!」

 犬型ノッカーズがいるのも厄介だ。

 手持ち火器で穴が開くようなスーツではないが、プロペラに当たればもう飛行できない。

 

 戦うしかないか…!

 手近なコンテナ山の真ん中に降り立った。

 アステリオスはさすがに電気切れなのか、部下達と合流している。

 こっちの光学迷彩のノイズは、だいぶ回復した。

 どうやらあいつの電磁波でアクチュエータが伸びただけみたいだ。

 今度からは電磁波の影響を受けない空気アクチュエータにしよう。

 相手との距離は、およそ100メートル。

 この距離で使える武器は、液体窒素グレネード。

 射程は200メートルある。

 着弾時の噴射範囲を調節することで、威力も調節できる。

 一番拡散させるレアなら、人間に撃っても凍えるだけ。

 ミディアムなら装甲皮膜を持つノッカーズでも一時的に凍らせる。

 ウェルダンになると、もう対物攻撃用だ。

 熱膨張の原理で、大概の物は破壊できる。

 アステリオスならミディアムで凍らせても、片手が無事なら自力で出られるだろう。

 胸のケースからグレネードを取り出す。

 あいつがドラム缶と言ったこのボディ。

 物をしまうには便利だ。

 液体窒素カッターの噴射口、ショットガンの重厚と並んだ着火装置に取り付け、撃った!

 

 ブン! バチッ!

 

 だが、グレネードは相手から見えていた。

 一閃した斧にグレネードは切られ、同時に放たれた電撃が液体窒素も効果を発揮する前に蒸発させた!

 電気を通しやすいものに勝手に落ちる電撃には俺の攻撃は無力なのか!?

 ……待てよ。

 あるじゃないか。

 電撃を封じて、なおかつ攻撃になる方法が!

 オレはマジン団に向かって飛び出した。

 電撃がオレに飛んできそうな軌道には、グレネードを投げつけて。

 それに気をとられたアステリオスが、なけなしの電撃で打ち落とす。

 犬型ノッカーズを避け、できるだけ戦闘員の頭上ぎりぎりを飛ぶように、隣の山へ移った。

 「後ろです!あっちは風下!」

 犬型ノッカーズの誘導に従い、弾幕が移る。

 だが、これ以上は誘導できない。

 電撃もこない。

 やっぱり仲間は巻き込めないか。

 こっちの山は、ちょうどコンテナが運びだされ、階段状になっている。

 そこで下の段に飛び込むと、攻撃手段を持つものに連絡を入れる。

 おっと、ランナフォン部隊には退避命令を。

 「ルート権限解除。 こちらアウグル。イーグルロード、香椎浜埠頭付近の海を撃って、コンテナの上に海水をかけてくれ!繰り返す!イーグルロード、香椎浜埠頭付近の海を撃って、コンテナの上に海水をかけてくれ!!!」

 『こちらイーグルロード。中止の合図はどうするの?』

 「こちらアウグル。赤の閃光弾を放つ。

 あっ、コンテナを海に落としたりするなよ。

 中身は生物兵器だ」

 『赤の閃光弾。コンテナを落とさない。イーグルロード、了解』

 背中のゴリラ君を手に取り、抱え込んで伏せた。

 視界の端から白い光が飛び込んできた。

 見れば、海面が輝きながら沸騰している。

 その蒸気は見る見る高さを増し、しかも埠頭を取り囲むように沸騰するエリアは拡大していく!

 

 ドオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおー 

 

 たちまち海水が爆発した!

 爆風の最初の一波がコンテナを襲う。

 マジン団のいるコンテナの山から、小さな閃光とギャア!という声が聞こえた。

 熱い水蒸気と海水の混ざり物に触れて、電撃が漏電したのだ。

 オレは作業の中止を命じるため、閃光弾を右太もものケースから取り出した。

 カッターの口にはめ込むと、水蒸気が通り過ぎるのを待って、空に小さな赤い光をともした。

 

 海面の光が消え、夜が元の闇を取り戻す頃、通信が入った。

 『アウグル。こちらイーグルロード。付近に敵影なし。脱出するならスカイフックの準備よし』

 「イーグルロード、こっちはまだ大丈夫だ。それより、応援を呼んでくれ」

 『了解。バッテリーの残量はいいの?』

 「事前に、アンテロースがフル充電してくれている。1か月は持つ」

 『了解。警戒飛行に戻る』

 ゴリラ君が上を指さした。

 コンテナの上に、ほうり上げる。

 あの子のカメラからの映像には、もうマジン団は写っていなかった。

 

 目には見えない高度を、銀色の翼が守っている。

 飛行ノッカーズ、イーグルロードこと、久 広美。

 オレという銀河の中で最も輝く星。

 その2メートルちょっとの全長には、空を最も早く美しく飛ぶ能力が全て詰まっている。

 さっき海面を水蒸気爆発させたのはレーザー砲だ。

 射程は400キロある。

 

 さてと。

 ここでマジン団が密輸をしていたということは、まだなにが出るかわからない。

 まずはコンテナから降りなくては。

 ワシ君は無事BHQ(BOOTS本部)に、たどり着いたんだろうか?

 応援が到着するまで、どれだけかかるだろう?

 スーツのダメージはどの程度?

 隠れようにも、ここはマジン団の荷物が詰まったコンテナだらけだ。

 こんなことならスカイフックしてもらったほうがよかったか?

 いや、オレの体は猛スピードには耐えられない。

 スピードが出せない状況なら2人とも打ち落とされた可能性もある。

 これがベストだったんだ!

 そう自分に言い聞かせ、不安を振り払いながら走り出す。

 

 ゴォン ゴゴォン

 

 …変だ。

 海のほうで、まだ金属がぶつかる音がする。

 それも、さっきの水蒸気爆発の時のように、ランダムな感じじゃない。

 規則正しい、フォークリフトやトラック、クレーンを何倍にも増やしたような音だ!

 

 ズウウウウウン

 

 巨大なモーター音?

 それなら、後方で待機しているオーバオックスも放つ。

 だが、応援であるはずが無い。

 音は港のほうから聞こえた!

 

 液体窒素カッターの銃身を触り、コンテナの陰から出す。

 HMDに、再び小さなウインドウが2つ映り、銃身が映した映像が見える。

 ……なんだ、あれ!


 
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