No.670177

傭兵サイファー

第2話

2014-03-12 19:35:54 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:923   閲覧ユーザー数:913

1995年3月29日 ノースポイント

 

ノースポイントのある町の住宅街に二人のウスティオ外務官が歩いていた。

この二人の外務官はウスティオ臨時政府の命である傭兵の家に向かっていた。

「まさか、うちの国が傭兵を雇うとことになるとはね~…あれほど、傭兵を雇うことを反対していたっすのにね~」

「まったくだ。今頃になって傭兵雇った所で今の戦況が変わることはないのにな」

ベルカが各国に宣戦布告した時、ウスティオ政府の一部の議員は既に自国の軍だけでは護り切れないことをわかっており、一時的に傭兵を雇い戦力を強化する案を出していた。

しかし、大半の議員が「ベルカなどの護り切れる」「傭兵など雇ったら我が国の恥になる」という理由でその案は却下された。

だが、一部議員が言った通り戦力が足りずウスティオ軍は戦力が足りず、ベルカ軍の前に次々と敗北していき、悪あがきで全戦力をウスティオ首都に集結しベルカ軍と戦いを挑んだが、あっけなく敗北し、首都ディレクタスは陥落。

同時にウスティオ軍は多くの戦力失い、ウスティオ政府議員も大半がベルカ軍に拘束された。

かろうじて、拘束を逃れた議員は急ぎ臨時政府を立ち上げ、傭兵を雇うことを決定させ、各地の大使館に急ぎ傭兵を雇えと言う命令を出していた。

また、ウスティオ軍の残存戦力は東部山岳地帯のヴァレー空軍基地を中心し、集結させた。

「そうっすね~…おっ!ここっす。ここが、例の傭兵の自宅っす」

「ここか…」

二人はノースポイントの古きからある瓦屋根の二階建てで立派な木材住宅の前にとまる。

この住宅こそが今から契約交渉する傭兵の住宅である。

二人はその住宅の敷地内に入り、玄関前に立ち、インターホーンを押す。

しばらくして、玄関の扉が開いた。

しかし、中から出てきたのは。

「お兄ちゃんたち誰?」

女の子であった。

女の子が出て来たことに驚くが、とりあえず女の子に両親がいるかどうか聞こうとした時、奥の方から男の子と一緒にブロンドのロングヘアーの女性が出て来た。

「こらこらロザリィー。一人で出て行ったら駄目よって言ったじゃないの」

「ごめんなさい…」

女性は女の子のことをロザリィーと呼び一人出て行ったことを注意し、ロザリィーはショボンとする。

「まったく、困った子ね~。でっ、あなたたちは誰なの?」

女性は二人の外務官の方を見る。

「私たちはウスティオ外務官の者です。ギリアム・イェーガーのお宅でよろしいですか?」

「えぇ、私の夫です。夫に何かようですか?」

「(おい!あの傭兵が結婚済みで子持ちなんか聞いていないぞ!)」

「(知らないっすよ!自分もたった今知ったす!)」

まさか、雇う傭兵が結婚済み&子持ちとは思っていなかった外務官二人は軽く混乱する。

「あの大丈夫ですか?」

「あっ、いえ、大丈夫です。で、奥さん。今、ギリアムさんいますか?」

「生憎、夫は今留守していて」

「そうですか…では、何時「俺なら今帰ったぞ」!?」

後ろから男の声が聞こえ、外務官の二人は急いで後ろを振り返る。

そこには、女性と一緒でブロンドのショートヘアーの男性が立っていた。

「「あっ!パパ、お帰り!」」

「あら、あなた。お帰り」

二人の子供はその男性に駆け寄り、男性は笑顔で二人の子供の頭を撫でる。女性はその光景をにっこりしながら見ていた。

「あぁ、ただいま。所でそこの二人。俺に何か用か?」

「じゃ、あなたがギリアム・イェーガーさんですか?」

「あぁ、俺がギリアムだ」

「実はあなたに仕事の依頼を持ってきました」

依頼とと言う単語を聞いたギリアムと女性は一瞬にして顔付きが変わった。

それは間違いなく、歴戦の戦士の顔付きであった。

「ここで立ち話はアレだ。中で話し合おう。ティオナ。紅茶を入れてくれ。ロザリィー、ウォルター。すまないがしばらく二人は庭で遊んでくれ」

「わかったわ、あなた」

ギリアムからティオナと呼ばれた女性は紅茶をいれるため家の中に戻って行った。

一方、二人の子供たちはギリアムから離れなかった。

「えぇー!今日は一緒に遊んでくれるって言ったのに!」

「そうだ!そうだ!」

子供たちはそう言いギリアムから離れようとせず、ギリアムは困り果てていた。

そこに、片方の外務官は「やれやれっす」と言いつ子供たちの方に行く。

「ほら、君達。パパが困ってるっす。そんなに遊びたいなお兄ちゃんが遊んでやるっす」

「「本当!」」

外務官のその言葉で二人は嬉しそうな顔をして、その外務官の方いく。

「お前な…これから、仕事があるのにな」

「そう言う仕事は先輩の方が得意でっそ!話が終わったら来てくれっす。さぁ、君たち何して遊ぶっすか?」

一人の外務官と二人の子供たちと一緒に庭の方に行く。

残ったもう一人の外務官は「やれやれ」と言いもの表情はにこやかだった。

一方、父親であるギリアムは心配そうな表情をしていた。

「大丈夫ですよ、ギリアムさん。あいつは子供扱いを良くわかっていますから。それより、奥さん待たせていますから早く行った方がいいですよ」

「あ、あぁ、そうだな」

そして、外務官とギリアムも家の中に入っていた

「はい、紅茶です」

「どうも」

家の中に入った外務官はリビングでギリアムと机を挟み座っていた。

そこに、ティオナが紅茶を持って来て二人の前に置く。

外務官はその紅茶を手に取り、一口飲むとあまりのおいしさに驚く。

「どうだ?妻の紅茶はおいしいだろ?」

「おいしいです」

「あら、うれしいこと言ってくれるわね」

ティオナは嬉しそうにそう言い、ギリアムの隣に座る。

ギリアムも紅茶を一杯飲み、そして、カップを置き表情が変わる。

「で、お宅らどこの国だ?ベルカか?それともオーシアか?」

「おしいですがどちらとも違います。我々は…ウスティオの者です」

それを聞いたギリアムは意外そうな顔をする。

「…敗北寸前のウスティオ。今更傭兵を雇い始めるか」

「!?なるほど。あなた、独自の情報網があるようで」

ギリアムがウスティオが敗北寸前のことを知っていることに外務官は軽く驚く。

実のところ、ウスティオはオーシアと協力し情報操作し、首都ディレクタスの陥落、ウスティオ敗戦寸前のことを必死になって隠していた。

何故その事を知っているのか外務官そう思った。

だがよくよく考えてみればギリアムはそれなりの傭兵。

少なくても傭兵独自の情報網を持っていても不思議ではないと思った。

「なかなか頭が回るようだな。その通りだ」

外務官思った通りギリアムは独自の情報網を持っていた。

その情報網のお蔭でウスティオ首都ディレクタスの陥落を知ったのは陥落から12時間後に知ることができた。

「それがわかってしまうと誰も契約してくれないですよ」

「当たり前だ。敗北寸前の国に好んで契約する奴がいるか?」

いくら傭兵でもウスティオみたいに敗北寸前の国に行くはずがない。

そんな国と契約したら高確率で捨て駒扱いされるからである。

しかし、外務官はある切り札があった。

「まぁ、そう言いますよね。しかし、まだ敗北はしていません。実は言うと、もうじき大規模な連合作戦が行われます」

「それも、知っているよ。オーシアを中心とした連合作戦だろ。だが、その作戦までウスティオが持つかのかわからないうえ、その連合作戦がうまく行くのかもわからない」

「確かにそうですね。連合作戦まで我々の国が待つかもどうかも怪しところです。それに、連合作戦もうまくいくのかもわからない。ですが、我が国はその連合作戦に全てを掛けるつもりです。全戦力、全国家予算を使ってでも」

そう言い、外務官はカバンから紙を出し、ギリアムの方に置く。

「それが、今回の契約の詳細です。その中に契約金の額も書いています」

ギリアムはその紙を手に取りその紙に書いてる内容を読み上げていく。

ティオナも覗き見する。

そして、契約金の額を知ると二人は驚く。

「ティオナ。俺の目がおかしくなったのか?0の数がおかしいほど多い」

「大丈夫だよ、あなた。私にも0が一杯見えるわ」

その契約金の額はギリアムが今までの最大額を遥かに超えていた。

その契約金を受け、ギリアムはこの依頼を考え直す。

「勝てば天国。負ければ地獄か…」

「まぁ、そう言うことです」

ギリアムと外務官は再びコップを手に取り紅茶を飲み、しばらく沈黙が続いた。

そして、ギリアムの口が動く。

「面白い。その依頼を受けよ」

「本当ですか!?」

「あぁ、本当だ」

それを聞いた外務官はカバンから別の紙を2枚紙と胸ポケットのペンを取り出し、ギリアムに差し出す。

「では、この紙にサインをしてください。傭兵のことは既に他国に通しています。もう一つの紙に書いている周波数で通信をすれば問題なく通してくれます。要請をすれば空中給油、及び着陸許可が下りるように手筈はしています」

「本当に全てを掛けているな。ウスティオは」

ウスティオの用意周到さから、いかにウスティオが傭兵と連合作戦に望みを掛けていることがわかる。

ギリアムは差し出されたペンを手に取り、片方の紙にサインした。

「これでOKか?」

「はい。契約成立です」

外務官はサインされた紙をカバンに。ペンは胸ポケットに戻し、立ち上がる。

「では、私たちは次の所もあるので、これにて」

「わかった。帰る前に庭で子どもと遊んでいる相方もわすれるなよ」

「わかっています」

ギリアムとティオナも立ち上がり3人はもう一人の外務官と子供たちがいる庭にいくのであった。

 

その後、3人は庭でもう一人の外務官に懐いてしまった子供たちを引き離す説得が30分も続くのであった

1995年 3月30日 ノースポイント ニューフィールド空軍基地 第二格納庫

 

ノースポイントのニューフィールド島の空を護るニューフィールド空軍基地。

その基地の一つの格納庫内にギリアム達がいた。

ギリアムは私服ではなくパイロットスーツを着ており、そして、ティオナを中心とした整備兵たちが整備している自分の愛機。両主翼が青く塗装されており垂直翼には番犬ガルムを模した赤い犬が鎖を食い千切るエンブレムを付けられたF-15Cを見ていた。

そんな、格納庫にノースポイント軍の軍服を着た男が入って来た。

それも、胸には中将の階級章を付けていた。

「調子はどうだいギリアム」

「響介か。お陰様でいいよ」

その男の名は武村 響介である。

ギリアムの古きからの友であり、ノースポイント軍のトップ陣の一人でもある。傭兵であるギリアムがニューフィールド空軍基地に愛機を置くことが出来るも彼のお蔭である。

また、ウスティオが敗北寸前の情報も彼から手に入れた物である。

「しかし、昨日急に言ったのにすぐ出撃の用意ができたな」

「例の作戦が始まったからすぐに依頼が来ると思ってな。あらかじめ出撃が出来るようにしておいたからな」

響介はベルカが宣戦布告した日、ギリアムに依頼が来ること予測しており、あらかじめ彼の機体をいつでも出撃できるようにしていた。

そのお蔭で契約した次の日に出撃ができた。

今、ティオナたちが機体の最終確認しており、終わり次第ギリアムはすぐに出撃をする予定である。

「しかし、敗北寸前のウスティオと契約するとはな。てっきり、オーシアかベルカかあたりに行くと思っていたんだが」

「それが、ウスティオがなかなか面白いことをしてくれたからな」

そう言いながらギリアムはポケットから契約金が書いている紙を取り出し、響介に渡す。

「ふむ…ハァ!これ、本当なのか!どう見ても傭兵に払う額ではないぞ!」

その金額金の高さに響介は驚く。

「だろ?だから受けたのさ」

「確かに面白いな。いかにもお前が受けそうな依頼だ」

「あなた~!機体に問題はないわ~!いつでも行けますわよ~!」

ギリアムと響介が話し合っているうちに機体の最終確認が終わり、ティオナが手を振っていた。

「じゃ、行くよ」

「あぁ、いい戦果を期待するよ」

「ありがとう」

ギリアムは響介にハイタッチし自分の愛機であるF-15Cのコックピットに乗り込む

「じゃ、先に行くよ」

「えぇ。いってらっしゃい。私たちも後から行くわ~」

ティオナはそう言い、最後にギリアムのほっぺにキスし、機体から離れる。

「まったく。本当にあいつに出会ってよかった」

ギリアムは照れながらもヘルメットを被り、酸素マスクをつける。

そして、キャノピーを閉じ、管制塔にエンジン始動を許可をもらうため通信を入れる。

「第二格納庫内に待機しているサイファ―。管制塔応答願います」

《こちら管制塔。サイファ―。感度あります。どうぞ》

「エンジン始動許可を求む」

《了解。武村中将から話を聞いている。エンジン始動を許可します》

管制塔からエンジン始動許可を貰い、ギリアムはエンジンを始動。

格納庫内に凄まじいF-15Cのエンジン音が鳴り響く。

そして、目の前の格納庫の扉が開き朝日が格納庫内に差し込む。

《管制塔から、サイファーへ。23番滑走路へのタキシングを許可します。位置に着き待機してください》

「サイファ―から、管制塔へ。了解。誘導路を移動開始します」

F-15Cはゆっくりと動き始め、格納庫から外に出る。

その時に、格納庫の隅を見ると、ティオナと朝早く起きて眠そうな顔をしているが、こちらに手を振っている子供たちに気付き、ギリアムは妻と子供たちが視界から消えるまで手を振り、そして、23番滑走路に入る。

「サイファーから、管制塔へ。23番滑走路にて離陸準備完了」

《管制塔から、サイファーへ。離陸を許可します。離陸後は5000フィートまで上昇してください》

管制塔から離陸許可が下り、ギリアムはスロットルレバーを前に倒し機体を加速させる。

そして、ある程度の速度を出し、操縦桿引く。

すると、F-15Cは重力から解き放たれ、空へと上がり、僅か数十秒に5000フィートに到達する。

《管制塔から、サイファーへ。5000フィートの到達を確認。貴機の幸運を祈ります》

「さて、行くか」

ギリアムは機体をウスティオに向け、ニューフィールド空軍基地から去って行くのであった。

 


 
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