No.671311

真恋姫†夢想  弓史に一生 第九章 第十八話

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

なんとか日曜日に投稿できました。

今後もなんとか頑張ります。

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2014-03-16 19:16:11 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1429   閲覧ユーザー数:1325

 

~聖side~

 

 

 

「恋!! そっちは任せた!!!!」

 

「………任せて…。」

 

「雅!! このまま押し込むぞ!!!!」

 

「OK!!! いっくよ~ひ~ちゃん!!!!!!」

 

 

得物が一回振られるたびに、何十人何百人という兵士が宙に舞う。

 

そんな光景を人は冷静に見ていることは出来なく、口々にこんな言葉を呟いている。

 

“あいつらは人間ではない”と……。

 

 

 

虎牢関の戦いはまずは野戦から始まった。

 

その物量で勝とうと考えている袁家の二名が先陣に布陣し、何の策もなく俺たちの軍へとぶつかってくる。

 

当初の作戦通り配置された俺たちは、真っ向からその突撃を突撃で受け止め、逆にその勢いのまま押し切った。

 

左翼、右翼でも同じようなことが起こり、攻めていたはずの袁家の両軍は一転して攻められる展開となったのだった。

 

 

 

「突き進め!!! このまま一気に敵の大将のところまで行くぞ!!!!!」

 

「「「「「「応っ!!!!」」」」」」

 

 

 

勢いを止められた袁紹軍は浮き足立ち、まともな陣形を組む暇もなく蹂躙されていく。

 

さらに、連絡系統を寸断するように動く我が軍の動きで、伝令がまともに機能していない。

 

一歩また一歩と敵の軍中に突き進んでいく我が軍を、袁紹軍は食い止めることがどうやら出来ないようだ。

 

 

 

「はぁぁあああ!!!!!」

 

 

ザシュッ!!! ドスッ!!!!

 

 

振りぬいた剣が鎧の隙間から敵兵のふとももを切り裂き、刺した剣は腕を負傷させる。

 

しかし、何度味わっても人を切る感触というものには慣れることはない…。

 

まぁ、肉を裂く感触、叫び声の木霊する戦場、血の匂い……どれもこの世界に来て初めて経験したものばかりなのだから、慣れるはずがないし慣れたくもないのだが…。

 

このなんとも言えない微妙な弾力のあるものを裂く感触は、はっきり言って異質で異様で……好き好んで味わいたい感触ではない…。

 

この分だと、自分が人殺しに悦を覚えるようになることはないのかな…。

 

敵兵の突き出した槍を身を捻ってかわし、返す刀で突き出した手の腱を切りながらふとそんなことを思っていた。

 

戦場で考えるには似つかわしくない事かもしれないが、戦場でしか感じない出来事でもある。

 

未だにこのことを考え込んでしまうのを見られたら、曹操辺りからは笑われるかもしれない。

 

でも、人を殺すということに拒否感を抱いていたあの頃に比べれば、幾分かは成長しているのだろうか…。

 

この世界のため、この国の人のため、そして俺を慕ってくれる人たちの為にも、俺はこうして今後も武器をふるって行かなければならない。

 

そう……世界から戦いが無くなるまでは……。

 

 

 

「だから………今は勘弁な………。」

 

 

小声で呟きながら、新手の敵兵のふとももを切り裂き、より先へと歩を進める。

 

彼の痛みと共に……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ~ちゃん。左翼、右翼共に突撃は成功。袁紹軍、袁術軍共に被害が出てるみたい。この様子を見ても、後方に配置された曹操軍、孫策軍に動きはないってさ!!但し、劉備軍が少し前から動き出してるみたいだから、そろそろ救援に来るかも…。」

 

「了解。じゃあ、なるべく早く進みますか…。」

 

 

今回の野戦での目的は、敵総大将袁紹に恐怖心を与えること。

 

こうすれば今後の敵の進行は格段に遅くなるだろうし、その分時間を稼ぐこともできる。

 

その為にも、袁紹の許まで早く攻め込みたいが……。

 

 

「そこまでだ、聖殿!!!!」

 

「この前の借りを返しに来たのだ!!!!」

 

「ここから先へは行かせぬよ!!!」

 

 

俺の逝く手を阻むように武器を構える三人の将。

 

見間違うことなきその三人の姿は、俺が今会いたくない三人でもあった。

 

劉備軍が誇る主戦力三人組である。

 

 

「お早い御着きで………ただ、悪いが先を通してくれないか? こっちも用事があるんだ。」

 

「そうは行かない。この先には我が連合軍の総大将がいる。それにこれ以上好き勝手に暴れれると思ったら大間違いだ!!!」

 

「どうしても通さねぇってか??」

 

「勿論だ。」

 

 

こりゃ厄介なことになったな……。

 

ここで時間をかけていたら撤退するまでに被害が大きくなりすぎる。

 

かと言ってこのままでは中途半端すぎる…。

 

ならば、この三人の相手を俺が引き受け、恋と雅で先に行ってもらうか…。

 

 

「恋、雅!!!! 二人で先行してくれ。ここは俺が―――。」

 

 

俺が全てを言い終えるより先に、恋はすっと俺の前に立って劉備軍三人に対峙した。

 

 

「恋!!!?」

 

「……行って…。」

 

「でもっ!?」

 

「良いから…。ここは…恋がやる…。」

 

 

こんなにはっきりと恋が自分の気持ちを吐露したのは初めてかもしれない。

 

だからこそ俺はその気持ちを汲み取ってやらなければならない。

 

恋がやるといっているのだ、ここは任せるしかない…。

 

 

「恋、分かった。ここは任せる。」

 

「……。(コクン)」

 

「行くぞ、雅!!!」

 

「OK!!」

 

 

恋の脇をすり抜け、敵陣深く目掛けて駆ける。

 

 

「させるか!!!!!」

 

「……お前の相手は……私……。」

 

「なっ!? ぐぅっ!!?」

 

 

愛紗が俺を狙って振るった槍は、恋の攻撃に弾き飛ばされる。

 

その隙を突いて俺たちはその場を後にした。

 

残された恋は劉備軍三人を前にしても物怖じする気配は無さそうだ…。

 

 

「今の一撃の何と重いことか…流石は天下無双と呼ばれる呂布だけある…。」

 

「大丈夫か、愛紗!!?」

 

「あぁ、大丈夫だ…。だが、油断するなよ鈴々。こいつは恐らく聖殿と同じくらい強い…。」

 

 

愛紗の言葉に、緊張した面持ちで矛を構える鈴々。

 

それに習うように、星も愛槍を構え厳しい表情を浮かべる。

 

戦場で対峙する両者。

 

喧騒の中でその一帯だけはいやに静かで、不気味であった。

 

そんな中、武器をゆっくりと構える恋は、他の人が見ても気付かない程度僅かに笑ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

~袁紹side~

 

 

「何をやってるんですの!! さっさと片付けてしまいなさい!!!!」

 

「勢いに差がありすぎますし、敵兵の錬度も高くて中々抑えられません…。」

 

「我が軍の精鋭たちがあんな田舎武者の所の兵に遅れを取るはずがありませんわ!!!」

 

「ですが麗羽様。実際にこうして攻め込まれているわけですし…。」

 

「そうですわ!!! 一対一で駄目なら、大人数で囲んでしまえば良いのですわ!!! 斗詩さん、そうしなさい!!」

 

「そうしてても止まらないから困ってるんじゃないですか!!!」

 

「七乃っ!!? 敵がそこまで来てるのじゃ!!!?」

 

「大丈夫ですよ、美羽様。この付近には精兵ばかりが集まってますから、そう簡単には来れませんよ。」

 

「そうなのか!? じゃが、さっきから全然止まる気配が見えないのじゃ!!!」

 

 

 

ここは、袁紹・袁術両軍の本陣のある場所。

 

先ほどからひっきりなしに入ってくる伝令は口を揃えて「我が軍の○○が崩壊。敵はそのまま直進してきます。」と伝えてくる。

 

その情報から察するに、敵の目標はどうやらこの本陣。

 

兵数で劣る董卓・徳種軍としてはこの戦が長引けば長引くほど不利になるのは当然のこと。

 

となれば、何処かで勝負をかけるしかないですわね…。

 

今回の野戦は大方、総大将を討てばこの戦が終わるので、玉砕覚悟で勝負をかけてきたのでしょうけど、あまりにも稚拙すぎて我が軍の対応が遅れているのも事実。

 

ですが、この袁本初率いる我が軍の精兵たちなら、直ぐにこの状況を一転させ、見事に敵を討つこと間違い無しですわ!!!

 

 

「斗詩さん!!! 直ぐにこの進攻は止まりますわ!!」

 

「……何故そう言い切れるんですか?」

 

「それは勿論、私の軍の兵士達だからですわ!!!! お~ほっほっほっ!!!!!!」

 

「…………はぁ~……。」

 

 

高笑いする袁紹の横で、重い溜息を吐く顔良であった。

 

 

「伝令!!!! 敵がこの本陣付近まで接近!!!!」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

 

伝令の発したその言葉に、その場に居た五人の顔つきが変わった。

 

 

「後どれくらいでここまで来そうですか?」

 

「この分ですと後数分で―――。」

 

「残念。後数秒だったな…。」

 

「「「「「なっ!!!??」」」」」

 

 

伝令が話し終える前にその男は突然と現れた。

 

あまりに突然のことに驚く五人。

 

すると男は、彼の得物を腰に据えた鞘にしまい、にこやかな笑顔で話し始めた。

 

 

「どうも、袁紹さん。お久しぶりです。」

 

「あらっ……誰かと思えば、敵の徳種さんではありませんか……態々首を取られに来てくれたんですの??」

 

「まさか。首をただで差し出すほど甘くありませんよ。」

 

「しかし、この本陣に単騎で駆けてくるなど自殺行為以外の何者でもありませんわ。」

 

「その言葉は間違ってるな・・・。俺は単騎ではないんでね…。」

 

 

ドォン!!!!!!!!!

 

 

私たちが話している直ぐ後方で爆発音みたいなのが聞こえた。

 

振り返れば、身の丈の二倍以上ある大きな斧を担いだ少女が此方を鋭い目つきで見ていた。

 

その目は「少しでも変な動きをしたら殺す」と語りかけているようで、背筋に嫌な汗を感じた。

 

 

「彼女は俺の軍の者でね。少なくとも俺一人ではこれでなくなったわけだ。自殺志願でここに来たわけではないことは分かってくれたかな?」

 

「…………まぁ、良いですわ。それで、私に何か様でして? まさか、このまま引き下がれとか言うおつもりですの??」

 

「いや、そんなことは言わないさ。ただ、君に確認したいことがあってね…。」

 

「確認したいこと………??」

 

「あぁ。君が今回の戦いを起こした理由さ。」

 

「理由も何も、そんなことは初めの決起の呼びかけ文に書いていたではないですか!! もしかして、そんなこともせずに出てきたんですの?? もう少し細かいところまで物事を見るようにしたほうが良くてよ?」

 

 

高笑いを始めようとしたところで、一瞬物凄い圧力を感じた。

 

それは先ほどから後ろから発せられている殺気ではない。

 

目の前から感じた膨大な量の殺気である。

 

そしてその殺気を発したのが目の前の男であるのも間違いはない。

 

 

「………本当の理由の方だ。そんな建前は聞き飽きた。お前の口から言えないなら、俺の口から言ってやる。お前は董卓の立場を羨んだ。洛陽にいて皇帝を擁護でき、人と金の集まる都市を治めている董卓を妬んだ。だからこそお前は十常時の奴らと手を結び、董卓を排除しようとして今回の戦を起こした。違うか!!!!」

 

「……………な……何のことを言っているのかさっぱりですわ…。第一そんなことをしたという証拠が…。」

 

「お前が繋がっていた奴のところから既に密書を回収してある。あれにはお前の直筆の文が書かれていて、そして封をするのに袁家の紋が押してあった。これ以上の証拠は存在しない。」

 

「………………ぐっ。」

 

「そして、今回のことは既に菖蒲に伝えてある。」

 

「なっ!? 貴様、その名は!!!!」

 

「本人から許可は得ている。」

 

 

その名を聞いた瞬間、私は焦った。

 

そしてその名を呼ぶ許可を得ているという言葉に、凍りつく。

 

傍から見れば、私の顔は青ざめ、体は震えているに違いない。

 

 

「麗羽様!! 一体どうなさったんですか!!!」

 

「…………そんな……馬鹿な……何故その名を…。」

 

 

頭を垂れて愕然としている私に斗詩さんは必死に声をかけてくれるが、その声はかなり遠くにしか聞こえない。

 

それほどまでに今の私は打ちのめされていた。

 

 

「先ほどの名前は一体なんなのですか!!?」

 

 

顔を何とか上げ、質問する斗詩さんに何とか目線を合わせる。

 

 

「………さっきの名は………現皇帝、劉協様の真名…ですわ……。」

 

 

私が呟いた瞬間、その場に居た私以外の全員の表情が変わる。

 

そして事の重大さに皆が気付いた所で、かの男は話し始めた。

 

 

「今回の件、菖蒲に全てを話すと、彼女は俺に謝って来たよ。十常時は全て捉えられ事件は明るみに出始めている。もう終わりだ、袁紹。」

 

「なっ………い……急いで逃げますわよ!!!! 斗詩さん、猪々子!!!」

 

「止めておけ。無理に逃げるほどお前の罪は広がるぞ。お前に残された道は一つ。このまま洛陽に攻め入り、そこで菖蒲からのお達しを待つことだけだ。」

 

 

その最後宣告をきいて私は、目の前が真っ暗になるというのはこういうことなのかと今はっきりと理解できたのだった。

 

 

「あ………あの男が……あの男が今回の作戦を思いついたのですわ!!! そうですわ!! あの男が全て悪いのでして私は何にも悪くないんですのよ!!!」

 

「………あの男??」

 

「えぇ。この私に今回の作戦を提示したあの白い服に眼鏡をかけたあの男が悪いんですのよ!!!」

 

 

私がそう言うと、さっきまで冷静さを持ち合わせていた男は、その顔に驚きの表情を浮かべた。

 

が、直ぐにその表情を元に戻すと、もう話はないと本陣から去っていくのだった。

 

残された私は崩れ落ちるように地面へと座り込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弓史に一生 第九章 第十八話      私利私欲  END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書きです。

 

 

第九章第十八話の投稿となりました。

 

いよいよ物語は核心へと迫っていきます。

 

影の見え始めた管理者たち、彼らの思惑とは…。

 

さらに、皇帝劉協の真名まで預けられている聖は一体…。

 

次回以降にご期待下さい。

 

 

 

次話は早ければ来週、遅くても再来週の日曜日にはあげます。

 

それでは皆様、お楽しみに~…。


 
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