No.672310

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

炎氷の陣・反逆のΔ

2014-03-20 15:10:33 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1391   閲覧ユーザー数:762

「―――む」

 

医務室。窓から朝日が射している状況の中で、竜神丸は目が覚める。彼はいつものように起きてから仕事に取り掛かるべく身体をベッドから起こそうとしたが…

 

「…ッ!?」

 

何故か起こせなかった、というか起こせる筈が無かった。

 

何故なら、彼の横には…

 

「スゥ、スゥ…」

 

姉であるキーラが、自身の腕に抱きついたまま眠っているのだから。

 

「…はぁ」

 

昨日の出来事を思い出した竜神丸は、溜め息をついてから再びベッドに倒れ込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、おはようさん」

 

「どうも」

 

それから数分後。何とか起きる事の出来た竜神丸は、通路先でガルムと対面する。

 

「いやぁ、昨日は珍しくお前の弱い部分を見れた気がするよ。姉弟仲がよろしい事で」

 

「…そういえば、団長さんに余計な事を話したのはあなたでしたね。ガルムさん」

 

「まぁまぁ、そう怒るなって。キーラさんとは無事に仲直り出来たんだし、結果オーライだろ?」

 

「全く…」

 

竜神丸は呆れた様子で髪を掻き、すぐに真剣な表情に変わる。

 

「借りはいずれ返します。ですが…」

 

「分かってる。“アレ”の内容は誰にも内緒、だろ?」

 

「…分かっているのであれば結構です」

 

ガルムの返答を聞いて、竜神丸はまたいつものようにタブレットを操作し始める。

 

「近い内に、また誰かが“アレ”に選ばれる事になるかも知れません。誰が選ばれるのかは時が来るまで私にも分かりませんが、情報共有者が増えるに越した事は無いでしょう」

 

「…また、自由を失う者が現れるってか?」

 

「ある意味、チャンスを得たという事でもあるでしょう。前向きに捉えていくのがベストです」

 

「そんなもんか……正直に言うとさ。“アレ”の情報を知らされてからは、流石の俺も自信がなくなりかけてきてるぜ」

 

「あなたの自信がどれだけあったのかは知りません。とにかく、長生きする方法はただ一つ……玩具の歯車に徹し続ける事(・・・・・・・・・・・・)です」

 

「…それ以外に何も思いつかないのが、本当に怖ぇよな」

 

そんな会話を交わしつつ、二人は朝食を食べる為に食堂まで向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、そんな彼等の会話を盗み聞きしている者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(“アレ”に選ばれる…?)

 

 

 

 

 

 

二百式だ。彼も同じ通路を通りかかろうとした時に、偶然彼等の会話を聞いてしまったのだ。

 

(…少しばかり、探る必要があるみたいだな)

 

何も知らない彼は、一つでも情報を得るべく行動し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、食堂では…

 

 

 

 

 

 

 

「キーラ・リバインズだ。よろしく頼む」

 

「「「「「…マジで?」」」」」

 

miri、蒼崎、aws、kaito、FalSigの五名は唖然としていた。何故なら自分達の前に、竜神丸の姉である美人がいるのだから。

 

「初めましてキーラさん、俺は蒼崎夜深と申します!!」

 

「「「「「行動早ぇなオイ!?」」」」」

 

となれば、早速動き出すのが蒼崎である。彼は一瞬でキーラの前に移動し、彼女の手を握って猛烈にアピールし始める。

 

「あなたに一目惚れしました。もしよろしければ、俺とデート―――」

 

「却下です」

 

「ごぶぅっ!?」

 

当然、竜神丸に踵落としされる形で却下されるのだが。後頭部に踵落としを喰らった蒼崎は床に倒れたまま気絶し、そんな彼の背中を竜神丸は容赦なく踏みつける。

 

「まぁそういう訳です。ひとまず、皆さんにも姉さんの事を紹介しておこうと思いまして」

 

「…いやはや、驚いたぜ。竜神丸にこんな綺麗な姉ちゃんがいたとはな」

 

「だが、昨日までは大変だったんだぞ」

 

支配人が会話に加わって来た。

 

「二人で思いっきり、姉弟喧嘩に似た事をしてくれたんだしな。おかげでヘリポートがしばらく機能を果たさなくなっちまってるしな」

 

「あぁ、じゃあ昨日の騒ぎは竜神丸達だったのか! 納得納得」

 

「む……ヘリポートを破壊した件については、本当にすみませんでした」

 

「あぁ、良いよ良いよ。二人が仲直り出来たんだしさ」

 

「へぇ、姉弟で喧嘩してたのか。俺も見たかったなぁ~」

 

「冗談言うなkaito。お前が思ってる以上に凄まじい喧嘩だったんだからな」

 

「はいはい。にしても、流石の竜神丸も、自分の姉には敵わなかったって感じか? だとすれば実に面白いねぇ~♪」

 

kaitoの発言に一瞬だけイラッときた竜神丸だったが、彼が制裁を加える事は無かった。何故なら…

 

 

 

 

 

 

「弟を馬鹿にするな」

 

 

 

 

 

 

「え、ちょ…あばばばばばばば!?」

 

キーラによって、kaitoに制裁が下ったからだ。彼女がkaitoの手に触れた途端、kaitoは身体中に紫色の紋様が浮かび上がり、電撃にでも襲われたかのように床に倒れてのたうち回り始める。

 

「ちょ、どうしたkaito!?」

 

「おぉい!? しっかりしろ!!」

 

「…姉さん。一体何を伝染(うつ)したんですか?」

 

「痺れ薬だ。何、数分で収まるよ」

 

伝染(うつ)した? どういう事だ?」

 

「えぇ。これが姉さんの能力です」

 

竜神丸が目配せすると、キーラは自身の右手を目の前に翳す。すると彼女の右手に、紫色の紋様が少しずつ浮かび上がり始めたのだ。

 

「!? 毒物反応…!!」

 

甘き毒薬(キャンディ・マン)……体内に予め取り込んでいた毒物やウイルスを放出し、自在に操る事の出来るPSI能力だ」

 

「PSI能力…!?」

 

「とはいえ、長時間は使えない。あまり毒を体内に取り込み過ぎると、自分の身体に負担をかけてしまうからな」

 

「! あぁ、だからあの時キーラさんは倒れていたのか…」

 

支配人は初めてキーラと出会った時の事を思い出す。彼女の説明にも合点がいったようだ。

 

「とにかく、私の方で姉さんの身体に負担のかけにくい毒を開発中です。これ以上、姉さんに倒れられるような事があっては困りますから」

 

「すまないな。私の能力も、それほど万能ではないから…」

 

「謝罪されたってどうにもなりません。今は自分の身体の方を心配して下さい、姉さん」

 

「! …ありがとう、アル」

 

姉として心配された事にキーラは嬉しそうな表情をし、竜神丸は視線を逸らしてから若干だが気難しそうな表情になる。そんな姉弟の様子を、支配人達は微笑ましい表情で眺めているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アバババババババ…!?」

 

ちなみにkaitoの身体中の痺れは、これからもう数分は続いたとの事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某次元世界、とある海岸…

 

 

 

 

 

 

 

「変身!!」

 

≪タカ! カマキリ! バッタ!≫

 

ディアーリーズはベルトに差し込まれた三枚のコアメダルをスキャン。オーズ・タカキリバへの変身を完了する。

 

『ウル! 俺のコアメダルなんだからな、絶対になくすなよ!』

 

「分かってるって!」

 

右腕状態のウヴァから忠告されつつ、オーズは両腕のカマキリソードを構えて向かって来るモンスター達を迎え撃つ。

 

「カーネージ…シザーッ!!!」

 

「グルゥッ!?」

 

一方でBlazは大剣を振るい、ハサミ状の衝撃波を繰り出してワーウルフを吹き飛ばす。しかしそれぐらいで勢いを失うモンスター達ではなく、一斉にBlazの周囲を囲み始める。

 

「チッ…うざってぇな!!」

 

飛び掛かって来たリザードマンを大剣で斬り倒し、Blazは自分にしがみ付いて来たマミーを肘打ちで地面に薙ぎ倒してからその腹部を踏みつける。それと同時に大剣を左手に持ち替え、逆手で周囲のモンスター達を纏めて斬りつける。

 

「Blazさん、手伝います!!」

 

「ッ…悪いな、ディア!!」

 

オーズもすかさず加勢に向かい、モンスター達をすれ違い様に斬り倒していく。しかし中にはゴーレムのようにその程度の攻撃では倒れないモンスターもおり、そういった個体はオーズに向かって巨大な岩石を投げつけ始める。

 

「どわ、この……ウヴァ、これパス!!」

 

『ぬぉっ!? おい待てウル、いきなり変えるのか!?』

 

≪タカ! ゴリラ! バッタ!≫

 

『無視かゴラァ!?』

 

オーズはベルトのカマキリメダルをウヴァに投擲し、代わりにゴリラの顔が描かれたコアメダルにチェンジ。ウヴァの文句も無視して、オーズはタカキリバからタカゴリバに変わる。

 

「セイヤァッ!!」

 

「「「グガァァァァァッ!?」」」

 

オーズは両腕のゴリバゴーンをロケットパンチのように飛ばし、ゴーレム達を纏めて粉砕。モンスターの数が減った事で余裕が出てきたのか、今度はタカメダルとバッタメダルをそれぞれサイ、ゾウの顔が描かれたコアメダルにチェンジする。

 

≪サイ! ゴリラ! ゾウ! サゴーゾ…サゴーゾッ!≫

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

オーズはタカゴリバから重量系の姿“サゴーゾコンボ”にチェンジ。両手で胸部アーマーを叩きながら地響きを起こし、それによりモンスター達は一斉に怯んで地面に転倒する。

 

「のわっ!? ちょ、危ねぇなコラァッ!?」

 

「あ、すみません!?」

 

どうやら、間違えてBlazの事まで怯ませてしまったようだ。転倒したBlazから怒鳴られたオーズはすぐに謝罪してから、オースキャナーでベルトのコアメダルをスキャンする。

 

≪スキャニング・チャージ!≫

 

「はぁぁぁぁぁぁ…ハァッ!!」

 

「「「グガァッ!?」」」

 

オーズは宙に浮かんでからすぐに地面に落ち、その衝撃でモンスター達が再び転倒。そのままモンスター達は地面に埋まった状態で、サゴーゾの方へと引き寄せられていき…

 

「セイヤァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「「「グギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」」

 

「ちょ、待てウル…ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

サゴーゾは頭部の角と両腕を同時に炸裂させ、モンスター達を纏めて爆散させた。この時、ウヴァも衝撃波で吹っ飛ばされてしまったのはここだけの話である。

 

「たく、危ねぇっつったろうが…よっ!!」

 

空中に飛んで回避していたBlazは、オーズが地震を止めたのを確認してからすぐに地面に着地。大剣を地面に置き、そこから思い切り赤黒い斬撃を飛ばす。

 

「デッドスパイク!!!」

 

「「「ギャォォォォォォォォォォンッ!!?」」」

 

デッドスパイクによって纏めて斬り裂かれたモンスター達は、そのまま跡形も無く消滅させる。

 

「ふぅ……こんなもんか?」

 

その時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「グギャォォォォォォォォォンッ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

オーズとBlazの前に、巨大な次元の裂け目が出現。その中から三つ首の巨竜“ヒドラ”が咆哮を上げながら姿を現した。

 

「うぉ、こいつはデケぇな…!!」

 

「とにかく、コイツも倒しましょ…」

 

「「「ギャォォォォォォォォォォォォンッ!!」」」

 

「うぉわっ!?」

 

「うぁ、く…!!」

 

ヒドラは長い三つ首を振るってBlazを吹き飛ばし、オーズを思い切り薙ぎ倒す。オーズはすぐに体勢を立て直し、別のコアメダルを取り出す。

 

「体重の重いサゴーゾじゃかえって不利か……なら!!」

 

≪ライオン! トラ! チーター! ラタラタ・ラトラーター!≫

 

黄色のコアメダルを三枚取り出し、すかさずコンボチェンジ。オーズはサゴーゾから百獣の王のような風貌の猫系コンボ“ラトラーターコンボ”へと姿を変える。

 

「ギャオンッ!!」

 

「はっ!!」

 

オーズは先程までと違い、猛スピードでヒドラの周囲を走り始める。ヒドラは何度も首や尻尾を振るったり口から青い火炎弾を放ったりするも、ラトラーターコンボとなったオーズには全く攻撃が当たらない。

 

「ディア、そのまま頼むぜ!!」

 

Blazはヒドラの身体の上を駆け上がり、そのままヒドラの三つ首の後ろに到着。大剣を振るってその太い首を切断しようとする。

 

しかし…

 

「シュァァァァァァァァァァァッ!!」

 

「な…うぉわぁっ!?」

 

「え、ちょ…へぶしっ!?」

 

何と、ヒドラの尻尾までもが四つ目の頭部に変化。Blazを力ずくで薙ぎ払い、周囲を走っていたオーズにも激突してしまう。

 

「「「「グギャォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!」」」」

 

「ヤベぇ!?」

 

「く…!!」

 

四つ首となったヒドラは、倒れた二人に対して一斉に火炎弾を放つ。二人はそれぞれ攻撃を防御しようとしたその時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凍てつけ、氷碧眼(ディープ・フリーズ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

攻撃が、二人に届く事は無かった。二人とヒドラの間に巨大な氷の壁が出現し、火炎弾を全て防いでしまったのだから。

 

「な、何だこりゃ…!?」

 

「氷の壁!? でも、一体誰が…」

 

「ハーッハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

「「!?」」

 

「この俺様…シグマ様のご登場だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

突如、大きな笑い声を上げながら一人の戦士が飛び出して来た。赤銅色のツンツン頭に蝙蝠のような翼、尻尾や長い耳を持ったその男―――シグマは、狂気の笑みを浮かべながらヒドラに向かって突撃する。それを見たBlazは嫌そうな表情になる。

 

「ゲッ!? アイツ、確か支配人の…」

 

「あぁ、シグマさんですね。相変わらずハイテンションな事で」

 

シグマの姿を見たオーズは仮面の下で苦笑いしつつも、ここで一つの疑問を覚える。

 

(あれ? じゃあ、さっきの氷の壁は一体誰が…)

 

そんなオーズの疑問を他所に、シグマはヒドラを相手に戦闘を繰り広げていた。といっても…

 

「ハッハッハ…オラァッ!!!」

 

「「「グギャオッ!?」」」

 

シグマによる、一方的な戦闘と成り果てているが。彼は手に持っていた槍で三つ首を纏めて斬りつけ、尻尾に出現していた頭部をも切断。そんなヒドラをシグマはハンマー投げのように投げ飛ばし、更に吹っ飛ばしたヒドラを更に蹴りつけて地面に転倒させる。

 

「どうしたどうしたぁ!! テメェも所詮はそんなもんか、あぁ!?」

 

「「「グゥ…ギャォォォォォォォンッ!!」」」

 

負けじと火炎弾を放つヒドラだったが、シグマはそれらを全て回避。背中に生えている蝙蝠のような翼を大きく広げ、空中に舞い上がる。

 

「さぁて、俺様を前にひれ伏しな…!!」

 

空中に飛んだシグマは足下に魔法陣を出現させ、そこから溢れ出る火炎を手に持っている槍の刃に纏わせ始める。それを見たヒドラはすかさずその場から逃げようとしたが…

 

「「「グガ…ッ!?」」」

 

地面に立っていた四本足が突然凍りつき、ヒドラはその場から一歩も動けなくなる。そしてヒドラの三つ首の前に、いくつもの魔法陣が重なって展開される。

 

「焼き尽くしてやるよ…無慈悲なまでにぃっ!!!」

 

「「「ギ…グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!??」」」

 

シグマは炎の纏われた槍を構えたままドリルのように回転し、魔法陣を次々と通過しながらヒドラに向かって特攻。そのままヒドラの身体を貫き、跡形も無く消滅させてしまうのだった。

 

「…本当に凄ぇよな、アイツ」

 

「確かに…」

 

『ヌゥ、エラい目に遭った…!!』

 

Blazは冷や汗を掻き、オーズは苦笑しつつ変身を解除してディアーリーズの姿に戻る。そこへ先程吹っ飛ばされたウヴァもフラフラ飛びながら戻って来た。そして彼等の前に、ヒドラを仕留めたシグマが着地する。

 

「よっと……お、Blazにディアーリーズじゃねぇか! 久しぶりだなぁオイ!」

 

「お、おう、そっちこそな」

 

「ていうかシグマさん、何だってこんな所に…?」

 

「おう。ちょっとばかりグルメ界まで行ってから食料を色々と確保して来たばっかでな、レイの下まで届けようと思ってたところだ。それに楽園(エデン)まで用事もあったしな」

 

「はぁ……ところでシグマさん、何時の間に氷属性の能力まで使えるようになったんですか? かなり凄かったですけど」

 

「氷? あぁ、ありゃ俺の能力じゃねぇよ」

 

「「へ?」」

 

「旅先で会った、俺の連れがやったのさ。お~い、出て来いよ」

 

 

 

 

 

 

 

「…やれやれ、君という奴は」

 

 

 

 

 

 

シグマが呼びかけた方向には森があり、その木々の間から一人の人物が姿を現す。

 

「いつもいつも、後先考えずに突っ走って行くね。少しくらい、君のサポートをする羽目になる僕の身にもなってくれないかな?」

 

「まぁまぁ良いじゃねぇか、モンスターは無事に倒せたんだしよぉ!」

 

「そういう問題じゃなくて……いや、もう良いよ。馬鹿の君には、何を言っても無駄なようだし」

 

「うぉい、そりゃどういう意味だよ!?」

 

((…誰?))

 

Blazとディアーリーズは同時にそう思った。

 

毛付きのイヤーマフに縞のマフラー、紺色のダッフルコートに青髪のツンツン頭、そして若干の幼さを残した容姿で口元はマフラーで隠れているこの青年は、何処か落ち着いた雰囲気を持っていた。

 

「あ、あの……あなたは?」

 

「ん? あぁ、すまない。自己紹介がまだだったね……僕はスノーズ・ウィンチェスター。君達があの、OTAKU旅団の一員なんだよね?」

 

「へ? まぁそうだが…」

 

「なら、君達は知っている筈だよね。アルファ・リバインズについて」

 

「「…!」」

 

「出来る事なら、会わせて欲しいかな? 僕の事は……そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「No.03。そう言ってくれれば、彼も理解してくれるだろうから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

「あ? どした、ディアーリーズ」

 

「?」

 

青年―――スノーズが告げた呼び名にディアーリーズは驚き、事情を何も知らないBlazやシグマは互いに顔を見合わせて「?」とクエスチョンマークを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、楽園(エデン)では…

 

 

 

 

 

 

 

「「「バクバクバクバクムシャムシャムシャムシャ!!」」」

 

「テメェ等、何一つ残すんじゃねぇぞ!! せっかく俺が作った料理なんだからな!!」

 

「「「おう!!」」」

 

食堂にて、支配人が作る料理を次々と平らげていっているメンバー達がいた。ちなみに先程まで痺れ薬でのたうち回っていたkaitoも、現在は普通に復活している。

 

「あぁ、キーラさんは本当に美しい人だなぁ…」

 

「いい加減しつけぇぞ蒼崎。そろそろ諦めたらどうなんだ」

 

「えぇ~だってぇ~…!!」

 

駄々を捏ねる蒼崎をmiriが諌める中、離れた席では…

 

「アン娘ちゃん、そこのソース取ってくれるかしら?」

 

「ほいほ~い」

 

「どうだアル、美味しいか?」

 

「…えぇ。問題なく食べられる味ですよ」

 

「そうか、それは良かった」

 

Unknownと朱音、竜神丸とキーラの四人が一緒に食事をしているところだった。朱音はUnknownにソースを取って貰っており、竜神丸はキーラが作った料理を美味しそうに食べており、キーラはその様子を見て満足そうにしている。

 

「ん? アル、口元が少し汚れてるぞ。私が拭いてやる」

 

「あぁ、これくらい自分で…」

 

「良いから。ほら、動かないで」

 

「む…」

 

自分で拭こうとする竜神丸に有無を言わさず、キーラがハンカチで彼の口元の汚れを丁寧に拭き取っていく。

 

「うん、これで綺麗になった」

 

「…ありがとう、姉さん」

 

「「ほうほう♪」」

 

(((((ニヤニヤ)))))

 

そんな二人の様子をUnknownと朱音、kaito達は面白そうに眺める。

 

もちろん…

 

-ガンガンガンガンガァンッ!!-

 

「「「「ほがぁっ!?」」」」

 

「そげぶ!? ちょ、それ自分の専売特許…ガクッ」

 

Unknownと朱音以外のメンバーには、竜神丸によって金タライの制裁が行われたが。

 

「こうして見ると、竜神丸さんもキーラさんも本当に姉弟って感じね。何だか新鮮な気分だわ」

 

「確かに。年頃の姉弟としての雰囲気もあるし。昨日まで仲違いしていた姉弟とは思えない」

 

「あのですね……ん、年頃の姉弟?」

 

ここで、竜神丸はある疑問が思い浮かぶ。

 

「アン娘さんに朱音さん、私の年齢がいくつか知ってるんですか?」

 

「ん? あぁ、そういえば知らないな」

 

「見た感じだと……20代とか、そんな辺りかしら」

 

「…やっぱり、知らないみたいですね」

 

竜神丸は呆れた様子でコーヒーを飲んでから、とんでもない事を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言っておきますが、私はもう80代ですよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…へ?」」

 

思わぬ発言に、Unknownと朱音は二人揃って目が点になった。

 

「…え、あ、え? じ、じゃあキーラさんは…」

 

「あぁ。私はもうすぐ、90代になる」

 

「「「「「嘘ォッ!!?」」」」」

 

これにはUnknownや朱音だけでなく、聞き耳を立てていたメンバー達も驚愕する。

 

「私達は元々、異能力研究機関の連中に利用されていた実験体です。遺伝子レベルの改造実験を受け続けた影響で、無駄に寿命が長くなってしまいましてね。私達の場合だと、そうですね……もうあと数十年は、ずっとこの容姿のままでしょう」

 

「嘘……それで、あの美貌なの…?」

 

「す、凄い……凄過ぎるわ…」

 

「老化が遅いなんて……何よそれ、羨まし過ぎる…!!」

 

((あれ、何でダメージを受けてるんだろう…?))

 

聞き耳を立てていたメンバー達や女性スタッフ達の内、何名かは精神的なダメージを受けてしまっていた。竜神丸とキーラは彼女達が何故落ち込んでいるのかが分からず、首を傾げている。

 

「…姉弟揃って、その辺は鈍感なんだな」

 

近くで話を聞いていたガルムは、竜神丸とキーラの二人が血の繋がった姉弟である事を、改めて実感していた。

 

その時…

 

「あー疲れた!」

 

「ただいま帰りました」

 

Blazとディアーリーズが、ちょうど良いタイミングで帰還して来た。

 

「…あれ、何で皆さん落ち込んでるんですか?」

 

「「「「「い、いえ、何でもありません…」」」」」

 

「ディア、何も聞いてやるな…!!」

 

「これは女の子達だけの戦いなんだ…!!」

 

「「?」」

 

他の男性メンバー達からも何も聞かないように言われ、Blazとディアーリーズは何のこっちゃと言いたげな表情になるも、ひとまず何も聞かない事にした。

 

「…あ、そうだ。竜神丸に支配人、客だぞ」

 

「「客?」」

 

「あぁ。一人は…」

 

「おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「な…ぬぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!??」

 

「はっはぁ、ストライクだぜぇっ!!」

 

Blazが説明しかけた直後、彼の真横を巨大な肉が飛び、直線上にいた支配人を押し潰してしまった。投げた張本人は楽しそうに大笑いしている。

 

「な、シグマ!?」

 

「よぉテメェ等、久しぶりじゃねぇか! 元気にしてたか? お?」

 

「いやシグマ、お前逃げた方が…」

 

「シィィィィィィィグマァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

「ハハハハハハハハハハハッ!! キレたキレた、レイの奴がキレやがった!!」

 

「テメェ…そろそろその羽、引き千切ってやろうかゴラァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

支配人がシグマを追いかけ回す中、竜神丸とキーラの前には別の人物が姿を見せていた。

 

「!? あなたは…」

 

「…久しぶりですね、No.03」

 

「それはこっちの台詞だよ。No.01、それにNo.02」

 

 

 

 

 

 

 

 

過去の実験体達が三人、同じ箇所に終結するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽園(エデン)最上階、団長室…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さて」

 

椅子に座りながら、クライシスは目の前に立っている人物に問いかける。

 

「ちょっとばかり、聞かせて貰うとしよう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは何のマネだ? デルタ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…見ての通りですよ」

 

クライシスの前に立っている人物―――デルタ。

 

彼が持つSIG-P228…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その銃口は、クライシスの頭に向けられていた。

 


 
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